中学最後の夏祭り
「あっつ。毎年去年より暑い思うわ」
全身にまとわりつくような熱気に思わず愚痴をこぼす。
遠くから聞こえる太鼓の音と、人のざわめき。
——今年も、いつもの祭りが始まっていた。
「おーい、黒川!こっちこっち!」
人混みの向こうから手を振っているのは山本だった。
その隣には田中と木村。もういつものメンバーが揃ってる。
「遅いやん、お前」
「いや、普通やろ。お前らが早いねん」
そう言いながら近づくと、木村がニヤッと笑う。
「どうせ中村待ってたんやろ」
「は?ちゃうわ」
「いや顔でわかるって」
「うるさいって」
からかわれるのも、もう慣れたもんだ。
このメンバーとは、保育園からずっと一緒。
気づけば、こうやって集まるのが当たり前になっていた。
「お待たせー!」
少し遅れて、中村が駆け寄ってくる。
ポニーテールが揺れて、いかにも楽しそうな顔をしていた。
「ごめん、家の手伝いしてて遅れた」
「全然大丈夫」
山本が笑って答える。
その後ろから、小林がひょこっと顔を出した。
「はい全員集合ーって感じやな」
「まだ全員ちゃうやろ」
そう言うと、井上と加藤も少し離れたところから歩いてくるのが見えた。
佐藤もその後ろにいる。
これで——9人。
うちのクラス、全員だ。
「なんかさ」
小林が空を見上げながら言う。
「こうやって全員で集まるんも、最後かもしれんな」
「は?なんでやねん」
「いや、だってもう受験やで?高校バラバラなるかもしれんやん」
少しだけ、空気が止まる。
確かにそうだ。
このメンバーで、こうやって何も考えずに笑っていられる時間も、長くはない。
「なんやかんやまたあつまるやろ」
山本がそう言って笑う。
「せっかくの祭りやし、楽しもや」
「そいな!」
小林がすぐに乗っかる。
空気は、すぐに元に戻った。
屋台を回って、たわいもない話をして。
笑って、食べて、また笑って。
——いつも通りの、夏の夜。
「そろそろ上の神社んとこ行こか」
「もうそんな時間か?」
田中の言葉に、山本が少し驚く。
「今年も花火綺麗に見えるかなー」
中村が楽しそうに言う。
俺たちはそのまま神社の方へ向かう。
祭りの明かりが、少しずつ遠ざかっていく。
賑やかな音も、だんだんと小さくなっていく。
代わりに聞こえてくるのは、虫の声と、足音だけ。
やがて、古びた神社が見えてきた。
人の気配はほとんどなくて、静かで。
さっきまでいた場所とは、まるで別の世界みたいだ。
境内の端から見える夜空は、確かに綺麗だった。
少しして——
ドン、と低い音が響く。
夜空に、大きな花火が開いた。
「おお……」
誰かが小さく声を漏らす。
色とりどりの光が、空に広がっていく。
その光に照らされて、みんなの顔が一瞬だけ浮かび上がる。
笑ってるやつもいれば、ただ見上げてるやつもいて。その中にいる自分も、きっと同じような顔をしてるんだと思う。
——この時間が、ずっと続けばいいのに。
ふと、そんなことを思った。
その時だった。
ふっと、空気が変わった。
風が止まる。音が、消える。
「……あれ?」
誰かが呟く。
でもその声も、どこか遠く感じる。
そして——
「……なんか、おかしくない?」
気づいたときには、口に出していた。
次の瞬間。
視界が、白く染まった。
光。
何も見えないほどの、強い光。
「え、なにこれ——」
声が、途切れる。
足元の感覚が消える。
体が浮くような、不思議な感覚。
——その中で。
ひとつだけ、はっきりと分かった。
理由は分からない。
でも、確実に
「……これ、やばい」
そう思った瞬間。
意識が、途切れた。
——そして。
目を覚ましたとき、そこはもう——
知らない世界だった。
こんな感じにした。修正した方がいいとこあるかな




