29. レミアの魔法修行その2
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レミアが無属性攻撃魔法を練習し、アイリィに認められた日の翌日。
宿屋にいた彼女は、昨日の疲労で深い眠りについていた。
静かな室内の中、扉を叩く音が響き渡り中にいる住人の覚醒を促す。
しかし、反応がないため鍵を使い室内へ入ってくる人物がいた。
先日、ここまで送り届けたアイリィである。
「レミアさん、起きてください。今日の修行を始める時間ですよ」
体を揺さぶって寝ている少女を優しくおこそうとする。
揺れる体に違和感を感じたのか、ゆっくりと目を開けて眼の前に見覚えのある人物を視界に捉え寝ぼけた状態で返事を返す。
「あれ…?アイリィさん、なんでここに…おはようございます」
「おはようございます。早く起きて準備してお店に来てください。部屋の鍵と朝食はここに置いておきますね」
レミアは体を起こし大きく伸びをして体全体を覚醒させようと立ち上がる。
体は疲れているが心地よい疲労であった。
アイリィが用意してくれた朝食を口に頬張りながら急いで着替えて今日の修行へと向かう。
お店で待っていたアイリィの元へ到着し、今日もタリスマンの裏手で修行について説明をうける。
「昨日の修行で時間がかかったので今日は少し手法を変えます」
「手法を変えるって本来の修行とは違うんですか?」
「ええ、本当は今日の修行で無属性魔法の防御術式をご自身で覚えていただく予定でしたが、恐らく今のペースでは難しいでしょう」
「そ、そうなんですね…ご迷惑おかけします」
「今日は、私が無属性防御魔法を展開するので魔力の流れを感じて、そのまま自身で魔法を維持出来るようにして覚えてください」
「そんな事で魔法を覚えられるんでしょうか?」
「魔法というのは詠唱やマナを遣い、自身の中で流れを生み出しイメージして発動するというのは理解できますよね?」
「はい、魔法の教本で勉強しましたので」
「魔法からマナの流れを体で直接覚え込むのも、習得する際の一つの技法なのです。ただこの方法はリスクを伴うので余りお勧めできないんです。」
「え…何だか怖い、リスクって何があるんですか?」
「マナの流れは、人によってそれぞれ違うんです。他人が行使する魔法から流れを真似して使うと体内のマナが乱れて自身が覚えてる他の魔法に影響が出るんですよ」
「それじゃあ、やらない方がいいんじゃ…?」
「私は他の人が魔法を使う時のマナの流れが読めるので、レミアさんが魔法を行使する時の流れを模倣して展開するから大丈夫ですよ」
「アイリィさん、何でも出来るんですね…凄いです」
「私の師匠が凄い人ですからね、これくらい当然です」
「それでは練習しましょうか」
「はい!お願いします」
アイリィは左手を正面に構え魔法防御の術式を展開して見せる。
瞬間的に行使される魔法をみてレミアは疑問が湧きアイリィ問いかけた。
「あの、ちょっと質問いいですか?」
「なんですか?」
「アイリィさんが使っているの無詠唱魔法ですよね?」
「いえ、違いますよ」
「でも、今詠唱無しに魔法を出しましたよね」
「これは無詠唱魔法ではなくて瞬間魔法発動式ですよ。私は十数万の魔法術式を体に覚え込ませているので、瞬間的に魔法が行使できるんです」
「瞬間魔法発動式ですか…無詠唱魔法とは違うんですか?」
「無詠唱魔法は、体へのマナの蓄積、魔法式の展開、発動という手順を踏みます。詠唱魔法より発動が早いのが特徴ですが早さに限界があるのです」
「それでも十分早いように思えますが…」
「熟練した魔法使い同士での戦いでは、魔法の発動速度がモノを言います。相手が魔法を一回発動する間にこちらが三回使えるとしたらどちらが有利かわかりますよね?」
「それは三回使える方ですね…練習したら私にも使えるのでしょうか」
「瞬間魔法発動式はアルテロ様と師匠、私以外に使える人を知りません。他のマエストロの方々は存じませんが、同じ高みまで到達できれば行使出来るようになるかもしれませんね。頑張ってみてください」
「わ、わかりました…頑張ってみます」
「それに無詠唱魔法を使えるようになる切っ掛けは、既に教えていますよ」
「え!?それって一体なんですか?」
「昨日、無属性魔法を教えた時に詠唱しましたか?」
「あ、そういえば…詠唱していませんでした」
「無属性魔法を応用すれば、他の魔法でも無詠唱で使えるようになります。これは体で覚えるしかないですが修練すれば何れ使えるようになるでしょう」
「はい!まず無詠唱魔法を使えるように頑張ります」
「話が逸れましたね、それでは無属性防御魔法の練習です。レミアさんの左手を私の手と同じ様に重ねてマナの流れを感じ取ってみてください」
アイリィに促される通りに左手を隣に添えて無属性防御魔法に片腕を伸ばす。
「目を閉じて私のマナの流れを自分の腕全体で感じ取って…」
レミアはアイリィに手を添えながら体を流れるマナを感じ取り自身の魔法力でで同じ様に流れを起こして見る。
「防御魔法は攻撃とは違い、まっすぐ飛ばすのではなく掌から周囲全体に丸く広げるような感じで形作るように意識して…そう、その感じで」
レミアの掌に僅かに円形の魔法陣が姿を現しアイリィと同じ無属性の陣が構築されていく。
「そのままの状態で維持してください!」
レミアの掌で無属性防御魔法陣が完成し、しばらく維持していたが消滅してしまう。
「では、今と同じ様に今度は自分のマナだけで、魔法術式を展開して維持できるように練習しましょうか」
「わかりました、それにしてもアイリィさんの教え方って凄く解りやすいです、魔法学校の先生になって欲しいくらいです」
「魔法学校の先生ですか?年齢的にまだ難しいですね…」
「え…?失礼ですがアイリィさんってお幾つなんですか?」
「私、今年で十七歳ですけど…」
「ええええっ!?私と二歳しか違わないんですか!?それでこんなに凄い熟練魔法使い並の風格を漂わせてるの!?てっきり二十歳越えてるのかと…」
「何故か街の人達含めて年齢高めに見られるんですよね…私って老けて見えるのかしら…」
アイリィは膝を抱え込んで落ち込む仕草を見せて、地面に何かの魔法式を連続で書いている。
「いやいやいや!老けてるとかじゃなくて!雰囲気や立ち振舞いが女の子って言うより大人っぽい女性にしか見えないですよ。私の友達とかも全然子供っぽくて色気なんて皆無ですよ」
「それって褒められているんでしょうか…?」
「もちろんそうですよ!みんな大人っぽい女性に憧れるものです」
「そうですか…なんだか元気が出ました。それでは練習を続けてください。私は店に戻って営業を始めます」
「わかりました、頑張ります」
「あ、あと防御魔法を繰り出す時には、周囲にある建物に向かって展開するようにしてください」
「周囲の建物に?それはなんでですか?」
「同じ場所で単純作業をしていると眠くなるからですよ、周囲の風景を見たり深呼吸をしたりして練習を繰り返してくださいね」
「はい、では頑張ります」
こうしてレミアの魔法修行二日目が始まった。
早朝から初めて昼になり、アイリィが用意してくれた昼食を食べて、眠気覚ましの紅茶等をたしなみ夜まで練習を続けその日の修行を終えた。
仕事終わりに、二人でまたお風呂に行きレミアは今日は眠らずに宿屋まで自力で帰ることが出来て昨日より成長しているようであった。
一日置き(隔日)の18時から19時頃更新予定
土曜日投降したので次回は月曜予定ですが、もしかすると日曜日投稿して月曜日休みかも?




