たった一つのさえたやり方
「5次元の私たちが認識できないなら、6次元以上先に蝶花はいる。」
「和奏は5次元到達に何年かかったの?」
「600年近く。おそらく蝶花もそれくらいかかっていると思うよ。白羽。あと、燎里さんは初めまして。時間はたっぷりあるわ。」
「うへぇ。心だけおばあちゃんになりそう。」
燎里は嘆息する。
1500年かけて、6次元の壁を超えた一行が、現代社会へと戻ると、封鎖が解けて町に活気があふれていた。
不知火燎里は、常磐津深麓に事情を聞く。
「羽曳野喋花の撒いたウイルス感染者の中で、抗体を持つ人からワクチンを作って、感染予防と治療を開始したんだが、1週間前からパンデミックが徐々に収まって、隔離解除のエリアが広がりつつある。」
「カミュの小説ペストみたいね。」
「次の変異まで3ヶ月。勝算はあるのかい?」
「五分って話だわ。っと、来たわね。」
「時間が経てば、再びパンデミックが起こると思って見過ごしていたけれど、和奏?6次元に入門したのね。未来予知に引っかからなかったわ。」
帰還に気付き、和奏たちの元へテレポートした蝶花が話しかける。
「蝶花。お早いお越しね。」
蝶花の本当のオドを目前にして、和奏は冷汗をかいている。
「それに白羽。膜は面白い発想だったわね。」
羽曳野喋花は、式神にオドを1点集中させて攻撃する。
白羽は光速で、攻撃箇所にオドのバリアを1点集中させる。さらに、膜がベルトコンベアの様に動くため、横滑りする。
時空系能力を持つ両者は、止まった時の中を動く事ができるが、白羽は覚醒後、止まった時の中を光速で動くため、蝶花に捕まえる事ができない。
「あいかわらず器用ね白羽。御影、お相手なさいな。」
影から噴出した伊吹御影は、ダークマターで白羽の粒子化した身体を吸収する。
刹那、仲間たちの影に転々と身を潜ませ身をかわした後、エリア一帯を高重力にし、全員身動きを取れなくさせた。
「お姉ちゃん!やめて!」
その場にいた伊吹雫が叫ぶが、少女は無力だった。
「5千万年。できる限りを尽くしたわ。」
和奏のオドが急上昇し、810兆odに達する。
仲間の誰も知らず驚いた様子だ。
「私より4千99万歳お姉さんになったのね、和奏。私が潜在オドに気付けないって事は、あなたの方が上にいるって事よね。」
「11次元。」
「御影の重力圏からも脱出してるわね。驚いたわ。」
蝶花は式神を身体に貼りめぐらせ防御する。
「白羽の膜と同じで、触れた瞬間攻撃するわ。式神で使役する鬼は羅刹。俊足・怪力は私に付与される。」
しかし、蝶花はその場に立ち尽くしていた。
「一歩も動いていない。何故!?」
「これが11次元の力。蝶花が動く未来を書き換えた。」
和奏と蝶花は衝突し、お互いのオドが爆散する。
人間をやめた蝶花と和奏は、魂の形を保てず崩壊する。
「なぜ、私の存在を11次元の力で消さなかったの?和奏。」
「罪滅ぼしだからよ、蝶花。」
「蝶花に勝つため、私は人間を辞め、星喰らいになって、多くの星々の命を吸って強くなった。あなたもきっと同じ罪を犯したはず。」
「そういえば、オドが下がっているわね。和奏が過去の宇宙人を消した事で、私が吸収した子孫の宇宙人が存在がなくなって、吸収した事実も無くなったのね。」
「私たちが滅ぶ事で、犠牲にした命の償いにはならないけれど、これからの未来は明るくなるはず。次元の壁を超え、運命に干渉したから、私たちの見た未来と変わってきている。」
和奏はすでに受け入れていた。
「そうね。私が受けた仕打ち以上に、私が与えた痛みの方が大きかった。もうこれで終わりにしましょう。」
2人の魂は、光の粒子となって拡散する。
「和奏。星喰らいの事、死を覚悟していた事、私たちに言えなかったのね。」
白羽は、光の残影を悲しそうに見つめながらつぶやく。




