Ⅰ 問いかけ
「ねぇ、アンタって昔のことよくはぐらかすけど、本当に記憶とかないわけ?」
ふと、のんびりしたいと思った時に立ち寄る『バリスタのバー』で、私は友達に質問される。
魔法少女ステラ・クォーレ。腐れ縁のような間柄の、何気なく話せる友人だ。
私は砂糖を入れたコーヒーを味わいながら、私なりの返答をする。
「そうだね。最近の記憶以外はほぼないって言っていいと思う」
「最近ねぇ……街巡りしてる記憶ってことよね?」
「そう。幼い時の思い出とかそういうのは存在しないし」
「また出た、存在しないって言葉。それ、よくわかんないのよね」
目を細めながらステラが続ける。
「つまり、リベラって生まれてからずっとその姿ってことなの? 不思議生命体みたいな」
「その発想はあながち間違いじゃないと思うよ。私、小さかった感覚ないし」
「ますます謎が深まるわね……」
私が話せば話すほど、ステラは頭を悩ませる。
「よくよく考えると、アンタのこと、あたし全然知らない気がするわ。なんで魔法少女を時々名乗ったりしてるのかもわかんないし、旅してる理由なんかも聞いたことがない。謎しかないわ」
「言われてみれば、話したりしたことはなかったかも」
折り入って自分の話をしようとするタイミングはなかなか存在しなかった気がする。
魔法少女に対して少し特別な感情を持ってることも、旅をするきっかけも、誰かに伝えたことはなかった。
「じゃあさ、せっかくだから私が目覚めた頃の話とか聞いてみない?」
彼女に対して提案する。
リベラは少し頬を緩ませながら言葉を返した。
「面白そうじゃない。是非聞いてみたいわね」
「興味を持ってくれてよかった。じゃあ、色々話していこっか」
姿勢を正して、飲み物を確認。
そろそろステラも私も飲み干しそうだった。
「っと、その前に飲み物のおかわりも用意しておこう。それなりに長話になるからね」
「アンタ、本当にマイペースよね。目覚めた時からそんな感じだったの?」
「さぁ、どうだったかな」
ステラはオレンジジュースを頼み、私は再びコーヒーを注文する。
お互いに好みの飲み物が準備されたので、私は小さく息を吸って語り始める。
「じゃあ、始めよっか。『私の始まりの物語』を」
私がリベラと名乗る前の物語。
自由に旅をするきっかけを得た、かけがえのない目覚めの話。
ちょっとした旅の記憶。
私は、ゆったりと私なりのペースを話していくことにした。




