第33話【悪魔の街】
ある薄暗い道を歩いていると、空が赤くなっていることに気が付いた。
夕日の赤というわけではない。まだお昼前の時間だし、普通は空が赤くなることはない時間帯だ。
「変な場所、迷い込んじゃったのかな」
気になって周囲の様子を確認する。
木々は枯れ木がいっぱい。地面は乾いた雰囲気の土になっていて、道も舗装されていない。
全体的な雰囲気としては、人が寄り付かないような場所という印象を感じさせられる。
「ぼんやり歩いてると、結構こういうことあるんだよね」
次に行く街をしっかりと決めないで歩いていたりすると、不思議な空間に迷い込んだりするものだ。
旅の備蓄が多い時なんかはこういう歩き方を私はよく行っている。
自由に、気ままに、マイペースに旅をするという方法。こういうのが私に似合っている。
「さてと、なにか街に繋がる手がかりがあったらいいけど」
大きく伸びをしながら、前に進んで看板などを探す。
よっぽど不毛の地でもなければ、街というのは存在するものだ。
魔法の法律に基づき、存在する街は相当のことがない限り、無くなることはないのである。
赤い景色が変わらない仲、のんびり歩いていくと書きなぐったような文字で書かれた看板を見つけることができた。
その看板に近づき、書かれている文字を確認する。
『この先、悪魔の街! 俺たちがルールを作る街だ!』
文字の雰囲気からは形式ぶった雰囲気を感じない。
むしろ、なんというかワイルドさが強く出てる気がする。
「『俺たちがルールを作る』ねぇ」
悪魔。その存在は一般的には人を誑かすものとして認識されやすい。けれども、誠実な存在がいないわけではないと聞く。
少なくとも、私は悪魔に対してはそこまで悪印象は持っていない。悪魔になにかされたわけでもないし、旅をしているような変わり者の悪魔みたいな存在とたまに話したりすることもあるからだ。
だから、悪魔の街という存在を目にしても、警戒するよりも先に興味が湧いたりするのだ。
「悪魔のルールってどういうのがあるんだろう」
言葉の並びから考えると、意地悪なルールを思い浮かべたりもする。
ただ、悪魔は契約を貴ぶとかそういう話も耳にしたことがあるから、もしかしたら真面目なルールだったりするのかもしれない。
色々頭で考えていくにつれて、興味の感情が膨れ上がっていく。
こういう時はやっぱり行くに限る。
看板が示す矢印の先に、黒い建物が多くある街が見えている。
あれが、悪魔の街。
「よし、行ってみよう」
知らないまま通り過ぎることもできる。それが旅というものだ。だけれども私は、多くのことを知っていくことも旅の醍醐味だと思っている。だからこそ、色んな道を歩いているのだ。
旅の荷物をしっかり運びながら、私は悪魔の街へと足を運んでいくのだった。
真っ赤な空に荒地の空間はまるで魔界のよう。
住居らしき建物は黒い金属で作られていて、蔦が張っているのもあってどこか冒涜的な雰囲気を感じさせる。
街に到着した私は、その様子を確認していく。
「あーめんど、今週はダラダラ休んでこうかな」
「いいんじゃね? テキトーにやろうぜ」
気だるい雰囲気で会話している男性二人。
彼らの背中には翼が生えていて、悪魔の尾も存在している。
見た目からも彼らが悪魔なことがよくわかる。
「契約状況どうなってる? 順調?」
「あー、まちまち。デメリットを話したりした時に逃げてく奴いるからあんまりうまくいかねぇんだよな」
ちょっと真面目そうな悪魔は仕事の内容で盛り上がっているのもあって、話の幅の広さを感じる。
人間だって考え方に幅があるように、悪魔にだって色んな発想があるもの。そういう自由を感じられる瞬間はいつだって楽しくなるものだ。
「……さてと、どうやって街を歩いていこうかな」
漠然と歩き回るべきか、それとも気になる点に顔を突っ込んでいくべきか。
悩みながら、少しずつ歩いていく。
旅人という立場は、人を引き付けやすい。悪魔だってきっと興味を持ってもらえるかもしれない。
そう思いながら道の中央を移動していくと、悪魔の女の子がひょっこりと私の目の前に現れてきた。
「キミ、キミぃ、旅人だよねぇ?」
「うん、旅人だよ」
乗っかってくれた。
そう思いながら、笑顔で応える。
「今お昼頃だからきっとお腹空いてるんじゃない?」
「そういえば……」
気になって時計を確認すると、時間はお昼過ぎを示していた。
赤い空で気が付かなかったけれども、時間はしっかりと経過しているようだ。
それを意識すると、少しお腹が空いていることも実感として湧いてきていた。
「いい食べ物あるんだ、食べない?」
そう言って悪魔の女の子はあるものが乗ったお皿を私に提示してきた。
お皿の上に乗っかっていたのは半分になった卵。形が崩れていないあたり、ゆで卵なのはよくわかる。
しかし、その内面は独特なものになっていた。
黄身があるべきところに明太子が乗せられていたり、チーズやトマトが飾りつけされているもの、中にはオリーブで変わった模様を作っているものも存在している。
ちょっと独創的な印象を感じさせられる卵料理はお皿の上にいっぱい乗せられていて、それぞれ異なる装飾が為されている。
なんていうか、凄い拘りを感じさせられる。
「食べていいの? 値段とか、聞いてもいいかな」
「ふっふっふ、お金はこれくらいの価格!」
「よし、それをお昼にしてみようかな」
指で提示された額を確認して、問題なく支払えそうなことを確認。しっかりと現金を手渡す。
悪魔的な値段、みたいなよくわからない価格を提示されなかったことに内心ほっとする。旅をしている以上、ある程度はお金にはがめつくしないといけないのだ。ちょっと世知辛いけれど。
「まいどっ! あっちのテーブルで食べよう!」
「ん? 店員さんも食べるの?」
「午前中に業務終了予定だったからね! ちゃちゃっと作ったものを売りながらパーってしたかったってワケ!」
「気前よく、今日は仕事を頑張ったという気持ちで終わりたかったってことかな?」
「そういうこと! 旅人さんわかってるねぇ」
鉄の丸いテーブルの上に置かれたお皿はふたつ。
その上には、あの卵料理が置かれている。
私と店員さんはそのテーブルを囲むように椅子に座った。
「さぁ、食べよう! あたしの特性デビルエッグを!」
「デビルエッグ?」
「そそ、この料理のこと。ちょっと珍しい卵の調理方法だけど、悪魔の街だと人気なんだ」
「へぇ、語源を聞いても?」
「語源もいいけど……まずは食べてみた方がわかりやすいかもしれないね!」
「それもそっか」
さっそくデビルエッグと言われた半分になった卵をひとつ味わってみる。
「これは……!」
……胡椒の味わいがなかなか鋭い、スパイシーな食感の味わいだ。
卵の黄身からもある程度まったりした食感を感じさせられるものの、その上に重ねられた香辛料の味わいがなかなか個性的に思える。
一個の満足感がなかなかに強い、素敵な料理だ。
「どう? 美味しいっしょ」
「卵料理でこうやって香辛料強めに味わえるのは斬新かも」
「ふふん、それが特徴だからね!」
「そうなんだ」
「悪魔は刺激を求める。ピリッとした感じの味わいに、魔界を思い出させるような辛さみたいなのを求める子も多いってわけ」
「地域独特の料理ってことなんだ」
「……まぁ、別の世界から来たーって言ってた人間はデビルエッグじゃなくてデビルド・エッグだよ! って言ってたけど、まーきっと同じだよ」
「意外と人間も訪れたりするんだ、ここ」
「たまーにね。まぁ、こんな魔界みたいな場所に進んで入ってくる人は旅人でもレアだけどねー」
デビルエッグをいくつか食べていき、お腹を満たしていく。
しっかりとした卵を使っているのもあって、お皿の上に乗せられていたそれを食べ終わるころには満腹になっていた。
「ご馳走様、美味しかったよ」
「そりゃどうも。なら、美味しかった報酬もいただいちゃおっかなぁ?」
店員さんが悪い笑顔で微笑む。
なるほど、こういうところが悪魔的なのかもしれない。
なら、私も牽制しながら会話してみよう。
「契約書なら書かないよ。そういうのが一番ややこしいことになるだろうし」
「おっ、よくわかってるねぇ」
「口約束で契約するっていうのはどうかな。今日一日の守れるであろう契約みたいな」
口約束は信用できないという悪魔もいるだろう。
けれども、信用を見せているのなら、ある程度有効な手段であるとも私は認識している。
迷わず口約束を提案した私に対して、店員さんはニヤッと笑っていた。
「ふふっ、旅に慣れてるねぇ。じゃあ、契約はそういう形にしちゃおっかな。旅人さんは信頼できそうだし」
「どうも。ところで、どういうことを契約するつもりだったの?」
「そりゃ決まってるよ」
はきはきとした声で、彼女が言葉にする。
「滅多に来ない旅人と休みの時間の間、楽しいひと時を過ごす!」
その言葉は悪魔的というよりも、どこか明るい少女の願いみたいな印象を感じさせられた。
「……それでいいの?」
「へ? まさか、魂を奪うーとかそういうことをやってくるんじゃないかなとか思ってた?」
「まぁ、ちょっとは」
「まさかぁ、ここに暮らしてる悪魔でそんな大胆なことするやつはそうそういないよ。みんな基本はめんどくさがりだし」
「そうなんだ、ちょっと意外だったかも」
「まぁ、仕事熱心な外で活動してるやつはそういうことやること多いかもだけど、みんながみんなデメリットが重そうな契約をするわけじゃないよ。悪魔だって楽したいからね」
「楽に、気ままに……もしかして、俺たちがルールだっていうのもそういうところから来てたり?」
「うん! 無法っぽいけど無法じゃないチキンレースの上に成り立ってるのが悪魔の街だもん」
「……なかなか面白い空間になってるんだね、ここ」
でも、そういう独自文化の街は嫌いじゃない。むしろ個性的でいいとも思える。
ここまで話をしていて、彼女の契約の言葉に対して返答していなかったことに気が付いた。
「ええと、契約内容については把握したよ。私としては問題ない」
「やった! ところで、旅人さん。名前は?」
「リベラ・マギアロア。リベラって気軽に呼んでほしいかな」
「あたしはヴィー! 口約束の契約も完了したことだし、さっそく色々見て回ろっか!」
ささっとお皿を片付けると、店員さん……もといヴィーは凄まじい速さで街の中を走っていった。
契約した手前、はぐれてしまうのはよくないだろう。そう思った私は、元気が有り余ってる雰囲気の彼女についていくことにした。
「悪魔の間で意外と人気だったりするやつ、旅人のリベラがやったらどうなるか見てみたいな!」
そんなこんなで最初に連れられたのは『悪魔的刺激のダイスバトル!』とこれまたワイルドに書かれた建物だった。
ダイスバトル。つまり、ダイスを使った勝負事ができる空間なのだろう。
中では長身の男性の悪魔が待っていた。紳士的な風貌からはどこか生真面目な雰囲気を感じされられる。
「たのもー!」
「……君ですか、ヴィー。この前は散々僕に負けたじゃないですか」
ヴィーは常連客みたいだ。気さくなノリで建物の中に入っていった。
そんな彼女に対して紳士な店員は呆れた態度で対応しているあたり、何回も勝負を挑んだりしているのかもしれない。
「紳士君、それは違うよ。負けっていうのはね。次に繋がる重要な一歩なんだよ! だからね、あたしは負けてない! うん、負けてない!」
……なんていうか、刹那的な発想というかよろしくない考え方な気がする。
ダイスの出目はイカサマでもしない限り、ランダムなはずだ。次に繋がるかといったら少し怪しい気がする。
「そういう発想でいると、いずれダイスに泣かされますよ」
紳士な店員は嗜めるようにそう言葉にしながら、私の存在に気が付いた。
「おや、悪魔でもない方がいますね。珍しい」
「旅人のリベラだよ。ヴィーと街を探索することになったんだ」
「ほう……探索するといって、最初にこの空間を選んだのはヴィーの執念を感じますね」
「というと?」
「ほら、彼女の目を見てください」
紳士な店員の言葉に従って、ヴィーの方を見つめてみる。
すると、期待に満ち溢れたような顔で私の方を見つめ返してきた。
「ぎゃふんと言わせてあげて!」
「えっ」
「きっと彼女は自分の運では勝てないと判断しているのでしょう」
「そ、そんなことはないよ? ただ、旅してるリベラなら、紳士君に勝てるかなーって思ってるだけ。興味本位、ほんと」
なんだかんだ連続で負けていることに対して不安を感じているのだろう。目が泳いでいるのは私から見ても伺えた。
そんな彼女を見つめていると、紳士な店員は私の耳元で静かに言葉にした。
「ダイスで戦うのに実力もなにもない、ということを教えてあげるべきです」
店員がそれを言っていいのかとも一瞬思ってしまった。とはいえ、むしろダイスを取り扱っている店員だからこそ、そう言葉にできるのかもしれない。熱中しすぎるのもよくない、ということだ。
「……ええっと、とりあえずダイス勝負すればいいんだよね」
「はい、ふたつのダイスを振ってその目によって勝敗を決めるシンプルなゲームとなります」
「わかったやってみる」
私と紳士な店員はお互いにふたつのダイスを手に取る。
その出目が高い方が勝ちというシンプルなゲームだ。
「負けても罰とかはないよね」
「悪魔の契約次第によってはそういうサービスを付けることも可能です。ここに来る悪魔たちの間では罰ゲームが流行してますが、やります?」
「流石に遠慮。気ままに楽しみたいからね」
「そうですね。気楽さは時に心を安らげます。……ではこちらから行きましょう!」
紳士な店員がふたつのダイスを振る。
その出目は4と5。つまり、合計は9だ。
最高の値が12になることを考えるとかなり強い数字と言えるだろう。
「高めの数字を上回れた時の喜びというものは、計り知れないものですよ、旅人さん」
「出るかどうかは別問題だけどね」
「悪魔的な刺激というのは、勝つか負けるかわからない時に発生する……というのが定説です。そうですよね、ヴィー」
「そうそう! ギリギリで勝つと嬉しくってびびびーって電撃が走ったような気分になれるよ!」
悪魔的な刺激。私も味わうことができるのだろうか。
少しだけ期待しながら、私もダイスを投げてみる。
「それっ」
ダイスの出目は2と3。つまり5だ。
これは……大敗という感じなのではないだろうか?
「ダイス一個分くらいの数字にしかなってないのはちょっとやるせないかも」
「まだ一試合目です。3本勝負でやってみたら勝てるかもしれませんよ」
「そういうものかなぁ」
「そういうものだよ! 諦めないで、リベラ!」
流れ的にどうやた三本勝負にするみたいだ。
あと一回負けたら強制終了だけど、まだチャンスは残ってる感じか。
「次は旅人さんからどうぞ。プレッシャーなど感じなくて大丈夫です。勝負は時の運ですから」
「そうはいっても、やるからには勝ちたいかも。……もう一度、ダイス!」
2つのダイスをテーブルで転がす。その出目は5と2。つまり合計数は7だ。
……ちょうど中間くらいといったところか。リードしているとは言い難いから不安はある。
「ここで決着付けないよね、紳士君!」
「さて、どうでしょう」
紳士な店員も続けてダイスを投げる。
その出目は6と5。つまり、11。最高値に近い数字だ。
これは勝てない。
「えぐ! 紳士君、全然紳士じゃない! イカサマとかしてないよね!」
流石に強い数字が多かったからか、ヴィーが抗議の声をあげた。
私は私で、そういうものだと思っていたので、そこそこ納得していた。
「まさか。文句を言われるようなことを自分からやるわけないじゃないですか。それに、僕のお店のルールは知ってますよね?」
「それもそうだけど……うぅー、それでも大人げない!」
「勝つ日もあれば、負ける日もある。それがダイス遊びというものです。……旅人さんは楽しめましたか?」
私に話が振られたので、思ったことを率直に言う。
「先手、後手、どっちにしてもハラハラ感があったね。もしかしたら、っていう気持ちがゲームを盛り上げていたかも」
「それを味わえたのなら、幸いです。僕もルールを厳守してきた意味があります」
「ルール?」
首を傾げて聞いてみる。
すると紳士の店員さんははっきりとした口ぶりで言葉にした。
「『この建物の中ではいかなる時もイカサマを厳禁にする』というものです。わかりきった勝ちに価値を見出せない悪魔ですので、拘ってるのです」
「他のお店だと、イカサマって流行ってたりするの?」
「はい、禁じられてなければ、やっている悪魔も多いですね」
「それはそれで凄いね……」
「『俺たちがルールを作る街』っていう触れ込みは伊達ではないですから」
そういって微笑する紳士な店員。
各々がそれぞれルールを決めて、生きていく。
悪魔たちの中でしっかりと使われている取り決めに対して私は、やっぱり文化は楽しいものだと思うのだった。
その後も私はヴィーに連れられて、様々な体験を行っていった。
「悪魔魚釣り行こう! あれ、楽しいよ!」
そういって連れられた釣り場ではかなり顎の力が強い魚との釣りによる戦いが繰り広げられたり……
「背徳デザート食べるよ! 夕食が食べられなくなりそうなほどボリューミーなやつ!」
かなりどかっと盛り付けられたチョコレートのパフェを味わい、ちょっとだけお腹が苦しくなりながらも、甘い味わいに満足感を覚えたり……
「仮装大会! 気になる、いこう!」
仮装大会においては私がなぜか魔女の衣装を着て、ヴィーとコンビを組んで事件を解決するといったこともやった。
多種多様な文化があり、そのひとつひとつが個性的な悪魔の街。
面白いと思ったのは、どれも風変りなルールがあったことだった。
悪魔魚釣りは『引っ張られないように重装備で立ち向かい、保険の契約も行うこと』と丁寧に安全を保障していた。
実際私の近くで釣っていた悪魔のひとりは顎の力の強さに負けて、川に落ちて瞬間移動していたりもした。
どんなところでも安全志向は忘れない。そういう悪魔もしっかりいるものだ。
背徳デザートについては『時間以内に食べられたら無料』というルールが課せられていた。
ヴィーはそれを見て一生懸命に食べようとしていたけれども、私はのんびり食べていた。
デザート作りの店員さん曰く、「必死になってる姿を見るのが楽しい」とのことだったので、ちょっとひねくれてる感じの悪魔もやっぱりいるのかもしれない。
ちなみに、ヴィーは無料で食べきることはできなかった。
仮装大会については『普段の自分とは違うギャップを楽しむべき』というルールがあった。
これはどういうことかというと、露出が少ない衣装を着ている人は、逆に露出多めにしたりすることを要求するといったものだ。
……つまり、今回私が着ていた魔女服は比較的露出が多いものだった。
思い返すと、恥ずかしくなってしまうけれど、ファッションとして考えるとなかなか興味深いところもあったので、今後暑くなった時に研究してみるのもいいのかもと思った。
様々な悪魔がいて、ルールも多種多様。
そんな独特な悪魔の街の一日はあっという間に過ぎ去っていき、気が付いた頃には次の旅に赴く時間になっていた。
「もう行っちゃうの?」
ヴィーが寂しそうな顔で見つめる。
そんな彼女に私は答える。
「旅人だからね。自由気ままにまた新しい街に行くんだ」
「大変そう」
「それが私のルールだからね。でも、大変なだけじゃなくって楽しいことも多いよ、旅は」
「他の街の文化って面白いの?」
「面白い。それは私が保証する」
未知を知り、見解を深める。
その中で自分の世界の見え方も変わってくる。
だからこそ、旅は面白い。少なくとも私はそう思っている。
「なら、もっと色々挑戦してみよっかな!」
「うん、応援するよ、ヴィー」
彼女にも素敵な日々があるように願う。
そうして、私は新しい旅路に足を運んでいく。
「リベラ! 悪魔の街はどうだった?」
彼女に大きな声で問いかけられたので、私も返答する。
「元気が貰える街だった! みんな活動的で、独創的で、色々勉強になったと思う!」
「よかった! じゃあ、元気で!」
「うん、ヴィーも元気でね!」
手を振って別れを告げたのち、私は前へと進んでいった。
魔界のような赤い空も、枯れ木も少しずつなくなっていき、元の青空の道に戻っていく。
また、新しい旅が始まっていく。
「よし、次の街へと出発!」
悪魔が自分たちの為にルールを定めるように、私も私なりのルールを定めながら、まっすぐ進んでいく。
楽しく、自由に、そして素敵な日々を送るために。
少し変わった街の出来事は、私に新たな活力をくれていた。




