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闇にのぼる  作者: ブレイン


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4/5

宣告


「これより、お前たちはこの国の勇者として——」


 王の言葉が、広間に響く。

 そのまま話が進みそうになった、その時だった。


「……ちょっと待ってください」


 声を上げたのは、山本だった。


 一瞬、空気が止まる。

 兵士たちの視線が、一斉にこちらへ向く。

 でも山本は、気にせず続けた。


「さっきの話……まだ分かないことだらけなんですけど」


「……ほう。なんでも聞くがよい。答えられる範囲で答えよう」


「じゃあ——」


 山本が一瞬言葉を選んでから、はっきりと口にする。


「僕ら、元の世界に帰れるんですか?」


 その一言で、空気が変わった。


 ざわつきが広がる。


「それや!それ一番大事やろ!」


「帰られへんとか、ないよな……?」


「いや、あるわけないやろ……?」


 口々に声が上がる。

 全員が、同じことを思っていた。

 王は、少しの間だけ沈黙した。

 そして——


「現時点では、不可能だ」


 あまりにもあっさりと、そう言った。


「……は?」


「いや、ちょっと待ってくださいよ!」


「どういうことなん!?」


 一気に騒ぎが大きくなる。


「無理って何!?勝手に呼んどいてそれはないやろ!」


「帰せや!」


 木村が声を荒げる。

 他のやつらも、抑えきれずに言葉をぶつけていく。

 当然だ。納得できるわけがない。


「だまれ」


 低い声だった。

 でも、その一言で空気が凍りついた。

 さっきまで騒いでいたのが嘘みたいに、誰も声を出せなくなる。

 王は、ゆっくりとこちらを見下ろした。


「我々も、好きでこのようなことをしているわけではない。だが、この世界は危機に瀕している。そのために、お前たちの力が必要なのだ」


 淡々とした口調。

 でもその奥に、はっきりとした圧があった。


「元の世界へ戻る術は、現時点では存在しない、だが——」


 一瞬、言葉を区切る。


「魔王を倒せば、可能性はある」


「……それって」


 小林が呟く。


「つまり、戦えってことやろ」


 誰も否定しなかった。


「ふざけんなよ……」


 木村が、低く言う。


「なんで俺らが、そんなことせなあかんねん」


 その言葉に、王はほんのわずかに目を細めた。


「無論、強制はせぬ」


 一瞬だけ、空気が緩む。


 だが——


「だが、この世界で生きる以上、無関係ではいられぬ」


 静かに、続ける。


「魔物は人を襲う。守られぬ者は、ただ死ぬのみだ」


 その言葉は、あまりにも冷たかった。


「衣も、食も、住まいもすべてを保障するのは、この国だ」


「その意味が分かるな?」


 誰も、何も言えなかった。

 それは、選択肢があるようで、最初から、なかった。


 重い沈黙が落ちる。

 その中で、王が再び口を開く。


「……他に聞きたいことはあるか?」


 その問いに、すぐに答えられる者はいなかった。


 ただ一つ。

 さっきの言葉が、頭から離れない。

 “これで奴らにも——”

 あれは、一体なんだったのか。


「……いえ」


 結局、誰も何も言えなかった。


「そうか」


 王は小さく頷く。


「ならば、今日は休むがよい」


 手を軽く振ると、兵士たちが動き出す。


「部屋へ案内しろ」


 俺たちは、そのまま広間を出ることになった。誰も、言葉を発さない。


 ただ——

 さっきまでの現実が、重くのしかかっていた。


 帰れない。

 戦うしかない。


 そして——

 何かを、隠されている。

 それだけが、はっきりしていた。

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