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25. 都市国家総動員の大捕物

この作品はカクヨム先行で公開している作品です。

カクヨムのページはこちらです。

https://kakuyomu.jp/works/822139839209446983

破損した聖遺物(レリック)の修復依頼にやってきた冒険者パーティにリナが売却を持ちかけた件の二日後。

武器屋ランクル周辺はまるで無人の街と思われる程静まり返っていた。


朝日が昇ると同時に都市国家騎士団が普段着のままで隠密行動を取りながら周辺の建物に大量配置され、こちらの合図でいつでも包囲出来るようにフォーメーションを組んで待機しているからだ。


騎士達が普段着である理由は、騎士鎧のままで大量移動を行うと金属音で周囲に気づかれる可能性があり、相手に事前に察知されぬよう厳戒態勢と日常の雰囲気を壊さないように練られた作戦だ。


聖遺物盗難の嫌疑がかけられた冒険者パーティがランクルへ入店するまで、すぐ近くの建物内で騎士団長のレオを含め数名が息を潜め待ち構えていた。


加えて、通常通りの取引に見せかけるためランクル店内で、リナが金貨二千枚を用意して待機している。

彼女は取引を持ちかけた冒険者パーティが予定通り店に来ると予測していた。


何故なら金貨二千枚は冒険者四人で別けても十年は余裕で働かなくていい金額だ。

それを放棄してまで諦めて簡単に逃亡する事は考えられない。

リナの予測は外すことがない商売人が持つ鋭い感覚でもあった。


全ての準備が整い数刻の時が過ぎた頃、目的の冒険者パーティが現れランクルへと向かっていってるのを周囲の騎士が発見し、全員に手で合図を送る。


ランクルに到着した冒険者パーティが室内に入り、周囲が動き出す。

武器屋内では、マスターとリナに加えコレットが迎え、来店の挨拶を伝えた。


「いらっしゃい、どうやら取引の意思ありと見ていいのかな」


魔法使いが前に出てリナへ問いかける。


「ああ、素材の確認と、取引のお金は準備できたのか?」


「ああ、こちらの杖はかなりいい部材が使われていた。前回見積もったとおり、金貨二千枚の価値があるが承諾出来るか?」


魔法使いは納得したように即決して返事を返す。


「わかった、それで手を打とう」


「ただし、交換取引の前に一つだけ質問に答えて貰おう」


「質問とはなんだ?」


「この聖遺物(レリック)をどこで手に入れたか、都市国家の騎士団長の前で証言してもらおうか」


リナの問いかけと同時に騎士団長のレオがランクルの扉を開き中へ入り全員を見据える。


店内にいた冒険者パーティは、何かを察したのか全員が全速力で彼の横をすり抜け店の表に逃げ出した。


表に出た冒険者パーティは、外に出て足が止まる。

既にランクル周辺では猫一匹すら逃げられないように、都市国家騎士団が店舗囲い込み包囲していた。

ランクルから表に出てきたレオは全員に大人しく投降するよう叫び伝えた。


「抵抗はやめろ!大人しくするんだ!」


前方と後方を騎士達に囲まれたリーダーと思われる戦士が魔法使いに対して命令を飛ばす。


「おい!飛翔魔法で全員を飛ばせ!早くしろ!」


しかし、魔法使いは何度も繰り出そうとするが一切発生せず慌て叫ぶ。


「ま、魔法が撃てないんだ!なんでだ!」


ランクルから遅れて表に出てきたリナは、魔法を行使出来ず慌てる魔法使いに対して勝利を確信したように冷静に伝えた。


「お前たちが店に入ってきた瞬間に、この周辺一体にマナ阻害の魔力結界を貼っておいた、魔力が低い連中は魔法の行使すら出来ない強力なものだ、諦めるんだな」


魔法による脱出が出来ないと悟った戦士は、窮地を脱出するため手慣れた様子で、魔法使いのリナを人質に取ろうと剣を構えて襲いかかる。


だがほんの一瞬でレオがリナの前に立ちはだかり襲いかかる攻撃に対して、一瞬で自身の腰に下げた剣を抜き相手の武器を空高く弾き飛ばし、遠くの場所へ落下させた。


剣を弾き飛ばされ呆気に取られる戦士に対してレオは剣の柄で相手の腹部を直撃し、その場に倒れ込ませ動きを封じた。


「グフッ…この騎士、なんだこの強さは…」


リナは、レオの強さを信頼していた。

彼の戦闘力は、そこらの冒険者では全く太刀打ち出来ないほどの強さで、無策の強襲など赤子の手を捻るほど余裕で対処出来る屈指の強さだからだ。


「そいつを捕らえろ!」


武器を失った二人はあっという間に周囲の騎士に取り押さえられ、縄で捕縛され身動きを封じられる。

捉えられた冒険者パーティの魔法使いがリナに対して大声で断末魔に近い叫び声で詰めていく。


「貴様あぁ!?図ったな!何だこれは」


相手の叫びに対して、リナは自分たちの立場と都市国家のルールを眼の前にいる全員に伝える。


「図っただと?これが正当な取引なら、私も喜んで金を出したさ。だけどお前たちは違う、窃盗犯相手に商売は行わない。この都市国家で営む人達全員が決めた正当なルールだよ」


「窃盗犯だと!?何を証拠に言ってる、出任(でまか)せだ!!」


「よくいうよ、レオが現れたら真っ先に逃亡しただろ。それにこの杖はイグロニス王家が秘宝として隠し持っていた聖遺物レリックだと調べは付いている、惚けても無駄だ」


聖遺物レリックだって!?そんな事知らないぞ」


「諦めろ、証人も既に確保している。どこで盗んだかは知らないが、王家の秘宝を盗んだ窃盗犯を逃がすわけ無いだろ、ここに持ち込んだのが運の尽きだ」


更に追い打ちをかけるようにレオが冒険者パーティに事実を突きつける。


「お前たちの素性も含め、既にイグロニス王家に伝達済みだ。これから使者を迎えて引き渡す手筈は整っている、大人しく連行されるんだな」


冒険者パーティは観念したのか、騎士達に拘束され都市国家内にある罪人向け監獄に連行されていく。


大捕物を無事終えたレオに対してリナは労いの言葉を伝え感謝した。


「レオ、ご苦労さん。騎士団の皆にも礼を伝えておいてくれ」


「いや、これも騎士団の重要な仕事だからね。それじゃあ、これから詰め所に戻って引き渡しの手続きをしてくるよ」


「ああ、王家の人が来たら魔族が面会を求めていた件伝えておいてくれよ」


「わかった、決まったらタリスマンに報告しに行く」


レオと別れたリナは、ランクルの店内に戻りマスターへ顛末を報告した。


「マスター、捕物完了したよ。今回は利益にならなくてすまないな」


「なに、こういう事もあるさ。儲かる話あったら次はこちらに回してくれ」


「わかった、今回はお互い儲け無かったからな、いい話あったら回すよ」


「おう!頼んだぜ」


マスターとコレットにリナは別れの挨拶を告げて店を出た。

先日、都市国家の一員として加わった魔族のヴェルディムは、既に道具屋に紹介して現在住み込みで働き始めている。


しばらくしたら、働きぶりを見るために道具屋へ様子を見に行くことを決意していつもの日常に戻るべく、我が家のタリスマンへと向かった。

小さな王国の最強魔法店は不定期更新です。

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