初めての異世界
——眩しい。
最初に感じたのは、それだった。
ゆっくりと目を開けると、視界いっぱいに白い光が広がっている。
「……っ」
思わず目を細める。
さっきまで、神社にいたはずだ。
花火を見ていて——それで。
「……ここ、どこや」
起き上がろうとした瞬間、周りから次々と声が上がった。
「うわっ、なんやここ!?」
「え、ちょっと待って、何これ……」
「みんなおるか!?」
顔を上げると、そこには見慣れた顔があった。
中村、山本、田中、木村、小林、井上、佐藤、加藤。
全員いる。
「キャー」
中村が悲鳴をあげる。
その声で、少しだけ現実感が戻ってくる。
俺たちは、広い石造りの部屋にいた。
床には見たこともない紋様が描かれていて、その中心に、俺たちは立っている。
周囲を囲むように、鎧を着た兵士たちが並んでいた。
そのさらに奥。
一段高い場所に、豪華な装飾の椅子。
——玉座。
そこに、一人の男が座っていた。
「目が覚めたか」
低く、よく通る声だった。
年は四十くらいだろうか。
王冠をかぶり、重そうなマントを羽織っている。
「よく来てくれた、勇者たちよ」
男はゆっくりと立ち上がる。
その動きひとつで、周りの兵士たちが一斉に頭を下げた。
「ここは、レグナス王国。
そして私は、この国の王である。アイエル=ヴァン=レグナスだ。」
「……王様?」
小林が思わず声を漏らす。
「え、ちょっと待って。ドッキリとかちゃうん?」
「そんなわけあるか」
佐藤が冷静に周囲を見渡しながら言う。
「えーと、すみませんがここはどこですか?」
王はゆっくりと頷いた。
「そうだな、説明が先であったな」
一拍置いて、言葉を続ける。
「お前たちは、異なる世界からこの地へと召喚された」
その一言で、空気が固まる。
「……は?」
「いやいや、そんな——」
ざわつく声が広がる。
当然だ。
こんな話、いきなり信じられるわけがない。
だが、周囲の光景は、あまりにも現実離れしていた。
石造りの壁。
見たこともない服装の人間たち。
そして、この異様な空気。
「この世界は今、危機に瀕している」
王の声が、再び響く。
「魔物が各地で暴れ、人々の暮らしを脅かしているのだ」
「その脅威に対抗できるのは——」
ゆっくりと、俺たちを見渡す。
「勇者だけだ」
沈黙が落ちる。
言っていることがよく分からない。
「……ちょっと待ってください」
口を開いたのは、山本だった。
「その話が本当だとして……なぜ俺たちなんですか?」
もっともな疑問だった。
王は、少しだけ目を細める。
「異世界より召喚されし者は、特別な力を持つ」
「この世界の理では測れぬ力だ」
「それが必要なのだ」
答えになっているようで、なっていない。
でも、それ以上踏み込む空気でもなかった。
「まずは力を確認しよう」
王が手を上げると、兵士の一人が前に出る。
透明な水晶のようなものを持っていた。
「これに触れよ。
お前たちの力が分かる」
「……ゲームみたいやな」
小林が小さく呟く。
誰も笑わなかった。
最初に前に出たのは、山本だった。
「俺からいくわ」
そう言って、水晶に手を置く。
次の瞬間——
淡い光が、水晶の中に広がった。
「……ほう」
王が低く呟く。
「光の力……適性が高いな」
「おお、すごいやん!」
小林がテンション高く声を上げる。
少しだけ、空気が和らぐ。
その後も、順番に触れていく。
「回復……支援型か」
「身体強化……前衛向きだな」
「魔力適性、高いな」
それぞれに、何かしらの力があるらしい。
現実感のない状況なのに、どこかで納得してしまう自分がいた。
——最後に、俺の番が来る。
ゆっくりと、水晶に手を伸ばす。
冷たい。
触れた瞬間、暗い闇が広がる。
「……?」
兵士が、ほんの一瞬だけ眉をひそめた。
でもすぐに、何事もなかったように口を開く。
「……闇の力だな」
「素晴らしい……光に闇だと……!
原初の力だけでなく、他の者の力も……使える者ばかりだ」
「これで……奴らにも——」
「王よ!」
王が興奮した様子で何かを言っていると横にいた太った男がたしなめる
「???」
「すまない。少し取りみだしてしまったようだこれより、お前たちはこの国の勇者として——」
話は、そのまま進んでいった。




