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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第二部 建国と変貌編
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第5話 不思議な夢の続き


 まただ。また幼少期の夢。翔太の命よりも大切な宝石箱の中身。そして妙にリアルで、音も、匂いも触感すらもする。そんな懐かしくも儚い夢。

 

 これは幼稚園の入園式のときだ。すでに年長組であった翔太は、今度入園する〇〇の手を引きながら、幼稚園までの道を行く。〇〇は終始不安そうで、今にも泣きそうだった。

 昔からそうだ。〇〇は内弁慶なところがある。家の中では我儘一杯で、翔太や柚希を困らせるのに、いざ一歩外に出ると翔太や柚希の袖を掴んで離さない。いつもビクビクしているのだ。

 今日幼稚園に入園すれば、いつも翔太が傍についているわけにはいかなくなる。


 途中石に躓いて転んでしまう。ジワ~と両目に涙が溜まる。普段なら急いで起こして膝に着いた砂利を払ってやるところだ。だけど、今回翔太は助けない。〇〇にはもっと強くなってもらわなければならないのだから。

 翔太が助けないとわかって、さらに涙が頬を伝う。大声を上げて今にも泣きそうだ。罪悪感が翔太を襲う。だが、それでもじっと〇〇を見ている。

 〇〇はゆっくり立ち上がり、自分で膝のジャリを払う。最後まで泣かなかった。嬉しくなって、翔太は〇〇の頭を優しく撫でる。〇〇は頭を撫でられるのが殊の外、喜ぶ。だから、ご褒美にいつも翔太が頭を撫でることが習慣となっていた。得意そうに気持ちよさそうにしている様はリスや子猫のような小動物を連想させる。

 再び手を繋いで歩き出す。

 幼稚園に着くと、〇〇の視線に合わせて、一つ、先生の言う事をちゃんと聞くこと、二つ、友達と仲良くする事、三つ、泣きたくなっても泣かない事をいうと、コクンと頷いた。

 強く抱きしめて送り出す。〇〇は不安そうに翔太を何度も振り返りながらも、建物の中に入って行く。


 そこで、再び愛しい記憶は呆気なく終わりを告げた。勿論、翔太は必死で抵抗をしたが、それも無駄に終わり、徐々に壊れ崩れて行く。幸せが崩れて行く……。


               ◆

               ◆

               ◆


 気が付くとキャメロンの翔太が借りている部屋の天井が見える。涙がとどめなく溢れてくる。心がギリギリと締め付けられる。翔太は暫らくの間、毛布に顔を押し付けて声を上げないように泣いていた。ただずっとナイフのような悲しみが心に触れ、それがどうしょうもなく痛く泣いていた。


 真っ赤に目を腫らしながら、現状を把握する。

 まただ。また、訳の分からない夢を見た。大体、あの妙にリアルな夢はなんなのだろう。全て今の翔太の記憶と繋がらない。今の記憶は実際には翔太が柚希に手を引かれて泣きそうになりながら入園式に向かう状況だったと思う。翔太は妄想癖でもあるのだろうか……。いくら考えても答えは出ない。これ以上考えても時間の無駄だ。そこで思考を別の事に移すことにする。

 昨日は、確か『七つの迷宮(セブンラビリンス)』の7階層にある非常識に豪華な部屋の一室で寝たはずだ。 なぜ、今キャメロンの自分の部屋にいるのだろうか。

 更に不可解な事は、髪が縛られているということだ。サッパリわからない。首をかしげながらも、髪止めを外し、メガネをかける。この方がやはり落ち着く。


               ◆

               ◆

               ◆


 キャメロンの一階へ降りると、レイナとフィオンが食堂にいたので、挨拶をして四角のテーブルのフィオンの隣、レイナの向かいの席に座る。

 何やら、周囲の冒険者の視線が翔太達に集まっているのに気付く。ほとんどがレイナに向けられるものだ。

 オーク戦後、レイナはエルドベルグでの新たな英雄の誕生としてもてはやされておりこのような視線は日常茶飯事だ。人間族でこれだ。獣王国に行ったらどうなるのかとフィオンがうんざりしていた。

 フィオンの苦悩とは対照的にレイナはかなり嬉しそうだ。幼少から憧れていた英雄に自分が至れた事は想像以上にレイナを高揚させているらしい。終始、耳がピクピクと動いており忙しない。

 こんな浮かれ切っているレイナに対しフィオンが慢心は禁物だと口を酸っぱくして忠告しているが、なかなか聞き入れてもらえない。

 自他とも認めるお調子者の翔太でさえも今回、世の中に自分以上の強者など吐いて捨てるほどいることをこの身をもって体感した。特に今回の悪魔は子爵持ちと言っていた。とすれば、子爵以上の伯爵、侯爵、公爵はそれ以上の力を有すると考えるべきだろう。

 もし、今の浮かれたレイナがそんな怪物達に出会ったらと考えて、背筋に凍てつくツララが突き刺さる。これでは、態々拷問されたことまでレイナに話した意味がなくなってしまう。レイナの今後の事はフィオンと十分に相談する必要があるだろう。

 昨日作った【日本刀】をテーブルの上に無造作に置く。その日本刀はまるで禍々しい妖気(・・)を周囲にばら撒いているようであった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


【村正】

■クラス:超越級(トランセンデンス)

■レベル:2

■説明: 妖刀

■性能:

【鬼神憑依】:一定時間鬼神を召還し憑依させる。

一定時間、スキル《剣術》が【超越級】になる。

     一定時間、筋力、体力、反射神経が倍化する。

※ただし、一日3回までしか使えない。

不死賽子(アンデッドダイス)】:倒した敵をアンデットとして支配する。

※アンデッド化の確率はダイス×10%

※アンデッドのレベルは元々の敵のレベル+ダイス×10

※アンデッドの才能は、アンデッド前の【才能値】+ダイス×10

スキル等級+2

百刀千華:村正の全力解放

筋力+600、体力+600、反射神経+500

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


「な、なんじゃこりゃあ! 無茶苦茶じゃねぇか!」


「ははは…………」


 案の定、【村正】の取説をみせたらフィオンは発狂していた。正直作った翔太自身ドン引きしていたのだ。当然だろう。

 【村正】のゲームの様な機能を思い出し、昨日思いつた不吉な考えに辿り着く。すなわち、翔太が巨大なゲームの駒であるという事実だ。この事実はこの頃特に強く感じる事であり、度々それを考えて奈落の底へ落ちたように心細くなるのだ。

 翔太はいつものように、首を振りそれを振り払う。その翔太の姿をフィオンは逆に勘違いしたらしい。

 

「い、いや、ショウタを責めているわけじゃあないぞ。あまりにもの出鱈目な性能で驚いただけだ。ありがとう。ショウタ」


「ありがとう。フィオン。じゃあ、予定通り、今日から魔の森――深域の探索で良い?」


「ああ、大丈夫だ。これなら十二分にショウタとレイナについて行ける。朝飯を食べて1時間後に城門前に集合するとしよう」


「うん。了解フィオン」


 翔太とフィオンで勝手に話を進めてしまったので、仲間外れ感があったのかレイナが微妙に御機嫌斜めになった。御姫様をフィオンと翔太の二人で宥めながら、食事を終えて、自室へ戻る。

 今日は翔太自身の【超越級(トランセンデンス)レベル2】を作らなければならない。今日の冒険は少し早めに切り上げるべきだろう。

 なお、ヴァージルの武器を作成するかはもう少し様子を見てから判断すべきだろう。今まで作成を急いでいたのはヴァージルが再び狙われる可能性があるからだった。だが、糞組織――ブレインの目的があくまでラシェルにある以上、ヴァージルが今後襲われる可能性は万が一にもあるまい。それほど、賊共も暇ではないはずだ。もう少し様子を見てから作成するか決しようと思う。その方がむしろヴァージルためとも考えられる。

 レイナを見てればわかる。【超越級(トランセンデンス)レベル2】を所持するようになれば今までのような生活は二度とおくれなくなってしまう。レイナと異なり、ヴァージルには英雄願望などない。ヴァージルにとっては所持しない方が幸せだろう。オットーには悪巧みを破棄する事について謝罪が必要だが理由を話せばわかってくれると思う。

 だが、万が一のために【神話級(ゴッズ)レベル4】は所持してもらおう。いささか心配性気味であるようにも思えるが、失ってから後悔するよりは何倍もましだ。





 翔太はいつもの黒いローブを着て、宿屋キャメロンを出る。相変わらず、宿屋キャメロンのあるストリートからメインストリートへ向かうストリート――通称カップル通りは混雑している。

 



 歩いていると右足に僅かな衝撃を感じた。目を向けると小動物――エミーが抱き付いている。いつにも増してコアラのようにで可愛くて頬が思わず緩む。


「やあ、エミー、こんにちは! ケトもこんにちは!」


「ショウタだ! ショウタだ! やっと会えた! 全然、エミーに会いに来てくれなかったから寂しかったの!」


「にゃあ!」


 エミーは翔太に太陽のような満面の笑顔を振りまく。ケトも翔太に頭を擦り付けて来る。翔太も嬉しくなり、エミーとケトの頭を優しく撫でる。しゃがみ込み、エミーに視線を合わせる。


「エミーは今日どうしたの? 一人で歩いては駄目。皆また心配するよ」


 エミーは気まずそうに、モジモジとしていた。その仕草で粗方の予想はついた。またはぐれたらしい。エミーの手を引いて従者の人を探すと、息を切らしてハワードがこちらへ走って来る。


「これはショウタ殿、またエミー様の面倒を見て頂いて礼をいう」


 ハワードは翔太に頭を深く下げる。慌てて翔太が遮る。ハワードのような豪華な鎧を着た騎士に白昼堂々頭を下げられると非常に気まずい。やっとの事で頭を上げてくれたところにとびっきりの不幸が翔太を襲う。


「あ、お姉様!」


 エミーの弾む声が辺りに響く。エミーは右手をブルンブルン振っている。


「エミー、お前、また勝手に――」


 エレナだった。エレナは翔太に視線を向け、目を見開いている。

 翔太にとってエレナはエルドベルグでは最も会いたくない人物と言って良い。なんせ、もう少しで奴隷にまで落されるところだったのだ。二度と関わり合いになりたくはない。ハワードに頭を軽く下げ、エミーとケトの頭を一撫でしてエレナの脇を無言で歩いて行く。


「あっ……ちょっと待っ――」


 エレナが何か翔太に言いかけたが無視して通り過ぎる。エレナと完璧に離れたのを確認してほっと胸を撫で下ろす。


              

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