愛の確認
今回のお話はいつもより少し甘めで大人向けの内容となっています。苦手な方はスルーしていただけますと幸いです。
週末の夜。
ほろ酔い加減で女子会から帰ってきたカナは、リビングのソファでウイスキーのグラスを傾けていた恭介の隣に、すり寄るようにして腰掛けた。
ふわっと漂う甘いお酒の香りと、彼女がつけている香水の匂い。恭介がチラリと横目で見ると、カナは膝を抱え込み、何やらモジモジと落ち着かない様子で自分の爪を見つめている。
「楽しかった?」
恭介が氷をカラリと鳴らして尋ねると、カナはチラッと上目遣いに恭介を見つめ、どこか気まずそうに唇を尖らせた。
「……なんかね、夜の話になっちゃってさ」
「夜の話?」
「そう。付き合いが長いカップルとか既婚者の友達がさ、『子供が大きくなると全くなくなる』とか『うちはもう2ヶ月に一回あるかないかだよ』とか……そういうリアルな話をして」
「へえ。どこもそんなもんなのかな」
「でね、『カナんとこはどうなの?』って振られたからさ……『あはは、うちもそんなもんだよ〜』って、当たり障りないように笑って答えたんだけど……」
カナはそこで言葉を詰まらせると、ポッと顔を赤くして、恭介の腕にそっと自分の額を押し付けた。
「……よくよく考えたら……私たちって、多いじゃん? なんか急に、自分たちがすごくエッチな気がしてきて……すっごく恥ずかしくなっちゃって……」
恭介はグラスをテーブルに置くと、ニヤリと口元を歪めた。少し意地悪で、悪そうな笑みだ。
「周りがそうなら、俺たちももっと少なくしないとな。俺はそれでもいいけどな」
「え? なんでよ?」
カナがハッと顔を上げ、不満そうに眉をひそめる。
「いや、恥ずかしいだろ? カナも友達に言わなかったわけだし」
「それとこれとは別でしょ」
「うん、少なくしよう。そのほうがいい」
「は? 何言ってるの?」
「ん? そんなにやりたいのかよ?」
恭介が身を乗り出し、カナの耳元で低く囁く。 カナの耳たぶが、みるみるうちに真っ赤に染まった。
「そ、そういうことじゃないでしょ」
「じゃあ、なに?」
「……あれよ、愛の確認よ」
「へえ、愛の確認……ね」
「そうだよ。……それにさ、恭介さんだって本当はしたいのに、いじわる言わないでよ」
すまし顔で逃れようとするカナに、恭介はクッと低く笑いながら淡々と言い返した。
「いや、俺は少なくしようって言ってるんだよ。それを拒否してるのはカナのほうだろ?」
「いや、えーと……」
完全に退路を塞がれ、カナは一気にしどろもどろになる。
「だから、カナはしたいんだろ?」
「ま、まぁ、どっちか選べと言われたらね!」
必死に「どっちかと言えば」という体でプライドを保とうとするカナ。恭介はそんなカナの顔をじっと見つめ、すっと表情を消して言った。
「じゃあ、しなくてもいいよな?」
「いや、したい!」
被せるように、即答だった。 もはや言い訳もプライドも完全に投げ捨てたカナは、上気した瞳で恭介をまっすぐに見つめ返してくる。
恭介は何も言わず、ただ静かにカナの表情を見つめ続けた。
「え? な、なに……?」
カナが居心地悪そうに身を縮めかけたその時、恭介は低く、逃げ場のない問いを投げかけた。
「……毎日したいの?」
恭介が静かな声で問いかけると、カナはいたたまれなくなったように自分の両膝を抱え込み、そこに顔をうずめて隠してしまった。
「……う、うん」
膝の中から、掠れた小さな声が漏れ聞こえた。
恭介はくくっと喉を鳴らして笑うと、膝を抱えて小さくなっているカナの背中にそっと手を回した。
「……カナってエロい女なんだな」
「そんなことないでしょ……っ!」
カナがパッと顔を上げて反論する。 その顔は熟したトマトのように真っ赤で、瞳は潤み、うっすらと熱い息を吐き出していた。強がろうとしても、体から溢れ出る色気を隠しきれていない。
「……今からでも?」
「え、う、うん……」
即答だった。 もはや誤魔化すことすらできず、小さくコクリと頷くカナ。
「そっか」
「……いじわる言わないでよ」
これ以上弄ばれては身が持たないと思ったのか、カナは真っ赤な顔で逃げるようにリビングを飛び出し、寝室へと駆け込んで行った。パタン、とドアが閉まる音が響く。
一人取り残された恭介は、思わず漏れ出た笑いを噛み殺した。
グラスに残っていたウイスキーをゆっくりと飲み干し、氷の溶けた冷たさを喉に流し込む。一息ついてからグラスを持って立ち上がり、台所で手早く洗い流して片付けを済ませた。
ゆっくりとした足取りで寝室の扉を開ける。 室内は間接照明の薄明かりだけが灯っており、ベッドの上ではカナが布団を頭まですっぽりと被っていた。
恭介は静かにベッドへ近づくと、すっと布団を捲り上げ、その横へと滑り込んだ。
「……カナ?」
返事はない。規則正しい寝息を立てるフリをして、固まっている。
しかし、捲り上げた布団の隙間から覗いたその姿に、恭介は思わず絶句し、直後に吹き出しそうになった。
さっきまで着ていた部屋着のパジャマは脱ぎ捨てられ、そこにいたのは、レースの透け感が艶やかな、お世辞にも「寝るため」とは言えないセクシーな下着に身を包んだカナだった。
火照った肌と、薄暗い部屋の中で浮き立つ下着のコントラスト。そして、薄目を開けて恭介の様子を伺おうとしては、慌ててぎゅっと目を瞑る可愛らしい顔。
(……やる気まんまんじゃないか笑)
心の中でツッコミを入れつつ、恭介の口元がグッと悪そうに歪んだ。
「……おい、寝たフリすんなよ。こんな格好で寝られるわけないだろ」
そう言いながら、恭介はカナを覆っていた布団を全て捲り上げた。
「……ッ」
突然冷たい空気に晒され、そして何より下着姿の全身を露わにされたことで、カナの体が少しびくっとする。
首筋に恭介の温かい唇が触れた瞬間、カナの口から甘い吐息がこぼれた。さっきまでの「寝たフリ」は一瞬で崩れ去り、くすぐったさと愛おしさに肩をすくめる。
恭介の唇が、耳下から鎖骨へとゆっくりと痕を残すように滑っていく。そのたびにカナの体がビクッと小さく跳ね、熱を帯びていった。
恭介の手が上がり、レース越しにカナの大きめの胸を包み込む。
柔らかいふくらみを、ゆっくりと、愛しむように優しく揉み解す。指先から伝わる体温に、カナの呼吸がみるみる乱れていった。
恭介の手つきに合わせて、カナは熱くなった体を微かにくねらせる。
そして、照れと熱に浮いた瞳で恭介をじっと見つめると、自ら両腕を持ち上げ、頭の上で静かに手を組んだ。
それは、「好きにしていいよ」という、カナなりの無防備で最大のおねだりだった。
無防備に晒された首筋と胸のライン。だが、胸を揉まれ、愛撫される刺激に、カナの体はすでに限界を迎えていた。
興奮したカナは我慢できなくなったのか、トロンとした表情で恭介の上に跨る。
「……っ」
下着姿のまま恭介の腰の上に跨がり、上気した顔で見下ろしてくるカナ。トロンと潤んだ瞳には、隠しきれない情熱と欲情が溢れていた。
カナは自ら恭介の手に自分の手を重ねると、そのまま胸元へと導き、さらに強く押し当てる。
言葉はなくとも、熱く乱れた息遣いと、身体の重なりだけで十分だった。
恭介は跨ってきたカナのしなやかな腰をギュッと抱き寄せると、そのまま引き寄せるようにして深く唇を重ね合わせた。
そして、重なる体温と荒い息遣いの中、カナが恭介の首元に顔を寄せ、耳元でぽつりと囁いた。
「……明日もするんでしょ?」
「どうかな」
恭介がニヤリと悪そうに笑って答えると、カナは「もう……」と不満そうに呟いた。
けれど、怒りながらもその身体は恭介の温もりに素直に反応し、とろけるような快感の中へとどこまでも身を寄せていくのだった。




