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『転生したのに転移で地球に戻っちゃった?! しかも何故43歳?! 王国の魔法革命児 〜爆鳴の鬼と呼ばれた男Ⅱ』  作者: だい
宮司になった社畜、魔王と呼ばれだす

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第76話 移住プロジェクト

騎士団が消えてから数日後。


コネグ領の領主館の大広間には、これからのことを話し合うために、各種族の代表が集まっていた。


人間からは、ニールとヴァルター辺境伯、それに地方の貴族たち。獣人からは、各地から逃げてきた者たちの代表。ドワーフからはエリンと、山から降りてきた一族の長。エルフからはシューメルと、森から来た一団の年長者。


大きなテーブルを囲んで、張り詰めた空気が流れていた。人間の貴族たちは青い顔で縮こまり、獣人の代表たちは、そんな人間たちを冷たい目で見ていた。ドワーフの長は腕を組んで目を閉じ、エルフの年長者は退屈そうに銃をいじっている。


ケントたちは、テーブルから少し離れた窓際に陣取っていた。レナがどこからか持ってきたティーセットを広げて、ケントと二人でのんびりお茶を飲んでいる。ミーナはケントの椅子の横に座って、尻尾をゆらゆらさせていた。


会議は、ニールの挨拶から始まった。だが、ニールが話し始めて間もなく、獣人の代表の席から、体格のいい男たちが何人か立ち上がった。


「待ってくれ。そもそも、何でここに人間がいる?」


男の一人が、ニールたちをじろりと睨んだ。


「俺たちを散々こき使ってきたのは人間だろう。これからは、俺たち獣人の国を作るんだ。人間の指図なんか受けねえ。こいつらは出て……」


そこまでだった。


男の首が、ごとりとテーブルの上に落ちた。隣にいた男たちも、何が起きたのか分からないまま、次々と床に崩れ落ちた。


いつの間にか、テーブルの脇にザラとセリーナが立っていた。ザラの大剣と、セリーナの双剣から、血が滴っている。


大広間は、水を打ったように静まり返った。残った獣人の代表たちは、椅子に座ったまま凍りついている。人間の貴族の一人は、そのまま気を失って椅子から転げ落ちた。


窓際では、レナがケントのカップに紅茶を注ぎ足していた。


「ケント様、お砂糖いります?」


「ああ、二つな」


ケントは紅茶を一口すすってから、カップを置いて立ち上がった。そして、大広間を見渡した。


「なんか勘違いしてるみたいだが、俺はお前ら獣人のお守りじゃないんだわ」


獣人の代表たちが、びくりと肩を震わせた。


「あの日、俺を守ろうとして、戦いの詩を歌ってくれた人たちには義理がある。だから助けた。けどな、ここに来て急に偉そうにしだす連中は、大嫌いだ。殴られてた奴が、殴る側に回りたいだけなら、侯爵と何が違うんだよ」


ケントは、ドワーフとエルフの席にも目を向けた。


「これは、ドワーフやエルフも同じだ。人間と一緒で、差別したい奴は出て行けよ」


エルフの年長者は銃をいじる手を止めて、肩をすくめた。ドワーフの長は目を開けて、ケントをじっと見てから、小さく頷いた。


誰も、何も言わなかった。


しばらくして、ニールがおずおずと口を開いた。


「しかし、ヴォルガン卿。今、国内は混乱の極みです」


ニールは、テーブルの上に積まれた書類に目を落とした。毎日のように増えていく、受け入れた者たちの名簿だった。


「あの力を見せられた以上、今すぐどうこうということはないでしょう。ですが、数ではやはり人間が圧倒的です。それに、ここに集まっている者は、もう十万人ほどになります」


ヴァルター辺境伯が、ニールの言葉を引き取った。


「わしの領地からも食料を運ばせておるが、それでも足りん。畑を広げようにも、この数ではな。食料のことを考えると、このままでは何年も持たんでしょう」


大広間が、再び静まり返った。


獣人の代表たちも、ドワーフもエルフも、互いに顔を見合わせた。十万人を食わせていく先のことなど、誰も考えていなかったのだ。


ケントは頭をかいた。


「あー、それについちゃ、考えはあるんだよな。さっきはああ言ったけど、投げっぱなしにするつもりはない」


「考え、と言いますと?」


ニールが身を乗り出した。大広間中の視線が、ケントに集まった。


ケントは、わざとらしく咳払いをした。それから、たっぷりと間を取ってから言った。


「地球とノキアへの、移住プロジェクトだ!」


大広間の全員が、ぽかんと口を開けた。


「……ちきゅう?」


「のきあ?」


あちこちから、聞き慣れない言葉を繰り返す声が上がった。


ドワーフの長が、低い声で聞いた。


「……そこには、酒はあるのか」


「ある。山ほどある」


ケントが即答すると、ドワーフの長は満足そうに頷いて、また目を閉じた。


エルフの年長者は、銃を置いて身を乗り出した。


「人間は多いの?」


「八十億くらいいる」


エルフたちの目が、一斉にぎらりと光った。セリーナが、窓際から冷たい声で付け加えた。


「攫ったら、その場で首を落とすわよ」


エルフたちは、そろって目を逸らした。


ケントは、呆れたように手を振った。


「いやあ、攫うどころか、お前らエルフなら順番待ちで、一晩に金貨三十枚は積む奴ばっかりじゃないかなあ。むしろ、会いたいって奴を断る方がめんどくさいわ」


エルフの年長者が、目を丸くした。


「……そうなの?」


「ちなみにな、ウチのミーナがもし彼氏募集したら、世界中から百万人は申し込みがあるね」


ミーナが、ぽかんと口を開けた。


「……嘘ですよね?」


「残念ながら、地球人ってそういうのが多いんだよ」


ザラが、腕を組んでしみじみと頷いた。


エリンが、少しそわそわした様子で身を乗り出した。


「わ、私たちはどうなんだ?」


「うーん、ボディガードの仕事は山ほどあるし、お前らみたいなのが好きな奴も多いんじゃないか? それに、真龍国って国の所属になるから、どこの国も手は出してこないしな」


ニールが、慌てて手を挙げた。


「お、お待ちください、ヴォルガン卿。その、ちきゅうという所へは、どうやって行くのですか?」


「俺たちの仲間に、世界を渡れる龍がいる。そいつと話が繋がるのが、早くて半年後だ」


ケントは、テーブルの上の名簿を指で叩いた。


「だから、その半年で準備する。誰がどこへ行くのか名簿を作って、種族ごとのすり合わせをして、向こうでどんな仕事をするかも決める。食料は、半年ならなんとか持つだろ?」


ニールとヴァルター辺境伯は顔を見合わせて、しばらく指を折って数えていたが、やがて二人そろって頷いた。


「……半年でしたら、なんとか」


ミーナが、ケントの袖をそっと引いた。


「ご主人様の故郷、ですか?」


「ああ。俺の生まれた星だ」


窓際では、レナが一人だけ、ぱちぱちと拍手をしていた。

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