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とある郎人、斯く語りき。
「沈んだ闇は、静かだった。静かであることが闇であると、ひとびとは誤認した。虚ろの闇だと誤解した。誤解でも幸福だった。それを誤謬と気付かなかったから、幸福だった。
幸福なひとびとは、ひとつひとつの傷になった。刻んだ傷が意味になった。失った故郷がことばになった。手繰った故郷が、名前になった。
名前は地になり、意味は天をさかしまにあらわした。かすれた時間が夜になり、埋めた重みが昼になった。遠くかすんだ塊は、きっと遥か遠くのものだった。
どこにも行けないものものは、赤くかすれた筋となった。ひとびとはそれが神だと知った。どこにも行けない神が、ここに墜ちてきたのだと気付いたのだ。」




