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竜国の姫らしいですが、田舎で静かに暮らしたい~指輪をはめたら竜になって、魔獣好きの第二王子に溺愛されています~  作者: コフク
第四章 集う光と竜――決戦前夜

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第15話 水晶球の導き

 その日、レオは再び神殿を訪れた。


 神殿の入口に着くと、白に紫の刺繍の入った制服を着た小柄な少女が立っていた。

「お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」

 白いフードからのぞく顔立ちは、まだとても幼い。だが、挨拶の仕方や歩き方は、礼儀をきちんと教えられている感じがした。


 神殿長の個室ではなく、広い中庭へ案内された。短い草や小花に、明るい日が当たっている。

 目が合うと、神殿長ミカエディスが深く一礼した。前と同じく、紫の水晶球を両手に抱えている。

「ミラ、ありがとう」

 ミラと呼ばれた少女はお辞儀をして去った。


「良い子でしょう」

 彼女の後姿を目で追いながら、ミカエディスが言う。

「しっかりしていますね。僕の弟、ディアと同じ位でしょうか」

「第二皇子は、おいくつでしょうか」

「今、九歳です」

「では、ちょうど同い年です」

 ミカエディスがふうっと小さく息をつく。

「ミラは、私の親戚の子です。見どころがあるので、いずれ後継にできればと」

「そうなんですね」

 レオも、遠ざかる彼女を見送る。ディアに会ったら友達になれるだろうか、と思う。

「……ちょっかいは、駄目です」

 鋭い目でレオを見る。

「出しません」

 面倒なことになると嫌なので、弟と会わせてみたいという言葉は飲み込んだ。

「あの子とシャールがいたから、私はどん底の日々から抜け出せたんです」

 ミカエディスは水晶球をそっと抱きしめた。

「……それより、今日から魔法の訓練をしていただけるんですよね」

「ええ。なので、この中庭に来ていただきました。神官たちもここで魔法の訓練をいたします」

 そう言って、ミカエディスはレオを手招きする。

 レオは良く分からないまま、彼女の前に立った。


「まずは、殿下の魔法の素質を見ます。手を、シャールに触れてください。優しく」

 そう言って、両手で水晶球をレオの前に差し出す。

 レオは、ごくりと唾を飲み込み、右手でそっと触った。


 すると、水晶球の奥から、紫の光と赤い光が渦巻くように現れ始めた。うねうね、ぐるぐると、二つの色が水晶球の表面を動き始める。


 赤い光は竜の形になりかける。

 だが、ならないままに広がって、薄まった。


 次に紫色の光が鳥の形を作る。

 それはいくつもの鳥に別れ、まとまって一つの形になった。

 紫の鳥が、赤い炎を周囲に吐き出す。


 そして、光は散り散りになって、消えた。

 後に、最初と同じ紫色の水晶球が残った。


「――分かりました」

 ミカエディスが言う。

 レオは黙ったまま、拳を握る。緊張で手に汗がにじんでいた。

「やはり、竜国の血と、帝国の血、それぞれの魔力を受け継いでおります。ですが」

「……ですが?」

「竜になるよりは、黒烏クロウを使いこなす方が先のようですね」

「やはり……」

 先ほど映ったものを見てそうだろうとは思ったが、とレオは小さく肩を落とす。

「竜化を求めたが、まだ得られていない」

 ミカエディスはうなずく。

「闇の魔力の素質は十分あるようです。魔力を正しく育てれば、クロウ・レギオン、そして、炎の魔力も使える――と、この子は言っています」

 ミカエディスが目を細めながら、水晶球を愛おしそうに撫でる。

「微力ではございますが、今日から時々、殿下の訓練にお付き合いいたします」

「そうか。ありがたい……」

 レオの拳がほどけた。

「ただし、ここでは魔力を増やす訓練のみですよ。クロウ・レギオンは、別の場所でご自分でどうぞ」

「わ、分かった」


 それからレオは、ミカエディスに言われるままに、訓練を始める。

 まずは身体を柔らかくほぐし、目を瞑って内側へ意識を集中することからだった。


『前に、進めそうか?』

 ウィンが、レオの肩に降りてきて囁く。

「進めると、良いな」

 小さく笑った。

「クロウ・レギオンの訓練は、別で一緒に付き合ってくれ」

『勿論だ。核になる』

 レオはまた、馬車に乗り込んだ。


 ◇


 さらに数日後、部屋でまだ朝食を食べていたレオの元へ、また皇帝の黒烏、ディキオが飛んできた。

 連日、朝早くに神殿で瞑想や柔軟などをして戻ったあとだ。この後も、宰相ルシアンデルの執務室で仕事を手伝う予定がある。

 レオは急いでスープとパンを掻き込んでいる最中だった。


 ディキオが窓辺に降り立つ。

『だいぶ先の話だが――』

 ディキオが珍しく、もったいぶるかのように間を空ける。

 この時間の無い時に……と、レオは少しむっとした顔で食べ続ける。

『技術院長が皇帝に、研究成果のお披露目をすることになった』

 皇帝の声色を真似るように伝えた。

『場所は辺境の研究施設だ。数名の供を連れて行く。お前も行けるが――どうする?』

 ディキオが首を傾ける。

 レオは、思わず手を止める。


「行く!」

 レオはパンを頬張ったまま、慌てて叫んだ。


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