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とある郎人、斯く語りき。

「きっとそのかたちは分けるもののないかたちだった。分けるもののない、かたちをもたないかたちが神だった。動くことを忘れた赤く紺灰に沈んだ赫が神だった。

 赤い筋はかたちだった。ことばを模したかたちだった。込められた意味がかたちだった。きっとそこにことばが宿ったのだ。神がそこに墜ちてきたのだ。

 ひとびとは夢中になった。故郷の欠片のいのちを謳った。闇に深く沈んだ、赤い光を酷く偲んだのだ。

 われわれは名前を得た。孤独な痛みが、ひとりを名前にした。わたしになった。あなたになった。ひとりとひとりが、ふたりになった。

 けれどわれわれはことばを忘れなかった。ふたりはきっと、ひとりだった。埋まることのない断絶が、それでも幸福だった。

 そしてわれわれは今でも続いている。この先を知らず、これより前を語るだけのわれわれは、ひとびとは、今を明日にするため歩いている。歩いてここまで続いてきている。

 きっと明日も。明後日も。喪った虚闇の郷へ帰る日を願いながら。歩いているのだ。」

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