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episode0013

 少年期 第四話


 フィア先生がこの屋敷からいなくなって早くも三ヶ月。

 この世界は一月が三十一日で区切られていて、一年は四百二日で十三ヵ月ある。

 地球よりも一か月多いが然程違いは感じられないと言ったところだ。

 三年に一度十三月が一日少なくなり三十日になる。閏年みたいな感じだな。

 正確な時間が解らないから何とも言えないがおそらく一日は二十三時間くらいだと思う。

 どうにかして正確な時間を分かるようにしてみたいと考えているがどうしたらいいか解らないので先送りになっているのが現状だ。

 そもそもこの世界の重力とかそういうのが詳しく分からないので振り子を作ろうにもそれが正確なのかも解らないのが先送りになっている原因の一つである。

 体感では変わらないと思うんだけどね。

 ただこの世界の人間は身体能力が地球の人間と違って高いのであてにならない。

 俺だってこの世界の住人なのだから……


 そんなくだらない事を考えつつ街へと向かっていた。

 今日はラスと約束があるのだ。

 俺の後ろにはアンがついて来ている。

 屋敷の外に出る時は必ずついてくるのだが、今となってはもう慣れてしまった。

 最初はちょっと邪魔だなーとか思ったりもしたものだが――


 屋敷からのんびりと歩いて体感一時間ほどだろうか?

 目的地であるリンディール商会に到着する。

 店に用事がある訳ではないので裏口の方に回った。

 裏口の扉のノッカーを鳴らすとすぐに従業員が扉を開けてくれる。

 もう何度も遊びに来ているので従業員も慣れたものですぐにラスを呼びに行ってくれた。

 そのまましばらく待つとラスが走ってやってきた。

「よう、エレクお待たせ」

「おう」

 この気安いやり取りは本来ならアウトなのだが、同年代の友人にかしこまられては俺が疲れてしまうのでやめてくれと何度か言ったらこのように接してくれるようになった。

 アンがいるがこれは黙認してもらっている。

 まあぶっちゃけて言ってしまえば、アンもアンで結構気安く接してくるんだが……

「まあとりあえず俺の部屋に行こうぜ」

「わかった、それじゃお邪魔するよ」

 ラスの案内に従って廊下を進み階段を上がる。

 この店は一階が店舗となっていて、二階は住み込みの従業員の部屋などがある。

 ラスとかこの店の家族となる人達は三階に住んでいる。

 さらにはまだ従業員とは言えない住み込みの下働きの人達は四階というか屋根裏的な所になるようだ。

 四階もとい屋根裏は大部屋のようになっていて結構な人数で共同部屋となっているらしい。


 三階に上がりラスの部屋へとたどり着いた。

 部屋の主が居るのでノックなどはせずにそのまま部屋へとお魔邪魔する。

「適当に座ってくれ」

「ああ、それじゃお言葉に甘えて」

 俺はいつもこの部屋に来た時に座る貞一に腰かけた。

 ラスはベッドに腰かけている。

 アンはこの場には居ない。

 夕方位の時間になると迎えに来てくれることになっている。

 よって今はラスと二人きりである。

 二人きりだからと言って変な事は絶対にない。

 お互いノーマルなので当たり前の事だが。

「それでいろいろ検討してみたんだけど、俺達の力だけで商品化するとなるとジャマイカとスゴーロクくらいしか無理そうな感じだな。

俺もそこそこ手先が器用だと思っていたんだけどトランプやマージェンだったか? これは無理だと悟ったよ。ジャマイカも本当ならエレクの作ってくれたもが理想なんだけど、これは贅沢は言えないしな」

「やっぱりそうなるよな…… ちなみにマージェンじゃなくてマージャンな」

「マージャンかマージャン、マージャン……」

「トランプやマージャンは裏面などで持っている物を把握させないためにつるつるにしたりしないといけない分制作難度があがっちゃうからな…… 慣れれば魔術で出来るとは思うんだけど」

「魔術を使わないと作れないのは現状だとダメだ、全てエレク任せになってしまうのは問題だからな…… だから魔術を使わないでも作る事の出来るジャマイカとスゴーロクで行こうと思ってる」

「ああ、俺はそれで構わないよ」

 俺達が何を話しているのかと言えば、この街に、いやこの世界に娯楽を提供しようと画策しているのだ。

 前々からラスから打診があった商品化についての話し合いという事になる。

 ジャマイカに関しては俺が最初に作り出した者より少しだけ進化させたものを考えているが果たしてうまくいくかというのはまだわからない。

 ジャマイカを作る時にサイコロが出来るのでそれを使った双六は簡単にできると思う。

 ジャマイカに関しては娯楽商品であるが知育も兼ねている分ラスはかなり本気の様だ。

 しかし双六にしても問題点が無いわけではない。

 この世界、識字率とか何気にかなり低いのだ。

 家の人達は皆字を書けるのが当たり前だったので暫く気づかなかったけど、一般家庭の人達は数字は理解できても文字を理解できる人が少ないのだ。

 ラスはこの街でもかなり大きいリンディール商会の息子という事もあり文字も読めるしある程度の算術も可能であるが……

 因みにマールは今必死に文字の勉強を始めている。

 算術もラスから教わったりしているようだがあまり得意ではないようだ。

 こういう事もありジャマイカにはかなりの期待を抱いているようだ。

 俺からしても日本での知識が役に立つので嬉しい限りではあるのだが……

「それで、ジャマイカの形状に関してはどうするつもりなんだ? 俺の魔術で作ったもの見たいにするのは流石に難しいと思うけど」

「それなんだけどな爺ちゃんとか父さんに色々使えそうなものが無いか聞いてみたら削った木を接着させることのできる素材があるそうなんだ。

だからそれを使って作ろうと思ってる」

「へえ、そんなのがあるのか。

それってふつうにうってるのか?」

「いや、珍しい物ではないのだけど売ってはいないようなんだ。

森に入れば手に入れる事は出来るみたいなんだけど、今回は冒険者協会に依頼を出してみようと考えてる。

依頼料がかなりかかるっていうなら一応自分で撮りに行くことも考えてるよ」

「森に行けば手に入るのか…… 出来たら俺も少し欲しいな。

何気に使い道が結構ありそうな感じだし」

「おっ、何か新しいもの思いついたのか?」

「いや、そういう訳じゃないけど、そういうのってあるとべんりそうだろ?」

「ああ、たしかにな」

 でも接着剤みたいなものがあるなら色々断念していたもの等も視野に入れることが出来るようになるのは確かではあるな。

 これは是非とも手に入れたいものだ。

 そんな事を離しながらしばらく時間をつぶしていた。

 結構話し込んである程度案をまとめ終わり二人で用意されたお茶を飲みつつ休憩をしていると扉の向こうから足音が聞こえてくる。

 バタバタと走っている音がだんだんと近づいてきた。

 そしてバンっとノックもなく度が勢いよく開かれた。

「なんで面白そうなことを私抜きで進めるのかな? かな?」

 恐ろしい笑顔で来るなり凄みを利かせてくるのはマールコットことマールであった。

 ラスからしたらマールは気心知れた相手ではあるのだがノックも無しにいきなり侵入してくるのはどうなんだろうかと思わないでもない。

「よう、マール勉強のほうはいいのかい?」

「こんにちは、エレク君」

俺に対しては少しだけ距離がまだあるのが少し寂しいところではあるがこれはまあしょうがないだろう。

本来であればラスみたいな方がおかしいのだから。

「勉強は…… ちょっと休憩中って感じかな? それよりもラス何でこんな楽しそうな事に私をのけ者にするのかな? 酷いと思うんですけど?」

「マールはいても何も役に立たないじゃんか……」

「へぇ、そういうこと言うんだ。言うんだ……」

 マールが同じことを二回繰り返す時はかなりご立腹な時だ。

 この時の表情は怒っては無いのだが怖い。

 笑顔が怖いというのはどういうことなのか桑しく知りたいところではあるが俺の中の何かが踏み込んではいけないと警笛を鳴らしているのでそっと視線を外して無関係を装う事にする。

 その後暫くあーだこうだと言い合いが繰り広げられた。


 マールも落ち着き改めて話し合いがスタートした。

「そういえばマールは今文字どのくらい読めるようになったんだ?」

「うん、エレク君が書いてくれたお話の半分くらいまで読めるようになったかな」

「結構進んでるな」

「うん、ラスにも手伝ってもらったりしてるし、単語だっけ? それを一つずつ抜き出して書いてくれているからとても分かりやすいよ」

「わかりやすいとか言ってるけどさ、最初単語も分かっていなかったから俺が付ききっきりで教えたしな、あれはすげー大変だった」

「それはしょうがないじゃん…… 今まで教えてくれる人とかいなかったし…… ラスは良いよね? 家で教えてもらえるんだもん」

「まあうちは商会だしな、文字とか読めないとやってられないってのもあるけど」

「うちは普通の家だもん、本だって普通の家にはないんだから文字が読めるほうが珍しいと思うんだけど?」

「たしかにな」

「でもエレク君が書いてくれたお話、本とはちょっと違うけど文字がたくさん書いてあるものがうちにあるから何と言うか少しお金持ちなった気分だよ」

「それだけでお金持ちって…… まあ言いたい事はなんとなくわかるけどな」

「ちなみにあのお話を売ったらいくらくらいになるんだろう……」

 ラスとマールの話を聞いているとマールが良からぬことを冠えだしてしまった。

 これはここらへんでストップさせて本題に入った方がよさそうだな。

「あれは言うほど価値はないんじゃないか? そもそも布の端切れに俺が適当に話を作って書いただけだしさ」

 本当は日本で生きてた時に知った物語を思い出しつつこの世界風にアレンジしたものなんだけど、こちらの世界でそれを知る人はいないので俺が作ったと言っても間違っていないのだ。

 ちょっと罪悪感があると言えばあるけども。

「エレク…… お前の知識が偏ってるのは仕方ないけど、はっきり言うぞ。

あのエレクが書いた話は欲しいという人からすれば金貨を積むくらい価値のある物だからな?

俺もあれを読ませてもらったが話の内容も素晴らしいし、一つ一つの単語を横に書き出してあるので文字を覚えるための物としても良くできている。

父さんの見立てでも金貨五枚くらいは出す人がいると思うって言ってたよ。

これがもし紙に書かれていたとしたら金貨二十枚くらいだろうって」

「はぁ!? そんなにするの?」

「えぇぇぇ、そんなにするの?」

「ああ、そもそもあの物語自体に価値があるんだよ。それが金貨五枚って事だ」

「ちょっと家に置いておくの怖くなったんですけど? てか家にある物の中で一番効果なんじゃないかな……」

「まあ、あれはマールのあげたものだから好きにしていいよ」

「エレクお前…… もうちょっと常識盛ってくれよ」

 ラスは大きく溜息を吐き呆れた様子で俺を見てきた。

 そんな子を言われてもね…… 俺からしたら大したものじゃないんだからしょうがないと思う。

 てかマールの為にほかにも色々思い出しつつ物語を書き溜めているんだけどな…… これは言わない方がいいかもしれないね。


 その後ジャマイカと双六の話を大まかにまとめたのだった。

 ジャマイカは接着剤みたいなもの次第。

 双六はまずは文字を使わない単なる先にゴールを目指すだけの物、途中に絵というか記号みたいなものを用意してそれをイベントとするという事になった。

 俺からしてみるとぶっちゃけこの双六の何が面白いのか分からないが最初はそれでいいらしい。

 もちろん文字が読める富裕層向けの物も用意するとの事だったがそれはまた次の機会という事になった。


 日が傾きだし辺りをオレンジ色に染める頃合いになってアンが迎えに来たので俺はラスの家を出て家へと戻った。

 帰り際アンに何をしていたのか尋ねられたので大まかな内容をはなしたら物語を今度読ませてほしいと言われたので適当に頷いておいた。

 こうして娯楽玩具の開発へと取り掛かったのだった。


気付くと3000PVまであと少しというところまで来ました。

ブックマークも増えており嬉しい限りです。

次は目指せユニークアクセス1000って感じでしょうか?


ご感想、ご意見お待ちしております。

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