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『転生したのに転移で地球に戻っちゃった?! しかも何故43歳?! 王国の魔法革命児 〜爆鳴の鬼と呼ばれた男Ⅱ』  作者: だい
宮司になった社畜、魔王と呼ばれだす

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第59話 『戦いの詩』と立ち上がる獣たち

広場に転がり、細かく手足を斬り飛ばされた傭兵たちが苦痛の喘ぎを漏らしている。その横で、セリーナは恐怖に震えていた異種族の女性たちの鎖を、手際よく双剣で切り払っていた。


「……しゃあねえな。ザラ、そっち介錯してやってくれ。俺はコッチやるわ」

「はいよ、旦那」


ケントとザラは無感情に刀身を振り下ろし、路上に転がる傭兵たちの首を容赦なく刎ねていく。


敵の戦力を殲滅し、後腐れなく処理するのは、ケントたちにとって当然の「後始末」に過ぎなかった。だが——この惨劇の渦中にいた獣人たちにとって、その光景が意味するものはまるで違っていた。


自分たちを「もの」ではなく優しく扱ってくれる奇妙な人間は、過去にいたかもしれない。

だが、圧倒的な武力を振るい、領主の威光すら踏みにじって自分たちのために手を引き、害なす者を血祭りに上げてくれた人間など、この世界の歴史において皆無だったのだ。


血の匂いが漂う広場の片隅で、鎖から解放された犬耳の女性の一人が、天を仰いで胸を絞り出すような遠吠えを上げた。


「ウォー―――ンッ……!」


その高い咆哮に応じるように、周囲にいた猫耳の者たちが喉を鳴らして低く唸り声を上げ、ウサギ耳の者たちが足枷の響く地面を強く叩いてリズムを打ち鳴らし始める。


「な、なんだ……!?」


ケントたちが眉をひそめた瞬間、その「鳴動」は広場だけに留まらず、街の路地裏や路地、はるか遠くの貧民街へまで波紋のように広がり、街全体を包み込む大合唱となって響き渡った。


「ご、ご主人様! マズいですッ!」


ミーナが耳をペタリと伏せ、顔を青くしてケントの服を引っ張った。


「なしたの、コレ……?」

「獣人たちが……『戦いの詩』を歌っています!」

「なんだよそれ?」

「命が尽きると分かっていても、最後の最後まで敵に噛み付けと歌う、獣人が戦場で歌う最後の詩です!」

「は? なんで今それが流れてんだよ?」

「さっきの件が、遠吠えの伝言で街中に伝わっちゃったんです!『あの人間たちは領主様に逆らったから、どうせ明日殺される。なら、あの人たちだけで死なせるな、一緒に戦え』って……!」


ミーナの説明を聞き、ケントは呆れたように頭を抱えた。


「……なんだよそれ。バカヤロウたちが」


ケントは深く溜め息をつくと、上空へ向けて頭上遥か高い位置に圧縮した爆鳴気を生成し、一気に炸裂させる。


ドッッッッッカァァァァァンッッ!!!


鼓膜を揺るがす空砲のような大爆音が街全体を打ち叩き、鳴り響いていた遠吠えと足踏みが、一瞬でピタリと止まった。静寂が街を支配する。


「スー、この街全体に声って届けられるか?」

「えー? もう少し魔力との調整に時間がかかるから、今はムリ――!」

「お前はどうだ、白竜」


ケントの視線の先で、手のひらサイズの白竜がフワフワと浮いていた。


「んー? あのねー、おいらにそんな大層なことができるかと言われると――グエッ!?」


白竜の言葉が終わるより早く、レナがその小さな胴体を鷲掴みにし、ミチミチと音を立ててギリギリと締め上げた。


「おい。お前、役に立たないなら黒焼きにして粉末にして、胃薬にでもしてやろうか? ん?」

「ひ、ひぃぃッ! 我は偉大なる真龍の眷属なり! そのようなことは造作もないわぁぁッ!」


涙目で叫んだ白竜の身から光の波紋が広がり、ケントの声を街全体へと増幅・拡散する準備が整った。


ケントは喉を整え、街の空へ向かって声を張った。


『——街の獣人に告ぐ。俺はコネグとやらくらいに負けん。だから早まるな。俺たちはマゼンタホテルにいる。ちゃんと遇してもらってる奴隷をどうこうする気は俺にはない。だが、不当に奴隷にされた者、今不当な扱いを受けている者はホテルまで来い。ノキア王国「ケント・フォン・ヴォルガン伯爵」の名において、この国で決められている法を守らせてやる』


言い切り、魔法の通信を切る。横で見上げていたミーナが、微妙な表情で呟いた。


「ご主人様……伯爵って……」

「ん? ああ、もうやめてきたけどなw」


ケントは悪びれもせずニッと笑うと、気を取り直して歩き出した。


「さて……まずはあの犬耳のアンタ…ナルだっけ?の娘が売られたっていう商会へ向かうか」


連れていかれた先は、街のメインストリートから一本外れた場所に構える、表向きはごく普通の貿易商会だった。だが、裏では違法奴隷の売買を行っている闇の拠点だという。


重厚な木製扉を押し開けて入ると、奥からいかにも愛想の良さそうな、揉み手をした番頭の男が出てきた。


「いらっしゃいませ。何かお探しで——」

「違法奴隷。子供の犬獣人はいないか?」


ケントのストレートすぎる問いかけに、番頭は白々しく首を傾げた。


「はて……? 奴隷商会でしたら、この先の通りに——ギヤアアアアッ!?」


言い終わる前に、ケントは無表情で腰のナイフを番頭の腹へ深々と突き立てた。


「いや、そういう白々しいの要らないから。さっさと出さないなら、全員殺してから探すけど?」


「な、生意気な餓鬼が! 出会え、出会えぇッ!」


番頭が血を吐きながら叫ぶと、奧の扉から武器を構えた強面の護衛たちが一斉になだれ込んできた。


「狭いからなぁ、たまには素手にすっか!」


ザラとレナが空間収納から『鋲付きの鉄グローブ』を取り出して拳に装着し、前衛へ躍り出る。

次の瞬間、狭い店内に生々しい打撃音が響き渡った。


ゴカッ! グシャッ!!


「ぐえぇっ!?」


ザラの一撃を受けた護衛の顔面が平坦に陥没し、レナの振るった鉄拳が男の頭蓋を打ち砕いて目玉を飛び出させる。


「狭いからたまには素手にしましたけど、結構グロいですねぇ」

「お前がいつも作ってる死体より人間に見える分、良いだろ」


転がる惨劇の山を背に、ザラとレナが暢気に会話を交わす。その間に、店内を捜索していたセリーナが壁の一部を叩いた。


「ケント、この男、ここを気にして見てたわよ」


そこには、精巧に隠された隠し戸が存在していた。


ギィ……と戸を開け、暗い地下階段を下りていくケントたち。地下室の鉄格子の中には、数人の囚われた人々が固まっていた。


そこにいたのは——小さな犬獣人の女の子と、十二歳くらいの耳が尖った可憐な少女。そして、二メートルを優に超え、ザラよりも遥かに巨大で筋肉隆々の大柄な女性だった。


ケントは目を輝かせ、指を指して叫んだ。


「エルフの子供とオーガだ!!」


「「誰が子供(オーガ)よ!!」」


鉄格子の奥から、ハモった怒声が飛んできた。


「え? 違うの!?」


「私たちエルフはみんなこの姿よ! こんなことも知らないなんて、とんだ田舎者ね!」


「はあ!? 私はドワーフだ! あんな知性のない魔物と一緒にするな!」


「ドワーフぅぅ!?」


地球の「背が低くて髭の生えたおじさん」というドワーフ知識しかないケントたちは、目の前の超大型筋肉美女を見上げて呆然とした。


とりあえずケントが檻の鍵を爆破して破壊し、中にいた犬獣人の少女を外へ引っ張り出す。


「ネル……! ネルぅぅッ!」

「お母さん……! お母さんッ!」


抱き合ってボロボロと大涙を流す母娘の姿に、ケントたちも「よかったなぁ……」ともらい泣きした。


続いて、外に出されたエルフの少女が腕を組んでケントを見上げた。


「ほら、お前もどこへでも行っていいぞ」


「バカね! こんなところで自由にされたって、またすぐ人狩りに捕まるに決まってるでしょ! ちゃんと安全な場所まで連れて行きなさいよ、お礼はしてあげるから!」


「……めんどくせえ」


ケントが吐き捨て、隣で不機嫌そうに腕を組んで座り込んでいるドワーフの女性に視線を向けた。


「お前はどうするんだ?」


「私は勝負に負けてここに繋がれているのだ。武人の約束は約束。勝手にここから出るわけにはいかん」


「だって、上の奴らは全員死んだぞ?」


「……ならば仕方ない。ここで餓死して朽ち果てるまでだ」


頑固すぎるドワーフの言葉に、ケントたちはひそひそと緊急会議を始めた。


「めんどくせえから放っておこうぜ」


「でも、ここで餓死させるのは流石に寝覚めが悪いわよ?」


「せっかく助け出したんだしねぇ」


「あの人、奴隷の魔法陣も刻まれてない普通の捕虜ですよ……」


ケントたちが悩んでいると、ふとレナがドワーフの女性へ歩み寄った。


「ねえねえ、アナタ?」


「うん? なんだ——グアッ!?」


ドゴォッ!!と鈍い重低音が地下室に響いた。

レナが空間収納から取り出した『持ち運び用30キロのサンドバッグ』を、持ち前の怪力でフルスイングし、ドワーフの頭部へ叩き込んだのだ。


ドスと倒れ、白目を剥いて気絶するドワーフの巨体。


「さ、運んで広場にでも捨てときましょ」


「……お前、相変わらず容赦ねえな」


ケントは呆れつつも、気絶したドワーフの巨体とエルフの少女を連れ、地下室を後にした。


表へ出ると、先ほど助けた犬耳の親子だけでなく、傭兵グループから解放した獣人たちが、ゾロゾロとケントたちの後ろをついてくる。


「ん? なんでお前らついてきてんの?」


「そりゃあんなに熱烈に『助けてやる』なんて言ったら、ついてくるに決まってるだろ旦那」


「まあ、生活の目途が立つまでは仕方ないわよ……まったくもう、ケント君は昔から…」


セリーナがやれやれと首を振る中、一行は気絶したドワーフを担ぎながら、滞在先のマゼンタホテルへと戻っていった。


そして——ホテルの前に辿り着いた瞬間、ケントたちは言葉を失った。


ホテルの前の大通りを埋め尽くしていたのは、先ほどの演説を聞きつけ、藁にもすがる思いで集まってきた、街中の不当な扱いを受ける『驚くべき数の獣人たち』の群れだったのだから。

『原作で心を壊されて退場するモブに転生したけど、推しのメイドがクソ女だったし、作者の設定がガバガバなので好きに魔法いじって好きに生きる ~ショボい魔法しかないと笑った連中、全員ザマァ~』

https://ncode.syosetu.com/n7080mv/


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