28. レミアの魔法修行その1
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アイリィはタリスマンの店内に戻り、レミアが持つマナの流れを遠くで感じていた。
彼女はあれから休み無く連続で練習を続けている。
練習を繰り返し自身が持つ魔力が尽きて店内に取り付けた鈴で魔力補給の合図を鳴らしてくる。
その度にアイリィは、自身の魔力で補充してあげるが、総量の変化は見られない。
「やっぱり数時間では、そう簡単には上がらないですよね…」
アイリィは、幼少期に師匠と繰り広げた修行の日々を思い出した。
(いいかアイリィ?自身が持つ魔法力の器を広げるには、とにかく魔法を使うんだ。特に無属性魔法は、世界に広がるマナを使用しないので魔力向上には最適だ。朝起きて寝るまで常に自分の中で魔力を作り放出するのを繰り返せ、息をするのと同じ様に当たり前に出来るようにな)
「まだ何にも知らない七歳の子供に無茶いいますよね…師匠って」
リナとの修行を思い出し、アイリィの口元が緩み笑顔がこぼれる。
魔法に関しては鬼のように厳しくて口も悪いけど優しい人だと彼女は知っているからだ。
アイリィは七歳でこの店に連れて来られた。
そして生きる術を手に入れろと十年近くリナに魔法技術を叩き込まれて、魔法店の店員を務められるように育てられている。
彼女が得た魔法の力は、師匠との絆だと信じていた。
そんな昔の事を思いだしながら、レミアの修行の成り行きをマナの流れで見守りつつ一日の営業を続けていき時は過ぎていく。
日が沈み、タリスマンの営業終了の時間がやって来た。
アイリィはキッチンに向かいポットでお湯を沸かす。
ティーポットに幾つかの草の粉末を入れ、沸かしたお湯を注ぎしばらく待つ。
その間にバケットに仕舞ってあったパンにナイフで切り目を入れてジャムのような物を塗って挟む。
若干覚ましたお茶を水筒に入れ、パンを入れたバケットを持って、棚に置いてあったカバンを肩にかけて外へ出て行く。
店の入口に施錠して『本日は終了しました』の看板をかけて店の裏手に向かう。
練習の繰り返しで疲労困憊の様子を見せるレミアは、アイリィの姿に気づき何度やっても成功しない魔法の練習に対して泣き言のように彼女へ伝えてきた。
「アイリィさん…何度やっても魔法が飛びません…このままだと今日中に飛ばすのが間に合わないかもしれません」
目に僅かな涙を浮かべているレミアの元にアイリィは静かに寄り添って彼女の体を支えて告げる。
「ちょっと体に力が入りすぎてますよ」
アイリィは優しいお姉さんのような雰囲気を漂わせながら、レミアの腕に手を添えて顔を耳元近くに寄せて優しく告げた。
「目を閉じて体の力を抜いて…マナの力が静かに流れる川の水のように体の中を通るようにイメージしてください」
レミアは目を閉じて教えられたように、マナを体に巡らせていく。
「そう、そしてさっきと同じ様に杖にマナを流し込み、先端で力を集めるようにしてください」
アイリィから指示されたとおりに自身のマナを杖に送り込み魔法球が徐々に作られていく。
「魔法を飛ばすための蓄積が足りていないんです、もっと大きくするような感じでマナを集めて」
魔力球の輝きが肥大化してマナが集まるのを感じたアイリィは合図を送る。
「はい!そこでまっすぐ飛ばして!」
レミアが作り上げた魔法球が放たれ目標の柱に向けて飛翔したが僅かに逸れてしまう。
「やった!出来ました!ありがとうアイリィさん!」
「まだまだ、的に当たっていませんよ、当たるまでやってみてください」
「はい!わかりました」
コツを掴んだレミアは何度も魔法球を作り上げ、魔法を的へ当てようと練習を繰り返す。
彼女は十回ほどの練習で目標の的に魔法を当てる事が出来た。
成功が嬉しいのか振り返りアイリィの顔を見据えてくる。
「はい、じゃあ今日はここまでにしましょうか」
肉体の披露がピークなのかレミアは地面に立てた杖によりかかり、足元に崩れ落ちて安堵の声を上げた。
「成功出来て…よかったあ」
アイリィは、バケットを開きパンを彼女へ渡して、先程煎じて水筒の容器に入れたお茶をレミアに渡す。
「今からだと、食事もむずかしいでしょうから、パンを食べてこれを飲んでください」
「あ…ありがとうございます!」
余程お腹が空いていたのかレミアは受け取ったパンを貪り食うように平らげながら、水筒のお茶から蓋を開けて中の液体を喉に流し込もうとする。
ノドを通る直前に違和感に気づき僅かに咳き込んで苦苦しい表情をしてアイリィに尋ねた。
「うえええ…なんですかこれ、凄く苦くて美味しくないんですけど…」
「肉体の疲労回復と魔力の回復に効く薬草を使って作ったお茶です、少し苦いですけど我慢して飲んでください」
レミアは飲むのを促されて苦い表情を見せながら、出されたお茶を一気に飲み干して水筒を返却して感謝の言葉を伝えた。
「あ、ありがとうございました…お腹が少し膨れました」
アイリィは次の行動を予定していたのか、眼の前で座り込んだ娘にこれからの目的を伝えていく。
「それじゃあ、今から一緒に大浴場に行きましょう」
「え?今からですか…もう宿屋に戻ってベットで寝たいんですけど…」
「ダメです、体を温めて肉体の疲れを緩和しないと毎日の修行に影響がでます。私も行きますので一緒に向かいましょう、ついてきてください」
アイリィに促され二人揃って宿屋街にあるカルドラフ大浴場へ歩みを進める。
レミアは疲労困憊なのか若干足元が覚束ないが杖を突きながら彼女の後へ続く。
数分ほど歩くと大浴場に到着して二人でそのまま中へ入っていく。
アイリィはまるで顔パスのように受付の老婆に伝えて脱衣所へ向かう。
「今日は二人分でお願いします」
「あいよ、二人分ね」
事情が飲み込めないレミアは、そのままアイリィの後ろについていく。
「ここで服を脱いでください、籠の中に体を覆うタオルがあるので巻いてからいきましょう」
アイリィは手慣れたように肩紐を外し、スカートを床に落とす。
次に上着のボタンを外して上着も脱いで軽く畳んで籠の中にスカート共に仕舞う。
華麗に着替え下着姿になった彼女の姿にレミアが視線をおくり体を眺める。
何かを感じ取ったのか自分の中に芽生えた疑問をアイリィへ話かけた。
「アイリィさんって脱ぐと凄いんですね…凄い綺麗な体で、まるで貴族令嬢みたいな美しい肌をしています」
レミアの放った何気ない一言で、アイリィの表情が若干曇る。
何か気まずい雰囲気を感じ取った彼女は、身振り手振りと謝罪の言葉を述べ空気を変えようと試みていく。
「ご…ごめんなさい、何か悪いこと言いましたでしょうか」
「いえ…気にしないでください」
「そうですか、あとなんですか…そのわがままボディは!胸も大きいしスタイルもいいし、本当に魔法屋の店員さんなんですか!?」
レミアは自身の両手を広げ何かを揉みしだくような手のふりを見せながらアイリへと近寄っていく。
「な、なんですか…その怪しい動きの手は!変なことすると怒りますよ?」
「はっ…!すいません!その大きな胸を別けて欲しいなと思ってつい手が…」
「それより早く着替えてください、明日の修行に差し支えますから」
アイリィに促され帽子とローブを脱ぎ去り、下着姿となるレミア。
自分の胸に手を当てて隣にいる彼女と大きさを比べて愕然として手を床に落とす。
先にタオル一枚を体に巻いたアイリィは浴室へと入っていき、遅れて裸になったレミアもタオルを手に持ち後についていく。
夜遅いせいか、浴室には誰も残っていなかった。
「お風呂、誰もいませんね…」
「夜遅いですからね、早く体を洗って浴槽に浸かりましょう」
アイリィはお湯を体にかけて備え付けられた液体石鹸の容器から手に取り体と髪に塗りつけて全身に泡を立てていく。
レミアも同じ様に自身の体に塗りつけて真似して体を洗い流す。
全身を流し終わった後、二人で浴槽に浸かり体の疲れを取るため全身をお湯の上に投げ出して静かに過ごす。
全身が温まり余りの心地よさにレミアは頭を揺らしながら瞼に重りがぶら下がっているかのように目を閉じようとする。
アイリィは彼女の目を覚まそうと体を揺らして覚醒を促す。
「レミアさんここで寝ちゃダメですよ、そろそろあがりましょう」
「ふぁい…すみません…」
寝ぼけているレミアの体を支えながら二人で脱衣室に戻って体を吹いていく。
激しい眠気に襲われた彼女をアイリィは何度も声をかけながら、宿屋と部屋番号を聞き出して、レミアを背負ったまま飛翔魔法で宿屋に向かい部屋まで連れて行く。
彼女に鍵の場所を聞いて扉を開けてレミアをベットの上に眠らせて部屋を出る。
ベットの上に倒れこんだ彼女は翌日の修行に向けて深い眠りにつくのであった。
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