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『転生したのに転移で地球に戻っちゃった?! しかも何故43歳?! 王国の魔法革命児 〜爆鳴の鬼と呼ばれた男Ⅱ』  作者: だい
宮司になった社畜、魔王と呼ばれだす

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第66話:エルフとは戦うな

ホテルに戻ると、裏庭の方から、ものすごい金属音が響いてきた。


覗いてみると、ザラとドワーフのエリンが、大剣と大槌を打ち合わせて本気の立ち合いをしていた。二メートルを優に超えるエリンの一撃を、ザラが歯を見せて笑いながら受け止めている。地面が揺れるたびに、見物していた獣人の子供たちが歓声を上げていた。


「アンタ、なかなか強いじゃないか! 面白いね!」


「お前こそ、人間にしてはやるな!」


最後は二人とも同時に武器を取り落として、地面にひっくり返った。そのまま空を見上げて、声を揃えて大笑いしている。いつの間にか、すっかり意気投合したらしかった。


「……仲良くなるの早えな、あいつら」


ケントが呆れて呟くと、隣のセリーナがくすりと笑った。


「ザラは、殴り合った相手とはすぐ仲良くなるもの。あなたの時もそうだったでしょう?」


「俺の時は、あいつが白目剥いてぶっ倒れただけだぞ」


一方、ロビーの隅では、レナとエルフのシューメルが顔を寄せ合って、何やらコソコソと話し込んでいた。子供の姿のシューメルが何か耳打ちするたびに、レナが「えぇー!?」「それはすごいですねぇ」と目を輝かせている。


ケントが通りかかると、二人はぴたりと口を閉じて、揃ってニッコリ笑った。


「なんだよ」


「なんでもないですよぉ、ケント様」


ケントは嫌な予感がしたが、ミーナのことや特区のことで頭がいっぱいで、深くは考えなかった。


◇


日が暮れてから、見張りを白竜と交代したスーが、ケントの部屋に戻ってきた。


「ミーナ、さっき少しだけ目を覚ましてたよ。水を飲んで、またすぐ寝ちゃったけど」


「そうか。熱は?」


「まだ高い。でも、なんだか体の形が少しずつ変わってきてるみたい。ナルが言ってた通りなら、明日か明後日には終わると思う」


「……分かった。ありがとな、スー」


ケントはほっとして、スーの頭を指先で撫でた。


◇


その夜は、レナと床を共にする番の日だった。


ケントがベッドに入ってしばらくすると、毛布の端から、小さな影がもぞもぞと潜り込んできた。顔を出したのは、子供の姿のシューメルだった。


「何やってるんだよ! 子供は自分の部屋で寝ろ!」


ケントが慌てて追い出そうとすると、反対側からレナが顔を出して、シューメルとニヤリと目を合わせた。


「ケント様、この子これでも百八十歳なんですよ」


「百八十歳いいい!? その見た目で!?」


「言ったでしょ、私の方がずっと年上だって」


シューメルはつまらなそうに口をとがらせた。


「それに、『お礼はしてあげる』とも言ったわよね。……で、あなた、どういうのが好みなんだっけ?」


ケントが答える前に、シューメルの体がふわりと淡い光に包まれた。光が消えると、そこにいたのは、長い髪にすらりと伸びた手足をした、細身で大人のエルフの美女だった。


「エルフはスレンダー美人しか認めない派閥、だったかしら?」


「なっ……!?」


大人の姿になったシューメルは、ケントの首元に顔を寄せて、すうっと息を吸い込んだ。


「……あなた、すごく良い匂いがするわ」


そしてケントは、生まれて初めての夜を過ごすことになった。


◇


翌朝。


食堂に現れたケントは、げっそりとやつれていた。目の下は落ちくぼみ、足元もおぼつかない。壁に手をつきながら、ようやくテーブルまでたどり着いた。


「……どうしたんだい旦那? そんな疲れた顔、戦でも見たことないよ!?」


「大丈夫なの、ケント!?」


ザラとセリーナが慌てて駆け寄ったが、ケントは焦点の合わない目のまま、二人の肩にぽんと手を置いた。


「ザラ、セリーナ……これだけは言っておく」


「な、なんだい」


「エルフとは戦うな。勝てん」


そう言い残すと、ケントは朝飯に手もつけずに、ふらふらと部屋へ戻っていった。


呆然とその背中を見送るザラとセリーナの後ろで、朝飯のパンをかじっていたエリンが、のんびりと言った。


「ああ……あのエルフに『可愛がられた』んだな」


「可愛がられた?」


首を傾げる二人に、エリンはパンを飲み込んでから説明した。


エルフという種族は、自分たちだけではほとんど数が増えない。だから他の種族と交わって子を残すし、交わること自体が、エルフにとっては食事のようなものなのだという。


普段は子供のような姿をしているが、それは相手を選ばないための姿で、いざとなれば相手が一番好む姿に化けることができる。


大人のエルフにも、人間の美女にも、それこそドワーフの美女にもなれるらしい。


「見た目の良いゴブリンみたいなものだ。本人たちに言ったら殺されるがな」


そのうえで、エルフの交わり方には三つの段階があるのだという。一つ目は、種族の本能を満たすためだけのもの。


二つ目は、本能を満たしつつ、相手にも満足を与えるもの。


そして三つ目が『可愛がる』だった。これはエルフが相手に本気で好意を持ち、その匂いを心から良いと感じた時にしか起きない。

ほとんどエルフ同士の間でしか聞かない話で、人間相手にそうなったという話は、エリンも見たことはないらしい。


「長く生きて、経験も山ほど積んだエルフに本気で可愛がられるんだ。人間には、とてつもない経験だと言われている。……つまりお前たちの旦那は、あのエルフにえらく気に入られたということだ」


セリーナはしばらく黙っていたが、やがて恐る恐る聞いた。


「……ちなみに、レナは?」


エリンは肩をすくめた。


「スパイスのつもりで引き入れたんじゃないか、まだ起きてこないがな」


一拍置いて、ザラがテーブルを叩いて爆笑した。笑いすぎて椅子から転げ落ちそうになっている。


その隣で、セリーナは額を押さえて、がっくりと肩を落とした。


「……また増えるの……」

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