第15話:国家権力の教習所と、死人フラグの青空
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爺さんは2周目を好きに生きる~日に一回の未来視と風魔法で人生は楽勝⁈
新作です
三木沙織が、俺たちの住む港区のタワマンを訪れたのは、あの血みどろの交渉(無限拷問)から数日後のことだった。
地縛霊のヨーコちゃんが淹れてくれた(ポルターガイスト現象で宙に浮くティーカップで運ばれてきた)麦茶を前に、沙織はビクビクと引きつった笑いを浮かべながら、分厚い封筒をテーブルに置いた。
「ま、松本さん。お約束通り、ザラさん、セリーナさん、レナさんの戸籍書類一式と……あと、パスポートや、運転免許の取得申請書などもお持ちしました」
「おお! 凄いな、本当に数日で用意できるとは。さっすが国家権力!」
俺が素直に感心して封筒の中身を確認すると、そこには確かに三人の名前が記された真新しい戸籍謄本が入っていた。これで彼女たちも、名実ともに日本という国に存在を認められた住民である。
しかし、同封されていた申請書を見て、俺は首を傾げた。
「……なぁ、三木さん。免許の申請書って言っても、この三人、地球の車なんて一度も運転したことないぞ? さすがに無免許でいきなり公道を走らせるわけにはいかないし、一から自動車学校に通わせるとなると、目立って仕方がないんだが」
「あ、それならご安心ください」
沙織は、パンフレットのようなものを一枚取り出した。
「実は、うちのような外部の実働部隊の人間や、警備などでどうしても時間がない職員のために、宮内庁の敷地内に『専用の教習所』があるんですよ」
「ほう。そりゃいいね」
「はい。そこでは、指定された講習時間などをすっ飛ばして、法令と実技の試験さえクリアできれば、その日のうちに免許が発行できるシステムになっています」
その言葉を聞いて、パンフレットを覗き込んでいた女性陣の目がキラキラと輝き始めた。
「へえ! じゃあ、例えばこっちで法規の勉強をして行って、来週の土曜日に試験を受けに行くとなったら……」
「はい。そこで学科と実技の試験を受けて合格してもらえれば、その場で免許証をお渡しできます」
「これって、アタシたちもあの『鉄の箱』を動かせるってことですかぁ?」
レナが身を乗り出して尋ねると、俺は頷いた。
「そうだぞ。車を運転できれば、皆でどこか遠出の旅行とかもしやすくなるしな」
「そりゃいいねえ! さすが三木ちゃん、良い仕事するじゃないか!」
ザラが上機嫌で沙織の背中をバシバシと叩く。沙織は「ひぃっ」と悲鳴を上げながら、首の骨が折れないように必死に耐えていた。
大はしゃぎする嫁たちから少し離れ、俺はこそっと沙織に耳打ちをした。
「……なぁ。実技はあいつらの異常な身体能力ならなんとかなるにしても、学科試験って、ザラとかレナはヤバい気がするんだが」
俺の懸念はもっともだ。特にザラは、異世界でも座学や勉強の類はからっきしだった。
しかし、沙織は小さくため息をつきながらヒソヒソと答えた。
「大丈夫です。その教習所の法規試験には、普通の自動車学校にあるような『理不尽な引っかけ問題』や、『こんなの実際は絶対に使わないしやらない』という無駄な問題は一切出ないようになっているんです」
「そうなの? まあ、確かに学校で習うけど実生活じゃ絶対やらない確認とか多いしなあ」
「それに……」
沙織は少しだけ遠い目をした。
「神子とかで、昔から自分の力に自信がある人って、とにかく人の言うことを聞かなくて、座学や勉強が絶望的に苦手な人が多かったんです。だから、バカでも……いえ、最低限のルールさえ分かっていれば通るように調整されているんです」
「……お役所も、ヤバい奴らの扱いに苦労してんのね」
沙織はさらに言葉を続ける。
「実技についても同様です。例えばザラさんなら、実際に車に乗ったら片手でハンドルを掌で回して、後方確認もわざわざ首を回したりしないでしょうけど……ご自身の並外れた反射神経で、絶対にぶつけないし、きっと運転そのものは上手いタイプじゃないかと思うんですよ」
「まあ、確かにあいつの動体視力なら、ミラーすら見なくても気配で全部把握するだろうな」
「はい。うちの学校では、それでOKなんです。事故さえ起こさなければ」
なんという実力主義(無法地帯)。
さすがは、異能者や裏社会の人間を束ねる宮内庁の裏ルートである。
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かくして。
異世界のバケモノたちによる、本気の『免許取得へのお勉強』が始まった。
土曜日に決まった試験に向け、女性陣は昼間は沙織が用意してくれた動画教材を真剣な顔で視聴した。
「なるほどねぇ。この赤い丸に斜めの線が入ってる看板があったら、止まっちゃいけないのか」
「ザラ、こっちの赤い八角形は『止まれ』よ。間違えて突っ込んだら他の箱とぶつかるわ」
「おや、意外と面倒くさいルールがあるんですねぇ」
夜になると、俺がレンタカーを借りてきて、助手席や後部座席に彼女たちを乗せ、実際の道路状況をレクチャーした。
「ほら、動画でやってた『ここは徐行』ってのは、実際にはこういうことだ。あそこの見通しの悪い交差点なんかは、動画通りにやらないとマジで事故るからな」
「はーい、ケント様!」
「なるほど、実物を見ると分かりやすいわね」
さらに、今回は普通免許だけでなく、せっかくだからとバイクの免許や、大特(大型特殊免許)も同時に受けることになった。
流石に実車が用意できないため、操作方法だけ教本で確認し、あとはショッピングモールのゲームセンターにあるリアルな『シミュレーションゲーム』や『重機系のゲーム』で本番の感覚を掴ませた。
「へえ、大特ってのは、要するに鉄のゴーレムを操縦するようなものですか!」
「レナ、それは建物を壊すためのものじゃないわ。土を掘るのよ」
休日のゲーセンで、絶世の美女たちが真剣な顔でショベルカーのゲームをプレイしている姿は、周囲の客から奇異の目を向けられていたが、俺は気にしないことにした。
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そして、運命の土曜日。試験当日。
朝、目を覚ました俺は、窓の外に広がる雲一つない見事な青空を見上げて、ざわっ……と背筋に嫌な悪寒が走るのを感じた。
「……死人が、出なきゃいいなぁ」
俺が、これから向かう教習所に向けて特大の死亡フラグを立てていた、ちょうどその頃。
宮内庁正倉院事務所、第二課のオフィス。
「……課長」
「なんだ、三木くん」
「今日、あの松本さん一家が教習所にいらっしゃるんですが。……私、すごく嫌な予感がするんです」
沙織の言葉に、窓際で青空を見上げていた安部晴也課長は、ゆっくりと振り返った。
数日前まで「野良の異能者など処理してやる」「慰み者にしてやる」と傲慢に喚き散らしていたエリートの面影は、見る影もない。
賢人による『四肢の無限爆破&治癒』という地獄の拷問を味わった彼の顔は、土気色を通り越して真っ白であり、目の下には深いクマが刻み込まれていた。
「……奇遇だな、三木くん」
晴也は、一切の感情が抜け落ちたような、虚ろで遠い目をして呟いた。
「私もだよ。……頼むから、教習コースの更地化と、教官の爆破だけは勘弁してほしいものだ……」
空はどこまでも青く、澄み渡っているというのに。
第二課のオフィスには、どうしようもないほどの絶望と曇天の空気が、重く垂れ込めているのだった。
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異世界帰りの元ヤンと最強賢者嫁、80年代の地球でやりたい放題バカンスを満喫する〜
本日27話公開
*今回はとくにエロバカバカしいので、閲覧は自己責任でおねがいします




