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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第一部 覚醒編
95/285

第85話 疑いかけられてたんで暴れるぞ


 アルの言う通りエルドベルグはメガラニカの住民で溢れ返っていた。ギルドの職員が真夜中にも関わらず、雑炊を避難民に渡している。皆、目には強い光があり、疲労はしているものの、絶望はしていない様子だ。

 もう少しでギルドハウスというところまで来た。そのとき――


 ショウ達を30人近くの衛兵と数人の冒険者が剣を向けて取り囲む。アドルフが殺気だつが、ショウが手で制す。暴れるにはまだ情報が足りないのだ。


「ショウタ・タミヤ。貴様がオークの内通者であるとの密告があった。抵抗しても無駄だ。大人しく、衛兵詰所まで出頭せよ!」


 アドルフはショウの制止をもう聞くつもりもない様子だ。剣を衛兵達と冒険者に凄まじい殺気を垂れ流しながら構える。冒険者達は総指揮官アドルフに剣を向けられ著しく慌てふためいている。


「き、貴様、逆らうのか。これはこの都市を管理するエルドベルグ領主の命令であるぞ!」


 衛兵というよりは貴族の文官らしき豚のように太った男が額に青筋を張りながらショウとアドルフを睨み付けて来る。

 衛兵はアドルフの殺気に完全に畏縮しているのに、この豚のような男が何ともないのは殺気すら関知できないせいであろう。加えて言えば衛兵に守られ安全だとでも思っているのかもしれない。

 ショウの背中のフローラがエルドベルグ領主の言葉にビクッと反応した。どうやら関係者らしい。フローラをそっと地面に下ろす。


「あっ……」


 フローラは地面に下ろされた事について僅かな非難の目をショウに向けて来る。だが、領主はフローラの知り合いらしいし、ここで放っておいても死ぬことはあるまい。フローラの意思などこの際無視である。

 それでは情報収集のお時間だ。ショウはアドルフに少し任せろと目で合図をする。虫けらの皆殺しなどいつでもできる。今は一番知りたい事を聞くのみ。アドルフも渋々頷く。


「わかりました。その前に、少々聞かせていただいてもよろしいですか?」


 ショウは豚に敬語を使うという虫唾が走る行為をあえて選択する。


「下賤な平民で、しかも我々人間をオークに売り払おうとした不届きものに答える口はもたぬ」


「そう仰らずに、一つでいいんです。俺の他に誰がこの件で捕まっているんです?」


「ふん、そのくらいなら構わんか。

 メガラニカの臭い平民どもをこのエルドベルグに招き入れたヘクターとかいう男のエルフと、ラシェルという小娘のエルフだ。こ奴らも、貴様らと同様オークと繋がっておる。

 この二人の奴隷化は私の進言を受け入れたエルドベルグの領主が既に決定している。ヘクターとかいう男は炭鉱で死ぬまでこき使い、ラシェルという小娘は売春婦として売り飛ばしてやる」


 ショウの顔から表情が消える。目の前の豚とエルドベルグの領主を殺す事は決定した。後は今ラシェルが無事かどうかだ。もしラシェルに指一本でも触れようものなら、豚の関係者は楽には殺さない。永劫の苦しみを与えてやる。

 ショウが僅かでも動揺したのが嬉しいのか豚文官のテンションが急劇に上昇している事がショウにも読み取れた。もう少し聞けそうである。


「エルフの少女はもう捕えられているので?」


 ニヤ~と嫌らしい笑みを浮かべる豚文官。ショウの顔に初めて焦りの表情が生まれる。勿論演技だが、豚文官はそのショウの演技の表情を楽しむかのように得意そうに話す。


「捕縛に気付いたアナとかいうエルフの女がラシェルという小娘を逃がした。勿論、逃がしたエルフの女は直ぐに捕縛してたった今尋問中だ。

 そのラシェルという小娘もたった今見つかった。先ほどSSランクの冒険者――チェスとSSクラスの冒険者――剣帝キース・クラクストンが捕縛に向かった。時期に捕まるだろう。

 ふん、エルフという下等な種族のガキとはいえ大層美しいらしいからな。たっぷり身体の隅々まで尋問してやる」


(今のところ無事か……。翔太のやつが、ラシェルとヘクターに【乱光包】と【雷切】をもたせている。俺が駆けつけるまでは余裕で持つだろう。チェスと剣帝が動いたということは、デリックもこの事件の裏で動いていた。取り敢えずデリックも殺そう。

 それにしてもこの豚、本当に馬鹿だな。ベラベラ必要もない事まで喋りやがる。あと一つ聞くか?)


「最後に他に俺とエルフ達を捕縛すべきと仰った方はいらっしゃるのですか?」


 豚文官が醜い顔をさらに醜く歪める。


「ビフレスト王国――エルバート陛下だ。偶々エルドベルグにいらっしゃって、大号令をおかけくださったのだ」


(ビフレスト王国自体が俺の敵という事か。面白いじゃねぇか! 俺は日和った翔太とは違う。たっぷりと地獄をみせてやんよ!)


 ショウの表情が悪鬼のごとくニタリと歪む。殺気すら見せていないのにも関わらず、豚文官、周囲を取り囲んでいる衛兵、冒険者のみならず、フローラ、アドルフでさえも恐怖で顔が引きつっている。


「アドルフ、仕事だ。テメエはアナとかいうエルフを救え。もし、そのエルフが衛兵に殺されていたり、犯されたりしていたら衛兵を皆殺しにしろ。一匹も生かしておくな! これは命令だ」


「了解した」


 アドルフはすぐに応じる。素直に応じたのはショウに命じられた事もあるのだろう。だが、それ以上に必死でオークと戦った者達の名誉まで辱めた下種な人間達が心底許せなかったのかもしれない


「ちょ、ちょっと待っ――」


 フローラがショウの行為を止めようと言葉を紡ごうとするが最後まで続かない。ショウの凍えるような目はこれ以上少しでも口を開けば殺すと語っていたからだ。


「な、何をしておる。早くひっ捕らえろ!」


 ショウは濃密な殺気を放出する。ショウの身体から出た濃密な殺気は、ショウから同心円状に濁流のごとく広がっていき、衛兵達と冒険者の意識を軒並み一瞬で刈り取る。ドッサと泡を吹いて次々に倒れる衛兵と冒険者。

 皮肉な事に殺気に鈍い豚文官だけが腰を抜かして失禁する程度で済んでいた。

ショウは三日月型に口角を吊り上げながら、豚文官にゆっくりと近づいて行く。悪魔子爵マンティコアでさえも恐怖させた笑みだ。ただの人間である豚文官では耐えられようもない。

 豚文官は怪物――ショウから逃げようとするが、腰を抜かして立つことができず、四つん這いでゴキブリのように四肢を動かす。


「わひっひいぃぃぃ~~~~!」


 悲鳴を上げて四つん這いで逃げようとする豚文官の元までいき、背中を足で踏みつけて地面に縫い付ける。勿論、手加減は最大限していた。豚文官は手足をバタバタさせて逃れようとする。


「はい、豚く~~ん。質問タイムで~~~~す。今から言う質問に答えられるかな~~? 答えられなければお兄さんがお仕置きしちゃうぞ! どんなお仕置きかって? う~ん、そうだね。じゃあ、骨を一本づつ折っていくとかなんてどうだろう?」


 ショウが豚文官の右手の甲を踏み砕く。


「おぎゃあああああああ!!!」


 面倒なので数本まとめて折ってしまったがまだ骨なら沢山ある。豚文官は豚のような醜い顔に涙と鼻水による化粧しながら、器用にのたうち回っている。


「え? でもそれじゃあ、つまらない? 確かに! それじゃあさ、足先から少しずつスライスしていくとか?」


 ショウが右脚の指先をそぎ落とす。


「ぎぃいやああぁあああああああああっ!!!」


 豚文官は想像を絶する痛みにクの字になり、痙攣している。

 ショウは口角を吊り上げる。美しい顔に浮かぶ笑顔は想像を絶する恐怖なのだろう。ショウを見て失神しそうになるが、想像を絶する痛みで現実に引き戻されている様子だ。


「ん? そんなんじゃ生ぬるい? そうだね~。お兄さんもそう思ってい――」


 豚文官に抵抗する気力など微塵も残ってはいなかった。


「な、な、なんでもしゃべりゅう! ゆる……じて!」


(おい、おい、おい、もう吐くのかよ。実に根性のない豚だ……)


「それじゃあお兄さんが質問するよ。いいかい?」


 豚文官は痛みも忘れたように何度も頷く。


「ラシェルはどこ?」


「宿屋キャメロンの……2階の一番奥の……通り沿いの……部屋!」


(ん? 俺の部屋じゃねえか! 翔太はラシェルに自分の部屋を教えていなかったと思うが…………今は考えるよりも行動するべきだな)


「アナとかいうエルフの訊問場所は?」


「衛兵詰所の地下三階だ」


(衛兵詰所の地下三階か……どう考えても手遅れっぽいな。もう楽に殺してはやらん)


「最後、テメエに直に命じたのは誰?」


「そ、それは……」


 翔太は即座に、左手を踏みつけ力を徐々に強くしていく。ベキョベキという骨が少しずつ折れる耳障り音が周囲響いて行く。

 少々芝居がかった脅しにも飽きてきた。早くラシェルのところ行きたい。


「いぎゃああぁああああぁぁぁあああぁぁあああ!!!!」

 

 少しずつ骨を砕かれている音に絶叫が混じりあう。コツは気絶しないギリギリの痛みを与えることだ。


「バ、バートウィッスル卿にい゛ばれまじだ……」


(バートウィッスル卿ね。此奴も抹殺リスト入りだな。この豚はどこからどう見ても下っ端だ。これ以上何も知らねぇ)


「本来ならもっと(なぶ)るところなんだがよぉ。生憎今日は殺さにゃならん奴がわんさかいる。テメエに関わっている暇はねぇ。ひと思いに殺してやる。感謝しな」


 ショウが豚文官の頭を踏みつけ力を入れようとする。


「動くな!!」


 数十人の気配が突如出現する。どうやら完璧に囲まれている。敵に《隠密》スキルを持つ者がいるのだろう。


(馬鹿共が……遠距離攻撃していれば、俺は無理でもアドルフくらいは致命傷を与えられたかもしれんのに。この程度でラシェルに手を出そうとしたのか?)


 声のする方は後ろから聞こえた。肩越しで振り返る。デリック、チェス、マンティコアの戦闘直後ギルドハウスであった蒼髪の女がショウの様子を窺っている。

 豚文官が味方の登場に息を吹き返す。安堵のせいか、言葉の呂律が回り始めている。


「き、きしゃま、平民の分際でこの私を傷つけたちゅみ万死にあちゃいする。ラシェルとかいうこむちゅめも、散々部下の相手をしゃせたあと、ごうもんのかぎりをつくしてやるぞ!

 さあ、デリック卿、この不届きものを殺ひてくりゃはい」


「…………」


 デリック達は無言でショウを取り囲む。

 

 ラシェルへの暴言にショウの狂気が膨れ上がる。徐々にショウの殺気に闘気が混じり、紅の覇気を全身に(まと)い始める。アドルフに見せたときとは比べものにならない程の危険で濃密な覇気が漏れ出し辺りに充満する。

 その覇気がショウを取り囲んでいる一流であるはずの冒険者の意識を刈り取っていく。気絶程度で済んでいるのは、まだショウの意思とは無関係に覇気が漏れ出しているに過ぎないからだろう。いわば、質は高くても量がない状態なのだ。


「くくっくくくはははははっはは!! 愚か! 実に愚かだ! すぐにエルドベルグを離れれば、数日間は寿命が延びたはずなのになぁ~。此奴等自分から死に来たぜぇ。笑えよ! アドルフぅ~~」


 狂ったように天を掲げて、覇気を撒き散らすショウ。すでに取り囲んでいる冒険者の半数がショウの覇気に当てられ気絶していた。

勿論、豚文官も気絶したが、ショウが頭を踏む足に力を入れ直ぐに意識を覚醒させる。豚文官は気絶と痛みによる覚醒を繰り返していた。

 豚文官が一向に動かないデリックに助けを求める。


「はりゃく、デリック卿、この不埒者をこりょちてくだしゃい」


 涙目で懇願する豚文官。どうやらデリック達も動きだすらしい。ショウの覇気に当てられふらつきながらも、剣を構える。

 ショウはアドルフを横目で見ながら指示を送る。


「アドルフ、テメエはアナとかいうエルフの女を救出へ向かえ。予定通りアナとかいうエルフに何かあれば衛兵は皆殺しにしろ。ただし、アナの身に危険が及びそうなら即脱出だ。

 俺はこの雑魚共をぶっ殺したらすぐラシェル達の保護に向かう」


 アドルフが大きく頷く。ショウは凶悪な笑みを浮かべる。無意識に指に力が入りパキパキと鳴る。ここまでイラつかせてくれる敵も初めてなのだ。ストレス発散の対象くらいにはなってもらおう。


「殺ひぇ! 早く儂を助けるのりゃあ!」


 豚文官の耳障りの声を聞くのに正直うんざりしていたショウは、殺そうと足に力を込めようとした。


「その必要はない!!」


「ああ?」


 デリックの大声に再び足の力を緩めるショウ。

 デリックの声は豚文官にはまさに目の前にぶら下がった蜘蛛の糸だったのだろう。顔が希望に満ち溢れていた。だがそれもデリックの次の言葉により絶望へと変わる。


「ショウタも、ウーゴ卿もどうやら盛大に勘違いをしているようだ。俺はショウタを捕えに来たわけでもなければ、殺しにきたのでもない。

 俺が此処にいる理由はウーゴ・ピッグ子爵、君だよ。君に捕縛命令が出ている」


「わたゃひを捕縛だひょ? しょんな出鱈めをひゅうなど、でりっく卿でもひゅるしましぇんぞ」


「出鱈目じゃぁねえ! 君、いやお前の行動は数日前から監視していた。ブレインの構成員らしき者と会っていた事もな。だが捕縛しようにも証拠がなかった。そいつの身分、恰好、財産すべて綺麗な商人そのものだったからな。

 そんなとき、お前のショウタとラシェル、ヘクターの捕縛の進言が出た。進言を受けるふりをするよう領主と王に頭ぁ下げて頼み込み、罠を這ってたのさ。

案の定、馬鹿なお前は再び件の商人と会っていた。今度は、隠密スキルを有するものにお前達の会話全て音声記録のマジックアイテムで記録してもらったから証拠もばっちりだ。後はお前が行動を起こすだけだった。そしてお前はまんまと罠に嵌ったんだよ」


「しょ、しょんなにゃあ……――? ヒ、ヒィッ――!」


 周囲の冒険者達の途轍もない憎悪の視線が一斉に自らに向いている事に気付いたのだろう。ウーゴは獣人族ではレイナを人間族ではヴァ―ジルを、エルフ族ではラシェルを豚に売ろうとしたのだ。当然といえよう。


「ショウタも矛を収めろ。発明王と、マレット公爵家を本気で怒らせたのだ。この男はどの道、最悪の未来しか待ってはいない」


 ショウは舌打ちをしつつ、アドルフに目で合図し周囲を確認する。

ショウの出鱈目な覇気に当てられ7割の者が数時間の夢の旅に旅立っていた。死人がいなかったのが不幸中の幸いかもしれない。

フローラはSSクラスだけあり、気絶はしていなかったが、すっかり怯えきった目で身体をガタガタと震わせながらショウを見ている。


「ラシェルは無事なんだろうな?」


「もちろんだ。もともと、フェイクの情報だ。ヘクター、ラシェル、アナは俺から事情を話して安全な場所で休養中だ」


(な~るほどなぁ。ラシェルがいる場所が俺の今宿泊している場所だったのも、俺にこの罠を知らせるためか……。アホか! まわりくどすぎんぞ!)


 ショウは肩を竦めて宿屋キャメロンに戻ろうとする。取りあえず、ラシェルの安全は確認した。今晩ショウがすることはもうない。

 何よりもう限界に疲れているのだ。それにこの阿呆な自らの失態を考えると、さっさと布団を被って寝てしまいたかった。ラシェルが絡むとショウは翔太以上に冷静ではなくなるらしい。


「ショウタ、アドルフ、フローラ疲れているところすまないが、もう少し付き合ってくれ。ヘクターに事情は聴いている。例の件だ」


(悪魔についてか。どの道、デリックに説明するつもりだったしなぁ。構わねぇか……)


「わかった。此奴等疲れているみてぇだ。俺だけでもいいだろ?」


「いや俺も行こう。俺には説明する責任がある」


 すかさず、アドルフはショウの提案を拒否し付いて来るという。


「ぼ、僕も行くよ」


 なぜかフローラまで行くと言い出した。フローラは頑固だ。ついてくるなと言っても無駄だろう。それにもはやショウはフローラなどどうでもよい。好きにすればよいのだ。

 ウーゴ・ピッグという名前からして豚のような名の貴族は衛兵に連れて行かれた。

 ショウの殺気や覇気で気絶した者達を気絶しなかった冒険者達が頬を叩くなどして現在覚醒させようとしている。


 十数分後にはほぼ全員が覚醒した。

 他の冒険者にロニーとフローラをおぶっていくように指示し、身軽な身になって歩き出す。後ろから暗い視線を感じたが気のせいだろう。


               ◆

               ◆

               ◆


「ショウタちゃん。久しぶり!」


 チェスがショウの肩を後ろから叩いて来た。


「チェスか……。さっきは悪かったなぁ」


 ショウはたった今軽い自己嫌悪に陥っていた。チェスに対しては悪いとは微塵も思っていなかったが、自らの気持ちを静めるために謝罪をするショウ。


「別にいいさぁ。そんな事より、イメージ以前と変わってない? ワイルドになったというか? 別人じゃん?」


「だろうな。別人だからな」


「へ? 君、ショウタちゃんじゃないの?」


 この返答は意外だったらしく、チェスは目を白黒させていた。


「ああ、俺はショウ、ショウタとは双子の兄弟とでも理解しておけ」


「ふ~ん、双子ね……」


 何とも意味ありげな視線を向け、チェスはそれ以来大した事は聞いて来なかった。

 蒼髪の女がその言葉を話すショウを胡散臭そうに見ているのに気付く。

 その舐めまわすような視線に嫌気がさしていたので、少しからかう事にする。


「おい、女、俺に用か?」


 素早く、蒼髪の女の傍に音もなく移動し、蒼髪の女の鼻先スレスレに顔を近づける。


「っ!!? な、な、な――」


 蒼髪の女は言葉が出ないくらいに硬直して、口をパクパクさせている。全員前を歩いていて幸いにもこちらを見てはいない。慌てふためく蒼髪の女を見てショウの悪戯心がさらに刺激される。

 そのまま蒼髪の女の顎を優しく持ち上げショウの唇を女の唇に触れる。


「ん……っ!!?」


蒼髪の女は今自分が置かれている現象を理解できないのか呆けてしまっていた。

ショウは直ぐに青い髪の女から離れスタスタと歩き始める。ヒット・アンド・アウェイという奴だ。こんな事を地球ですれば間違いなく刑務所行だが、ここは異世界、このくらいのガキのような暴挙なら許される……と思う。

そうだ。寧ろ、拷問されている間もずっとこの気持ち悪い視線を浴び続けたのだ。今までの視線の駄賃とでも思ってもらおう。

 面白いくらいに以後、粘っこい視線が消えた。ショウを観察すれば、再び同様の辱めを受けるとでも考えているのだろう。清々しながら歩いていると、ギルドハウスに着いた。



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