第8話 レベルを上げよう(1)
翔太達3人と1匹は、エルドベルグの都市の城門を抜けて魔の森の入り口のところまで来ていた。都市の城門から最も近い魔の森の入り口は、およそ徒歩1時間の距離にある。
確かにエルドベルグがこんなに魔の森から近いなら、あんな巨大な城壁を立てるのも納得だ。魔物が大量発生したら真っ先に襲われる。
翔太は身体中から沸き上がる不安と興奮が入り混じった感情を抑え込む。
ここに来る途中、フィオンに教わったことを思い出していた。
レベルは10まではすぐに上昇するらしい。ただしレベルが10を過ぎると徐々にレベルの上昇は抑えられ、40を過ぎると途轍もない数の魔物を倒すかよほど強い魔物を倒さないとレベルは上昇しなくなる。
これは翔太が良くやっていたゲームとほぼ同じだった。ギルドカードを作った異世界人は徹底的に地球のゲームと似せて『レベリングシステム』を構築したらしい。強い執念のようなものを感じる。
(レベル上げは結構大変そう。あまり強くないのに経験値をやたら持っている『は〇れメタル』的な魔物とかいないかな。この分だといそうだけど……)
魔の森に入ってから数分で草木の匂いと湿った土の匂いが辺り一面に立ち込め、太陽の光すら届かない密林へと姿を変える。
「ショウタ。用意はいいか。始めるぞ」
フィオンの言葉にレイナが頷き緊張が辺りに立ち込める。ごくっと生唾をのみ込みつつ、刀の柄に手を当ててすぐに刀を抜けるように準備する。
翔太達三人と1匹が、魔の森に警戒しながら入ってから十数分程度で、緑色ゼリー状の物体が地面をプヨプヨ蠢いていた。
(ス、スライム。
レイナとフィオンが倒しているのを前に見た。大丈夫僕にもやれる!)
「ショウタ。スライムは一番初級の魔物だ。一番右にいる1匹を任せる。俺達は他の全部を片付ける。いいな?」
「うん。頑張るよ」
「『頑張る』じゃないよ! 『やるよ』だよ!」
レイナが力強い表情を顔に浮かべて翔太を励ましてくれる。その表情は翔太の弱い心の背中を押し恐怖を打ち払う。
刀を鞘から抜くと黒色の刃が森の隙間からわずかに差し込む太陽に反射して独特の禍々しい煌めきをみせる。
翔太はスライムに対し真正面から刀を正眼に構えた。スライムは翔太に向かってゴムマリの様に地面を飛び跳ねて向かってくる。例えスライムであってもレベルの低い翔太なら体当たりでダメージを負うだろうし、纏わり疲れたら皮膚を溶かされることも十分あり得る。そう考えると心臓の動悸が早くなる。刀を持つ手が震える。
(怖くない。怖くない。怖くない……)
所詮スライムだ。体当たりをまともにもらっても死ぬことまではないだろう。それにフィオンもいる。もし危なくなったら翔太のところに飛んできてくれるだろう。フィオンはそういう人だ。
(大丈夫。僕にもできる)
今後柚希と日葵を探す旅は熾烈を極めるのだ。こんなところで怖がっているようでは目的を達成するなど夢のまた夢だ。
そう思っても体に圧し掛かる恐怖で足が竦みなかなか切り込めない。
その時スライムが翔太に向かってジャンプしてきた。それを間一髪で右に避けて、そのままスライムのど真中を真上から垂直に斬り下ろす。
スッ!
刀がスライムを豆腐でも切るがごとく両断する。ドシャという音ともに完全な緑色の液体となって土に染み込んでいく。
フィオンが翔太に近づき軽く肩を叩く。いつものようにバンバン叩かないのは翔太の今の気持ちを思い量ってのことだろうか。
「どうだ? 初めての魔物の討伐は?」
フィオンとレイナはもうすでにスライムを全滅させていたらしい。二人とも翔太を見ながら晴れやかな笑声をみせてくれた。
「難しかったけど、何とかやれたよ」
そうは言いつつも翔太は右腕が小刻みに震えていて今にも刀を落としそうだった。そんな様子を見てもフィオンもレイナも馬鹿にするでもなく、そうなるのも当然かのように振舞ってくれた。そんな優しさが嬉しくて胸が熱くなる一方で、急速に自分が冷静になっていくのが分かった。
翔太はギルドカードをポケットから取り出し経験値の確認をする。
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EXP 2/10
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(どうやらスライム1匹につき2だけ経験値が入ったみたい。あとスライム4匹でレベルが上がる。あと2、3匹倒せばいくら僕でも慣れるよね。なんかワクワクする)
スライムを1匹倒した事でかなり気持ちが落ち着いたらしい。人間が慣れの動物であるという事をしみじみ実感しながら再び歩き出す。
またスライムがエンカウントした。だが今度は12匹程の大群で襲い掛かってきた。フィオンは翔太の丁度正面にいる4匹を倒すように指示した。
正面のスライム共を見ると、奴らは前後左右にちょうど、ひし形の頂点になるように配置していた。
前回の戦闘とは異なり手の震えも足の竦みもなく身体が翔太の意思通りに動く。
まず全力で一番前にいるスライムに刀の射程距離ぎりぎりまで接近すると横一文に横凪にしてスライムを2等分する。おそらく翔太のもつ刀の凄まじい性能のせいだろう。刀がスライムに触れると何の抵抗もなく真二つになり、緑色の液体となって地面に染み込んでいく。
スライムをスライスしたらすぐに、後ろに一歩後退する。このままスライムに攻撃しても体当たりをくらう危険性があるからだ。まだレベルは1、慎重にいかなければならない。
今度は左のスライムに狙いをつけて全力で踏み込み近づきながら、左から右へ横一文字に刀を振り、スライムを両断する。
また後退して体制を整えることも考えたがスライムはあと2匹、体当たりされる危険性は少ないだろう。刀を振り切ったそのままの態勢で、右のスライムへ向きをすぐに変えて地面を蹴り刀の射程距離まで接近する。刀を右から左に混信の力で横一文字に一閃する。スライムはバシャと液体へ戻っていく。
これでスライム3匹は倒した。最後の1匹をじっくり料理してやればよい。
バックステップにより最後の一匹となったスライムと距離をとる。スライムに向けて刀を上段に構え、右脚に力を入れて地面を蹴り、スライムに近づき力一杯袈裟懸けに刀を振り下ろす。切断された最後のスライムも液体に還り、地面に染み込んで行く。
4匹のスライムを倒した途端。翔太の身体から凄まじい力が湧き上がるのが分かった。
(っ!? これがレベルアップってやつ? こんなに激しいものなの? 想像とだいぶ違う)
翔太は身体中を荒れ狂う強力な力に翻弄されながらもポケットからギルドカードを取り出して確認をする。
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ステータス ショウタ タミヤ
レベル 2
才能 ――
体力 10
筋力 12
反射神経 13
魔力 10
魔力の強さ 11
知能 12
EXP 0/20
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スキル
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(へ~、こんなに景気よくステータスって上昇するものなんだ。これは結構おもしろそうだね。俄然燃えてきたよ)
ゲーム中毒者の悪い癖が身体中から湧き上がってくるのを感じながらフィオンとレイナの傍へ駆けていく。
もとも翔太は何事も徹底的にやる。ロールプレイングゲームなどの場合、レベルを最強まで上げてからボスを倒すタイプだ。そのうち、レベル上げの方が目的となって、ボスを倒すこと自体がどうでもよくなる事も多々あった。だから、オンラインゲームのようにある意味で無限ともいえる成長をみせるゲームに特にはまったのである。
特にこの世界はレベルが上げるのが比較的難しい代わりに、上がったときの恩恵は遥かに大きく、ある意味で、レベルアップ自体がレアアイテムを手に入れるようなものらしい。それに気がついたときの翔太の感動は想像を絶した。
「なに、ニヤニヤしているのよ。気持ち悪いわね」
レイナがギルドカードをみてニヤけている翔太をみてドン引き気味に話し掛けてきた。この世界でも絶景の美女と言っても差支えないレイナに『気持ち悪い』と言われれば普通なら傷つくはずなのに、今回に限っては全くと言ってよいほど傷つかない。それがどうでもよくなるくらい翔太は心が躍っていたのである。
「よし。先に進むぞ。今日で少なくともショウタのレベルを5まで上げたい」
「はい。よろしくお願いします」
屈託のない笑顔を浮かべながら元気良く返事をする翔太にフィオンは苦笑いをしつつ森の奥に歩を進める。
次にエンカウントしたのが醜悪な小人の群れ。いわゆるゴブリンだった。
この魔物が今日の翔太にとって最大の関門だ。理由は2つある。
一つ目はゴブリンが人間に似ていることだ。というより翔太にはゴブリンが人間にしか見えない。ゴブリンを殺すことが人殺しにしか思えなかったのだ。できれば殺したくはない。だが今後人型の魔物など掃いて捨てるほど出て来るだろう。どのみち避けられやしないのだ。
二つ目は、人に対し敵意を向けられると体がすくむという事だ。クラスでの日々のいびられる生活は人の敵意に対し限りなく翔太を臆病にさせてしまっていた。いざ戦闘になれば少なからずゴブリンの悪意の視線が翔太を襲うだろう。ゴブリンといえども敵意ある視線を向けられるのは翔太には耐え難かった。この事が致命的であることは前のフィオン達の戦闘を見たときから認識していた。だからこのことはフィオンにすでに相談済みだった。
『人型魔物が出たら人間をイメージするなというのが鉄則なんだが最初は不可能だろう。だから顔のイメージを身近な魔物に置き換えろ。気休めにしかならないが何もしないよりはましだろう。翔太の悩みは、一度は皆経験する山だ。勿論俺にも経験がある。こればかりは慣れるしかないんだ。
あと山賊や盗賊と戦うことになったら全力で逃げることだけを考えろ。対人戦闘が苦手なのに戦おうとすれば確実に命を落とす。知能の高い者との戦闘はそんなに甘いものではない。だが端から戦場から離脱することだけ考えていれば逃げることぐらいはできる』
フィオンも翔太のこの質問を予想していたのか考え込むまでもなく返答した。この翔太の目の前に立ち塞がった壁はフィオン自身が過去に経験したものだったのかもしれない。
フィオンが言った言葉をもう一度思い返すと身体中から戦意が沸き立つのが分かった。あれだけ頼りになるフィオンでも同じような悩みを持ったという事は翔太に一握りの勇気を与えてくれた。例えそのアドバイスが気休めに過ぎなくても……。
(ゴブリンは魔物。ゴブリンは魔物。最初よりもだいぶ楽になった……ような気がする。まだゴブリンを見ると全身が硬直するけど。どうせなら、ゴブリンの顔をさっきのスライムと思おうか。僕は思い込むことだけは人一倍自信があるし)
翔太がゴブリンの顔をスライムと想像すると不思議と足の竦みが取れた。今まで凍りついたように動けなかった身体は氷解しいつも通りに動く。そんな精神的な準備を心の中で行っていたらフィオンから指示が来た。
「今回はゴブリンだ。スライムと違って知能が多少はある。人間に似ているが大丈夫だな? ショウタ?」
「うん。大丈夫」
さきほどのメンタルトレーニングでもはや目の前のゴブリンは、翔太にはスライムにしか見えなくなっていた。フィオンは翔太の落ち着きぶりに意外そうな顔を浮かべながらも指示を飛ばす。
「今度は、左2匹をショウタに、俺達があとの5匹をやる。やれるな?」
「了解。いけるよ!」
「よし。まだゴブリンには気づかれていない。行くぞ」
ショウタは左の2匹のゴブリンの後方へ気付かれないように接近する。そして2匹のうちの1匹の背後から、首をめがけて刀を左から右に横凪にする。翔太の躊躇いを吹き飛ばすような凄まじい速さで振り払われた刀の刃は煌めきつつもゴブリンの頸部に吸い込まれていく。その直後、ゴトッとゴブリンの首がスライドし、慣性の法則に従って地面に落ちる。
(うっ!)
ゴブリンの首の切断面を見てしまい酸っぱい胃液が喉をせり上がって来る。それを無理やり飲み込む。
眼に涙を溜めながらも、もう1匹がその事に気付く前に、翔太は地面を思いきり蹴り、高速でもう一匹のゴブリンに接近する。胃が逆流しそうな嫌悪感を振り払うかのように、上段に構えた刀を袈裟懸けに渾身の力で振り下ろす。ゴブリンは斜めにズレていき、地面にドシャという音とともに叩きつけられた。
(き、気持ちが悪い!)
「げえええええッ!」
死んだゴブリン達の絶命した恨みがましい目が視界に飛び込んできて、自らが命を奪ったという事を実感し、翔太の中に途轍もない罪悪感と嫌悪感が生まれた。胃の中から酸っぱいものが喉に再びせり上がって来て、思わず地べたに手をつき朝食べたものをすべて吐き出した。
涙と鼻水がみっともなく翔太の顔を汚す。すると突然背中を優しく摩る感触がした。レイナが戦闘を終わらせて翔太の背中を摩ってくれているらしい。てっきり『だらしないわね』とか言われるのかと思った。翔太の姉、柚希なら間違いなく鉄拳が飛んでくるだろう。だがレイナはそんな気はさらさらないようで翔太を終始優しく介抱してくれた。
そんなレイナに感謝しながらも翔太は先ほどの戦闘を振り返る。
(精神的にはギリギリだったけど何とか倒せたみたい。それにしてもすごい切れ味だね。この刀。骨ごと両断したよ)
そこまで考え先ほどの死んだゴブリンの目を思い出しまた酸っぱいものが喉にせり上げて来たので、死んだゴブリンを見ないようにして木の根元に座り込む。周囲を確認すると戦闘はもう終わったようだ。翔太もギルドカードを取り出し確認する。
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EXP 8/20
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(ゴブリン1匹あたり、4の経験値が入るのか。それにしてもスライムの2倍か。精神を疲労させたかいがあった)
「ショウタ、よくやった」
「フィオン、良いアドバイスありがとう。ゴブリンの顔をスライムだと思ったら少なくとも戦闘中には足は竦まなかったよ」
「そ、そうか。それはそんなに簡単な事では本来ないはずなんだが……。まあ、大丈夫なんだから良い事なんだろうな。では次に進むぞ」
フィオンが翔太の言葉に若干面食らった表情をしつつも森の奥に進みだす。
今度はまたスライムだった。翔太に割り当てられたのは6匹だった。難なくスライムを撃破、液体に変えて12の経験値を得た。
最後の6匹のスライムを倒した後、前回と同様かそれ以上の力が翔太の体の中に突如として吹き出し荒れ狂う。軽く足元がふらつくのを右手に持つ刀で支えながら、どうにか踏みとどまる。荒れ狂う力の本流に慣れてきたところで、ポッケトからギルドカードを取り出した。
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ステータス ショウタ タミヤ
レベル 3
才能 ――
体力 20
筋力 23
反射神経 24
魔力 20
魔力の強さ 23
知能 22
EXP 0/30
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スキル
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(相変わらず、無茶苦茶な上昇率だよね。レベルが1上がるだけで、これだけステータスが上がるなら、最初のレベル1なんてどれだけ弱かったんだろう。なんかそれを考えたら背筋が寒くなってきた)
翔太はそこまで考えて、全身を改めて確認をする。レベル1の頃とは桁外れ力を自身が纏っているのが実感できた。不気味な笑みを浮かべつつ。レベルアップという甘い果実を食べるために精神を集中ていく。
それからスライムの群れに複数回遭遇した。スライムは人型の魔物でもないし、レベルの上がった翔太ならば蝸牛の歩みに過ぎずエンカウント次第瞬殺だった。その結果スライム12匹を倒し、24の経験値を得た。
次はゴブリン4匹が翔太達の不意を突いて襲ってきた。一番弱そうな翔太にめがけて振り下ろして来た錆びた剣を避け、ゴブリンの懐に飛び込んだ。刀を上段から兜割りのように真上から垂直に斬り下ろす。ゴブリンは縦断され左右に分かれて地面にドチャと倒れる。
このゴブリンの殺害は一度綺麗サッパリ吐いたせいかもう何も感じなくなっていた。
この自分の適応能力は一抹の不安を翔太の心に起させた。だってそうだろう? 死体を見ただけであれほど酸っぱいものが込み上げて来たのに、ただ一度吐いただけで慣れてしまったのだ。もしかすれば人殺しも一度吐いただけで慣れてしまうかもしれない。おぞましい考えを頭の中から追い出し2匹目のゴブリンに向かう。
ゴブリンに剣を振らせる隙も与えず刀を左から右に横一文字に力を込めて振り切る。ゴブリンは横断され、ズズッと上半身がズレで重力に従い地面に落ちる。
そこで翔太のレベルがまた1上がった。
お決まりの力の本流が翔太の身体中を駆け巡り身体が一時的に動かなくなる。その隙に近くにいたゴブリンに襲われた。だが不思議と翔太は全然危機感を感じなかった。振り下ろされたゴブリンの持つ錆びた剣を、左手でつかみ取り、右拳を思いっきりゴブリンの顔にブチかます。するとゴブリンの頭部自体が破裂して緑色の液体とともにあたりに飛び散った。
それをみた、他のゴブリンが翔太から一目散で逃げようとするも、やっと凄まじい荒れ狂う力になれた翔太がゴブリンに目にもとまらぬ速度で接近し、その刀の一振りによって近くにいた1匹のゴブリンが胴体ごと横断される。
蹂躙という名の戦闘が終わってもフィオンとレイナは翔太の動きに魂を奪われたみたいにぼんやりとしていた。フィオンが覚醒し翔太に尋ねる。
「ショウタ、お前……元からそんな動きできたのか?」
「ううん。さっきレベルが3に上がってからかだよ」
「「レベル3?」」
フィオンとレイナは顔を引き攣らせながらまるで化物を見るかのような視線を翔太に向ける。その視線があまりも嫌で逆に聞き返した。
「な、何なのさ? そんなに変な事?」
フィオンは自分の視線の色に気付いたのかいつもの優しい視線に戻っていた。もっとも、驚きの表情は消せはしなかったが……。
「今のショウタの動き、俺の知り合いのレベル48のA級冒険者の動きにそっくりだったぞ。下手をすりゃあ、それ以上かもしれん……」
「そんなアホな……。素人をからかわないでよ。フィオン!」
翔太の言葉にレイナも戸惑いながらも賛同する。フィオンの言ったことがあまりに常軌を逸しているのでリアクションが取りづらい様子でもあった。そんな翔太の困惑の表情に気付いたのかフィオンはいつもの調子に完全に戻っていた。
「悪い、悪い。少し驚いただけだ。そうだな。さすがにそれはないな。それにショウタは異世界人。ある程度の出鱈目は十分予想すべきだった」
翔太としては最後の言葉に納得がいかなかったが、フィオンも自己完結してしまった様子だったので気を取り直し先に進むことにする。
さらに、スライム5匹、ゴブリンを5匹倒したところで再び強烈な力が翔太の全身を暴れまわる。
翔太は再びポケットからギルドカードを取り出しステータスを確認する。
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ステータス ショウタ タミヤ
レベル 5
才能 ――
体力 43
筋力 49
反射神経 47
魔力 41
魔力の強さ 40
知能 42
EXP 0/50
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
スキル
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
(相変わらず馬鹿げた数値の上昇だね。でもこれで今日の目標、レベル5までのレベルアップは達した。非常に良いスタートだよ)
フィオンからレベル5になったら知らせるように言われていたのですぐに伝える。フィオンは今日のところは都市に戻ると翔太達に告げて魔の森の来た道をスタスタと引き返し始める。レイナがそれに対し多少文句をいっていたが、フィオンは取り合わなかった。
戦闘は慣れてきたと思うときが一番危険だというのがフィオンの持論だそうだ。
もっとも、レベル5で切り上げる一番の理由は翔太がなれない戦闘で疲労していることを推し量っての事だと予想できた。そんなフィオンの配慮に感謝で胸がふさがれたようになりつつ、エルドベルグへの岐路へつく。
お読みいただきありがとうございます。




