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そうして旅人は自由に生きる~魔と法を巡る物語~  作者: 宿木ミル


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第23話【贅沢な街】

 ふと思った時にお金を使いすぎた、なんて考えたりすることがある。

 旅をしている以上、お金の問題というのは発生するものだけれども、やりくりをうまくしているつもりでもうまく行かないことだってあるのだ。


「……嗜好品を買いすぎたかな?」


 苦いコーヒーが得意じゃないからと買った粉砂糖とか、いつでも使えるから便利といった理由で多めに用意している調味料。そういうものがなかなか多くなっている。

 消費をしていないわけではない。むしろ、うまくやりくりしながら有効活用している。それでも、なんだかお金が心もとないような気がする。


 気になって旅のお供の荷物入れに手を伸ばしてみる。嗜好品以外にも色々買っているかもしれないからだ。

 そこには、小さな宝石が飾られていた。それなりの値打ち品だけれども、ご利益があると旅商人に言われて買った品物だ。

 ちょうど昨日のことだったか。旅商人が必死に売ろうとしている姿を見て、ついつい買ってしまったものだ。


「断りたかったわけじゃないけど、結構な価格だったんだよね……」


 こういうのを買うとどうにもお金が減ってしまう。

 流石の私もある程度の自制はできていると思う。旅を続けるのが困難になるくらいのお金の消費はしないというのは意識している。

 ただ、それでも「これくらいはいいか」というのが続いてしまうと、少し懐が心許ない状況になってしまう。


 ……つまり、今がそういう状態だ。


「どこかお金を稼ぎやすそうな街で日雇いとかしてもらって足を止めるのは良しとして、しばらくは温存の時期かなぁ」


 根本的に私は旅が好きだけれども、かといって街に滞在するのが嫌というわけではない。

 人と人との繋がりを感じられるから、そういった瞬間を送ったりするのも悪くはないだろう。

 しかし、お金の消費量については別問題だ。お金がより増えるようになったから、ガンガン使うというのは街などの経済的にはよいかもしれないけれども、個人の経済的には危ういものだ。

 お金を使う感覚というのはいつだって忘れてはいけないもの。

 もし、駄目になりそうになったら旅の最中に森に入ったりして自給自足するのも考えるべきだ。


「さて、今日はどうするべきか……」


 お金を集める方向で動くか。

 それとも、のんびり旅を続けることを意識するか。

 経済的な面を考えるなら、前者の方が間違いのない選択だろう。

 しかし……


「まだ慌てる時じゃないし、旅をしながら考えよう」


 気持ちを張りつめすぎるのもよくない。

 そう判断した私は、マイペースに次に赴く街を探していくことにした。





 しばらく街道を歩いて、街が見えてくる。

 いつも通りの流れの中で、今日の街はどこか風変りな雰囲気を漂わせていた。


「なんだか、ゴージャスって感じ?」


 街の外から見る景色は、内面に至るまで豪勢な雰囲気を感じさせる。

 キラキラした塗装が為されている街の柵。

 金色の屋根に、立派な塗装が為された家。

 そして、街を歩いている人々の服装もいくつも重なった衣類を着ていて貴族っぽい雰囲気を覚えさせられる。

 ……なんていうか、結構お金を使っちゃいそうなオーラを感じる街だ。迫力が違う。


「お金に悪そうだけど、これは……」


 街の出入り口前で腕を組んで考える。

 派手に豪華な町並み。そして、着飾った人々。

 どうやってもお金が大量消費されてしまう気がする。

 しかし、逆に考えてみたくなった。

 ……こういうところで、お金を使わない生活を送るのなら、どんな生き方になるのだろうか。


「……気になる」


 抜け道的な考え方ではあるけれども、知的好奇心が刺激される。

 こういう、本来の在り方とは違うかもしれないことを考えたりするのが私は好きだったりするのだ。

 興味が湧いてくるともう止まらない。

 町全体を見つめてみたくなってくる。


「よし、今日はこの街に入ろう」


 決心した私は、街の入口を通過し、その街の名前を知るのであった。


『ようこそ、贅沢な街へ!』


 贅沢な街。

 あえて、マイナスイメージもありそうな言葉を街の名前にしていることに私はより興味を惹かれるのであった。





「やっぱり、派手なものが多いかも?」


 こういうところでかなり変化がありそうなのは食生活だ、と思った私はレストランの通りに赴いていた。

 ショーケースに飾られている料理は、やはりいつも味わうような場所とは違う趣を感じる。

 まず、全体的に盛り付けが派手だ。

 サラダ一品を見つめてみても、品目数が多い。8つほど野菜が使われているくらいには彩り豊かだ。

 主食になる肉料理などもなかなか凄い。ミックスグリルではそれぞれのウィンナーなどのそれぞれの肉が大盛になっている。空腹時にはたまらないメニューになっていそうだ。

 パスタ料理だって、こってりと様々な具材を利用しているものが多い。素のオリーブオイルを味わうという味わい方もあるペペロンチーノに多種多様な野菜が乗せられていたりするあたり、その迫力が伝わってくる。

 もったいないような気持ちを感じさせられるほど、派手に、そしてこってりと具材を使う料理たち。まさに贅沢だ。


「値段については……うーん、ちょっと割高だけどお得なくらいかな?」


 贅沢に具材が使われているにも関わらず、値段はある一定のラインを超えないくらいの価格になっているとは感じる。

 流石に手を伸ばしにくい価格にしてしまうと、高級食になってしまうからなのかもしれないけれど、なかなかバランス感覚が取れているようにも思える。

 私がショーケースを見つめていると、隣でお店に入っていこうとするお客さんが連れている人と一緒に話している声が聞こえた。


「昨日は頑張ったからお互いにご褒美を用意するなんてどうだ?」

「さんせーい! こういう時はやっぱりちょっと贅沢したくなるよね!」

「量を食べなくてもできる贅沢っていうのもあるからな、よし、その方向で行こう」


 そういって笑顔でお店に入っていくふたり。

 その言葉を聞いて、私はお店の展示されているものを改めて確認する。

 量がないけれども贅沢できる。そういうのもあるのか。

 一通りメニューに目を通していく。


「こういうのかな? ご褒美パスタ」


 ショーケースの展示されている料理にはご褒美シリーズというタグが付けられていた。

 タグの中に書いてある文章を確認する。


『頑張ったアナタにオススメのご褒美シリーズ!』

『味わいたい味のバリュエーションを好きに選べる特別メニュー!』

『是非、満足感のあるひと時に注文をしてみてください!』


 記載された文章の下には、変更可能な具材や味わいの種類が事細かに書かれている。

 パスタのゆで加減や大きさも変えられるあたり本格的だ。


「なるほどね」


 満足感を得る手段は人それぞれ。

 そして、贅沢を堪能する方法も人によって異なるということか。

 食生活はやっぱり文化を知るのに便利だ。

 ここから離れて、色々また調べようとした時だった。

 ふと、空腹感に気が付いた。


「お金には余裕はないから」


 メニューを見つめて、もしも選ぶならばこれにするというのは決めていた。

 具材控え目のペペロンチーノ。これで行く予定だった。


「贅沢は、我慢の方向で……」


 ちょっと後ろ足を引かれる思いはあるものの、油断はしてはいけない。

 そう思った私は、お店に入って注文することにした。


「ひ、控え目ペペロンチーノをひとつ」


 椅子に座り、スタッフを呼んで、私の要望を言葉にする。

 スタッフはそんな私の様子を見て、微笑みながら言葉にする。


「じっくり外でメニューを見つめていたような気がしますがよろしいのですか?」

「うっ、それはまぁ、ええっと、お金がなくって……」


 気にはなる。贅沢なメニューは気になったりする。

 けれど、ここで折れるわけにはいかない。そう思った私は断る口実を考える。

 しかし……


「ふふっ、そんなあなたにはこんなキャンペーンがありますよ。旅人特典、贅沢挑戦チャレンジ」

「贅沢挑戦って、時間内に食べないと駄目とか?」

「違いますよ。旅人限定で格安な値段の贅沢メニューを味わえるというキャンペーンです」

「うっ、魅力的な響き。……値段は?」


 そう、値段がちょっとでも上がったら警戒してしまう。

 そんな私に対して、さらっとスタッフは言葉にした。


「控えめペペロンチーノと同じ値段で具がいっぱいな方の贅沢ペペロンチーノが味わえますね」

「……降参。贅沢ペペロンチーノをひとつ注文するね」


 これは勝てない。

 そう思った私は、甘んじて贅沢ペペロンチーノを注文することにした。

 悩みながらも決めた私の姿を見て、スタッフは笑顔で応えた。


「はい、ではしばらくお待ちを。それともうひとつ」


 私の顔に指を近づけて、スタッフははっきりと付け加える。


「贅沢はなにも悪いことだけではないのです」


 そういって、厨房に移動していくスタッフ。

 私はその一言に対してじっくり思考していくのであった。


「贅沢は悪いことだけじゃない……」


 思えばマイナスなイメージで使ってしまいがちな気がする。

 最近贅沢をしちゃったから抑えないととか、贅沢三昧はバランスを崩しそうだから控えないととか、そういう考えがないわけではない。

 プラスな感じで贅沢をするというのも時にはありなのかもしれない。


「……とりあえず、食べてみてから考えよう」


 しばらく時間が経過して、私のテーブルに贅沢ペペロンチーノが運ばれる。


「こちら、贅沢ペペロンチーノになります」

「いざ食べるってなると、すごい印象……!」


 山菜系のペペロンチーノで様々な具材が使われている。

 二種類の肉やキノコでこってりとした味わいが底上げされている中、ズッキーニはブロッコリー、キャベツなどで野菜もいっぱい取れる。

 贅沢に具材を使ったこのパスタはまさに贅沢ペペロンチーノという名前が相応しいだろう。

 様々な具材をスプーンに乗せながら、パスタを味わっていく。


「……満足感が凄い!」


 ひとつの味に留まらない、様々な風味が口に広がる。

 肉のこってりした味わい、ペペロンチーノのさっぱりした辛さの食感に、野菜が落ち着いた印象を与えてくれる。

 一口で多くの満足感を味わえるのは、なんだか贅沢な時間を味わっているのを実感させれられる。


「なるほど、贅沢の形ってこういうのもあるんだ」


 しっかり味わいながら、私は贅沢な街の在り方を少しずつ理解していくことができた。


 贅沢は悪いことだけじゃない。

 なんだか、その意味が少しずつ分かるような気がした。






「……また、ついつい商店通りまで来ちゃった」


 旅のお土産というのは街の思い出を振り返るのに便利だ。

 そう思っている私だからこそ、食事を終えたあと、ぼんやりと贅沢な街にある商店通りに来てしまうのかもしれない。


「安価でいいものがあったら買っておこうかな」


 そう思いながら売り場を歩く。

 贅沢な街の嗜好品は流石に買わない予定ではあるけれど、確認する。


「すごい、年代物のワインとかそういうのも売ってるんだ……」


 かなり値段が張るワインに、高級な豆を使っているコーヒー。

 そして、濃厚思考なチョコレートや香水なんかも売っている。

 しっかりとしたものはやっぱり値段が高く、今の私が購入するなら多分旅が続けられなくなる代物だ。


 右に左、商店通りを見つめているとなかなか手が届きにくいものが多く、悩んでしまう。

 形になる度の思い出が欲しいとはいっても、お金に悲鳴をあげさせるわけにはいかない。

 腕を組んで悩んでいる時、私に声を掛けてくる人がいた。


「おー、少女。人生に悩み中?」


 ぼさぼさの髪をした銀色の長髪の大人びた女性。身長は私より大きいくらいか。

 気さくな態度で突然話しかけられたので、私も警戒されないくらいの雰囲気で対応する。


「人生には悩んでないけど……お金に悩んでるかも」

「あー、あるある。ここって結構油断するとお金が飛んじゃう街だからねぇ」


 小さくあははと笑いながらそう言葉にする彼女。

 よくあること、みたいな印象を感じさせられる。


「あなたは?」

「あたし? イータっていうんだ。てきとーに暮らすのを意識してるここの街の住民よ」

「私はリベラ・マギアロア。ちょっと旅のお土産に悩んでたんだ」

「なるほどねぇ、お土産か……そりゃあ、ここで探すのはちょっと大変かもしれないね」


 手を広げて彼女……イータが言葉にする。


「ここは超贅沢通り。お金持ちが集まる豪勢な場所だからね」

「お金持ちが集まる……」


 その言葉を聞いて、改めて集まっているお客さんを見つめていく。

 みんな身なりが高貴な感じだ。宝石が散りばめられた服を着てたりすることも多い。

 取引しているお金も凄い額のものが多い。


「ちょっと旅人向きじゃない感じかな」

「そういうこと、旅人さん向けの通りはしっかりあるからあたしについてきて」

「ありがとう、イータ」

「ふふっ、あたしたちは嫌な気持ちにさせたくないからね」


 すぐに移動していくイータについていき、私は後ろから歩いていく。

 ふと気になったことを、聞いてみたくなったので問いかけてみる。


「贅沢な町って、歩き方間違えると大変?」

「そだねー、旅人によってはぼったくりだーって言ってくることもある」

「でも、街それぞれの文化っていうのもあるから、少し自己責任な気もするけど……」

「ふふふ、その認識は甘いかもよ? 油断してたらあの超贅沢通りでキミだって高い買い物をしていたかもしれないよ」

「お得感を引き出されて?」

「その通り。油断は禁物な街なんだ」

「ちょっと怖いね……」


 それこそ旅人料金というのを引き合いに出される可能性もある。

 ペペロンチーノの時は相互に納得がいく形でうまく取引できたけれど、そうでない取引になった時は後の感情が大変だ。

 街のことを思い出した時に、嫌な思い出になったと感じたりするのはなかなか切ないし、避けたい。


「でも、だからこそあたしは提唱したいんだ。贅沢っていいことにも繋がるんだって」

「うまく付き合えば心を豊かにする、みたいな」

「よくわかってるじゃない? どっかで教えてもらった?」

「お昼に入ったお店で言われたんだ。『贅沢はなにも悪いことだけではない』って」

「いいね、そういう考えの人が増えればこの街もより一層心が豊かになるはず」


 振り向いて笑顔を見せるイータ。

 そうして、彼女は言葉を続ける。


「この街にはルールがある。他の街と同じようなやつがね」

「街の法律だよね。どんなの?」

「『贅沢は敵ではない。心に寄り添う仲間であることを理解せよ』ってやつ」

「いい法律だね」

「法律そのものはあたしも好き。だけど、もっと気軽な感じでもいいとも思ったりするんだよね」

「気軽な感じ?」

「そうそう、なんていうか、あたしが普段暮らしてるとこみたいな感じ。……ついたよ」


 イータが案内した通り。

 そこは静かな雰囲気な通りになっていた。

 表にあった超贅沢通りと違ってどこか質素さも感じさせられる。


「ここは?」

「小贅沢通り。あたしが普段いる場所だね」


 イータの姿を見つけた少女が走ってきて、声を掛けてきた。


「おねーちゃん! 今日はナッツ乗せチョコケーキが売れたよ!」

「おーよく頑張ってるじゃない? 偉いぞ」


 負けずに走ってきた少年が声を掛ける。


「おれのたっぷりきのみアクセサリーも売れたぞ! ほめろ!」

「ふふっ、着実に商人の道を歩いているぞ、凄いね」


 それぞれの頭を撫でながらイータが対応する。

 ここは子供が多いのだろうか。

 それぞれの服装の印象はそこまで豪勢な感じではない。普通の落ち着いた衣類だ。


「おっ、旅人がいるのか?」

「旅人さん! もしよかったらわたしのケーキ買ってください!」


 私に気が付いたふたりは、積極的に近づいてくる。

 怖がることなく近づいてくれるのは、とてもありがたい。


「こらこら、困らせちゃ駄目だよ?」

「ううん、私は困ってないから大丈夫」


 少女の小さなケーキ。

 そして少年の丸い木の実のアクセサリー。

 両方とも可愛らしいながらも、ちょっとだけ贅沢な印象もある。


「チョコケーキのナッツは探してきたの?」

「うん! ちょっぴりぜいたくな気持ちになってもらいたくって頑張ったの!」

「そっか、美味しそうだね」

「ママといっしょに頑張ってむいたの! 旅人さんもまんぞくできると思うの!」

「いいね、そういうの素敵。買うよ」

「やった、ありがとう!」


 ちょっとしたお金を手渡しながら、ケーキを受け取る。

 ケーキの上に散りばめられたナッツがいい感じの贅沢さを表現している。


「あっ、おれのアクセサリーも買ってくれよ!」


 そう言いながら、少年はグッと私の目の前にアクセサリーを見せてきた。

 多種多様な木の実の殻を利用した綺麗な色合いのアクセサリーになっている。

 宝石を意識しているのか、色には様々な種類がある。


「これは……ゴージャスさを意識した感じかな?」

「あぁ! ここっぽいやつにしてみた! ぜいたくな思い出っぽいだろ!」

「なるほどね……アクセサリーの飾りつけはひとりでやったのかな?」

「うっ……それはパパといっしょだった……だけどな! 木の実はおれがはっつけたぞ!」

「お父さんと仲良しなんだね。それはよかった。……うん、綺麗だし買うよ」

「ホントか! ありがとう! 旅人のおねえちゃん!」


 ふたつの小さな買い物。

 そのやりとりはなんだか心を温かくしてくれた。

 それらを買った私に対して、イータは笑顔を見せてくれた。


「あたしはこういう小さな贅沢が街を支えてくれるって信じてるんだ」

「お金を使うことだけが贅沢じゃないってこと?」

「そう。小さな頑張りを称えたり、何事もない時間を楽しんだり……そういう幸せを積み重ねることも大切なんじゃないかなぁって」

「その考え、いいと思う」

「でしょ? だから、小さな贅沢だってお友達になれると思うんだよね。仲間より軽い感覚で」

「……だったら」


 私の魔法辞典を取り出し、魔力を込めていく。

 法に介入する私の魔法。小さな注釈くらいならば、別に問題ないだろう。


「それは?」

「ちょっとしたおまじないを注釈として法に付け加えたいなって。街の在り方は変わらない。あくまで、小さな幸せも受け取れるようにね」

「どんな注釈を加えるの?」

「『また、小さな贅沢も大切な友である』っていうの」

「賛成、みんなもいいかな?」

「おもしろそう! 友達ふえるのうれしい!」

「おれもさんせい!」

「……じゃあ、行くよ!」


 魔力を込めて、願いを法に届けていく。

 街の空に魔法が届き、新しい注釈が付け加えられた。


「これで、小さな贅沢も意識されるようになるかも」

「かもってちょっといい加減じゃない?」

「どれくらい影響があるかは、ひとりひとりの行動次第だからね。いつかこの注釈も消えちゃうかもしれないし、残り続けるかもしれないから」


 法律は願い。

 きっとこれからも人々が暮らしをする上で、様々な形に変化していくだろう。

 だから、これからのことは私はわからない。


「ねぇ、リベラ。リベラは小さな贅沢は友達だと思う?」


 イータの言葉に、私はまっすぐ答える。


「大切な友達だよ。きっと、これからも一緒に悩みと向き合ったりする、ね」


 贅沢は敵じゃない。

 時に悩ませることもあるかもしれないけれど、贅沢ができるほどの心の余裕はあった方がいいだろう。

 もし、お金がないとかそういう世知辛いものがあったとしても、小さな贅沢は心を癒してくれるはずだ。

 何気ないひとときを過ごしながら、私は贅沢について考えていた。







「たまには贅沢するのもいいのかもしれないかな」


 街から抜け出し、再び旅に出る私の手にはあの木の実のアクセサリーが握られている。

 赤、黄、青。様々な色合いの木の実が飾られているアクセサリーは小さな贅沢を感じさせられる。いい思い出になった。


「よし、次の街に行こう!」


 アクセサリーを懐に戻し、小さなチョコケーキを手に持つ。

 ナッツがいっぱいのチョコケーキ。ちょっとした贅沢の味。


「自分へのご褒美とかも、忘れないようにしながらね」


 明るい気持ちを引き立たせてくれるきっかけというのはいついかなる時もあった方がいいだろう。

 贅沢は仲間で、友達なのだから。

 しっかり歩き出す前に味わうチョコケーキの味はナッツが満足感を引き立たせてくれて、今日も頑張れるという気持ちを作り出してくれた。

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