24. 聖遺物の素性を知る魔族
新たに都市国家にて働き口を求めにきた魔族ヴェルディムに王国から盗まれたと思われる聖遺物の情報を掴もうと彼女に見せたところ自分が作成したと告白し全員が驚愕した。
作られた経緯について確認するためリナが問いかける。
「貴方がこの杖を作成しただって?一体何故それがわかるんだ?」
「以前なんとかって国の近くで住んでいた時に、ゴーレムを作る傍らで野党に襲われて助けた人間と一緒に暮らしたことがあったんだ」
「へえ、その子はよく魔族を恐れなかったな」
「ああ、彼女の名前はアイリスって人間の娘だったんだけど、助けたお礼に小さな町に連れて行かれてな、魔族である事を隠しながら彼女と共に道具屋を細々とやっていたんだが、その娘が出世して王家から杖の複製依頼を相談してきて試しに作ってみたんだ」
「つまりこれは聖遺物の複製品ってこと?」
「ああ、王家の宝に聖遺物があって、盗難対策として本物は隠して偽物を飾るために精巧な複製品を作って欲しいと要望されたんだ。かなりの額で報酬を貰ったのでしょうがなく作って収めたんだよ、もう四百年以上前の事だがな」
「これ程の技術なら本物と寸分無く作っただろうに、なぜ複製品だとわかるんだ?」
「実は杖の継ぎ目の模様に私のサインをこっそりと刻んでいるんだ、私しか解らない目印としてな、わからないだろう?」
リナは、杖をじっくりと眺め模様をつぶさに調べだす。
杖の継ぎ目に刻まれた模様に三つの文字を発見して問いかけた。
「ここか…V・E・Lって模様の形に合わせて刻んでるのか…これは確かに本人以外が見ても気付かないな…」
イグロニス王家は聖遺物を隠し持っていた。
複製品を作るとは世界屈指の大事な武器が盗難されないための対策だったのか。
リナは、その事実を知り複製品とはいえ聖遺物の警備は相当厳重だったろうに何故盗まれたのか不思議でならなかった。
「実はな、この聖遺物の複製品がイグロニス王家から盗まれたらしいんだ」
「へえ、王家の一品を盗むなんて大胆な奴もいるものだ、相手はメンツにかけても取り戻しに来るんじゃないのか」
「それが見つかっていないらしいんだよ、経緯は不明だけど何故かここに聖遺物が持ち込まれたと」
「ワシも素材があれば作れるぞ、大体の構造は把握したからな」
「やるじゃない、さすが熟練の武器屋って事か。だけどコレは本物と同じ威力が出せないんだ。一箇所だけ不明な構造があって代用品で模倣したんだよ」
「不明な構造って何があったんだい?」
「この杖の中心部に四大属性の魔法を自動で振り分けて各属性で強化するという、どう考えても頭がおかしい人が作ったとしか思えない謎の構造があってね、普通に考えても全属性を平均的に強化する構造しか思いつかなくてそれで代用した」
リナはヴェルディムの話を聞いて考察した。
(マナの属性を各精霊力毎に強化して出力する、それは属性魔晶石を使えば出来る。
だけど複数属性を重ね合わせた合成魔法の場合、属性鉱石に他の属性マナが流れ込み減衰して威力が落ちてしまう)
(全属性を強化する構造なら威力が落ちた分をカバー出来るが、属性の割合が調整できないため、魔法の威力に上限が発生するデメリットがある)
(つまり、各属性の魔力を個別に増幅して最終的に合成出来るのであれば、合成魔法でも威力が落ちず、更に威力を強化できるため相当なメリットがある)
リナは、そんな構造を実現できる魔法杖というのは普通に考えてもどうやって実現するのかわからないという結論が出たのを納得してしまう。
彼女の口から出てきた言葉はヴェルディムの言葉を肯定するしかなかった。
「たしかに普通に考えてどうやってそんな構造が実現できるのか、わからないな…」
「だろう?まさかこの世界に一本しか無い聖遺物の杖をバラす訳にもいかないから、似たような機能で代用するしか無かったんだ」
二人の会話を聞いていたマスターが構造について考察して問いかけた。
「なんだかよくわからんが、聖遺物の中に隠された構造があるのか、この杖なら素材があれば復元できるが本物はもっと複雑という事なんだな」
「まあ、複製品と言っても完全なものを求められた訳じゃないからね、似たような部材で代用しただけだ」
「それにしては、金掛かってるよね…属性魔晶石四つに暗黒結晶石使ったりとか」
「属性魔晶石は向こうから提供してもらったよ、暗黒結晶石は龍のねぐら近くに、以前鉱脈をみつけて掘ってたんだ、今は入手無理だけどね」
「へえ、良いことを聞いた。今度取りに行ってみるかな」
「おいおい、相手は龍だぞ。魔法使いでもそう簡単に勝てるような敵じゃないぞ?」
「ちょっと龍族と縁があってね、そのうち交渉しに行くよ」
聖遺物にまつわる問題は、証言者も含めピースは揃った。
リナは一通り証拠が揃ったと思い、残った問題を解決しようと考えていた。
「ヴェルディム、明日この聖遺物を修理に預けた冒険者達の捕物があるんだ、貴方は制作者として証言をして貰えないだろうか」
「いや、それは出来ないな。王家との約束で作ったことは秘密にしなければならない。四百年経過したとしても約束は履行するのが私の信念だ」
「じゃあ、何で私達には話したんだ?」
「君達は、客の秘密は守るだろう?それだけだ」
リナは思った、ヴェルディムが客商売の本質をよく理解していると。
客の秘密は守る、商売人としての基本であり原則だ。
「だけど、作った責任もある、そこでだ一つ提案をしよう。捕物で犯人を引き渡す条件として相手側王家の人を呼ぶようにしてくれ」
「それは何故?」
「約束履行のためだ、詳しくは明かせない」
ヴェルディムの意図は不明だったが何か約束事があると皆は感じた。
複製聖遺物の正体と捕物の話、証言の問題などを話し合い、その日は解散となり翌日に向けて騎士団との大捕物へ向かうのであった。
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