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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第一部 覚醒編
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第7話 宿屋に泊まろう 冒険の準備もしよう

 翔太が振り返り辺りを窺うとレイナとフィオンが冒険者ギルドの出入口の前に佇んでいるのがわかった。翔太と視線が合うと、レイナがブンブンと翔太に手を振ってくる。今の高揚している気持ちも相まってとても嬉しくなって、小走りに彼女らの下まで走っていく。


「待っててくれたんだね。ありがとう。レイナ! フィオン!」


「馬鹿ね~。ここまで来て挨拶もしないでいなくなるわけないでしょう。そこまで私達薄情じゃないわよ」


「そうだぜ。どうだ? 冒険者になった気分は? ショウタ、ずいぶん冒険者に興味ありそうだったからな」


「うん。最高だよ。これでこれからの目途が立った。本当にありがとう」


「そうか。そりゃ、良かった。良かった」


 背中をバンバンと勢いよく叩かれながら、心の底からレイナとフィオンに感謝をする翔太。

 レイナとフィオンがいなかったら、確実に空から落ちたあの魔の森の場所で死んでいた。モンスターの餌になるか、モンスターから運よく逃れたとしても身体が動かなかったのだ。あのまま餓死していた可能性が高い。だからこの大切な獣人の友人達にいつか恩返しをしようと心に誓った。

 そこでフィオンから夕食の提案をされる。


「今日はいろいろあったし腹減ったろ? 宿屋をとったら、夕食でも一緒にどうだ?」


「うん。喜んで!」


 翔太達3人が冒険者ギルドを出ると、ギルド建物の左隅にある馬など動物を休ませる厩舎(きゅうしゃ)のような場所に人だかりができていた。


(あれ、何だろう?)


 翔太の疑問とは対照的にレイナとフィオンは『またか』とどこかうんざりしたような表情をその顔に浮かべていた。


「あの人だかりって何?」


「あれディートバルトの見物人よ」


「ディートバルトって、あの狼だよね?」


 翔太にはディートバルトは牙と身体が巨大な狼にしかみえなかった。狼などより魔の森でみたモンスターの方が翔太にとってはよほど珍しく恐ろしいものだったのだ。

 それにこの都市に入る際のフィオンの説明では、モンスターのテイム自体は珍しいものではなく、冒険者ギルドの登録さえしておけば、騒動になることはないとのことだった。それなら狼程度で冒険者がいちいち驚く意味が解らない。だからこその純粋な疑問だった。


「お、狼? まあ、翔太の世界の人間にはそう見えるのか……。

ディートバルトは、狼じゃないわ。というよりそもそも獣でもない。あの子は神獣よ」


「神獣? 神獣って何?」


 翔太のその大層に驚く様に、レイナの中の何かを刺激したのか、自慢げに両手を腰に当てて説明をする。前も同じようなシチュエーションで同様の仕草をしていたので、これは彼女の癖であるらしい。その仕草に翔太は若干心が癒されながら今度は笑わないように気を付けながら彼女の説明に翔太は聞き入る。


「神獣とは神様の使いの獣の事よ。獣というよりは精霊に近い存在かな。だから大きさもある程度なら変幻自在。さすがに姿は変えられないみたいだけどね。ほらみてよ。厩舎に入ってから大きさが普通の狼の大きさくらいに小さくになっているでしょう?」


 生憎と人だかりができていてはっきりと見えなかったが、確かに普通の狼の大きさになっているようだ。だが翔太には同時にある疑問が浮かんだ。


「それはわかったけどさ。なんで他の冒険者の人達はディートバルトが神獣だってわかったの? どう見ても僕には狼以外に見えないんだけど? それとも狼のテイムってそんなに珍しかったりする?」


 それを聞くとレイナは気まずそうに視線を泳がせる。フィオンがそんなレイナに心底呆れたような視線を向けながらも事の真相を教えてくれた。


「それはな。レイナがディートバルトの登録の際に、神獣だとバラしちまったからなんだよ。おかげで、この町ではいつもどこに行っても人だかりってわけさ。

それに物見見物なんざ、まだましなくらいだ。前回この都市に来たときなど、ディートバルトを拝む連中が列をなしていたこともあったからな。あのときはホントまいった。途中でディートバルトを連れて行こうとしたら猛烈に恨まれてな」


「だって受付の人がディートを狼っていうんだもん」


 俯いて言い訳を言うところを見ると多少は反省をしているらしい。土を蹴って行き場のないやるせなさを誤魔化すところが実にレイナらしいが。


「はは。でも確かにディートバルトって神々しい感じがするよ。すごいね。神獣と一緒に旅をしているなんて。どうやって知り合ったの?」


 翔太がディートバルトを褒めると今までのレイナの(まと)っていた陰気な雰囲気が消失し、明るい(さわ)やかな笑顔により塗りつぶされる。


(よほど嬉しいんだろうな。でもホント、レイナって単純だよね)


 そんな失礼なことを内心で思っているとは(つゆ)も知らず、レイナは得意げに説明をしてくれた。


「ディートが仕える土地神と私達の一族の御先祖様が大昔にある契約をして、私達がその契約を守る代わりに、ディートが私達に力を貸してくれるの。でも今回は私を心配して勝手にディートがついてきちゃたんだけどね」


よほどディートバルトがついて来てくれた事がうれしいのかレイナは満面の笑みで得意げに話す。


「まあなぁ。レイナとディートバルトは昔から兄妹のように育ったからな。ディートバルトにとってレイナは世話のかかる妹みたいな存在なんだろうな」


 最近姉との関係があまりうまくいっていなかった翔太にとってレイナとディートバルトとの関係は少し羨ましかった。


 翔太達は人込みをかき分け、ディートバルトを連れて冒険者ギルドを後にする。



             ◇◆◇◆



 翔太達が宿泊する宿屋は中流区域でもやや上流区側にあった。宿泊代が高くないか不安に思ったので、そこのところをフィオンに尋ねたところ、今から行く宿屋は上流区に近いところでは唯一ともいえる高級店ではない宿屋らしい。フィオンの知り合いが店主を務めているらしく金の件は心配しなくても良いと言われてほっと胸をなでおろす。



 宿屋は赤いレンガ作りの大きな洋館のようなお洒落な建物だった。フィオンの後ろに続いて建物内へ入る。建物内の内装も豪勢ではないものの、かなり手入れが行き届いている様子が素人の翔太であっても読み取れた。木の匂いの独特な臭いを嗅ぎながら宿屋の受付に行く。


「よお、アンナ! 元気か? とりあえず3部屋で一週間泊まりたいのだが開いているか?」


 フィオンが尋ねると、『アンナ』と呼ばれた受付のレイナと同じ年頃の少女が応対をしてくれた。彼女を観察すると、この都市の人には珍しい長い黒髪であった。その黒髪がその整った顔をより引き立てている。


「フィオンのお兄さん。こんばんは。私はいつも通りだよ。レイナちゃん、また今晩冒険の話聞かせてね」


「こんばんは、アンナ! 今日の夜開いているよね? いつも通りここの食堂が閉店したら話しましょう」


 どうやらレイナとアンナは既知の仲らしい。年齢が近いからかかなり仲が良い様子が窺えた。それが少し羨ましくわずかな疎外感を感じつつも話の流れを見守る翔太。


「こら、アンナ! お客さんと話し込むんじゃないよ!」 


奥から恰幅のいい女将さんらしき女性が出てきてアンナを咎める。


「ご、ごめんなさい」


 アンナを一睨みすると、女将さんらしき女性は翔太達に視線を向ける。


「元気そうだね、フィオン、レイナ。そちらの坊やは初めてだね」


 フィオンとレイナは女将さんらしき女性と簡単な挨拶を交わし、翔太もアンナと女将さんらしき女性をフィオンから紹介された。この女将さんらしき人物は名前を『ナタリア』といい、思った通りこの宿屋キャメロンの女将(おかみ)であるらしい。


 アンナは翔太が宿に泊まるのが初めてだと聞いて張り切りながら宿泊の説明を始めた。その説明によると1泊5000G、1週間以上連続で予約すると5%offらしい。

 また今回に限りフィオンにまとめて3部屋とってもらった。これはフィオンの翔太に対する最後の餞別でもあったし、フィオンの冒険者のクラスがAクラスであり割引が効くからでもあった。フィオンの冒険者のクラスがAクラスであることは、道中聞いていたがこれほどのメリットがあるとは思いもしなかった。


 後で詳しくこのクラスの割引について聞いたところ詳細は以下の通りであった。


 SSSクラスは、宿屋が完全無料、武器防具屋、アイテム60%offにもなるらしい。もっとも、SSSクラスともなると、武器防具に関しては金を払うからぜひ作らせてくれという店さえある。有名な冒険者に使用してもらう事がその武器屋の名前の向上になるからだ。


 SSクラスは宿屋が80%off、武器防具、アイテムが40%off。


 Sクラスが宿屋50%off、武器防具、アイテム30%off


 Aクラスが宿屋30%off、武器防具、アイテム10%off 


 Bクラスが宿屋10%off、武器防具、アイテム5%off 


 Cクラスが宿屋5%off 


 翔太達は部屋に荷物を置くと、この宿屋、『キャメロン』の食堂へ移動し、少し早い夕食を取り始めた。


「ショウタ、お前、これからどうするんだ?」


 食べ始めてしばらくするとフィオンが翔太に尋ねてきた。


「とりあえず、近くで弱いモンスターを倒してレベルを上げるよ。慣れてきたら簡単なクエストをこなすつもり」


 これはレイナとフィオンの戦闘シーンを見ながらずっと考えていたことである。

 柚希、雪、日葵を見つけ元の世界に帰すためには、この世界の隅々まで探索する覚悟が必要だ。地球への帰還はただでさえ見つけるのが困難な情報なのだから当然である。

 とすれば当面、魔物との戦闘を避けて通れない。今後様々な冒険を生き残るためにも、冒険に耐えられるレベルまでレベルアップを図る必要があるのである。


「そうか。それがいいな。本当はな。冒険者になりたてのHクラスでは通常、雑務等から初めて行く。その雑務をこなすうちに、周囲やギルドに認められ先輩冒険者と同じクエストをこなす機会が与えられる。そこで先輩冒険者からいろいろなことを学んで、次第に強くなっていくものなんだ。だから、本当ならショウタには、雑務の仕事を進めるべきなんだが、お前の場合はそんな悠長なことをやっている場合でもないんだろう?」


「うん。僕にはすぐにでも探し出して逢わなければならない人達がいるんだ。それに元の世界の帰還方法はすぐに動き出さないといつまでも見つけられそうもないしさ」


 それを聞いて、フィオンは少し腕を組んでまた瞑想を始めてしまった。レイナはよほどお腹が減っていたらしく、翔太達の話に混ざらず一心不乱に食べ物を口に運んでいた。

 こんな所はまだまだ子供だなと翔太は内心微笑みながらフィオンの瞑想が終わるのを待つ。


「なあ、ショウタ。俺達は約一か月間この都市にいる。一か月後には今度は南の都市に行かなければならないが、それまでの間俺達とパーティを組んでみないか?」


 先ほどの話の流れからすればフィオンは先輩冒険者の役をしてくれるということだろう。これは翔太にとって願ってもないことだ。正直いって、翔太の平和ボケした身体と精神で、魔物に一人で勝てるとはとても思えない。特に翔太は元の世界では虐めにあうくらい体力には自信がない。確かに祖父は昔から有名な武術の道場を営んでいたが、家族で唯一翔太だけが武術を学んでなかった。

 だがフィオンがなぜこんなにも翔太に対し親切にしてくれるのか疑問に思うのも確かだ。


「ありがとう! フィオン。ぜひお願いします。でも、なぜ僕にこんなに良くしてくれるの?」


 翔太の言葉にフィオンは若干照れているような仕草をしながらその理由を述べた。


「それはな。ショウタ。俺も駆け出しのペーペーだったときに、ある人に同じようにしてもらったからさ。そんでもって、そのある人ってのがな、ショウタと同じ異世界人なわけよ。もちろん、お前さんのその謙虚な態度や殊勝な心掛けも一役買っているがな」


 翔太と同じ異世界人がフィオンにした親切が翔太に反ってくる。世界って思ったより狭いという感想を持ちながら翔太はその異世界人に心から感謝した。そして自分の行動が今度訪れるかもしれない異世界人に対しても、少なからず影響を及ぼすことも十分に認識したのである。


 ご飯を食べた後レイナから、食後のアンナとの談話に混ざるように言われ、少しだけ話しをしたが、よほど疲れていたのだろう。あまりにも眠くて話始めて30分くらいで部屋へ戻ってベッドに倒れるように眠った。





 朝になり着替えて一階の食堂へ降りていくとレイナとフィオンが既に席について待っていてくれた。『おはよう』と簡単に挨拶を済ませ、翔太も席に着く。


「今日がショウタの冒険者としての最初の第一歩だ。まず、武器と防具を買い揃える必要があるな」


「アイテムもでしょ?」


 レイナとフィオンは自分の事のように楽しそうに相談をし始めた。おそらく小学校に入る子供のランドセルを選ぶ両親のような心境なのだろう。子供に戻ってしまったような、そんな気持ちに苦笑いをしつつ朝食を平らげた。





 中流区でもメインストリートからかなり離れた場所にフィオンのおすすめの武器・防具屋があった。


「ガルトのおやっさん、今いるか?」


 フィオンは剣と盾の印の入った看板のある小さな店に入る。その店の看板には『カヴァデール』と表記してあり、その店の名前であることが窺われた。フィオンは店に入るとすぐ受付にいる20代後半くらいの男の人に尋ねた。


「親方ですか? 只今、鍛冶場で剣を打っておりますので、すぐに会えるかは保障しかねますが、お伝えだけしておきますね。お名前をお聞かせください」


 男の人は、フィオンの名前を聞くと店の奥の部屋へ入り、暫らくして再び受付カウンターに戻ってきた。


「あと、10分ほどで出来上がるのでお待ちくださるようにとのことです。お時間大丈夫でしょうか?」


「ああ、問題ないぜ。待っている」


 親方と呼ばれる人が来るまで、翔太は店の中の武器と防具を見て回った。ゲーム好きの翔太にとってこの場所はまさに宝の山だった。置いてある剣について、レイナに簡単に説明してもらいつつ、目を輝かせながら武器や防具を眺めまわした。

最後の方は世話好きのレイナでさえも、目を煌めかせながらマシンガンのように尋ねてくる翔太に心底うんざりした様子であった。


 そんなこんなで10分間という時間は飛ぶようにすぎ、店の奥から髭を生やした小柄でかつ屈強な人物が出てきた。その人物をみたとき、翔太は思わず心の中で歓声を上げた。


(ドワーフだよ。ドワーフ。当り前だけど、初めて見た)


 このドワーフがガルトなる人物なのだろう。ドワーフは翔太のキラキラした視線に、少し引き気味になっているようだ。顔が若干引き攣っている。


「おやっさん、忙しいところ悪いな」


「儂は別に構わんよ。今日はそこまで忙しいわけではない。それで今日は何の用だ?」


「この坊主に武器と防具を見繕ってもらいたいんだ」


 ガルトは不機嫌そうに翔太を見て言った。


「こんな小僧が冒険者の真似事か。死ぬぞ」


「ははは、まあそういうなって。この坊主の名はショウタだ。冒険者の真似事ではなく、れっきとした冒険者さ」


 鋭い目で翔太を見るガルトの視線に居心地が半端じゃなく悪い翔太は思わず視線をはずした。それを見てガルトは落胆したような表情を顔に浮かべて言った。


「フィオン、お前の紹介なら飛び切りの物を用意しよう。だがな、才能も覚悟もない奴に儂の武器・防具は売るつもりはない」


 さすがに、この発言は翔太にとっても異論があった。確かに才能はないかもしれないが、覚悟がないわけではないからだ。

むしろ、翔太にとって生まれて初めてともいえるくらいの強い覚悟をもって望んでいる。だから逸らしていた視線を再びガルトに向けて睨み返した。正直怖かったが、ここで武器を売ってもらえなければこのまま野垂れ死ぬかもしれず、その恐怖の方がはるかに勝っていたからである。だから必死に睨み返した。翔太とガルトは暫らく睨み合っていたが、ガルトが満足そうにその顔に笑みを浮かべた。


「いい目だ。才能はともかく覚悟はあるようだな」


そして、カウンターから出て翔太の傍まで来ると全身を舐めまわす様に注視し始めた。ガルトが翔太を観察するにつれ、当初の不機嫌な顔が次第に真剣な顔に変わっていく。

ガルトの表情の急変に翔太は戸惑い恐る恐る尋ねる。


「あ、あの……」


すると、ガルトは翔太の全身をベタベタと触り始めた。翔太は状況に全くついていけずフィオンとレイナに助けを求めようと視線を向ける。だが二人も呆気にとられたような表情をしてガルトの奇行をみていた。さすがに気持ち悪くなって止めるように言おうとしたら、ガルトは手を止めて、先ほどとは比べものにならないほどの神妙な顔で翔太に向き直った。


「お前さん、名前は何というんだ?」


「ショウタ・タミヤです。ショウタとお呼びください。」


 フィオンとレイナだけでなく、受付の男性も驚きの表情を浮かべている。


(いったいなんなのさ。確かに身体をベタベタ触られて名前を聞かれたけど、それだけだよね? なんでそんなに驚くんだろう?)


 翔太は訳が分からなくて頭がパニックを起こしそうだった。フィオンとレイナがこれほど驚く意味もわからないし、今まで表情を崩さなかった受付の男性が、ガルトが翔太の名前を聞いた途端、驚愕の表情を浮かべたことの意味もサッパリ分からなかった。


「ショウタ、お主、武術を小さい頃からやってこなかったか?」


「いえ、僕は剣術も武術も経験がありません。確かに父と祖父は武術の道場を営んでいましたが、僕は小さい頃に数か月習ったに過ぎません。だから素人同然です」


 ガルトは『納得がいかぬ』という表情を浮かべながら少しの間思案していた。


「まあいい。合格だ。儂の武器と防具をやろう。少しここで待っておれ」


 ガルトはそういうと、店の奥に姿を消した。


「す、すげ~じゃねか! おやっさんが、名前を自分から覚えようとするなんてめったにないことだぞ。よっぽど気にいられたようだな」


 フィオンが興奮気味に翔太に自らが驚いていた理由を説明すると、受付の男性もそれに同調した。


「そうですよ。親方が名前を自分から聞くなんて何年振りのことか。3年前に訪れた剣帝キース・クラクストン以来ですよ」


 そもそも、翔太は剣帝キース・クラクストンなる人物が誰か分からないのでどのくらいすごいのかは全く判断できなかった。

翔太の疑問にレイナが即座に教えてくれた。

剣帝キース・クラクストン。世界でたった5人のSSSクラスの冒険者であり、様々な偉業を達成した逸物らしい。もっともこの世界自体に馴染んでない翔太にとっては実感など全く湧かなかったが。


 奥からガルトは一振りの黒色の鞘に入った武器と黒色のローブを携えてきた。


「こ、これは……」


 フィオンは、ガルトが持ってきた武器と防具を見た途端驚きで呟く。レイナも受付の男性も目を大きく見開いていた。


「まずこの武器はミスリルを主体として刃など重要な部分に少量だが青生生魂(アポイタカラ)を使ったものだ。魔剣や聖剣のような特殊能力はないが、お前さんのような者にはむしろこちらの方がうってつけだろう。加えてこの武器は異世界人の武器、【刀】だ。ショウタは威力をもって力任せに切りつける剣よりも、技で切れ味が変わる刀の方があっておる。

このローブはミスリルと黒龍の鱗を糸状にして編んだものだ。物理的防御だけではなく、魔法的防御も極めて強くできておる。たとえドラゴンのブレスをまともにくらっても、この服で覆っている部分はキズ一つつかぬだろう」


 ガルトの説明に、呆けたようになっている周囲の中で一番早く覚醒したフィオンが弾かれた様に発言した。


「おい、おい、おい。おやっさん! それいくらするんだ? どうみても、一般人が買える代物とも思えんぞ」


「当り前だ! 儂の最高傑作を一般人なんぞに売るわけなかろう。もとよりいくら金を積まれても売るつもりはない。これは儂の道楽じゃ。ささっとそれらを持って行け。金などいらん」


 そういうとガルトはショウタに黒色の刀と黒色のローブを預けて店の奥に再び戻って行ってしまった。ガルトの姿が消えてからしばらく一同は誰も言葉を発しなかった。再び口を開いたのは受付の男性だった。


「これ……本当にすごい武器と防具ですよ。見るだけでも震えが来ます。親方はこのビフレスト王国では一番の腕の鍛冶屋です。その最高傑作とは……」


「ああ、俺もこんなすげぇ物初めて見る。しかもこの【刀】、あの人が使っていたのと同じ武器……か……」


「…………」


 受付の男性は興奮し、フィオンは昔を回顧し、レイナは無言という三者三様のリアクションをとりながら、翔太はガルトに貰った刀を強く握りしめた。


 翔太はローブを身に着け、刀の鞘を腰につけた刀装着用の専用ベルトに装着した。受付の男性に御礼の挨拶をして武器・防具屋『カヴァデール』を出た。

次にアイテム屋へ行き生命力を回復するポーションと魔力を回復するエーテル、毒消し薬、痺れ回復薬等を多量に買い込んだ。

ちなみに、ポーションとエーテルには、下位、中位、上位、最上位があり、それぞれ、500G、1000G、1万G、5万Gすることが分かった。最上位のポーションなんて買う人がいるのだろうかという素朴な疑問を持ちつつも、冒険のための全ての準備が完了したのである。



 お読みいただきありがとうございます。励ましの感想ありがとうございます。本当に感激しております。頑張りますのでよろしくお願いいたします。

 今日は仕事が休みなので後3~4話投稿します。

(加筆話はもう少しお待ちを!! 第三者の視点を入れるつもりです。何かリクエストがあれば最大限こたえるので感想がメッセージボックスにでもその旨を入れておいていただければ幸です)

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