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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第一部 覚醒編
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第6話 冒険者の登録をしよう

「冒険者の登録をしたいのですが」


「本日のご利用、どうもありがとうございます。この度ご説明をさせていただく『ヴァージル・マレット』です。どうぞよろしくお願いいたします」


 懇切丁寧に受付の美人のお姉さんヴァージルが応対してくれた。

 彼女は年齢が二十歳くらいであり、172cmある翔太と丁度同じ程の背の高さがある。グラビアモデルのような引き締まった体型はツインテールにした色艶(いろつや)のある金色の長い髪と合わさり異性を引き付けてやまない。さらに大きく切れ長の青い目は神秘的で吸い込まれそうであり極めてバランスの正しい上品な美貌をより一層引き立てている。

 加えて、彼女は白を基調とする服装をしており、やや短めのスカートに白のストッキングをはいており、全体としてゾクッとするほどの異性を引き付ける魅力がある。現に柚希という超高レベルな魅力の塊である姉をもつ翔太でさえも受付のお姉さん――ヴァージルを一目見たとき思わず頬を赤らめたくらいだ。


「ではまずこの所定の用紙に必要事項を書き込んでいただきます。失礼ですが代筆は必要でしょうか?」


 翔太は道中フィオンから聞いたことを思い出していた。この世界は、翔太がいた日本と異なり、ほぼ100%の人が読み書きをできるわけではない。せいぜい共通語であるアースガルズ語で40%の識字率に過ぎない。だから、ギルドや一流の宿や店では必ず代筆が制度化されているらしい。これはまだこの世界に来て間もない翔太にとって非常に好都合だった。まだこの世界の文字は一度も見る機会こそなかったが読めない可能性もかなり高かったから。


「はい。代筆をお願いします」


「わかりました。ではお名前、年齢、性別、種族ついてお聞かせください」


「ショウタ・タミヤと申します。年齢は17歳、性別は見ての通り男です。種族は人間です」


「ショウタ・タミヤ様ですね。ありがとうございます。冒険者の登録料は10万Gになりますが、お支払いただけますか?」


「はい払えます。ちょっと待ってください。えっと……これだ」


 翔太はフィリオに貰った道具やお金を臨時に入れるための布袋から、このエルドベルグに向かう道中にフィリオに借りた30万Gの中から1万Gの金貨10枚を取り出して、受付のお姉さんであるヴァージルに渡した。


 ちなみに、翔太がフィオンに道中聞いたことによれば、銅貨1枚が100G、銀貨一枚が1000G、金貨一枚が1万G、白金貨1枚が100万G、朱金貨が1000万Gの価値があるらしい。

 エルドベルグの都市の並のサービスの宿屋で5000~6000Gであるからフィオンに借りた30万Gは大体、この都市で働く人と一か月の給与に相当すると解してよい。

 そして、冒険者ギルドカードには金を貯蓄するシステムがあり冒険者ギルドがある街ならばどこでも下ろすことができるらしい。冒険者ギルドがないのは本当に小さな村ぐらいであることからすれば、これがどれほど便利なシステムかわかるだろう。


 このシステムと冒険者ギルドカードを作ったのが異世界人と聞いたとき翔太は複雑な心境に陥った。

 確かに、同郷の人の活躍を聞くのは素直に嬉しい。だがこのような高度なシステムを構築し、高性能な機械を作ることは長い時間がいるはずであり、これを作った人はどうやらこの世界に長期に滞在していることが窺われる。作成者が自ら進んで異世界に残っているのならばそれが一番よいが、その可能性は極めて低いと考えてよい。やはり自ら生まれ生きてきた世界が一番良いのだ。それは元の世界にさほどの執着がないはずの翔太であっても、帰りたいと強く思う事からも明らかである。そして、その事実は元の世界に戻ることが容易なことではないことを暗に示していた。

翔太は若干ブルーになる気持ちを顔に出さないように気を配りながら金を数えている受付のお姉さんを注視する。どうやらGを数え終わったようだ。


「はい。確かに10万G確認いたしました。次にギルドカードを作成します。血液を一滴だけ取らせていただきますので、この機械の中に手を入れてください。少しチクッとしますよ」


 翔太がヴァージルの指示に従って黒い機械に手を入れると、確かにヴァージルの言った通り手を入れた右手の人差指がチクッとして『ピー』という電子音がした。次に『シュルシュル』という機械音が黒い機械から聞こえ始める。


「はい。これでギルドカードが作成されます。カードの作成には10分程度かかりますので、それまで冒険者についての説明をしてもよろしいでしょうか?」


「はい。お願します」


 翔太が頼むとヴァージルは、プロという他ない完璧な手際で説明を始める。


「では説明をいたします。何か疑問があればその都度話を切って質問していただいて構いません。

まず冒険者の依頼の種類について説明をいたします。冒険者の依頼には主に討伐依頼、採取依頼、護衛依頼、前者3つ以外をまとめた雑務依頼がございます。


 討伐依頼とは、魔物、これは別名モンスターとも言いますが、これらが原因でギルドの近隣で被害が出たとき、近隣の村や、街、民家等から冒険者ギルドへ被害を出した特定の魔物の討伐依頼が入ります。このギルドに入った依頼を、ギルドを代行して冒険者が受けます。そして、討伐が成功しましたらその証拠としてモンスターの核である魔晶石をギルドに提示していただきます。その討伐が確認されたならば、成功報酬を支払うという形です。

 また戦闘で特定のモンスターを討伐しましたら魔晶石をギルドにお持ちください。規定の額で買い取らせていただきます。


次に採取依頼とは、依頼者が特定の見つけてきてほしい物をギルドに依頼し、冒険者がギルドを代行して依頼をうけ、物を発見、採取し、それをギルドに提出します。その物が目的の物だと判断されれば、成功報酬が支払われるという形です。


 護衛依頼は、依頼者がギルドに特定の人物の護衛をギルドに依頼し、冒険者がこれを代行し護衛をいたします。この護衛依頼は依頼者の要求する形態で行う事が求められます。もっとも、その依頼者の要求内容は事前にギルドに提示されることが義務付けされるので、無茶な要求を為されるといった心配はありません。その依頼が成功したら、依頼者のサインをもらって、そのサインをギルドに提出していただきます。


 最後の雑務依頼とは、討伐依頼、採取依頼、護衛依頼以外のギルドに依頼されたすべての依頼をいいます。具体的にいいますと、家の引っ越しの手伝いの依頼から、荷物運び、倉庫の整理など多岐にわたります。


 以上が、冒険者の依頼の種類の説明でしたが、何かご質問ありますでしょうか?」


「依頼に失敗した場合何らかのペナルティがあるのですか?」


 今までのヴァージルの説明では、冒険者ギルドの依頼システムは翔太がよくやるオンラインゲームと非常によく似ていた。とすれば依頼の失敗にはゲームの場合と同様に何らかのペナルティがあるのではないかと思ったのである。


「はい。依頼に失敗したときは、ペナルティとして成功報酬の3割を治めていただきます。これはギルドの信頼を確保するためと、自分にあった依頼を受けていただくことが冒険者個人の利益にもなるからです」


(やっぱり、ここはゲームと同じだね。とすればあれも同じかな?)


「説明を続けてもよろしいでしょうか?」


「はい。お願いいたします」


 翔太が頷くと、コホンと軽い咳払いをしてヴァージルは話始めた。


「次に、依頼の実際の受け方について御説明いたします。あちらのボードが見えますでしょうか? あそこのそれぞれのクラスに応じたボードにある依頼書を見て依頼を選択し、受けたい依頼の依頼書をこの受付までお持ちいただきます。その依頼書が受付時間内に受付に提出されますと依頼が正式に受理されます」


 翔太はヴァージルの指で示す方向をみた。確かに黒いボードが複数置いてあり、そこに複数の白い紙がピンで留められていた。


(なるほど。あそこから自分にあった依頼を選んで、その依頼書を受付に提出するわけか。とすると、セオリーなら冒険者のクラスによって受けられる依頼内容が異なるはずなんだけど……)


 翔太はその疑問をヴァージルに聞くことにした。


「その依頼は誰もがどんな依頼でも自由に受けることができるのですか?」


「いえそうではありません。それを説明するためには、前提として冒険者のクラスの話をしなければなりません」


(やはりね)


「冒険者には、SSS、SS、S、A、B、C、D、E、F、G、Hのクラスがあります。このクラスは冒険者になりたての方はその実力いかんにかかわらず、Hクラスから始めることになります。一定の数と難易度の依頼をこなすことで次のクラスへの昇格試験を受けることができます。その試験に合格すると次のクラスへ昇格される。このようなシステムです。

 では御質問の受けられる依頼の件ですが原則受けられる依頼は、その方の属するクラスの±1のクラスの範囲の依頼を受けることができます。具体的には、Fクラスならば、E、F、Gのクラスの依頼を受けることができます。よろしいでしょうか?」


(なるほど、概ねゲームと同じ。 僕にとってはむしろやりやすい)


「はい。どうぞ続けてください」


「では説明を続けますね。次に話すのは冒険者の権利と義務についてです。

冒険者にはそのクラスに応じて、宿屋や、武器・防具屋等のギルドと提携している店の各種割引を受けることができる権利を有します。またこれもクラスに応じてではありますが、一定の立入禁止区域への立ち入りや、冒険者ギルドに収集されているデータベースへのアクセスする権利が与えられています。さらに冒険者は一般に土地税等の税収が免除されます。

義務についてですが、魔物が大量発生した場合や、災害指定の魔物が出た場合など、もちろん、そのクラスに応じたものとはなりますが、討伐参加義務が生じます。これはその討伐のクラスが適正である限り拒否することはできません。もし拒否すれば、罰金、クラスの降格、最悪の場合には冒険者ギルドからの一定期間の身分停止がなされることがありますのでご了承ください」


 ヴァージルはここでいったん話を切った。


「ここまでが、冒険者の仕事の説明でしたがよろしいでしょうか?」


 翔太が静かに頷くと、ヴァージルは説明を続ける。


「また発行されるギルドカードには特別な機能があります。

一つはGの貯金です。依頼の報酬として得た金銭はギルドカードに溜めることができ冒険者ギルドである限り、このアースガルズ大陸のどこであっても金銭を引き出すことができます。


次にステータスとスキルの表示機能です。これは実際のギルドカードを見ていただくことが一番分かりやすいのでギルドカードをお渡しするときに最終的な確認も兼ねてもう一度簡単に説明いたします。今はカードの裏の基本的なステータスと所持スキルの少し突っ込んだ説明をさせていただきます。


まず、ステータス欄の説明からです。このステータスの項目は【レベル】、【才能】、【体力】、【筋力】、【反射神経】、【魔力】、【魔力の強さ】、【知能】からなります。この各項目の数値は一般人の成年を基準01として換算しています。レベルの上限は100に設定されています。


ステータス欄の各項目の中で一番大事なのは【才能】です。これはレベルの上昇とともに、パラメータの上昇率を支配します。つまり【才能】の値が大きければ大きい程、他のパラメータの上昇率が大きくなります。そして【才能】は生まれてから死ぬまで変動はしません。またこれはスキルの取得率やスキルの進化にも大きく関与します。

 

【筋力】、【反射神経】は文字通りの意味です。【体力】は疲れや、打たれ強さ等と関わりがあります。【知能】は頭の回転の速さや、並列思考などに密接に関係します。これが高ければ高いほど、高度の思考、考察を可能とします。


次に【魔力】は少しでもあれば魔法の適正があるという事になります。この値が大きければ、多くの魔法を放つことができます。そして、【魔力の強さ】は魔法の威力の指標となります。この値が大きければ大きい程強い威力の魔法を使うことができるというわけです。

さらにステータス欄の真下に所持スキル欄があり、そこに所持スキルを表示し確認することができます。

以上がギルドカードの説明です。何かご質問ありますか?」


翔太はこのギルドカードの説明を聞いてしばし唖然としていたが、なんとかヴァージルに『大丈夫です。もう質問はありません』と答えることができた。翔太がこのように言葉に詰まった理由は、このギルドカードの機能があまりにゲームチックなものであったからだ。


(【才能】というのは良く分からないけど、【筋力】、【体力】、【魔力】、これってもはやゲームじゃん。このギルドカード作った異世界人って、かなりのゲーム好きだったのかも)


 翔太はこのギルドカードの作成者に強い親近感を覚えながらも、ギルドカードが出来上がるのを待った。


『ピロピロリ――』

 

珍妙なメロディー鳴り響き、黒いカードが機械から出てきた。どうやらギルドカードの作成が完了したらしい。翔太は内心の騒ぐ心を抑えつつヴァージルからギルドカードを受け取るのを待った。


ヴァージルは、機械から出てきた黒い鉄製のカードを手に取り、表をみて翔太の名前、年齢、性別、種族、冒険者のクラス等を確認すると、次に裏のステータス欄を確認すべくカードを裏返した。その裏の表示を見るとヴァージルはその営業スマイルを崩して、神妙な表情を顔一面に浮かべブツブツと独り言を呟き始めた。


(ん~~? これ機械のエラー? レベル1にしては全ステータスが少々高い感じがするし。それに魔力があるなんて……。この子将来有望な新人かも)


ヴァージルは少し考え込んでいたが、すぐに営業スマイルに戻った。


「冒険者ギルドカードの作成が完了しましたのでお渡しいたします。受け取りましたら、まず、表に表示された名前、年齢、性別、種族、冒険者のクラスがHになっているかを確認してください」


翔太は黒い金属のカードを受け取ると、カードの表を確認する。『ショウタ・タミヤ 年齢17歳 性別男 種族人間 クラスH』と表示されていた。内心ワクワクしながら弾むような声で答える。


「はい。ちゃんと表示されています」


 翔太が答えるとヴァージルは話を続ける。


「では、次にカードを裏にしていただきますか?」


翔太はカードを素早く裏にして覗き込むように見る。どうやら逸る気持ちを抑えきれないらしい。カードの裏には以下のような文字が刻まれていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――

ステータス    ショウタ タミヤ 

レベル        1

才能        ――

体力         3

筋力         4

反射神経       6

魔力         1

魔力の強さ      1

知能         2

 EXP       0/10

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

スキル



―――――――――――――――――――――――――――――――――――


「先ほどの説明でありました各項目はご覧になられましたでしょうか?」


「はい。でも【才能】が傍線なのですが……。あとスキルの欄が空白なのはなぜなんですか?」


「【才能】が傍線なのは当方でも良く分からないのです。おそらくですがギルドカードを作ったばかりはごく稀にですが似たようなエラーが起こることがあります。そのせいかと存じます。大抵の場合カードを使っていると自然に治るのでご心配には及びません。もしずっと治らないようならカードを再発行いたしますのでお声をお掛けください。

スキルの欄が空白なのはまだ取得したスキルがないからです。スキルを取得すると、この欄にスキルの一覧が表示されます。そして特定のスキルを指で選択すると、スキルの一覧の欄が指で選択したスキルの説明に変わります」


(マジ? このスキルの説明とか、スマホみたいなんだけど! このギルドカードって、どんだけ高性能なの? 本当にこれゲームみたいだよね)


 翔太はいくつか気になる点をこの際だから聞いてみようとヴァ―ジルに視線を向けた。


「いくつかお聞きしたいのですがいいですか?」


「はい。かまいませんよ」


ヴァージルは眩しくなるような営業スマイルで翔太に微笑みかける。翔太は少し自分の顔が赤くなるのを感じながら、気になっていた点を尋ねる。


「スキルの取得条件とかありますか? 【才能】と関係あるとも聞いたのですが」


「スキルの取得条件は個人によって千差万別です。例えば命の危険に瀕したときのみ取得するという方もいらっしゃいましたし、レベルが上がるごとに取得するという方もいらっしゃいました。その人それぞれの取得条件を探していただくことになります。

【才能】との関係ですが、【才能】はスキルの取得率を支配しているといわれています。スキルの取得条件を満たしたとしても、必ずしもスキルを取得できるとは限りません。【才能】の値が高ければ、取得条件を満たしたときに取得できる確率が高い。そういうことになります。

また取得条件と似たような条件を満たしたとき、既存のスキルを新しいスキルに進化させることも可能です。このときも進化条件を満たしても必ず進化するとは限りません。これも、【才能】が高ければ進化する確率が高まる。スキルと【才能】はそのような関係にあります」


(取得条件を見つけるのって結構大変だよね。条件によってはほとんど遭遇しないような条件という事も十分あり得るし。最初はレベル上げと、このスキルの取得条件と進化条件を見つけるのが先決かな)


「あと、この【EXP】という項目はどういう意味なんですか?」


(これは予想がつく。でもモンスターを倒したくらいでそんなに簡単に実力って上がるものなの? レベルが実力と考えると矛盾するような気がするんだけど……)


「EXPは次のレベルまでの【経験値】です。あ、【経験値】の説明がまだでしたね。

【経験値】とは、敵を倒したときに取得する力の事で、生命力そのものと言われています。これも最近の研究で初めて明らかになったことなのですが、私達が生きる世界では、敵を倒すとその敵の生命力が倒したものの中に移るという現象があるのです。この事を冒険者ギルドの創始者が、『レベリングシステム』と名付けました」


(実に面白い。なんか燃えてきた。これってゲームの世界の中に、僕が紛れこんでいるみたいなものだよね。だいたいこれで聞きたいことはすべて聞いたかな)


「以上が冒険者ギルドカードの説明でした。これで冒険者の登録についての全ての説明が終了しました。何かご質問はありますか?」


「いえ、どうもありがとうございます」


「では、どうもお疲れ様でした。冒険者の登録はこれですべて完了です。今後のあなた様の冒険者としての成功を願っております」


 そういうとヴァージルは頭をさげ、顔を上げると翔太に微笑んだ。そのとても清々しい笑顔は、先ほどのゲームと似通った成長システムなどと相まって翔太の気持ちを高揚させた。翔太もヴァージルに頭を下げて、フィオン達の方へ向かって歩き出す。





 お読みいただきありがとうございます。

 あと数話で加筆いたします。ご期待いただければ幸です。

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