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第十一話「欠陥の在処」

踊り場の灯りは、夜になると一段暗くなる。


ユウトはそれを知っていて、ここを選んだ。


ノートを広げていた。

レオの術式の動きを図に落とそうとして、うまく線にならなかった。

見えているものと、書けるものとの間に、いつも少し隙間がある。


足音が来た。


リアだった。

夕練のあとだろう。

金髪が少し乱れている。


踊り場に入って、ユウトを一度見て、窓枠に背を預けた。


「待ってたのか」


「はい」


「珍しいな、お前から呼ぶの」


それだけ言って、外を見た。

グラウンドはもう真っ暗だった。



「グランドさんの術式に、欠陥があります」


リアが外を見たまま、少しだけ動いた。


「聞く」


「第三層の接続部分です。高出力を使うたびに、そこに負荷が集中する。一瞬だけ、展開が止まる」


「どのくらいの一瞬だ」


「コンマ数秒。普通は気づかない」


「あんたは気づいた」


「はい」


リアがようやくこちらを見た。


「それを俺に渡す気か」


「はい」


少しの間があった。


「あんたはそれでいいのか」


「まだ答えが出ていないです」


正直に言った。


リアは何も言わなかった。


「ただ、見えているものを使わない理由も、まだ見つけられていない」


リアが窓枠から体を離した。


「勝つために使えるものは使う。それだけだ」


グランドのことも、ユウトのことも、それ以上は足さなかった。



「欠陥が出るのは、高出力の瞬間です。グランドさんに高出力を使わせないといけない」


「どうやって」


「リアさんが、本当に追い込まれることで」


リアが首を傾けた。


「演技じゃ通じないです。グランドさんには」


「本当に追い込まれながら、待つということか」


「はい」


「自信がない」


「そこが一番難しいと思っています」


ユウトは続けた。


「来る、と分かっていれば、少しだけ耐えられる。でも確証はないです」


リアが黙った。


しばらくそのままでいた。


「危ないな」


「はい」


「他に方法はないのか」


「今の段階では、これしか見えていないです」


リアが窓の外に視線を戻した。

暗いグラウンドだった。


「やってみる」


静かに言った。



「一つ聞く」


リアが言った。


「グランドがその欠陥を直してきたら」


ユウトは一拍置いた。


「その先は、リアさんが勝つしかないです。俺が渡せるのは、ここまでです」


リアがこちらを見た。


青紫色の目が、灯りの中でまっすぐ向いていた。


少しの間があった。


「それでいい」


即答ではなかった。

でも迷いはなかった。


「欠陥が使えなかったとしても、やることは変わらない。あんたが設計した動きで、グランドに届くところまで行く」


ユウトは返す言葉が見つからなかった。


リアは最初からそういう人間だった。

渡したものを使いながら、その先は自分で行く。



翌朝、組み合わせが出た。


ユウトは掲示板の端から確認した。


剣術科代表・リア・ソレイユ。

対戦相手、攻撃科代表・レオ・グランド。


周囲がざわついた。


「ソレイユ対グランドか」


「勝負にならないだろ」


「でも二回戦まで誰も崩せなかった相手を崩してきてるぞ」


「補助科が裏にいるって話、聞いたか」


声を聞きながら、掲示板を見ていた。


設計した動きが、本番で機能するかどうか。


見えているものを渡した。

でも試合は設計通りにならない。

そのときリアが何をするか、ユウトには分からなかった。


「ソレイユ対グランドか」


ミハイルが隣に来ていた。


「はい」


「お前が絡んでる試合だな」


「絡んでいる、というより」


「どっちにしろそうだろ」


ミハイルが掲示板を見た。


「ソレイユは勝てると思うか」


「分かりません」


「そうか」


しばらく黙った。

それからぼそっと言う。


「俺はグランドに一点取った。ソレイユも一点くらいは取れると思う。根拠はないけど」


ユウトはその言葉を聞きながら、掲示板を見ていた。


リアとレオの名前が、同じ枠の中に並んでいた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


もし続きが気になった方は、ブックマーク・いいねをいただけると励みになります。

更新のモチベーションに直結しますので、ぜひよろしくお願いします。

それでは、また次話でお会いしましょう。

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