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『転生したのに転移で地球に戻っちゃった?! しかも何故43歳?! 王国の魔法革命児 〜爆鳴の鬼と呼ばれた男Ⅱ』  作者: だい
宮司になった社畜、魔王と呼ばれだす

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第55話 ノピアへの不時着と「にゃ?」

「……で? ここは一体どこなんだよ」


見渡す限りの見覚えがない乾燥した街道のど真ん中で、ケントは額を押さえながら低く唸った。

その視線の先にいるのは、先ほどケントたちを唐突な空間跳躍に巻き込んだ張本人――白く光る鱗を身に纏った、生まれたばかりの幼い竜である。


竜は首を傾げ、どこか他人事のようなつぶらな瞳でケントを見つめ返すと、テキトーに呟いた。


「んー? ノピアー?」

「……ノピア、ねえ」


知能も意識もまだ出来上がっていないような、あまりにもいい加減な返答。

どこからどう見ても、自分たちがどこに飛んだのかすら正確に把握していない顔だった。


ケントをはじめ、セリーナ、ザラ、レナ、そしてケントの肩に乗っていたスーの全員の目が、冷ややかな殺意で一瞬だけ細められる。


(((((……ヘルのポンコツトカゲ野郎!!)))))


言葉には出さずとも、5人と一匹の心が完全に一つになった瞬間だった。

だが、この幼い白竜を叩き潰しても、何も解決するわけでもない。ケントは深いため息を吐くと、パンと手を打った。


「はぁ……まあいい。とりあえず現状の確認だ。魔法や身体の動きに異常がないか確かめるぞ」


そう言ってケントは、手のひらを前方へ向け、初歩的な火炎魔法を放とうとした。

――しかし。


ボッ、と小さな火花が散った瞬間、その炎は空気に溶け込むように霧散し、そのまま跡形もなく消え去ってしまった。


「……不発か? いや、魔法自体は出てるんだが……」


ケントの首傾げに応じるように、肩の上でスーが静かに告げる。


『ケント、ここは魔素が不自然なほど濃い。外に向かって魔法を放っても、空気中の魔素にぶつかって一瞬で拡散してしまう。身体の内部か、直接触れている距離じゃないと魔法が通らない状態になっている』

「なるほど、魔素が濃すぎて魔法が拡散するのか……」


ザラが自身の身体強化魔法を起動させてみる。全身を包む微かな力強い光は、何の問題もなく輝いていた。


「内側を強化する身体強化なら問題なさそうだな」

「大気がドロドロだから魔法が遠くまで飛んでいかないってことか。だが……座標指定ならどうだ?」


ケントは意識を集中させ、数メートル先の空間――何もない空気の『座標』を直接指定する。

瞬間、空気抵抗を無視して指定座標に小規模な衝撃波が直接出現し、鋭く弾けた。


「……よし、やっぱり座標指定なら使えたわ。魔力の中を進むのがきついだけで、直接位置を指定して出現させる魔法なら問題ない」

「なら私にも問題ないわね。座標指定なら使えるわ」


セリーナが何でもないことのように頷く。


「アタシも大まかな位置を指定するくらいならできるぞ」


ザラも腕を組みながら言った。二人とも座標指定の感覚をすでに掴んでいる。

そんな中、一人だけ顔を引きつらせていたのはレナだった。


「……うげぇ。あたし座標指定の練習サボってたんだけど……これはマジで渋々練習しないとダメなやつじゃん……」


不満そうにぶつぶつと文句を言うレナを横目に、ケントはスーを見上げた。


「スー、上空めいっぱいまで上がってくれ。どこかに街や人里がないか確かめたい」


スーは了解して即座に空中高く舞い上がり、周囲を一回視したのち、素早くケントの元へと戻ってきた。


『街道の向こうで、馬車が山賊に襲われてるわ!』

「襲撃か……」

「馬車ってことは、助けたら街の場所とか情報をもらえるんじゃないかしら?」


セリーナの発案に、ケントも即座に頷いた。


「よし、向かうぞ!」


身体強化で脚力を底上げした一行は、街道を爆走した。

ものの数分で現場に到着する。


――しかし。


「……チッ、全滅じゃねえか」


現場に辿り着いた時には、すでに勝負は決していた。

豪華な馬車は倒され、周囲には護衛や商人の死体が転がっている。そして、その遺品や荷物を楽しそうに漁っている粗暴な山賊どもがいた。


せっかくの情報源を潰されたことに、ケントの額にピキリと青筋が浮かぶ。


「……チッ! お前ら、面倒を増やしてくれやがって……!」


ケントは思考より先に座標を指定した。山賊の一人の『体内』へ直接、爆鳴気を発生させる。


ドンッ!と重苦しい破裂音が内部から響き、山賊が血を吐いて崩れ落ちた。防具も皮肉も関係なく、内側から直接粉砕する容赦のない一撃。


「ハァッ!」

「死ねぇ!」


続いてザラが身の丈ほどもある大剣を横一文字に振るい、二人まとめて胴体から真っ二つに切り裂く。レナもまた巨大なメイスを叩きつけ、山賊の頭蓋骨を木っ端微塵に粉砕した。


一瞬にして血の海と化す襲撃現場。生き残った数人の山賊が「ひ、ひぇぇ!?」と悲鳴を上げたその時――。


「ちょっと! みんなやめなさーーーーーい!!」


セリーナの叫びが響き渡った。

血煙の中でケントたちが手を止め、振り返る。


「なんだよセリーナ、助けるのか?」

「あなたたち、どっちが町かとか、ノピアってどこか、ノキアって知ってるかとか情報取ってから殺して!」

「「「あッ!」」」


怒りに任せて全滅させかけるところだった三人(と一匹)は、間抜けな声を上げた。


その後は早かった。

恐怖で腰を抜かしていた山賊の生き残り数名を縛り上げ、手際よく取り調べを開始する。


「ひ、ひぃぃ! 喋る! 何でも喋るから助けてくれ!」

「ここは……ここは『ノピア皇国』だ! この街道を真っ直ぐ半日ほど進むと、コネグという子爵が治める領地に出る!」


死体袋に変貌した仲間たちの姿を見た山賊たちは、一切の出し惜しみなく情報を吐き出した。

通貨の単位、距離感、ノピアにおける大まかな地理――。セリーナはそれを淡々と聞き終えると、


「そう、ありがとう」


そう優しく微笑んだ。

次の瞬間、ジャキン――と鞘から疾風のごとく抜かれた日本刀の双剣が、美しく銀色の閃光を描いた。


一切の抵抗を許さず、首筋を真横から一閃。

山賊全員の首が、一瞬で同時に宙を舞った。


コロン、と転がる首。

双剣を静かに鞘へと納めるセリーナの姿に、ケント、ザラ、レナの三人はひっそりと顔を見合わせ、引きつった顔で固まった。


(((やっぱりセリーナ怖ぇよ。逆らわないどこう)))


心の中で完全に意見を一致させた三人は、気を引き締め直して山賊の遺品整理や、散らばった荷車の中身を捜索し始めた。ノピアの通貨や使えそうな道具を回収していく中、ケントは荷馬車の奥に積まれていた大きな木箱――鉄格子が嵌められた『檻』に目を留めた。


「おい、大丈夫か?」


ケントが檻の鍵をぶち壊し、中から引き出すと、そこにいたのは見た目12〜3歳ほどの少女だった。


少女は怯えたように身を縮めていたが、そっと顔を上げる。

その頭頂部にはぴんと立った『猫耳』があり、お尻からはしなやかな『尻尾』が伸びていた。


「おい、この子……尻尾があるぜ?」

「猫みたいな耳もありますぅ……」

「……こんなの見たことないわ。ひょっとして、世界が違うんじゃ……」


セリーナの言葉に、一同はしんと静まり返った。

未知の種族。世界が違うかもしれないという重い事実。その場の緊張感が急速に高まっていく。


そんな重苦しい空気の中――ケントはおもむろに目を瞑った。


そして静かに口を開く。


「……みんな、落ち着けよ。まずはこの子に話をきいてみようじゃないかにゃ?」


「「「にゃ?!」」」


一斉に響き渡る驚愕のハモり。


「ケ、ケント……? あなた今なんて……?」

「な、何も言ってないぞ!『話を聴いてみようじゃないか』と言っただけだ!」


必死に顔を背けるケントだったが、その耳は真っ赤に染まっていた。

そう――ケントが目を瞑っていたのは、決して深刻な事態に頭を抱えていたからでも、冷静さを保とうとしていたからでもない。


(獣人キタコレ!イヤッフウゥゥゥゥ!! 本物の猫耳! 本物の尻尾!触りてぇ! ヤバい、ニヤけ顔が止まらん、抑えろ俺の表情筋ーーー!!)


胸の中で渦巻くオタク的歓喜を隠し通すため、必死に目を瞑っていただけだったのだ。

そして耐えきれずに漏れ出た心の声が、語尾の「にゃ?」となって盛大に漏れ出たのである。


「……ケント。あなた、まさか……」

「ち、違う! 濡れ衣だ! とにかくこの子に話を聞くぞ!!」


焦って誤魔化すケントの横で、救出された猫耳の少女は、呆然とした様子で彼らを見つめていたのだった。

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