第13話 王都『イーア・ナール』の観光
「しゃ、しゃ、しゃ。見えてきたのう、イリス。あれがイーア・ナール王都じゃあ」
「ハニャア!」
箒に股がり黒猫を肩に乗せたマハの姿は、まさに魔女っ子と言った姿そのものだった。
「ユリセントさん、あれがこの国の王都だ。大きいだろう?」
「は、はい。とてもとても大きいです! リーン様! 凄いです。凄いです」
俺はというと「黑色」魔法の黒耀を背中に纏い、両手にユリセントさんをお姫様抱っこして飛んでいる。
そう。俺たち4人は王都へとやってきたのだ。
「しかし、マハよ。魔道具店の方は放っておいていいのか? 数日開けるなど亭主として問題ある行動だと思うが?」
「安心せい。リーンが持ってきた財宝を闇市に流して、今月のノルマは達成済みじゃ。しゃ、しゃ、しゃ。いいじゃろう。たまには都会で遊んでものう。のう?イリス」
「ニャア〜♪」
マハは、すっかり仲良くなったイリス(子猫状態)に話しかけている。
なるほど、懐に余裕がだいぶあるとは。どうせ俺から安く買い取り、闇市で高く売りつけたのだろう。……俺はどれだけ暴利を貪られたんだろうか。
「ふむ。後で仕返ししてやろう。悪友め」
「はい? 「大好きだぞ。ユリセントさん」ですか?」
「いや、そんなことは一言も言っていないぞ。ユリセントさん」
「むぅ〜! なら、今言って下さい。リーン様!」
両腕を首元へと回され抱きつかれた。これも昨日の夜。美味しく頂かれたのが原因か。
『ダーク・イリュージョンエローライフ』の仲間ヒロインは、エロストレスを溜めすぎると「発情期」を向かえて異性を美味しく頂くことがある。
俺はそれに失敗した。いや、別にユリセントさんは好きなので全然いいのだが。
人の目がある王都でこれをやられるのは少し恥ずかしい気がするな。
◇◇◇
『イーア・ナール』王都へとやって来た。
イーア・ナール王国では、一番の人口を誇り、『ダーク・イリュージョンエローライフ』の主要舞台にもなる場所だ。
……つまりエロゲーのヒロイン達が大量に居住している。
今は王都の市場を3人と一匹で観光している。
「男の子の香りの香水だよ。安いよ安いよ〜!」
「魔女の媚薬はどうだろうか? 興奮するよ〜!」
「『ゾッドとユウナなのいけない夜だニャンニャン♡』劇場がもう少しで始まるよ。」
そこら中が賑わっている。流石は王都だ。
「……男の方が全然いませんね。比較的若い女の子ばかりです」
「しゃ、しゃ、しゃ。イーア・ナール王国を統べる「女王様」のせいじゃな。王都の男は王政に管理されていて男専用の居住が宛がわれてるんじゃあ」
「な、なるほど」
ユリセントさんとマハが、女性達が行き交う回りを見てそんな会話をしていた。
「ふむ。イリス嬢。王都では子猫状態で過ごしていろ。もしかしたら、君を狙う悪い奴等がまだいるかもしれないからな」
「ニャ〜ア♡」
イリス嬢(子猫状態)の顎を優しく撫でる。そして俺は気づく、なぜかものすごく注目されていることに。
「男の子?……え、え? 新鮮な男の子?」
「…………美少年? 若い」
「ごくっ! 獲物」
ふむ。たしか俺は顔は良い方だろう。顔つきも幼く、思春期真っ盛りの若い女の子や肉食系女子からすれば食べ頃とも言える若い男の子だ。
……そういえばこの世界はエロゲー世界で、イーア・ナール王都の若い娘は、捕食者のように男を求めるんだったな。
「ふむ。……まずいな」
「「「男!!!」」」
王都の住民達が、俺を求めて襲いかかって来た。
「なんだ? この女の子たちの熱狂は? まずい。捕まれば、俺は間違いなく1000を軽く越える美女たちに強姦される。逃げるぞ。イリス嬢」
「ニャン!」
「とういうわけで、ユリセントさん。マハよ。ここは1度解散し、不動産ギルドで落ち合おう。去らば!」
「へ? リーン様! どこに行くんですか? 私との王都デートしてくれるんじゃないんですか?」
「お〜! 雄に飢えた肉食系娘たちが、リーンを追いかけとるなぁ。絶景じゃな」
ふむ、あの2人。まるで俺のことを心配していないな。
「「「待って! 男の子! 男の子!!!」」」
「そして、流石はエロゲー世界。男に対する執念が深い。これではまるで数千人規模のパレードだ。……それにでも逃げるか。〈黑刻鳥〉……おや?」
「黑翼」を発動させようとするが発動できない。
「ふむ。……王都の魔法防壁か。まずいな」
冷や汗をかきながら、俺は自身の後ろを見つめる。
「「「ハァー、ハァー、ハァー、若い男の子!!」」」
「捕まれば服を剥かれて、必ず貞操を奪われること100%というやつか。……詰んだ」
王都の空を見つめながら、思い出す。
あぁ、そういえば。俺は、悪役ながらなかなかの美男子という設定だったな。
そのフェイスにより。アホな言動と行動をしなければモテると……詰んだ。
「「「ウキャキャ!!!」」」
野生の猿のような雄叫びを上げながら、俺の眼前にまで向かってくる美女たち。
「ちょっと! なにをボーッとしているの! 逃げるよ!」
「うむ?」「ニャン!?」
そして、裏路地からいきなり見知らぬ少女が俺の前に飛び出してきたと思えば、俺の右手をいきなり掴んで、裏路地へと走り出したのだった。




