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『転生したのに転移で地球に戻っちゃった?! しかも何故43歳?! 王国の魔法革命児 〜爆鳴の鬼と呼ばれた男Ⅱ』  作者: だい
宮司になった社畜、魔王と呼ばれだす

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第70話 集う者たちと、皇城の毒

放送から五日が経った。


コネグ領の街の門の前には、毎日のように長い行列ができていた。


最初にやってきたのは、近くの村々の獣人たちだった。荷車に家財道具を積み、子供の手を引いた家族が、何十組も門をくぐってくる。中には、主人の家から逃げてきたのか、首輪をつけたまま着の身着のままで駆け込んでくる者もいた。


門の脇では、ナルとネルがほかの獣人たちと一緒に、大鍋で作った温かいスープを配っていた。ナルは門をくぐってくる一人一人に、「もう大丈夫ですからね」と声をかけている。


三日目の夕方、門番をしていた獣人の衛兵が、真っ青な顔で領主館に駆け込んできた。


「ド、ドワーフが……! 山から、ドワーフの群れが降りてきました!」


ケントたちが門に駆けつけると、そこには二メートルを超える筋肉の塊が、二十人ほどずらりと並んでいた。男たちはみんな頭をつるりと剃り上げ、岩のような筋肉で体が膨れ上がっている。女たちも、エリンと変わらないくらいの大女ばかりだった。


ドワーフたちは担いできた大熊や大猪を、門の前にどさどさと放り出した。


先頭に立っていた男が、腕を組んでケントを見下ろした。


「エリンはどこだ」


ケントが答える前に、後ろからエリンが出てきた。男はエリンを見ると、ニヤリと笑った。


「お前が人間に飼われたと聞いて、ぶん殴りに来た」


「飼われてなどいない。ここの連中は面白いぞ」


エリンは顎で、ケントの隣にいたザラを指した。


「特に、あの女だ」


ドワーフたちの目が、一斉にぎらりと光った。ザラは肩をぐるぐると回しながら、嬉しそうに前に出た。


「何人まとめてでもいいよ!」


結局その日は、日が暮れるまで門の前で殴り合いが続いた。最後は敵も味方もなく地面にひっくり返って、そのまま門の前で酒盛りになった。


「……門番の仕事にならねえな」


ケントがぼやくと、セリーナが「楽しそうだからいいじゃない」と笑った。


四日目には、森からエルフたちがやってきた。


見た目は子供ばかりの一団だった。全員が腰にリボルバーを下げ、背中には大きな荷物を背負っている。


迎えに出た獣人の衛兵が、緊張した顔で声をかけた。


「あの、街に入る前に、武器をお預かりして……」


その途端、先頭のエルフがにっこり笑って、衛兵の眉間に銃口を向けた。


「やだ」


衛兵が固まったところへ、シューメルが慌てて飛んできた。


「あ、あの子たちは大丈夫だから! 撃たれなきゃ撃たないから! たぶん!」


「たぶんって何だよ」


ケントは頭を抱えてから、エルフたちに向き直った。


「いいか。街の中で他種族を攫うのだけは禁止な。……合意なら、まあ……」


最後の方だけ、急に声が小さくなった。セリーナが横から冷たい目でケントを見た。


そして五日目。今度は、馬車の列がやってきた。


先頭の馬車から降りてきたのは、放送を聞いて窓枠を握りしめていた、あの白髪の老伯爵だった。後ろの馬車からも、ほかに数人の地方貴族が降りてくる。


さらにその後ろには、幌馬車や荷馬車が長い列をなして続いていた。幌がめくられると、中から獣人たちが次々と降りてきた。それぞれの領で匿われていた者や、侯爵の目を逃れて隠れていた者たちだった。


老伯爵は、出迎えたニールの前まで杖をついて歩いてくると、深々と頭を下げた。


「辺境伯のヴァルターと申す。コネグ殿、よく言ってくれた」


「へ、辺境伯閣下!? お、おやめください!」


ニールが慌てて頭を上げさせようとしたが、ヴァルターは頭を下げたまま続けた。


「わしらは皆、侯爵のやり方に腹を据えかねておった。だから、こっそり獣人たちを匿うくらいのことはしてきた。だが、表で声を上げる勇気だけは、どうしても出なかった。……若いお主に、先を越されてしもうたわ」


顔を上げたヴァルターの目は、少し潤んでいた。


少し離れてその様子を見ていたケントは、ニールのそばに歩み寄って、その背中をばんと叩いた。


「ほらな。アンタと同じこと思ってた奴、ちゃんといただろ?」


ニールは何も言えずに、ただ何度も頷いた。


門の前には、獣人とドワーフとエルフ、そして人間の貴族たちが入り混じって集まっていた。セリーナがその光景を眺めながら呟いた。


「たった五日で、ずいぶん賑やかになったわね」


「まだまだ増えるぞ。期限は来月一杯だからな」


ケントはそう言って笑った。


◇


時は戻って、放送があった日の夜。


皇城の謁見の間で、皇帝に問われたバーデン侯爵は、すぐに表情を取り繕っていた。


「陛下、すべて反逆者のでっち上げにございます。あのような者の言葉に惑わされてはなりません」


侯爵は穏やかな笑みを浮かべて、皇帝に一礼した。


「お疲れでしょう。温かいお茶でもお飲みになって、今夜はゆっくりお休みください」


侯爵が下がると、入れ替わりに若いメイドが、銀の盆にお茶を載せて入ってきた。盆を持つ手が、かすかに震えている。


皇帝はぼんやりとしたままカップを受け取り、一口飲んだ。


次の瞬間、皇帝の手からカップが滑り落ちた。


床で陶器が割れる音が響き、皇帝は胸を押さえて玉座から崩れ落ちた。


「へ、陛下……!?」


メイドが悲鳴を上げた。その時、扉の陰で待っていたバーデン侯爵が飛び込んできて、剣を抜くなり、メイドを斬り捨てた。


「おのれ、コネグの差し向けた刺客か!」


床に倒れたメイドは、何かを言おうとして侯爵を見上げたが、そのまま動かなくなった。


侯爵は、騒ぎを聞いて駆けつけてきた近衛兵たちに向かって叫んだ。


「陛下が毒を盛られた! 私の医者を呼べ、すぐにだ!」


だが、近衛兵たちが走り出すより早く、謁見の間に小さな人影が飛び込んできた。


見た目は十二歳くらいの、エルフの少女だった。腰にはリボルバーを下げ、肩からは薬草の匂いがする革の袋を提げている。その日は、亡き前皇帝の剣の手入れのために、たまたま皇城に呼ばれていた、前皇帝お抱えの鍛冶兼薬師だった。


「ルーメル様!」


近衛兵の一人が声を上げた。エルフは返事もせずに皇帝のそばに膝をつくと、その口元に顔を寄せて匂いを嗅ぎ、顔をしかめた。


「……灰毒草ね。人間って本当に、こういうのが好きよね」


ルーメルは腰の袋から小瓶を取り出すと、皇帝の口をこじ開けて、中身を流し込んだ。


「何をする! 下がれ、亜人風情が!」


侯爵が剣を向けて詰め寄ったが、ルーメルは振り向きもしなかった。皇帝の顎を片手で支えたまま、もう片方の手でリボルバーを抜き、銃口をぴたりと侯爵の眉間に向けた。


「黙ってて。前の皇帝には恩があるの。この子を死なせたら、あの人に顔向けできないわ」


侯爵は剣を握ったまま、その場で動けなくなった。


しばらくして、皇帝がひゅうひゅうと苦しそうな息をしながら、かろうじて息を吹き返した。ルーメルは額の汗を袖で拭うと、周りの近衛兵たちに言った。


「命は繋いだけど、まだ分からないわよ。今夜が山ね」


ルーメルは、リボルバーの銃口を侯爵に向けたまま続けた。


「それと、私がこの子を見てる間は、誰も近づけないで。特に、そこの侯爵様の医者はね」


近衛兵たちは顔を見合わせると、黙って皇帝とルーメルを囲むように立った。


侯爵は剣を握ったまま、ぎりりと奥歯を噛みしめた。そして近衛兵たちに背を向けると、謁見の間を出たところで、待たせていた部下に低い声で命じた。


「……皇都中に触れを出せ。コネグの刺客が、陛下に毒を盛ったとな」


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