23. モノ作り魔族二人の邂逅
門番の伝達で以前ディープダンジョンで出会った魔族が来たらしいという報告を受けて、伝令の人物と共にリナは東門に向かった。
東門の前に到着すると先日魔晶石採掘場の奥地に住んでいた魔族の女性『ヴェルディム』が門の通路にある縁石に腰掛けて待っていた。
「リナと言ったな来てやったぞ」
ヴェルディムの後ろに自分の横幅三倍位はあると思われる物凄い荷物が置いてある。
余りの荷物量にリナは圧倒されて中身について彼女に伺う。
「これ、何が入ってるんだ…?」
「色んな道具を作るための作業用工具だな」
「こんなに大量の荷物持てるのか?」
「ああ、魔法で物体を浮遊させる効果がついてるので簡単に持てるよ」
ヴェルディムは自身の身体と比較して五倍はありそうな袋に沢山詰められた荷物をまるで風船を持つように片手で軽々と持ち上げてしまう。
リナはこの魔法は使えるなと考え後で自分でも作ってみたいと思い記憶した。
都市国家内に入るには関所通関担当者に手数料を支払う必要がある。
だがリナは基本的に顔パス出来るため、支払いの請求先を伝えて通り抜けていく。
「この人は私の知り合いだ、通行税はタリスマンにツケておいてくれ」
「解りました!後ほど集金に向かいます!」
リナは、同じ魔族がいるランクルへ向かい彼女を紹介しようと考えていた。
これから同じ国で働く同士、そして紹介予定の道具屋と武器屋の結びつきもあるためそれが最善だと考えていたからだ。
ヴェルディムは、流れ行く街道から都市の構造を真剣に見つめながら感想を述べる。
「へえ…ここが都市国家か、なかなか文明が発展してるじゃないか」
「長年洞窟に籠もってたら外の雰囲気も余り知らないだろう、どうだい都市国家は?」
「以前訪れた国は、四百年前程前だったからな、まだまだ狭い国だった。その頃に比べたら文明レベルも進む…しかしこれは予想外だ」
「へえ、以前どこかに行ったことがあるのか?」
「なんて国だったか…?イ…なんとかって名前だったな、昔の話なので忘れたな」
彼女はどこかの国に従事していたのだろうか、何れ話が出来たらいいなと感じ雑談を続けながら目的の武器屋に到着し伝える。
「ここは?」
「以前話をしただろう?ここの武器屋にいる店長が貴方と同じ魔族なんだ、だから紹介しようと思ってな」
「なるほど、いささか緊張するな…何せ魔族との対面は先五百年ぶりだからな」
彼女の緊張感を感じながら、リナは武器屋の扉を開き中へと入る。
何時ものように店番をしていたコレットが元気に来訪の挨拶を大声で叫ぶ。
「いらっしゃいませ!ってリナさん…どうしたの?」
「ちょっとマスター呼んできて貰えるか、珍しい客人を連れて来たのでな」
「珍しい客って…もしかしてその人魔族か!?」
「ああ、ちょっと紹介しようとしてな」
「わかった、ちょっと待ってて!」
コレットは店の奥に行きマスターを呼びに向かう。
しばらくすると奥から彼女に連れられ、この店の主が現れた。
主人は平然とした顔を見せながら来客に若干驚きを見せているのを感じる。
「へえ、こりゃ珍しい来客だな…まさか魔族が来るとはね」
初対面のマスターに向けてリナは連れ立った人物について紹介を行う。
「こちら魔晶石採掘場に住んでいた魔族の女性『ヴェルディム』さんだ、都市国家で働くよう勧誘して来訪してくれた、道具屋の働き口を紹介するつもりだ、よろしく頼む」
「ようこそ都市国家に、ワシはこの武器屋ランクルのマスター「ヴォルデム」だ」
マスターは右手を差し出し握手を求めた、相手はその意図を察したのか手を強く握りしめ自身の気持ちを込め問いかけた。
「初めまして、貴方はヴォの一族なのか」
「そういった貴方は、ヴェの一族なんだな」
二人は会話で魔族の苗字で何かの違いか識別があるのか確認していた。
しかし、リナは二人の会話では全く意味が解らないためあえて問いかけて意味を確認しようと考え会話に割り込む。
「二人の会話だけじゃ、さっぱりだな何が違うんだ」
マスターは、苗字の意味についてリナへ解りやすいように説明してくれた。
「話すと長くなるんだが、掻い摘んで言うとヴォの一族は魔法に長けた部族、ヴェの名は、モノ作りに長けた部族ってところだ」
「なるほど、そんな違いがあったのか、でもマスターもモノ作りに長けてるじゃない」
「まあ、ワシは異端だからな面白いことは何でもやるがモットーだ」
ヴェルディムは妖艶な笑みを浮かべながら、正面に立つ魔族へある誘いを持ちかけてきた。
「どうだい?せっかく魔族二人で男女揃ったことだし、子供でも作るか?」
だが、相手はあっさりと拒否の姿勢を見せて相手を嗜めるように言う。
「申し出はありがたいが既にワシには嫁がいるんでな、お断りするよ」
「魔族の貴方が嫁だって、まさか相手は人間か?」
「いや…ワシの妻はエルフだよ、彼女は本当によく出来た自慢の嫁でなぁ!普段は店番してくれているんだが、今は子供が出来て産休して貰っている」
相手の惚気話を聞いたヴェルディムは、驚いた表情で二人に子供が出来たことに驚いている。
「魔族とエルフで子供が出来たのか?初めて聞いたが…」
「ああ、苦労したけど出来たぞ、頑張れば出来るのを実証した」
「そうか、それは残念だ…では、これからこの街で働くことになるので今後関わりあいがあるかもしれないがよろしく頼むよ」
「ああ、武器防具関連で仕事があればいつでもワシに相談してくれ」
二人の会話が終わった所で、リナはある事を思い出した。
そういえばモノ作りに長けているならレリックに関して何か古い知識を持っているかもしれない。
彼女に見せて何か情報が得られないか確認してみようと考えた。
「マスター、例の杖をヴェルディムさんに見せてあげられないか?彼女はなにか知ってるかもしれない」
「ん?あの杖か、コレット保管庫に仕舞っていた例の杖持ってきてくれるか」
「わかりました!マスター」
コレットが鍛冶場の奥から地下にある保管庫兼金庫に向かう。
厳重な鍵のロックを外し中に入ると、先日預かったレリックと思われる杖を取り出し、三人が待つお店のカウンターに持ってきてくれた。
リナは杖の正体について何か知っていないかヴェルディムに知識を伺う。
「この聖遺物について何か知っていたら教えてほしいんだ」
ヴェルディムは、杖を周囲から全方位で見回して驚きの言葉を放つ。
「この杖、私が作ったやつだな」
驚愕の事実にその場にいた全員の声が一致して叫ぶ。
「なんだって!?」
武器屋へ修復に持ち込まれたレリックと思われた杖が実はヴェルディム作成品だと聞き全員が驚愕して事実と真相を確認しようと試みるのであった。
小さな王国の最強魔法店は現在不定期投稿です。
1~2週に1話の間隔で投稿しています。




