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『転生したのに転移で地球に戻っちゃった?! しかも何故43歳?! 王国の魔法革命児 〜爆鳴の鬼と呼ばれた男Ⅱ』  作者: だい


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第1話:見知らぬおっさんと、喋る真龍(トカゲ)

 ……ん?

 微かなモーター音と、遠くから聞こえる車のクラクション。

 純白の閃光に包まれて死んだはずの俺は、ゆっくりと目を開け、ひどく見慣れた白い天井を見つめていた。

 ここは、異世界へ転生する前に俺が一人暮らしをしていた、日本の2DKのマンションだ。


 慌てて体を起こし、自分の両手を見る。

 剣ダコだらけだった分厚い手ではない。デスクワークばかりしていた、どこか柔らかい手。

 そして腹部には、インナーバフと鍛錬で引き締められた鋼のシックスパックではなく、43歳の中年特有のだらしなく弛んだ肉が鎮座していた。


「嘘だろ……」

 魔王ケントとして死んだはずの俺は、転生前の『松本賢人』の冴えない肉体へと逆戻りしていたのだ。


 だが、驚くのはそれだけではなかった。

 ふと横を見ると、ベッドや床の上に、俺と一緒に真龍の自爆に巻き込まれたはずの妻たちと、妖精のスーが倒れるように眠っていたのだ。

 インナーバフや美容ポーションの効果なのか、元々実年齢より遥かに若く見えていた彼女たちだが、転移の影響かその美貌にはさらに磨きがかかっている。何より、ザラの顔にあった大きな傷跡までが綺麗さっぱり消え失せていた。

 間違いなく、俺の愛する妻たちである。


「う、ん……」

 俺が呆然としていると、セリーナが静かに目を覚ました。続いてザラとレナ、スーもゆっくりと身を起こす。

「ここは……? 私たち、死んだんじゃ……」

 状況が理解できず、周囲を見渡すセリーナたち。

 そして、彼女たちの視線が、ベッドの上にいる俺――『見知らぬ中年太りのおっさん』でピタリと止まった。


 空気が、凍りついた。

 先ほどまで真龍に向けていたのと同じ、純度百パーセントの殺意が膨れ上がる。

「……貴様、何者だ?」

 ザラが低い声で唸り、見えない大剣を構えるような姿勢をとる。

「私たちの愛するケント(旦那)をどこへやったの? 答え次第では、その太った首を刎ねるわよ」

 セリーナの目にも一切のハイライトがない。

 マズい。このバケモノたちは、地球だろうが関係なく、素手で人間の首くらい簡単に引っこ抜ける。


「ま、待て! 俺だ! ケントだ!!」

「嘘をつけ! ケント様がそんな醜いおじさんのわけないですぅ!」

 レナがメイスを握りしめるような動作で飛びかかってこようとする。

 このままじゃ、せっかく生き返ったのに嫁に殺される!

 俺は起死回生の一手として、彼女たちしか知らない『夫婦の極秘情報』を大声で叫んだ。


「本当だ! ザラは後ろからお尻を叩かれるのが好きで、セリーナはベッドで(ピー)を摘まんでキスされるのが一番感じるんだよな!!!」


 ピタッ、と。

 襲いかかってこようとしていた妻たちの動きが、完全に停止した。

 数秒の沈黙の後、セリーナとザラの顔が、耳の先までゆでダコのように真っ赤に染まり上がる。

「わーッ! わーッ! わかった、わかりましたから!!」

「なんでそんなこと大声で言うんだいアンタはァッ!!」

 クールな正妻二人が、恥ずかしさのあまり両手で顔を覆ってパニックを起こし、ベッドの上でバタバタと悶え始めた。


 よし、信じてもらえた。

 俺がほっと胸を撫で下ろしていると、一人だけ取り残されたレナが不満そうに唇を尖らせた。

「……ケント様、私は? 私との秘密の愛の証明は?」

「お前か? お前はこないだ、ダウンして寝てたザラの尻に……」

 俺が言いかけた瞬間、顔を真っ赤にしていたザラがガバッと顔を上げた。

「あァーッ!? あの時アタシの尻にイタズラで尻尾突っ込んだのは、お前かァァァァッ!!」

「ひぃぃぃっ!? ご、ごめんなさ……あ、あれ? ここ武器出しづらッ!?」


 地球の魔力環境のせいか上手く愛用の武器を顕現できず、レナは悲鳴を上げて2DKの狭い部屋を逃げ回り、その後ろを鬼の形相のザラが追いかけ回す。

「待てコラァ! 今日という今日は許さないよ!」

「ケント様ぁ、助けてぇぇぇ!」


 そんな大乱闘ドタバタ劇の中。

 逃げ回っていたレナが、ふと部屋の隅でピタリと足を止めた。

「なに、このトカゲ?」

 レナがむんずと掴み上げたのは、細いイグアナのような生き物だった。ガタガタと震えながら、レナの手の中で縮こまっている。

「ん?! コイツ、アタシ達を殺しかけたあの龍じゃないの?」

 よく見れば、その姿はつい先ほどまで死闘を繰り広げていた『真龍』のミニチュア版だった。


「このトカゲがぁ」

 悪い顔をしたレナが、コツコツと容赦なくイグアナの眉間や牙にデコピンをして苛ぶる。

 すると、苛ぶられていたイグアナの口から、か細い声が漏れた。


「……トカゲじゃないもん」


「❓❗️」

 レナの手が止まった。俺も、ザラも、セリーナも、全員の視線がその小さな生き物に突き刺さる。

「まて、レナ。トカゲお前……今、喋らなかったか!?」

「え!? 人間の言葉は分かるけど、私、話せな……え? え?」

 イグアナ自身も、自分が日本語を口走ったことに驚き、パチクリと瞬きをしている。


 魔王の力を持った四十三歳の中年太り。

 絶世の美女となった、ヤバすぎる妻たち。

 そして、なぜか日本語を喋るようになったポンコツの真龍。


 俺たちの、奇妙でカオスな地球での第二の人生が、今ここに幕を開けたのだった。

明日からは1話づつ、08:00時の投稿です!

宜しくお願いします

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