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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第一部 覚醒編
53/285

第49話 怪しい奴のたくらみを挫こう(2)

 今日、4話目の投稿です。

 ギルドに着くとすぐに受付に直行する。受付にはヴァージルとネリーがいた。毎度のごとくヴァージルには2~3人の冒険者の列ができている。当事者のヴァージルの方が説明し易かったが仕方ない。今は少しでも時間が惜しいのだ。

ネリーに支部長へ面会したい事とすぐにフィオンを呼んで欲しい事を伝える。

このとき、ネリーにはレイナの身に危険が迫っているとのみ伝え、詳しくはデリックに会ってから説明すると言った。ネリーはフィオンの件は直ぐに了承し、使いの者を宿屋キャメロンまで送る。

 だが、支部長への面会の件については用件を説明しなければ会わせることはできないとの一点張りだった。エルドベルグは治安が悪い。一冒険者の身に危険が迫っているという漠然とした事で支部長に合わせるわけにはいかないとするのは受付嬢としては当然の対応かもしれない。

 緊急事態だと言い何度もネリーに説得を試みていたところフィオンが到着した。

 よほど焦っていたのだろう。フィオンは鎧も来ておらず普段着のままであり、身体中汗でビショビショだった。


「何があった?」


 フィオンが真剣な顔で翔太に尋ねる。フィオンにのみ聞こえるように耳元で囁く。


「レイナが襲われた。それについてデリックさんに話したいことがあるからどうしても会いたいんだ。フィオンからもネリーさんを説得して! お願い!」


 レイナが襲われたと告げられた途端フィオンの顔つきがさらに険しくなりすぐに頷く。

 フィオンが説得を初めてから一分もたたないうちにネリーが了承し話だけは通すと支部長室へ行ってしまった。

 ほとんど説得の言葉は翔太と変わらないはずなのにこの対応の違いは一体何なんだろう。多少のやるせなさを感じる。


(今までの僕の説得は一体……これが『ただしイケメンに限る!』ということ? まさかこの言葉を実感する日が来るとはね……)


 まあ、ネリーのフィオンを見る目は翔太等の一般冒険者に対して向ける目とは微妙に違っていた。扱いの違いに納得がいかない気持ちを抑えつつネリーが戻るのを待つ。


 ネリーはすぐに戻ってきた。


「支部長がお会いになられます。ご案内いたします」


「その事なんですが、今回はヴァージルさんも当事者なんです。彼女も呼んでもらえますか?」


 ネリーは当初、目を白黒させていたが、翔太とフィオンの鬼気迫る表情と同僚であるヴァージルの名前が出た事により深刻な事態に陥っている事を悟ったのだろう。

 弾かれたようにヴァージルに耳打ちする。ヴァージルも翔太達の様子が普通ではない事に気付いていたらしく大きく頷く。

 結局ヴァージルが今担当している受付の仕事をネリーが変わりに受け持つことになり、ヴァージルが翔太達をデリックのところまで案内する運びになった。ヴァージルがいなくなる原因を作った翔太に向けて冒険者達から非難の視線が集中する。

 非難の視線のシャワーを一身に浴びながらも翔太はレイナと向き合う。


「レイナ、僕とフィオンは支部長と話をしてくるからこの受付で待っていてくれる? 

 すぐに話は終わるからさ」


 予想通り、その翔太の言葉にレイナがすぐに突っかかって来た。


「私に関係する話なんでしょう? その私がここで待っていなきゃならないの?」


 レイナのこの言葉に翔太は困惑した。これから支部長とフィオンに男達が話していた事をすべて忠実に話そうと思っている。

 大人のヴァージルならともかくレイナにこれから話すような人間の醜悪な側面をみせたくはなかった。だがそれを言えばレイナは子ども扱いするなと怒るだろう。

 するとフィオンから意外な発言が飛んだ。


「ショウタ、レイナなら大丈夫だ。もう子供ではない。一緒に聞かせてやってほしい」


「わかったよ。フィオンが言うなら僕は何も言わない」


 フィオンはレイナの叔父でこの冒険では親代わりだ。そのフィオンが言う事に部外者の翔太が口を出す事はできない。


               ◆

               ◆

               ◆


 ヴァージルに支部長室へ案内され応接間のソファーへ座る。

皆、翔太が話始めるのを待っていた。だがレイナの存在は翔太の口を重くする。

男達の言葉を少し柔らかして伝ようかとも思ったが、それで危機感がうまく伝わらない。翔太は話が不得意なのだ。

 心の中で唸っているとフィオンが翔太の背中を叩き優しく諭すように言う。


「ショウタ、レイナの事が心配なんだろう。ありがとう。だがレイナは大丈夫だ。俺が保障する」


 翔太は決心し見聞きしたことを話し始める。

 その際にスキル《隠密》を持つことを伝え実際に使ってみると大層驚かれた。なんでもスキル《隠密》はレア中のレアらしい。このスキルは対人戦闘では無類の強さを誇る。音も気配もなく忍び寄り、急所を一撃して離脱する。そんなことが可能ならばどんなに強固な要塞でも安全ではなくなる。

 よってこのスキルを持つ者は徹底的に国が管理する事となっている。デリックとフィオンに絶対に他人に言ってはならないと念を押される。


               ◆

               ◆

               ◆


 案の定、話が終わってレイナの顔は蒼白となっていた。あのまま連れ去られていたらどうなっていたかを想像してしまっているのかもしれない。修羅場をそれなりにくぐり抜けて来たはずのヴァージルでさえ血の気のない青い顔をしていた。

 フィオンは意外にも冷静であった。腕組みをして、目を閉じ、いつもの癖の瞑想にふけっている。

 デリックも難しい顔をしていた。


「そういう訳で、数日間レイナにフィオンがついていてもらいたいんだ。特にレイナは今日見た限りかなり危なっかしいし」


 レイナはギクリとして恐る恐るフィオンに眼球を移動する。

 フィオンは想像通り鬼のような顔をしてレイナを睨んでいた。『あんた絶対覚えときなさいよ!』というレイナの非難の声をいつものごとく黙殺して話を進める。


「わかった。レイナの護衛は俺が引き受けよう。それでデリックさん。どうします?」


 フィオンが頷きデリックに視線を送る。


「まずはショウタの倒した者達を捕えて衛兵詰所に引き渡すべきだろうな。その後でギルドへ引き渡してもらい我等が訊問しよう。ショウタ、戦闘場所までの案内頼めるか?」


「はい。構いません。それとヴァージルさんとネリーさんに護衛をつけていただきたいんですが」


「私には護衛はいりません。私は幾度も似たような修羅場を切り抜けて来ています。これくらいで護衛をつけていてはBクラスの冒険者としては失格です」


 翔太の言葉にヴァージルが慌てて拒否の態度を示した。


(恥や外聞を気にしている場合じゃないのに……)


 ヴァージルが頑固なのは周知の事実だ。デリックもほとほと困り果てている様子だった。さらにレイナまで面倒な事を言い出し始めた。


「じゃあ私も護衛はいらないわ」


「「ダメ(だ)」」


 翔太とフィオンの一斉の否定の言葉に拗ねてしまうレイナ。

 今回ばかりはレイナの我侭に付き合うわけにはいかない。そんなレイナを無視し、翔太はヴァージルの護衛の件について思案する。


(ヴァージルさん。魔物との戦闘と対人戦闘で要求されるものが違う事わかってんのかな?)


 ヴァージルを一人にするのには絶対に反対だ。

 翔太にはレイナとヴァージルはあまり実力に変わりがあるようには見えない。さっきの黒ローブの男達――雑魚ゴブリンモドキ共にも運が悪ければ攫われるだろう。このまま彼女を放っておけば十中八九、最悪の方向へ事態は動く。彼女を見捨てるには少々ヴァージルと関わり過ぎてしまったのかもしれない。


「僕はヴァージルさんが護衛をつけないのには反対です。デリックさんも反対でしょう?」


 ヴァージルは翔太を睨み付けて来るが無視を決め込む。レイナと同じレベルの我侭に付き合うことはできない。


「俺もヴァージルには護衛を付けるべきだと思う」


「私に自分の身を守るほどの実力もないと?」


 翔太とデリックの言葉にヴァージルの口調に怒気が混じる。翔太はこのまま成り行きに任せることにした。成るようになるだろう。


「はい。ヴァージルさんは護衛をつけなければ確実に攫われます」


 翔太の言葉にヴァージルの堪忍袋の緒は遂に引きちぎれて、大変な剣幕で怒鳴りつけてくる。


「馬鹿にしないでください! 私もBクラス冒険者としての誇りがあります。その程度のゴロツキに後れを取らないくらいの自信はあります」


 翔太はヴァージルの言葉に大きく頷く。


「その通りです。別に僕はヴァージルさんに実力がないとは思っていません。一対一いえ、一対三人までならヴァージルさんの圧勝でしょう」


「ではなぜ、護衛が必要なんです?」


 ヴァージルが少しずつ冷静になっているのが翔太にもわかった。


「今回レイナを狙った賊共の襲撃の手段からして、奴らは攫う事のプロです。卑怯、汚い手段を平気で使ってくるでしょう。真面目なヴァージルさんには相性があまりにも悪すぎます。近くの民間人を人質に取られたらどうするつもりです?」


「そ、それは……」


「賊が単体なら人質を取られる事もないでしょうが、確実に賊は複数で来ます。ヴァージルさんが戦っている間に人質を取られる事も十分あり得るでしょう。それに複数で来る賊に対し複数の護衛がいれば実力で勝っているヴァージルさんが攫われることはまずありません。まだ、納得いきませんか?」


「いえ……」


 ヴァージルは噴火状態だった頭が完璧に冷えたのか気まずそうな表情を翔太に向けてくる。翔太も正直理解が得られてほっと胸を撫で下ろしていた。


「では、デリックさん。ヴァージルさんとネリーさんに複数の護衛を付けてください」


「ああ、ネリーの方は任せろ。腕の利くものを数人護衛に着かせる」


 デリックの言葉に心の中に拭い切れぬ影が雨雲のようにひろがっていく。


(ネリーさんだけ? 嫌な予感がする。また面倒事に首を突っ込む羽目になるのか……)


「ヴァージルさんの――護衛は?」


 諦めが入った口調でデリックに尋ねる。翔太にはデリックの次の返答の内容まで予想はついていた。


「ヴァージルの護衛はショウタに頼みたい」


(やっぱりね……)


 デリックの頼みにヴァージルは顔を紅潮させ俯いてしまった。


(ま、また、そんな意味ありげな態度をとる――勘弁してくださいよ! ヴァージルさん!)


 恐る恐る隣のレイナを見ると、レイナは不気味な笑みを顔に張り付けていた。案の定まったく目が笑っていない。フィオンはニヤニヤと意味ありげに頬を緩めている。

 死んでしまえと毒づいてデリックに向き直る。この依頼を否定する理由もない。でも疑問があるのも確かだ。


「僕は別に構いません――」


 突如翔太の右に座るレイナが翔太の右足の足の甲を踏みつけてきた。咄嗟に力を限界まで抜く。力を抜かなければ踏んだレイナの方が怪我をしそうだからだ。


(レイナ~。もう勘弁!)


 翔太は涙目になりながらも、話を続ける。


「そうか。引き受けてくれるか。話の流れから言って賊の目的はネリーではなくヴァージルだろう。ギルドの職員が攫われるなど前代未聞だ。絶対に避けなければならない。ショウタが引き受けてくれるなら一安心だ」


(っ~! このオッサン! 裏を返せば、ヴァージルさんの身に何かあったらギルドランクの上昇や情報の収取はしないということでしょ。

僕に護衛について決死の覚悟を持たせるためか――やはり、デリックさんは気が抜けない)


 大きなため息を吐く翔太。


「わかりました。でもいつまでも護衛するわけにはいかないので、できる限り早い解決をお願いいたします」


「それは任せろ。ギルドに喧嘩を売ったんだ。地獄をみせてやる」


 デリックの表情に獣のような怒りがギラギラ光る。フィオンもそれに同意する。二人が発する痛いくらいの殺気から賊の悲惨な未来を思い南無と両手を合わせる。


「あとSSクラスの二人の方の護衛はつけなくとも大丈夫でしょうか?」


「SSクラスは心配いらん。アイツらは普通の人間からすれば化物だ。不意をつこうがとても倒せるとは思えん。それにアイツらの仲間もまたアホみたいに強いしな。だが一応、今回の事は俺の方から知らせておこう」


「それを聞いて安心しました」


 翔太がこのような一見大きなお世話ともいえる護衛の話をしたのにも理由がある。

 実際翔太にとってレイナとヴァージル以外は全く心配してはいなかった。

SSクラスの者など全く接点がないのだ。正直どうでも良い。デリックが用心するよう伝えておくらしいし、仮に(さら)われても自己責任だろう。

 これを一応聞いたのはあくまで打算だ。今回の事件が無事終息すれば少なからずギルドの翔太に対する評価は上がるだろう。評価が上がればギルドクラスも上がる可能性が高まる。

 当初ギルドクラスを上げるのに消極的だったが次の点から考えを改めた。

翔太がギルドクラスを上げるのを躊躇していたのはフィオンがギルドのクラスを故意に上げなかったからだ。

 しかし、フィオンは獣王国の幹部の一人。いつ冒険者を廃業して国の運営に参加せざる負えない状況になるとも限らない。仮にギルドクラスが上がり過ぎていると、フィオンが去った後ギルドに少なくない影響を与える。それを防ぐためらしい。このフィオンの理由は今の翔太には全く当てはまらない。

 加えて、ギルドクラスが上がれば上がるほど、ギルドと契約関係にある国の図書館の閲覧権や一定の情報収集権が与えられる。これは今の翔太にとって一番必要なものだ。

 このようにメリットの方がデメリットを圧倒的に上回った結果、翔太の当面の目標はギルドクラスのアップとなったのである。


「それにしても『豚』か……一体、どういう意味だ?」


 一同考え込む。『豚』は黒ずくめ者達の取引相手だ。つまり人間と取引関係が成立するもの。文字道理の『豚』の意味ではないだろうと思われる。文字通りの意味ならそれはオークを意味するが、オークと人間が取引するなど常識からいえば到底あり得ないことだからだ。

 おそらく、豚に似た人間だろうという見解の一致を見てこの場はお開きとなった。


               ◆

               ◆

               ◆


 翔太はギルドの職員、衛兵と共にレイナが襲われた場所に向かって歩いている。ギルドの職員は翔太の昇格試験の試験官を辞退したジェイクだった。

ジェイクは終始翔太にビクビクしている。そんな翔太達の傍を突然休憩中に引っ張りだされた衛兵がいかにも不機嫌であることを隠しもせずに歩いている。

 ちなみにレイナも当初一緒に行くと主張していた。だがフィオンに『お前は本当に反省しているのか?』と悪鬼の形相で睨まれてついては来なかった。

 現場に着いた。だがそこは確かに戦闘の形跡はあるが縛られている賊は存在しなかった。


「本当にここに縛って置いたのか?」


 衛兵が翔太に高圧的に尋ねてくる。衛兵がこれほど高圧的なのは翔太が平民だからだろう。ジェイクは竜人族の貴族らしいが、翔太の後をビクつきながら歩いていることから平民と間違えられていると思われる。

 翔太が頷くと衛兵は面倒そうに翔太に対して言う。


「わかった。詳しく話を聞きたいからお前は詰所まで来い」


 衛兵は翔太に指を差して命令する。ジェイクに詰め所で状況につき詳しく説明すると告げると、ジェイクも頷き冒険者ギルドに帰って行った。

 今回翔太以外の冒険者が同伴したのは冒険者ギルドに翔太と共に賊を連行するためである。とすれば賊が既にいない以上同伴の冒険者が衛兵詰所まで来る必要はない。翔太一人で十分なのだ。


 それから衛兵詰所に連れていかれ、その時にあった事等同じことを延々と説明させられた。デリックとの打ち合わせ通り、あの場所にはレイナと近道のために偶々通って襲われた事とした。

 衛兵が一番納得しなかったのは翔太一人で賊4人を倒した事であり、そこは数十回尋ねられた。

 2時間後協力と言う名の訊問が終了し翔太は無事解放された。



お読みいただきありがとうございます。

 次話がいかれた武具の作成です。ガルトさんが出てきます。今後ガルトさんは翔太の生産面での相棒的存在になります。今日あと1話くらい投稿できるかも……。

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