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『転生したのに転移で地球に戻っちゃった?! しかも何故43歳?! 王国の魔法革命児 〜爆鳴の鬼と呼ばれた男Ⅱ』  作者: だい
宮司になった社畜、魔王と呼ばれだす

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第71話 触れ書きと、婆ちゃん

バーデン侯爵の触れは、早馬に乗って皇国中へと広がっていった。


『コネグ子爵の差し向けた刺客が、皇帝陛下に毒を盛った。陛下は今も生死の境をさまよっておられる。反逆者コネグに与する者は、皇国の敵とみなす』


コネグ領にその知らせが届いたのは、ヴァルター辺境伯たちが到着した翌日だった。皇都から逃げてきた行商人が、触れ書きの写しを握りしめて門に駆け込んできたのだ。


領主館の会議室で触れ書きを読んだニールは、真っ青になって震え出した。


「わ、私は刺客など……! 陛下に毒など、そんな……!」


ヴァルター辺境伯と一緒に来た地方貴族たちも、顔を見合わせてざわつき始めた。


「これは……まずいことになりましたな」


「陛下を手にかけたとなれば、我々はただの反逆者ではない。大逆の罪人だ」


中には、もう椅子から腰を浮かせかけている者もいた。


ケントは触れ書きをテーブルに放り出すと、鼻で笑った。


「毒盛ったの、どう見ても侯爵だろ。皇帝に真相がバレかけたその晩に毒って、分かりやすすぎるわ」


セリーナも頷いたが、すぐに顔を曇らせた。


「でも、街の人たちはそうは思わないわ。もし皇帝が死んだら、全部こっちのせいにされるわよ」


「だよなあ」


ケントは頭をかくと、窓の外に向かって声をかけた。


「スー、ちょっと皇都まで飛んで、皇帝の様子を見てきてくれ」


「えー、遠いよー」


窓辺で日向ぼっこをしていたスーが、口をとがらせた。すると、ザラが横から口を挟んだ。


「帰ってきたら、エリンたちが獲ってきた熊の一番いいとこを食わせてやるよ」


「行ってくる!」


スーは返事と同時に、窓から飛び出していった。


◇


スーが戻ってきたのは、翌日の夜だった。


テーブルの上にへたり込んだスーは、ザラが焼いてくれた熊肉にかぶりつきながら、皇都で見てきたことを話し始めた。


皇帝は生きていた。まだ熱が高くて寝込んでいるが、命は助かりそうだという。皇帝の寝室の前には近衛兵が何重にも立っていて、侯爵もその手下も、中に入れないでいるらしい。


「それでね、寝室の真ん中に、見た目が子供のエルフがいるの。銃を抱えて、ずっと皇帝の枕元に座ってたよ」


さらにスーは、皇城のメイドたちのひそひそ話も拾ってきていた。


毒を運んだメイドには、病気の妹がいたこと。その妹を、侯爵の手下に人質に取られていたこと。「お茶を運べば妹に薬をやる」と言われていたらしいこと。メイドたちはみんな薄々気づいているが、侯爵が怖くて、誰も口には出せないでいること。


話を聞き終えたセリーナが、静かにカップを置いた。


「……最低ね」


その声には、はっきりとした怒りがこもっていた。


ケントはスーの頭を指先で撫でながら聞いた。


「その皇帝のそばにいるエルフ、なんて名前だ?」


スーは熊肉を頬張ったまま答えた。


「ルーメルって呼ばれてたよ」


その瞬間、部屋の隅で果物をかじっていたシューメルが、盛大にむせた。


「げほっ、げほっ……! る、ルーメル!? 婆ちゃん!?」


部屋にいた全員が、一斉にシューメルを見た。


「……お前の婆ちゃん?」


ケントが聞くと、シューメルは真っ赤な顔で頷いた。


「先代の皇帝に気に入られて、宮廷でお抱えの鍛冶をやってるって聞いてたけど……まさか、まだいたなんて……」


レナが首を傾げた。


「おばあちゃんも、子供の見た目なんですかぁ?」


「当たり前でしょ、エルフなんだから」


シューメルが口をとがらせると、ザラが腹を抱えて笑った。


「エルフの家族ってのは、絵面がややこしいねえ」


ケントは顎をさすりながら、しばらく考え込んでいた。


「……つまり、皇帝の命を握ってるのは、シューメルの婆ちゃんってことか。こいつは使えるかもしれねえな」


シューメルは、心底嫌そうな顔をした。


「婆ちゃん、すっごく怖いのよ? 私、子供の頃に森で人間を攫いそこねて、婆ちゃんに一晩中木から吊るされたことあるんだから」


「……攫いそこねたことを怒られたのか?」


「そうよ。『やるならちゃんとやりなさい』って」


ケントたちは、黙って顔を見合わせた。


いや、まず攫うなよ…


というか、エルフたちになら、たいていの男は、誘われたら自分からホイホイついて行くだろうに。

と顔に出てるケントの顔をじっと見てる女性陣だった。


◇


同じ頃、皇都のバーデン侯爵の屋敷。


侯爵は苛立たしげに、部屋の中を行ったり来たりしていた。


皇帝は死ななかった。しかも、あの忌々しいエルフのせいで、寝室に近づくことすらできない。このまま皇帝が目を覚ませば、メイドの妹のことも、皇都に流してきた獣人の娘たちのことも、何もかもが明るみに出てしまう。


侯爵はぴたりと足を止めると、机の引き出しから小さな箱を取り出した。


蓋を開けると、中には皇帝の玉璽が収められていた。皇帝が倒れた夜の混乱に紛れて、侯爵が密かに持ち出していたものだった。


侯爵は白紙の勅書を机に広げると、口元を歪めた。


「陛下は、反逆者を討てとご命じになった。……そういうことにすればよい」


侯爵は勅書に、皇帝の玉璽をゆっくりと押し当てた。

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