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断章③「レオの欠陥」

完璧を目指していた時期がある。


今でも目指してるつもりだが、

あの頃とは少し意味が違う。


昔の完璧は、欠点をなくすことだった。

今の完璧は、欠点ごと制御することだ。


同じじゃない。

全然違う。


その違いに気づくのに、

けっこう時間がかかった。



物心ついた頃から、

術式の出力は高かった。


才能があると言われた。


期待されると、応えたくなる。

応えると、もっと期待される。


そういうサイクルだった。


別に嫌じゃなかった。

期待に応えることが、

普通のことだと思ってた。



中等科の終わり頃、

初めて壁にぶつかった。


出力を上げると、術式が乱れる。

第三層の接続部分が、

高負荷になると干渉を起こす。


技術的な問題だった。


解決策を探した。

接続の順番を変えた。

展開の速度を調整した。

何パターンも試した。


でも、根本は変わらなかった。


先生に相談した。

「精度を上げれば解決する」と言われた。

精度を上げた。

変わらなかった。


別の先生に相談した。

「出力を抑えれば問題ない」と言われた。


出力を抑えたくなかった。

それじゃ意味がないと思った。



しばらく、そのことで頭がいっぱいだった。


完璧な術式を組もうとするたびに、

そこで詰まる。


欠陥がある。


その事実が、ずっと引っかかってた。


欠陥があるやつが、首席でいていいのか。

期待に応えられないんじゃないか。


そういうことばかり考えてた。


ある日、試合の最中に気づいた。


欠陥が出た瞬間に、動きが止まった。


止まったのは、欠陥のせいじゃなかった。

欠陥を意識しすぎたせいだった。


欠陥があると分かってるから、

出る前に構えて、

出た瞬間に焦る。


その焦りで、止まってた。


欠陥は確かにある。

でも、負けてたのは欠陥のせいじゃなかった。

欠陥を怖がってたせいだった。



それから考え方を変えた。


欠陥をなくすのはたぶん無理だ。

でも、欠陥が出るタイミングは分かる。

出るタイミングが分かれば、

出た後の立て直しを速くできる。


完璧な術式じゃなくていい。

欠陥込みで、それでも制御できればいい。


そういう考え方になった。


欠陥があっても勝てる。

それを証明する方が、

欠陥をなくすより速いと思った。


実際、そうだった。



アーセルに声をかけられたのは、

対抗演習の前だった。


補助科のやつが、

俺に話しかけてきた。


第三層の接続点の話をした。


第二層が安定してから接続しようとするから、

そこに負荷が溜まる。

同時に展開して、

接続のタイミングをずらせば

干渉が減るはずだ、と。


聞いた瞬間、正直驚いた。

観覧日に一度見ただけで、

そこまで見えてたのか、と思った。


試してみた。

最初は崩れた。

何度かやって、

少しずつ感触が掴めてきた。


完全には治っていない。

でも、立て直しが速くなった。


癪だった。

補助科のやつに言われて、

変わった部分がある。


認めたくはなかった。

でも、認めないのは嘘になる。



対抗演習で、ソレイユに一点取られた。


欠陥が出た瞬間を、突かれた。


あの一瞬を捉えられるとは

思っていなかった。


驚いた、というより、腹が立った。


アーセルに接続点の話を聞いた。

その同じ情報を、

ソレイユにも渡していた。


俺に言っておきながら、

同時にソレイユの武器にもしていた。


それが引っかかった。


試合のあと、直接聞いた。

なぜソレイユに教えたのか、と。


「迷いました」と返ってきた。


迷って、それでも渡した。

そういう話だった。


俺だったら迷わない。

見えたことは使う。

それだけだ。


でも、あいつは迷った。

迷いながら、それでも渡した。


渡した理由を最後まで言わなかった。

聞かなかった俺も俺だが。


変なやつだと思う。

補助科のくせに、

余計なことを考えすぎる。



欠陥は今もある。

なくなってない。


でも、立て直しは前より速い。


悔しいが、

あいつに言われて

見え方が変わった部分もある。


認めたくはない。

でも、認めないのは嘘になる。



戦えない者に価値はない。

それは今も変わらない。


ただ、

戦う者を狂わせずに済む力があるなら、

話は少し別かもしれない。


まだ認めるつもりはない。

でも次に会ったら、

たぶん俺はあいつの目を見る。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


もし続きが気になった方は、ブックマーク・いいねをいただけると励みになります。

更新のモチベーションに直結しますので、ぜひよろしくお願いします。

それでは、また次話でお会いしましょう。

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