26. 聖遺物事件の顛末
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聖遺物盗難の疑惑を掛けられた冒険者パーティは、都市国家の牢獄にて取調べを受けて入手ルートについて問われていた。
あわせて、イグロニス王家の使者が到着し盗難事件の詳細について明かされ、リナは騎士団長のレオから幾つか要点のみを掻い摘んで情報を入手した。
イグロニス王家が複製聖遺物の保管場所を変更するため、隠密行動で輸送計画が実施される事になったが、貴族の一人に輸送計画の情報が漏れていて、強欲な彼らは盗賊を雇い襲撃させた。
しかし、護衛と盗賊が相打ちになり輸送馬車のみが残された。
戦闘の場面に偶然で合わせた冒険者パーティが馬車から珍しくて高価そうな杖を盗難したというのが顛末だという事だ。
彼らの実情は火事場泥棒だけで、真の犯人は窃盗計画を策略した貴族であったが、王家は既に主犯を捉え全財産没収の上でお家取り潰しという厳しい処分を下したようだ。
王家への背信行為は重罪だ、首謀者は恐らくこの世にもういないだろう。
リナはそう考えていた。
残りの冒険者パーティについては、イグロニス王家に引き渡し向こうで裁きを受ける手筈となった、近日中に引き渡しが行われる。
全ての事項が解決へ向かう中、イグロニス王家の人物との面会準備が貴賓室にて整ったと知らせを受けたリナは、現在道具屋で働いているヴェルディムを迎えに行き王城へと向かう。
リナは都市国家王城内部への出入りは自由に行えるため、ヴェルディムと共に貴賓室へ向かい、ノックと共に入室の合図を騎士が伝えて扉を開く。
室内にはダークブルーの綺麗なドレスを身に纏い、絹糸の様に綺麗な長い金髪で気が強そうだがどこか優しい雰囲気を感じる女性が待ち構えていた。
立ち振舞から王家の品格を感じる、凛とした態度で二人を迎え挨拶を交わす。
「お初にお目にかかります。私は、イグロニス王家第四皇女 『アウレリア・レダ・イグロニス』と申します、以後お見知りおきを」
「これはご丁寧に、私はマエストロアルテロの一番弟子リナリア・フローリアスです、リナとお呼びください。こちらはご存知かは解りませんが魔族のヴェルディムさんです」
「よろしく、皇女様」
王家の人間に対して物怖じしない言い方をするヴェルディムに対してリナは内心ヒヤヒヤしていた。
国家の重鎮にたいして無礼な行為や言動はこちらの首が飛びかねない。
だから彼女はこういった場では失礼がないように自分の店とは異なる礼節を持った立ち振舞う術を身に着けている。
「貴方がアルテロ様のお弟子様ですか…ご高名はお伺いしております」
「なんだ、リナは結構有名人なのか?」
「その件は後で教えるよ、今は皇女様との話し合いを進めて欲しい」
「ああ、そうだな。皇女様、単刀直入に話を進めるが構わないか?」
「どうぞ、お話ください」
「ご存知かは知らないが、私は四百年前に貴方達王家に依頼され、騒動の発端となった複製聖遺物を作った人物だ」
「魔族の貴方があの聖遺物を作成したと…王家の伝承では、街の道具屋に依頼して複製品を作成いただいたと伺っておりましたが…」
「道具屋主人のアイリスだろ?私は彼女の店でお世話になっていた時に王家から複製品の作成依頼を受け満足の行く形で納品した。制作に関する秘密は厳守しているが、こちらにいるリナには、窃盗事件の首謀者確保に尽力してくれたため杖の素性を伝えたのは許して欲しい」
「お話は理解いたしました…道具屋アイリスに依頼した件含め、王家に伝わる伝承と相違ありません、貴方が作成者だったとは…」
「迂闊な冒険者のせいで杖は破損してしまった。貴方たちに復元の要望があれば元に戻す事も出来る、その意思確認をしたかったんだ」
「それは、私の一存では決めかねます。国に戻り判断を仰ぎたく存じます」
「ああ、それで構わない。ただ聖遺物は貴殿ら王家にとって大事なものなのだろう?盗難防止のダミー品が長いこと失われたままでは本物の所在を探るものが出てくるのではないか?」
「現在杖は修復作業中という事で表には伏せておりますが、もし復元を依頼した場合どれくらいの費用が必要でしょうか?」
「材料費だけで十分だ、暗黒結晶石の長くて大きいのを揃えて貰うだけでもいいぞ」
「え…加工手数料は不要なのですか?」
「制作に携わったものの責任だからだ、それに制作時にそちらの王家からかなりの費用を貰っている、一回位の修復費用なんて余裕で賄えるほどだ。だから今回は材料費だけでいい」
「わかりました、暗黒結晶石はご用意出来るかもしれません」
「それはよかった、では準備が出来たらこの国に迎えをよこして貰えるか?道具屋のジンラに努めているから」
「わかりました、父様…いえ国王様に進言させていただきます」
「ああ、話はこれで終わりだ。リナ…ここの会話は誰にも言うなよ。お前の師匠とかいう人物にもな」
「わかった、アイリィにも師匠にも秘密にしておくよ」
リナはヴェルディムの言葉を聞いて仮にアイリィや師匠へ伝えた時の事を考えてみた。
(アイリィも秘密は厳守するが、言われたとおり伏せておこう。あと師匠なら『そんな面倒くさい事覚えてられっか!』とか言って忘れそうだけどね…魔法の事以外は、あの人はホント無頓着だから…)
「それでは皇女様、ご要件についてはお伝え出来たかと思いますので、こちらで失礼させていただきます」
「はい、お気遣いいただきありがとうございます。重ねて盗まれた品を取り戻していただき感謝いたします」
「いえ、幾つかの考察と偶然が重なっただけです。私の力はほんのご助力出来たに過ぎません」
「それでも、お礼だけは伝えさせてください」
「わかりました、それでは」
イグロニス皇女との面会も終わり、二人は王城を後にした。
「リナ、ワタシは道具屋に戻るよ。しかし紹介してもらったジンラのおっさん面白いな」
「おっさん言ってやるなよ…貴方のほうがずっと年上だろ…」
「魔族は成人した状態で老化しないからな、だからおっさんでもいいだろう?」
「まあ好きに呼んでくれ、でも道具屋気に入ってくれてよかったよ」
「ドワーフなのに変な道具作るのが大好きとか変わり者同士意気投合してな、色んな面白い品物作って商売するよ」
「ああ、今度あるものを作って欲しいんだけど、そのうち相談しにいくよ」
「なんだ、あるものって?」
「世界の輸送を革命する乗り物だ、期待しておいてくれ」
「わかった、出来たら道具屋に来てくれ」
「ああ、それじゃあね」
こうして数日間にかけて起きた聖遺物事件については一応の幕を閉じた。
リナは、一仕事終えた感触を掴みながらタリスマンへの帰路に着く。
少し筆が乗ってきたので更新頻度多めにします。
次回は案件6 アイリィ孤軍奮闘記を予定しています。




