05今は取り敢えず生きていたい
本日2作目です。
色々なトラブルはあったものの、俺はとりあえず服を身につけることができた。
175cmの俺は痩せ型と言うこともあって、普段はMサイズの服を着ている。しかし今し方ゲット、いや、拝借した服はちょいとツンツルテンだ。SサイズのTシャツを着たよりも若干きつい感じがする。
「あの亡骸は子供だったのかな?」
子供がこんな深い森の中で生き物に食われて命を落とす、そんな世界にやってきてしまったことを改めて認識した。
袋の中には靴は無かったのだが、ありがたい事に大きめの布が一枚入っていた。俺はそれを半分に割き、足に巻きつけて靴がわりにした。
「よしっと、これでもうちょっと歩けそうだ」
そう、一歩踏みしめるごとに足裏に感じるさわさわと蠢く虫の感触に、俺は心を削られていたのだ。
足に布をぐるぐる巻けばもう俺に怖いもの無し。
しかも服を着ている。服がこれ程までに体と心を守っていたなんて、今までの俺は気付けなかった。
「失ってこそ物の大切さが分かるってやつだな」
俺はしみじみとそう感じながら、手はごそごそと布袋の中を漁っていた。
「なんだこれ?地図か?一応貰っておくか。
この袋の中には…、お?コインじゃん、金か?
そういえば頭が2つってことは、もう一つどこかに荷物落ちてないかな…」
自分でもこの割り切った感覚がおかしいなぁとは思うのだが、昔からゲームに親しんでいたせいか、これをドロップ品だと思うと意外と受け入れられた。
と言うか、この森に来たこと自体なんだか夢のようでイマイチ現実感がないのだ。
現実感がないから、普段しないようなもの漁りとかしちゃうと言うか…。
「あったー!やっぱりね。
こっちの荷物には何かないかなー?」
罪悪感はどこいった。そんな言葉もよぎるのだが、今は取り敢えず生きていたい。そんな思いで荷物を漁る。
こっちにもコインと地図、あとはなんと食料のようなものが見つかった。
それは日本にいた頃には見たことのない、鮮やかな紫色の干した果物のようなものだった。
「干しぶどうとか、プルーンとかじゃないんだよな?
なんだよこの、パステル紫のフルーツ…」
形はマンゴーのように楕円で手のひらサイズ、色はパステル紫、香りはりんごのよう…。それが4枚、袋にミチミチと詰められていた。
「この食料と、シャワーから出る水で…
取り敢えず数日は生きられるかな?」
俺はそう呟く。
ただ、目の前に広がる足跡や爪痕は、食料とかそう言う問題じゃないんだと俺にはっきりと告げているようだった。
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