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プレリュードの夏  作者: 森好子


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6/9

第六話:都会の夜景より見たいもの

徹夜で調べた「東京の女の子が喜ぶデートスポット」。

本命は、新宿副都心だった。でも先輩達から金曜夜の渋滞の怖さをふきこまれ

よしこの門限に確実にまにあわせることを考えると

妥協案に頼るしかなかった。


雑誌で得た知識では、女子をおとすには夜景が一番なのだ。

そして穴場として選んだのが、まだ完成前のパルテノン多摩の大階段だ。


階段をのぼりきると、思ったより暗い。

しかもあちこちに寄り添ったカップルがいて、暗がりの中でひそひそ笑い合っている。

その様子を見たとたん、一也の胸は妙に落ち着かなくなった。ここまで来たんだから、少しぐらい近づいてもいいだろう。

そんな考えが、何度もせり上がってきた。


横に座るよしこの肩に手をまわそうとした瞬間・・・


よしこがのんびりと言う。

「もう飽きちゃった。夜景も単調だし。」


え?まだここに座って2分と経っていないのに。

飽きた?


一也は何か返したいのに言い返したいのに、何も言えなかった。

まわりのカップルの気配ばかりがいやに濃くて、さっきまで都合がいいと思っていた暗がりが、

今はただ居心地の悪いものに変わっていた。


「デニーズのハンバーグ、おいしかったね」

よしこが続ける。


「私のおごりなんだから、かずやはステーキ食べてもよかったのに」

いきなり話題が変わって面食らう


「いや、日曜日は俺がおごるから。今度こそTVで紹介されていたイタリアン予約するから。」


「だから、そういうの嫌。日曜日は私がお弁当作ってくるよ。

 かずや、食べられないもの無いっていってたよね」


「まあ、好き嫌いは無いけど」


一也は思わずよしこの顔を見た。

よしこが自分のために弁当を作ってくる。


その一言だけで、なぜか機嫌が直った。


イタリアンを拒否されたことも、夜景を2分で切り上げられたことも、急にどうでもよくなってくる。


(……俺、単純すぎねえか?)


シティボーイは難しい。

そんなわけで、少し早めに女子寮に到着した。

よしこは

「今日はありがとう。楽しかった。

 日曜日、夏祭り楽しみや」


よしこは助手席から降りると、一也の顔をのぞき込むようにして笑った。


「じゃあ、日曜日な」


一也も笑って手を振った。


プレリュードを走らせながら、ふと思う。


イタリアンは却下された。

夜景は二分で飽きられた。

肩に手を回すことすらできなかった。


完璧なデートプランは、ほぼ全滅だった。


なのに。


(……なんで俺、こんなに嬉しいんだ?)


一也には、よく分からなかった。


そしてそのときの也は知らなかった。


日曜日に行く「夏祭り」が、最初から存在していなかったことを。

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