第2話 深淵の偉大なる者
そこは、超巨大な部屋の一室であった。装飾品どころか、生活品と思われるものすらない。超巨大な倉庫。それが一番しっくりくるかもしれない。
そして、その部屋の中心には絢爛豪華な玉座があり、その玉座の上に様々な色からなる禍々しい渦がある。絵具をぐちゃぐちゃに混ぜ合わせたような色合いは、見る者に強い吐き気を起させる。それ以上にその渦はあらゆる存在を否定するような根源的な恐怖を見る者に起させた。
その渦は人の形をとり、玉座に厳かに座している。玉座に座す者――『深淵の偉大なる者』は今狂喜に震えていた。
勿論、目の前に映し出された映像を見てである。その映像は、ショウタからショウが生まれた瞬間の映像。
「フフフフ。これで駒は全て揃った。さあ、『真理』、君の手駒も準備万端だろう。
第一のゲームは僕の負けだった。だけどね。第二のゲームはそうはいかない。今度こそ、僕の完全勝利で終わるよ」
言葉を切り、『深淵の偉大なる者』は、パチンと指を鳴らす。すると、アースガルズ大陸の様々な場所の映像が映し出される。
一つ目は、聖法教国アグレシア。そこには、勇者と呼ばれる少女と少年がみえる。少女と少年は一心不乱に修業に励む。それぞれの自らの強い思いを遂げるために……。
二つ目は、ビフレスト王国――迷宮都市。そこには、女性3人と男性1人が見える。彼女達の目的はある人物を探すこと。もう一度あの懐かしい笑顔を見るために……。
三つ目は、ビフレスト王国エルドベルグ近隣――魔の森中域。出会わなければならない強者を求めさ迷う怪物が見える。怪物は夜の中域を目的の相手を探し求める。もう一度逢い、あの時伝えそこなった言葉を伝えるために……。
四つ目はビフレスト王国王都――王立魔法学院。憤怒と憎悪に身を焦がした一柱の女性がみえる。女性は策謀を巡らす。自らの敬愛なる主人を貶めた原因を作った罪深い存在にとびっきりの絶望を与えるために……。
「さあ、第二ゲーム――第一幕は閉幕した。次は第二幕の開幕だぁぁ――!!」
口角と思われるものを耳元まで三日月状に吊り上げて、『深淵の偉大なるもの』は天を仰ぎながら叫び、狂喜に狂う。
傍に仕える者達から地鳴りのような歓声を伴った盛大な拍手がなされる。魂を完膚なきまでに破壊するような魔笛の音が鳴り響き、鼓膜が裂けんばかりに太鼓が連打される。その嵐のような音の中、『深淵の偉大なる者』の数多の眷属達がその狂気に反応して舞踊り狂う。
「楽しみだな~。早く事態が動かないかな~。きっと次は彼だろうね」
『深淵の偉大なる者』はワクワクと心を躍らせながら、映像の一つを注視する。それはすぐに訪れる未来。
「……待ち遠しいけど退屈だよね」
急にしょんぼりする『深淵の偉大なる者』。
周囲の有形・無形の眷属達はそんな『深淵の偉大なる者』を慰めるために、魔笛を吹き、太鼓を鳴らし、踊りに狂う。




