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episode0017

 少年期 第八話


 次のコルトの父が経営する工房の休みの日、また俺は工房にお邪魔していた。

 前回途中まで作った短刀の続きを行うのが目的だ。

 続きと言っても波紋を作るのが今日の目的である。

 たしかこれは粘土とか砥石の粉などを混ぜたものを刀身に塗っていくんだったと思う。

 そして焼き入れをするんだったか?

 覚えている事はこの位で、ちゃんと全てを覚えている訳では無い事が問題ではあるが大まかにはこんな感じであっていたと思う。

 果たしてこれでうまくいくのか解らないがここはもうトライアンドエラーで繰り返すしかないと思っている。

 それにこれは俺の自己満足の為であって本来であれば別に日本刀の製法にこだわらなくてもいいのだ。

 砥石の粉は前回に来た時におやっさんに捨てないで摂っておいてもらう約束をしていたので問題ない。

 粘土質な物はルークに頼んで探してきてもらっているのでアンに持ってもらっている。

 この塗り方によって波紋が決まるはずだ。

 俺はおやっさんに取っておいてもらった砥石の粉と粘土を混ぜた。

 だが何か映像で見たのものと違っているように思う。

 触ってみてもなんかぽろぽろとした感じで、これ濡れるのか? といった感じだ。

 コルトも「これどうやって塗るんだ?」と尋ねてくる。

「うーん、水足してみるか」

「わかった、持ってくる」

 コルトは言うなりすぐ桶をもって水を汲みに行った。

 コルトが持ってきた水をゆっくり加えていく。

 段々と濡れる位に伸びてきた。何とかこれで行けそうな気がする。


 これはたしか薄く塗ったところは急速に冷やされて硬くなり、厚く塗ったところはゆっくりと冷えるので粘りのある柔らかさが残るとかだったはずだ。

 なので暑く塗る部分は短刀の背の部分から脇にかけてといった感じだろうか?

 まあ今回は失敗したとしても良いので思ったとおりにやってみる事にしよう。

 俺は慎重に作り上げた粘土を塗っていった。

「なあ、これは何の意味があるんだ?」

 コルトが訪ねてくる。

「うーん、多分こうすると研いだ時綺麗な波紋が浮かび上がる気がするんだ」

 俺が思いつきで考えたことにしてあるので言葉選びがなかなか難しいところだ。

 そんな事を悩みながら答えていたらコルトの父であるドルトンさんが今回初めて口を出してきた。

「おそらく領主様の床の坊主が言っているのは焼いて覚ました時の温度の変化を出すことを言っているんだろう。見たところ暑く塗ってるところと薄く塗っているところあるようだ」

「そう、まさにそれです!!」

 おやっさんが理解してくれたので後の説明は任せることにする。

 俺は塗ることに意識を戻した。

 短刀自体はそこまで長さが無いので割と早く塗り終えることが出来た。

 コルトも興味深げに出来上がったものを眺めている。

 この後は粘土が渇いたのを確認して焼き入れに入る。

 今日も既に炉には火を入れてもらっているからここに突っ込み赤熱させるだけだ。

 乾くまでの間少し休憩を入れる事にした。


 今日はまだ来てからさほど作業をしていないが、このように悪時間が出来ると思っていたので家から茶葉などを持ってきている。

 コルトにまた水を汲んできてもらい、コルトの家の台所を借りてアンがお湯を沸かしてきてくれる。そしてそのままみんなでティータイムとしゃれこんだ。

「うめー、俺こんなうめ―お茶初めて飲んだ…… エレクはいつもこんなの飲んでるのか?」

「ああ、いつもこれを飲んでいる訳じゃないけどまあそういう事になるな」

「羨ましいな…… 俺もエレクみたいにいいところの生まれだったら良かったのに」

「なんだ、うちに文句があるのか?」

「父ちゃん文句はないけど、俺だってうまいもん食べたり飲んだりしたいんだよ」

「サテラの作る飯だってうまいだろうが」

「まあ、母ちゃんの作る飯にも文句はないよ、でもほら…… たまにはいいものたべたいってきもちもわかるだろ?」

「俺には解らん」

 コルトとドルトンさんの話を聞いていてアンはくすくすと笑っていた。

 見ているとほほえましいので俺もつられて笑顔になっていた。


 休憩を終え短刀を確認するとちゃんと乾いていた。

 軽く表面を触ってみても大丈夫そうだ。

 さてそれじゃ焼き入れに入るとしよう。


 コルトに短刀を渡し焼き入れに入ってもらう。

 ペンチを大きくしたような道具でつまみ火にくべる。

 火にくべた後ふいごのような道具で火力を強めたりしながら短刀の位置を変えたりしてまんべんなく赤熱させていく。

 おおよそ全体が赤熱したのを確認した後、焼き入れの本番である水で急速に冷やす作業となる。

 コルトはためらいつつも水に短刀を浸した。


 パキッ


 何だかなっちゃいけない音が鳴った気がする……

 コルトもそれに気付いたのか顔が真っ青になっている。

 まあ今回は初めてだったので失敗覚悟だったが、ここで失敗してしまうとは……

 慌ててコルトが短刀を水から引き抜く。


 引き抜くと短刀の刃になる部分にひびが入っていた。

 失敗してしまったがちゃんとそりも入っているのでここまでは問題なかったと思いたい。

 これは温度差の問題だろうか? 熱する時間が長すぎたとかなのかな?

 おやっさんも近くに着て短刀を見る。

「ああ、これは使いもにならんな。失敗だ」

「ええ、これは熱しすぎてしまったかんじでしょうかね?」

「恐らくそうだろうな。まあ失敗しちまったが一回研いでみようじゃねーか」

「あっ、はい、お願いします!!」

 そうだ失敗したとしても波紋がうまくできているか確認したい。

 おやっさんが今日は研いでみてくれるそうだ。

 研ぎ部屋は離れとなっている場所で行われる。

 工房とは違いこちらには魔道具というものが置いてあるため万が一のことを考えて離されている。

 ただ研ぐのはやはり大変なのかここでは機械に似た動作をする魔道具が置かれているのだ。

 魔術具は魔核というものを用い作動させる。

 先日ラスの依頼でリチャードさんと森へ行ったときに聞いた魔核である。

 この研ぎ部屋にある物は足で踏むことにより高速回転する魔道具である。

 このような簡単そうな魔道具でもかなり高価なものになっているため工房と話している訳だ。


 おやっさんが何か板のようなものを踏むとやすり上の物が高速回転を始める。

 それに先ほど作った失敗作である短刀を近づける。

 やがてやすり上のものと接した短刀は火花を散らし削られていく。

 しばらくした後おおまかに研がれたものが出来上がった。

 大まかに研いだだけなので俺の知る日本刀のように美しさはまだない。

 このあと目の細かい砥石などで研ぐ必要があるのだろう。

 しかしドルトンさんは「ほらよっ」と俺に短刀を渡してきた。

 呆気にとられつつもそれを受け取る俺。

 受け取った短刀を見る。

 やはり美しい波紋も浮き上がってはいない、しかし全くできていないという訳ではないのでこの後本研ぎみたいなことをしたら大丈夫だと信じたい。

 そしてよくよく見てみるとは先の流れが逆になっている感じがする、焼き入れで刃にひびが入ってしまった以前の問題だ。

 今回の失敗はそう言った点からも良い経験になった。

 取り合えず研ぎ終わったものをコルトと共に検分していく。

「これはエレクが言うように今までにない模様が特徴的だな、かたちはこれでよかったのか?」

「ああ、これは片刃をイメージしていたんだ、なので容はこれで問題ない、刃先だけどこれ流がおかしいよな? どうしたらいいとおもう?」

「ああ、たしかに、これは次作る時にはどうにかできると思う、しかしあの焼き入れか? あの部分が難しいところだよな」

「ああ、でもこの模様を出すためにも、この微妙な反りの為にも必要な工程だと考えているんだけどどうだ?」

「まだ俺にはそこまでわからないけど、たしかにまっすぐに作ったのが少し反っているところを見ると必要なんだろうなという事は解るよ」

「今回はひびがはいって失敗しちゃったけどこれは何度かやれば感覚で解る物なのかな?」

「うーん、それは何とも言えないかな…… それよりもエレクこれを何度もやらせるつもりなのかよ…… 普通に作るのに比べてすげー大変なんだけどこれ……」

「まあ嫌というなら頼めないけど…… 出来たら完成するまで手伝ってくれたらうれしいかなと思ってるけど…… ダメ?」

「父ちゃんに聞いてみないと流石に解らない…… かな」

 まあコルトの言うのも分かるきがする。

 本来日本刀が出来るまではかなりの日数がかかるというし、この世界では魔術などもあり、今回はとりあえず適当な金属で作ったという事もあり日数はこれだけで済んだ感じだ。

 コルトをそれだけの時間拘束するわけにもいかないか。

 そんな事を思っているとおやっさんが「コルトにとっていい経験になるだろう。工房が休みの日ならいいぞ」と一言言ってくれた。

 これにより俺とコルトとの日本刀もどきを作る戦いが始まるのだった。

PVアクセスも4000を突破しました。

拙作に目を通していただいてる皆さまありがとうございます。

来週はなるべく毎日帰宅したいと考えているので一日一回の更新が出来ればと思っています。


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