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とある郎人、斯く語りき。

「故郷を失くしたひとびとは、不完全なわれわれは、それでもなお地を埋め踏み均した。遠くの地平を近くした。

 あそこにもここにもかしこにも、ひとりひとりが埋め尽くす。世界の余白を埋めていく。ちいさなひとびとが、ちいさな世界を埋めていく。

 埋まった世界はすかすかだった。小さな世界は、埋まっていても空虚だった。空虚な世界は、ひとびとには大きすぎた。

 小さな寂しさで埋められた世界は誰もいなかった。わたしだけが生きていた。誰もかれもが同じことを気付かず思っていた。世界は埋められても、孤独は埋められなかった。

 埋められなかった孤独は、大きな世界さえも埋め尽くした。埋め尽くした孤独は、痛みになった。ことばは痛みだった。ひとびとはそれを知っていた。

 けれどことばは捨てられなかった。われわれは深く呑み込んだことばが、既にからだになっていたことを知っていた。痛みはこころで、たましいの平穏がことばだった。

 大きな世界は小さく、孤独に、酷く遠くに、喪った故郷の影だけを差し込んでいた。きっとそれは報いだったのだ。世界を拓いた驕慢に対する、報いだったのだろう。」

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