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少年期 第九話
時間がたつのは思っているよりもずっと早いものだ。
気が付けば十一歳、この世界で生まれ変わって十一年になる。
昨日は俺の誕生日だった。
次の誕生日は家族と、友人たちとこのように過ごす事は無いと思う。
一応王都の学園に入学する予定だし……
今年の誕生日はラスやマール、それにコルトといった友人たちからプレゼントを貰ったりもした。この世界では六歳の時の大きな節目と十二歳の誕生日、それと十五歳、成人として扱われる年齢で盛大に誕生日を祝われる。
俺は来年の誕生日の時には王都の学園にいるはずなので先倒しで友人たちが祝ってくれたという訳だ。
コルトからはやっとの事で形となった小太刀、これが出来るまでなんだかんだで一年以上かかってしまった。
ほんの少しの知識しかなかったにしては中々の物になったんじゃないだろうか?
最終的には親っさんも協力してくれるようになった。じっさい焼き入れはまだコルトだけでは失敗することが多い。
ラスとマールからは魔道具となっている鞄を貰った。
魔道具の鞄といっても物がたくさん入るとかそういった物ではなく、汚れにくい、汚れを綺麗にする、普通の鞄よりは丈夫というようなものだ。
よく物語に出てくるような坊ネコ型ロボットのようないくらでも入るような鞄はいくらこの世界がファンタジーでも存在しないと思う。
というより今まで生きていてそんなもの聞いた事も見た事も無い。
家族からは別に特にこれといったものは無かったが普段の誕生日よりは豪勢な食事で祝われた。
六歳以降毎年のように来るシェリルとは学園でも会う事になるだろうから言わずもがな。
そんなこんなで十一歳になり、冒険者としてのポイントも順調にため込み、その報酬もほとんど手を付けずに溜めこんでいるので来年からの学園生活は多分問題ないだろうって感じだろうか?
最近ではルシオも俺の後をついてくるような年齢でなくなっているので、家にいても別々に行動することが多くなっている。
しかしあと数日間はシェリルが居るのでいつもよりは騒がしい。というか大変だ。
シェリルと言えば見た目は可愛く育っている。
それはもう十人ひとがいれば七人くらいは振り向くくらいには。
これは個人的な見解も含まれるので人によっては住人が振り向くというだろうが俺は七人くらいだと思っている。
そんなシェリルは見事に脳筋に育ってしまった。まあ予感はあったのだがここまで見事に脳筋になるとは流石に予想外と言えば予想外だろうか?
小さい頃から殴った時の感触が好きとか言ってたから予想通りでもあるのだがそれに磨きをかけすぎたせいで今の俺では全く歯が立たない状態だ。
武器を持たない素手での近接戦闘ではルークに引けを取らないくらいにまでなっているのが恐ろしいところだろうか?
そんなシェリルが毎日飽きもせず模擬戦を申し込んでくるのだ。これが大変と言わずに何というだろうか?
そして今俺は本日六回目の敗北を味わっている最中だ。
「流石はエレクですわね。同じ年の者でここまで私とやりあえるのはエレクだけですわ!」
「そんなこと言うけどずっと俺の負けが続いてるじゃないか?」
「私は魔術の方があまり得意ではないので近接戦闘では負けるわけにはいきませんの、現状だってエレクが魔術を用いた模擬戦だったら私は勝てていませんわ…… 悔しいですけどそれが現状ですもの」
「そんな事は無いと思うけど? 魔術発動させる前に負けそうな気がするよ……」
「まあ、それは私の目指すところといったところですわね」
「そうだ、たまにはルシオとやってみたらどうだ? ずっと俺とやっているよりはいいと思うけど?」
「ルシオ君は私ちょっと苦手ですの…… 呼吸を読みにくいというか…… 乱されるというか…… どうもうまく立ち回れない感じなのですよ。何度か相手をしてもらった事があるのですけど実際の技術だけでしたらルシオ君はエレクよりも上だと思いますわよ?」
「えっ? マジ?」
「まじ? それはなんですの?」
「あっ、えっとそれって本当?」
「ええ、でも総合的に見ればまだエレクの方が強い気がしますが」
「まあ、ルシオだしなぁ…… あいつ何をやってもそつなくこなすんだよな」
「私から言わせてもらえばエレクも大概ですわよ?」
「まあ俺も天才だからな!!」
「あら、そんなこと言っていたらすぐに足元をすくわれますわよ」
「うん、まあ冗談……」
こんな感じで一閃終わるごとに雑談を交えながら一日に何度もシェリルと模擬戦を繰り返すのがここ数日の日課となっている。
正直言うと面倒なので早く帰ってくれないかなぁって思っている自分も居たりするけど、これはこれで何気に楽しいとか思っている自分も居たりするのが不思議だ。
別に少女と触れ合えることが楽しいとか思っている訳では無いぞ?
俺はもっと女性らしい方が好きだからな!!
そういえばアンから聞いた話だと最近ルシオはソフィアという娘と仲が良いそうだ。
ルシオ同い年の街の娘という事だが、いつの間に仲良くなったのだか……
俺にはそういう仲の良い娘がいないというなのに……
それから数日してシェリルは予定通り帰っていった。
その間に何度も何度も模擬戦を繰り返し、俺が勝てた回数は三回、三十八戦、三十四敗、一引き分け、そして貴重な三勝だ。
実際にシェリルが言うように魔術を使って勝負すれば少なくともあと十勝以上は稼げたとは思うが男のプライドがそれを許さなかったのだ。
同じ土俵でやりあいたかったというのもある。
そのおかげか俺の体術もかなり成長したと思う。多分だが……
シェリルが帰ったので俺はアンと共に冒険者協会へと足を運んだ。
数日間顔を出していなかっただけだが何だか懐かしくも感じてしまう。
俺は冒険者協会についてすぐ依頼が張られているところへと向かった。
ふむふむ、なかなかポイントの高い依頼が無いな……
俺のポイントは現在四百八十六ポイント、あと十四ポイントふえれば二十五パーセント程報酬が増えることになる。
小遣いとかそういうのが一般的ではないこの世界ではわずかに増えるだけの金額でも大きなものとなる。
家の場合はある程度の者なら言えば買ってもらう事も可能かもしれないけど……
まあ今俺の受けられる依頼とかではよくて大銅貨一枚と言ったところだろう。
この世界での通貨は小銅貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、魔金貨と言った感じで価値が変わっていく。
これまで俺が生きてきた中でこれを日本円に当てはめるとしたら小銅貨が十円、銅貨が百円、大銅貨が千円、銀貨が一万円、大銀貨が十万円、金貨で百万円と言ったところだろう。
小銅貨十枚で銅貨、銅貨が十枚で大銅貨、大銅貨が十枚で銀貨と言った感じに十枚ごとに次の価値に上がっていく。
因みに物価自体は日本と比べると圧倒的に安かったりする。
一部の魔道具や武器などは高かったりもするが生活するだけなら三人家族でひと月くらすなら銀貨二枚ほどあれば生活できる感じみたいだ。
階級の高い冒険者になればそれこそ一回の依頼でひと月どころか一年分くらいの稼ぎをする者も多い。それだけ危険という事でもあるのだが、いうなれば一攫千金という訳だ。
人気があるのもまあ分かる。
俺だってコツコツと溜めてきた今までの依頼料はすでに銀貨十二枚分にも達している。
無駄遣いさえしなければ一人だけで生活するなら一年以上は生活できる金額だ。
因みに一般的な家庭の年収は凡そ金貨三枚分から五枚分と言ったところらしい。
魔金貨に至っては一般的には普及しているようなものではないらしい。
価値を言うならば金貨百枚に相当する。まあ一億円という事だ。
領主である家ですら魔金貨などは必要ないのでないのが現状だ。
聞いた話によると大口の取引や、国家間の取引などで使われるくらいだそうだ。
流通量も、通常の金貨とちがい魔力を帯びた特殊な金を用いた物を使うため少ないそうだ。
誰にせ瞑するでもなくお金の価値について考えていると、一つの依頼に目が留まった。
依頼内容
アイズの月第六日
北の森で薬草採取の手伝い
所要時間:半日程度
危険度:極少
報酬:銅貨五枚~
備考:出来高による報酬、最低銅貨五枚は保証します。
人数制限は五人 現在三人
「おっ、アンこれ結構良さそうだけどどうかな?」
「ええ、北の森でしたら危険も少ないですし問題ないと思います」
「じゃあちょっとこれに応募してくるよ」
「わかりました」
俺は受付に先ほどの依頼を受けることを告げに行った。
「あっ、その依頼ですか、エレク君で丁度締め切りですね。先程一人受けた子がいてエレク君で丁度五人目なんですよ」
「あっ、そうなんですか、間に合って良かったです」
どうやらギリギリセーフだったようだ。
俺が受けたことでこの以来の募集人数は満たされて掲示板からあの依頼が剥がされる事になる。
ポイントが幾つつくか解らないけど報酬は俺達が受けられるものからすると結構多め、出来高による報酬になるようだからもしかしたら大銅貨になるかも知れない依頼だ。
こういう依頼は結構人気が高いのですぐなくなってしまう事が多いのだ。
アイズの月は次の月になる、今からだと二週間後になる感じだ。
その後俺はいつも通り街をふらつき、顔見知りに挨拶などをしてその日を過ごした。
依頼までの二週間は特に何もなく過ぎて行った。
更新が遅くなりました。
現在体調を崩して休暇を取っているのでこの機会にまた書き溜められたらと考えています……
取り合えず今週いっぱいは休みにしたので回復に努めつつ書けたらいいな!




