第45話:果てなき報復と太平洋の消失
*今日08:10より再開です!ミクとアツシがなぜか戦国に!?
『ただの収納スキルですが、時間は止まるし、生物もしまえます。――さて、邪魔者はどこですか? 帰還戦国編!』
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神子財団のパーティー会場が血の海と化し、真龍ヘルパンギーナとケントによる前代未聞の「宣告」が放たれた直後。
神子神社側は、全世界のあらゆる報道機関および通信インフラを電波ジャックし、第一次となる公式声明を発信した。
『合衆国政府、および全国家元首へ告ぐ。日本への不可侵並びに、今回の襲撃を主導した不法戦闘員——あの金髪の男と女、および背後に潜む黒幕を直ちに拘束し、我が方へ引き渡すよう、全国家はアメリカに対してあらゆる圧力を掛けよ』
淡々とした機械的な文章。だがその裏にあるのは、最愛の伴侶を無惨に殺された魔王の、底知れない殺意だった。
しかし、世界の反応はあまりにも鈍く、そして愚かだった。
「テロリストの脅迫に屈するわけにはいかない」
「合衆国との強固な同盟関係は揺るがない」
声明からわずか一時間足らず。イギリス首相、欧州委員会委員長、そしてイスラエル政府首脳陣は、即座に緊急記者会見を開き、口を揃えて合衆国への全面的な支持と、神子神社に対する断固とした非難を表明した。
長年培われた覇権国家への従属と、遠い極東の脅威に対する甘い認識。それが彼らの決断だった。
——それから、ちょうど二時間後。
全世界のテレビ画面、スマートフォンの画面、街頭の大型ビジョンが、突如として激しい砂嵐と共に切り替わった。
画面に映し出されたのは、どこかの格調高い執務室の映像だった。
そこに座っていたのは、二頭の首なし死体。
そして、その中央に置かれたテーブルの上には——切り落とされた二つの生首が並べられていた。
ロンドンの厳重な警戒を誇る首相官邸から拉致されたイギリス首相。
ブリュッセルで厳重に護衛されていたはずの欧州委員会委員長。
二人の首は、お互いの腕を交差させられ、自らの手で相手の髪を掴んで持ち上げるという、凄絶極まりない姿で固定されていた。
さらに、その斬られた首の口元には、イギリス首相の口に巨大なハンバーガーが、欧州委員会委員長の口には粗末なホットドッグが、乱暴に押し込まれていた。
国家の尊厳を根底から踏みにじる、悪夢のような悪趣味な光景。
あまりの衝撃に、世界中のキャスターが絶句し、視聴者は悲鳴を上げて嘔吐した。
画面は暗転し、映像は消えた。
代わりに、感情の起伏を一切削ぎ落とした、氷のように冷たい男の音声だけが、世界中のスピーカーから響き渡った。
『——まだわかってないのか?』
ケントの声だった。
『あのアメリカの暴挙で、押さえていた真の龍の力が戻った。今の日本には核も通常兵器も通じないし、君たちの兵器を無力化することもたやすい』
静かな語り口。だが、その背後に流れる圧倒的な絶対者の威圧感に、世界中の人間が息を詰まらせた。
『だがな……そんな事じゃ気が済まない』
一拍のタメ。そこから吐き出されたのは、人類の歴史上、最も酷苛で狂気に満ちた「死刑宣告」だった。
『あの作戦に関わったすべての関係者のリストを十日で公表しろ。そして、その本人並びに家族と今後一切かかわることを禁ずる』
『食料も売るな、病院も受け入れるな、子供を学校にも行かせるな、誰も助けるな。…ああ、リストに漏れがあったら、アメリカ国民全員を苦しめてから、消すぞ?』
社会的な完全孤立。一族郎党に対する、地球規模の排斥命令。
村八分など生温い、完全なる無視をしろと言ってるのだ。
『……家族や負担をかけないで済むのはただ一つ。顔と名前出して、動画で『私はこう関与してました』って生配信しながら死ね。お前らの謝罪などいらん。ただ、死ね。公表後一か月だけ待ってやるがな、食料も医療も無く家族は生きれるのかな?』
そしてケントは最後に楽しそうにそう付け足したのだ。
世界中が凍りついた。
謝罪も許しも求めない。ただ、己の罪を世界に晒しながら自ら命を絶てという、あまりにも一方的な自決の強制。
『そうそう、あの男と女は引き渡せ。たとえ関係者が死んでもアイツラと黒幕を渡さない限り、西の州から『消していく』。まずハワイ消すから確認しろ』
ブツン、と通信が切れた。
「……ケント、魔力回路の接続、完了したよ」
神子神社の境内。スーが青ざめた顔で、だが確かな手つきでケントの背中に手を添えていた。彼女の体内から吐き出される莫大な治癒と回復の概念魔力が、ケントの全神経へと流れ込んでいく。
「ヘル、準備はいいか」
「うむ。お主の好きにするが良い。我がリソースは全てお主の意のままだ」
空に揺らめく白銀の巨大な真龍——ヘルパンギーナが、禍々しい黄金の瞳を太平洋の彼方へと向けた。
「モンロー効果、指向性角度——極小。空間漏斗、展開」
ケントが両手を掲げた。
彼が異世界で磨き上げ、猛威を振るってきた『爆鳴気』。
水素と酸素を極限まで圧縮し、一瞬で熱と衝撃波に変換する化学変化の極致。
それを、スーの無限に近い魔力補給と、真龍ヘルの空間固定権能によって膨張させた——超巨大メガ「漏斗式爆鳴気」。
社務所の上空に、目に見えない巨大な「透明なメガホン」のような歪んだ空間の錐が形成された。その先端はハワイ諸島へ向けられ、底面には数億トンクラスの圧縮ガスが充填されていく。
「消えろ」
ケントが指を鳴らした。
ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!!!
音が空間を置き去りにした。
真空の漏斗を通じて、集束された爆鳴気の超高圧熱線と衝撃波が、光の槍となって太平洋を一直線に穿ち抜いた。
リアルタイムで配信されていた人工衛星のライブ映像。
青い海に浮かぶ美しいハワイ諸島——オアフ島、ハワイ島、マウイ島。
次の瞬間。
爆発の音すら届く前に、島々の陸地が、建造物が、山々が、超高熱の指向性エネルギーによって削り取られるように水蒸気へと昇華した。
海が割れ、海底のプレートが目に見える形で凹絶する。
文字通り、ハワイ諸島が地球上から「粉砕・消失」した。
そして、漏斗状に集束されて解き放たれたエネルギーの余波は、指向性を持ったまま東へと突き進んだ。
ハワイを消し去った巨大な爆風とエネルギーの奔流が太平洋の海水を押し上げ、高さ数百メートルに達する前代未聞の「メガツナミ」を発生させる。
壁のような漆黒の海原が、凄まじい速度で北米大陸および南米大陸の西海岸へと押し寄せた。
「ひ、避難しろぉぉぉっ! 水が、海が来るぞぉぉぉっ!」
サンフランシスコ、ロサンゼルス、シアトル——沿岸都市の警報が鳴り響く暇すらなかった。
押し寄せた水の壁は、高層ビル群を豆腐のように押し潰し、港湾設備を呑み込み、沿岸から数拾キロ内陸までを泥海へと変えた。
北米を中心に、一瞬にして百万人を超える死傷者が発生する大惨劇。
しかし。
その衝撃波の反動として、日本列島へ向かって押し寄せてきた膨大な「返し波」の津波に対して——
「ふん、邪魔じゃ」
上空の真龍ヘルパンギーナが、億劫そうに尻尾をひと振るいした。
日本に迫っていた高さ数十メートルの津波は、領海線に触れた瞬間、パリンとガラスが割れるような音と共に、ただの穏やかな小波へと変化し、優しく砂浜を濡らして消えた。
概念の書き換え。日本への物理的被害は、文字通りゼロ。
その恐ろしいまでの格差と、問答無用の破壊力が、リアルタイムで全世界へ生中継されていた。
「ひ……ひぃぃぃ……っ!」
「バケモノ……神様だ……悪魔だ……!」
ホワイトハウスの地下シェルターで、欧州の政府高官室で、そして世界中のリビングで。
画面を見つめる世界中の人類が、ガチガチと歯を鳴らし、腰を抜かして失禁した。
戦う術などない。
防ぐ手段など存在しない。
言葉の通り、自分たちが生き残るためには、襲撃に関わった者たちを自決させるか、アメリカの黒幕を引き渡すしかないのだと、全世界が骨の髄まで理解した。
静まり返った世界の闇の中で、真の魔王による絶滅のカウントダウンが、静かに始まった。
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