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『転生したのに転移で地球に戻っちゃった?! しかも何故43歳?! 王国の魔法革命児 〜爆鳴の鬼と呼ばれた男Ⅱ』  作者: だい
宮司になった社畜、魔王と呼ばれだす

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第86話 プレオープン

エルフたちの居住区は、森を模して作られていた。


背の高い木々の間に、木造の家がいくつも建っている。小川が流れ、苔むした岩が転がり、木漏れ日が地面にまだらの模様を描いていた。ノピアのエルフの森とそっくりだった。


その居住区のすぐ隣に、歓楽街の建物が並んでいた。


若いエルフたちは、荷物を家に放り込むと、さっそく歓楽街の方へ駆けていった。


「ここが私たちのお店? 広い!」


「見て見て! 部屋にお風呂までついてる!」


「ベッドがふかふか! 向こうの娼館の倍はあるわよ!」


エルフたちは、建物の中を走り回って、きゃあきゃあと騒いでいた。シューメルは、その後ろを腕を組んでついて歩きながら、満足そうに頷いていた。


「ちえ、いい仕事するじゃない」


本格的な開業はまだ先だった。だがその前に、プレオープンとして、ちえが選んだ招待客たちが来ることになっていた。招待客は、開業までの間、無料でここに滞在できる。


◇


最初にやってきたのは、アメリカの銃器メーカーのエンジニアや社員たちだった。


彼らは、大きなトラックを何台も連ねてやってきた。特区のエルフの区画だけは、銃や重火器の持ち込みが特別に許可されている。トラックの荷台には、木箱がぎっしりと積まれていた。


エンジニアたちが木箱の蓋を開けた瞬間、エルフたちの目の色が変わった。


中には、最新の銃がずらりと並んでいた。拳銃、ライフル、散弾銃、それに、エルフたちが見たこともない大きな筒のようなものまである。


「何これ! 何発撃てるの!?」


「この筒みたいなの、何!?」


「全部撃っていいの!? ほんとに!?」


エルフたちは、木箱に群がって、銃を一丁ずつ手に取っては歓声を上げた。


エンジニアの一人が、少し照れくさそうに言った。


「そのライフルは、私が設計しました」


その瞬間、エルフたちの動きがぴたりと止まった。


全員が、一斉にそのエンジニアの方を振り返った。次の瞬間、エルフたちは光に包まれて、すらりとした大人の美女の姿に変わっていた。


「あんたが、これ作ったの!?」


「天才じゃない!」


「ちょっと、こっち来て。じっくり話を聞かせてもらうわ」


エンジニアは、大人の姿に化けたエルフたちに両腕を取られて、そのまま館の中へ引っぱられていった。仲間の社員たちも、それぞれ別のエルフたちに捕まって、次々と連れて行かれた。


館の扉が、ぱたんと閉まった。


◇


続いてやってきたのは、男性エルフの店の招待客たちだった。


ちえが選んだ、女性たちだった。地域の病院で何十年も働いてきた看護師や、介護の仕事を続けてきた人たち。それから、ヘルパンギーナが吹き飛ばしたアメリカの街で、家族を亡くした遺族たち。その中から、エルフとそういうことをしてみたいと自分から申し込んだ人たちが、優先して招かれていた。


女性たちは、バスを降りると、緊張した顔で固まっていた。


そこへ、大人の姿に化けた男性エルフたちが、にこやかに迎えに出てきた。どのエルフも、映画の中から抜け出してきたような美しい男たちだった。


「ようこそ。長い旅で、お疲れでしょう」


男性エルフの一人が、年配の看護師の手を取って、丁寧に頭を下げた。看護師は顔を真っ赤にして、言葉も出なかった。


女性たちは、一人、また一人と、男性エルフたちに手を引かれて、館の中へ入っていった。


シューメルは、小瓶がたくさん入った籠を抱えて、招待客たちの間を回っていた。


「はい、これ。エルフ秘伝の薬よ。地球の人用に、薄めてあるから」


「薄めて……あるんですか?」


小瓶を受け取った社員が聞くと、シューメルは肩をすくめた。


「原液だと、地球の人は死んじゃうからね。これくらいがちょうどいいのよ」


社員は、手の中の小瓶をまじまじと見つめた。


その夜、歓楽街の窓という窓に、遅くまで灯りがついていた。


翌朝、館から出てきた招待客たちは、全員が妙にツヤツヤした顔をしていた。足元はふらふらしているのに、誰もが満足そうに笑っていた。


エルフたちも、肌がつやつやだった。


「地球の人、美味しい……」


「しかも、お土産に銃までくれたのよ!」


◇


昼になると、エルフたちは射撃場に集まった。


もらった銃と、地球で使えるようになった魔法を、交互に撃ちまくる。銃声と爆発音が、ひっきりなしに響いていた。


その横で、エンジニアたちが真剣な顔で解説をしていた。


「それはオートマチックです。撃った反動で、次の弾を自動で送り込む仕組みになっています。だから、反動を上に逃がすと動きが悪くなるんです。引き金を引いた瞬間に、銃を前に突き込むつもりで構えてください。反動を受け止めることで、次の弾が確実に装填されます」


エルフは、言われた通りに構えて撃った。弾が、途切れることなく次々と飛び出していく。


「ほんとだ! 止まらない!」


ライフルを構えたエルフには、別のエンジニアが言った。


「これは、向こうの銃と違って、反動を下に逃がす機構になってます。肩への来方が全然違うはずですよ。ご自分のと撃ち比べてみてください」


エルフは、自分の四連発のリボルバーと、もらったライフルを交互に撃ち比べた。それから、目を輝かせて振り返った。


「……ほんとだ。跳ねない!」


鍛冶もやるエルフたちは、撃つだけでは満足しなかった。その場で銃を分解し始めて、エンジニアたちを質問攻めにした。


「このバネ、何でできてるの?」


「この部品、どうやって削り出してるの?」


エンジニアたちも嬉しくなって、身振り手振りで部品の一つ一つを説明していった。自分たちが作った銃を、ここまで真剣に知りたがってくれる相手は、地球にもそういなかった。


エルフたちは、部品をいじりながら、エンジニアたちの真剣な横顔をちらちらと見ていた。


そして、その夜。


エルフたちは、またエンジニアたちを館に引っぱり込んだ。


翌朝、館から出てきたエンジニアたちは、二日目にして、すでに目の下にくっきりとクマができていた。


◇


ルーメルは、エルフの区画にある鍛冶場を見に行っていた。


鍛冶場の棚には、地球の鋼材がずらりと並べられていた。ルーメルは、そのうちの一本を手に取って、光にかざした。指で弾いて、音を聞いた。


それから、目を丸くした。


「何これ……混ぜ物がほとんどない……!」


ルーメルは、次々と鋼材を手に取って確かめていった。どれも、同じように質が揃っていた。


「皇城の鍛冶場で使ってた鋼が、泥みたいに思えるわ」


隣の部屋には、薬が用意されていた。地球の薬局で売られている薬の箱がずらりと並び、その横には、漢方に使う薬草が、種類ごとに袋に分けて置かれていた。


ルーメルは、薬草を一つずつ手に取って、匂いを嗅いだ。乾かし方も、保存の仕方も、申し分なかった。


「これなら質もいいし、向こうよりよっぽどいい薬が作れるわね」


ルーメルは、嬉しそうに笑った。


◇


その頃、皇帝は一人で、区画の中を散歩していた。


観覧エリアの柵の前を通りかかった時だった。柵の向こうから、小さな女の子の声がした。


「あ! 皇帝さんだ!」


女の子は、柵から身を乗り出して、皇帝を指さしていた。


その声で、周りの人たちも気づいた。


「本当だ! ショタ皇帝だ!」


「映画、見ました!」


あっという間に、柵の前に人だかりができた。皇帝は逃げようとしたが、女の子に「握手して!」と手をつかまれて、動けなくなってしまった。


握手、写真、サイン。「映画のあのシーンで泣きました!」「ルーメルさんは一緒じゃないんですか?」。皇帝は、何が何だか分からないまま、キャーキャー言われ続けた。


結局、皇帝はそのまま半日、捕まりっぱなしだった。


夕方、皇帝が帰ってこないのを心配したルーメルが、探しにやってきた。


人だかりの真ん中で、皇帝は、柵越しに女の子を抱っこさせられたまま、固まっていた。


ルーメルは、呆れたように溜め息をついた。


「……あんた、何やってるのよ」


「ル、ルーメル……助けてくれ……」


その瞬間、人だかりから、さっきよりも大きな歓声が上がった。


「護り手のエルフだ!」


ルーメルは、額に手を当てた。

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