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94.少女は国家の経済基盤に目途を付ける

少女は資源探査訓練に本格的に乗り出します。資源埋蔵場所のあてはあの大学講義の参考書籍に付属していた資源分布予測図のみです。


ーーー 場面はオスムール帝国皇帝宮城内


 ユリアは、焼き肉パーティーの翌朝、起床して身仕度を整えると昨日の焼き肉パーティーの開催場所を確認した。跡地には何も残っておらず、綺麗さっぱりと原状復帰されていた。


 ユリアが野営基地に戻ると、イーアン達が、朝食を終えて耕作地土壌改良作業に出発するところであった。残り7日間の実作業であるが、作業対象地が遠くなるため前進基地を設営することになったのだ。


 宮城敷地内の野営基地には、最早(もはや)ユリア達の3つのテントしかなくなっていた。周辺は綺麗に掃き清められ、掃き残しの枯葉が風に吹かれてさらさらと吹き溜まりに集まっている。ユリアは、カビラとハルショーネが家臣になってくれたことを感謝した。


 ユリアが小さく呟く(つぶやく)。


  「あんなにあったテントが今は3つしかないわ。こんな光景を見ると、何だか取り残されたようで寂しい感じがするね。でも、これからはカビラとハルショーネが傍にいるわ。上手く使い回していかないとね。」


 イーアンが言う。


  「ユリア師匠。私らはここから30km先にある空き地に前進基地を設営するっす。しばらく別行動すが、何かあったらすぐに呼んで下さいっすよ。カビラとハル、師匠を頼んだぞ。」


 カビラとハルが口々に言う。


  「おう。任せておけ。お前たちも頑張り過ぎるなよ。」

  「あたいが面倒見るから何も心配いらないよ。そちらも気をつけなよ。」


((あれ。カビラとハルは私が使い回すのよ。私はいつから心配されて面倒見られる存在になったの?そうか。幼児の見掛けで感傷に浸るとそうなるのも当たり前なのかもね。気をつけなくっちゃ。))


 ユリアが言う。


  「イーアン、みんな、気をつけて行ってきて。終盤辺りに見に行くかも知れないからね。」




 ユリア達は、イーアン達が出発した後、朝食を食べながらミーティングをした。


  「さて、焼き肉パーティーも成功裏に終わったね。二人ともよく頑張ってくれました。


 これから、二人の処遇を決めます。といっても、やることはその時の状況で適宜変わります。


 カビラの役職はハンター時代の経験を買って先遣隊長代行とします。これから、種々の目的地に先乗りして情報収集し報告をして貰います。はい、これが辞令です。初任給も書いてあります。


 ハルの役職は魔法属性に期待して資源開発主任代行とします。これから資源探査と資源採掘をして貰います。はい、これが辞令です。初任給も書いてあります。


 今日からしばらくは、役職にあった技術を身に付けて磨きを掛ける訓練期間とします。


 今日の訓練は、わたくし達3人共通で、資源探査魔法で金や宝石類を地下から探し当てる訓練です。そのためのサンプルが必要です。内政担当次官のイスタラム様に聞いてから街の宝石商に行きましょう。


 今日は、その前に、建設土木部門長を訪ねます。昨日コンストレイ様にお願いしておいた古典語本を読ませてもらいます。」


 ユリア達3人は、揃って建設土木部門長の部屋に入った。


 ユリアが言う。


  「コンストレイ部門長。おはようございます。さっそく古典語本を読ませてもらいに来ました。」


 コンストレイが言う。


  「おお。ユリア殿。おはよう。待っておったぞい。この5冊じゃ。持っていって読んでも構わんぞ。」


 ユリアが言う。


  「いいえ。10分ほどかかりますが、ここで読ませていただいてよろしいでしょうか?」


 コンストレイが驚いて言う。


  「えっ。10分じゃと?たったそれだけで読み切れるのかえ?」


 ユリアが言う。


  「はい。10分もあれば十分です。それでは。 ・・・ 」


 ユリアは猛烈なスピードでページをめくり始め、次々に読む本を取り替えていった。


 ユリアが5冊を読み終えてしたり顔で言う。


  「はい。読み終えました。コンストレイ部門長。この5冊はお返しいたします。ありがとうございました。


 ところで、部門長、鉱物資源のサンプルはお持ちではないですか?たとえば、燃える石、つまり、石炭や、ダイヤモンド、サファイア、ルビー等の宝石類です。」


 コンストレイが言う。


  「いや。それは持っておらん。ただ、鉄鉱石ならいくつかあるぞい。ひとつならやるから、どれでも好きなのを持って行け。それより、古典語本はちゃんと読めたんかいのう。そっちが心配じゃ。」


 ユリアは大喜びで礼を言って、鉄鉱石のサンプルを貰い受け、部屋を出る時にこう言った。


  「もちろん。ちゃんと読めましたよ。お蔭様で、我が国我が領地の繁栄は約束されたも同然となりました。ありがとうございました。いずれコンストレイ様は故郷に錦を飾ることになるでしょう。」



ユリア達は、次に内政担当次官のイスタラムを訪ねた。


  「イスタラム様。おはようございます。ちょっとお尋ねしたいのですが、この街に宝石商はいますか?宝石のサンプルを買いたいのです。」


 イスタラムが言う。


  「おはようございます。ユリア様。ちゃんと登録した宝石商は2軒あります。ほかに、もぐりが数軒います。どの宝石商も海外、つまり、この大陸とは海を隔てたほかの大陸から輸入しています。


 そのせいもあってか、かなり高価ですよ。それと、登録宝石商であっても、たまに仕入れで偽物を掴まされたり、顧客を騙して本物として売ったりしているようです。十分にお気をつけ下さい。」

 

 ユリアが言う。


  「ありがとうございます。宝石商の鑑定眼も当てにはならないのですね。この宮城内には宝石鑑定人はいないのですか?」


 イスタラムが言う。


  「残念ながら一人もおりません。皇帝家でも貴族家でも、宝石はおいそれとは買えません。むしろ、大商人など成金たちに需要があるようです。」


 ユリアが言う。


  「そうなんですね。ありがとうございました。」




 ユリア達3人は、城壁門を出て街を歩き、宝石商を探した。ユリアは、戦闘服ではなく、普通の町娘の服装をしているが、幼児であるため金持ちには見えない。カビラとハルショーネにしても金持ちの服装ではない。


 ユリアが言う。


  「二人とも、わたくし達の服装では、たぶんすぐに追い出されるわ。だから、店に入ったらすぐに探索魔法を掛けて、これまでと違う感覚を放つ物体の存在を確認するのよ。」


 ユリア達は、最初の宝石商の店に入った。


 店員はユリア達を見るなり追い出しにかかった。


  「ここは、お前たちのような貧民が来るところじゃない。出ていくんだ。」


 ユリアが食い下がる。


  「店員さん。小さい原石でもいいんです。売っていただけませんか?」


 店員は聞く耳を持たない。


  「子供のおもちゃじゃないんだ。とっとと出ていけ。」


 ユリア達は、店の外に出た。ユリアは二人に聞いた。


  「どうだった?何か違う感覚があった?」


 カビラが答えて言う。


  「少し時間が短かったが、鋭く尖った(とがった)光の棘(とげ)のような視覚的感覚を示すものがたくさんあった。それらの個々の違いを分離するところまではいかなかった。」


 ハルショーネが言う。


  「あたいもカビラと同じような表現の感覚がした。ただ、尖ったもののほかに、小さいけど丸っこい光を帯びたものがあった。」


 カビラが頷いて言う。


  「そういえば、入って左手奥側にそんな丸っこい光の集団があったぞ。」


 ユリアが言う。


  「私も二人と同じ事を感じたわ。そして尖ったものにも長さの違いが何種類かあった。尖って突き出る方向も一方向だけのものや複数方向のものが混在していたわ。どうかしら?」


 カビラが言う。


  「私はそこまでは読めなかった。尖ったものがごちゃごちゃして判読する時間がなかった。」


 ハルショーネが言う。


  「あたいは長さの違いには気がついた。だけど一つのものから複数方向に突き出るものには気づかなかった。」


 ユリアが言う。


  「じゃあ、次の店に行くわよ。」


 ユリア達は、少し歩いて別の宝石商の店に着いた。今度は、カビラが先頭で店の中に入って行った。女性店員が出て来て応対する。


  「いらっしゃいませ。ダイモン宝石店へようこそ。何かお探しでしょうか?」


 カビラが女性店員に聞く。


  「金と宝石が何種類かほしい。どれも小さいものでいいんだ。金も宝石も原石でいい。高級なカットや装飾がされた高価なものは買えない。どうだ。対応してもらえないだろうか。」


 女性店員は、少し戸惑って言う。


  「少々お待ちいただけませんか。責任者を連れて参ります。」


 カビラが言う。


  「ああ。問題ない。ここで待たせもらう。」


 女性店員は、責任者を呼びに行った。


 ユリアが言う。


  「さすがカビラだね。店員さんも大人の対応をしてくれる。でも、ほしいものを聞いて、変な客が来たと思ったんじゃないかな。」


 少し待って女性店員が男性責任者を連れて来た。


 責任者が言う。


  「当ダイモン宝石店の店長ブライアスでございます。金や宝石の原石をご所望と伺いました。失礼ですが用途とか目的などお伺いしてもよろしいでしょうか?」


 カビラがユリアを見てから言う。


  「こちらも失礼だが応対者をこの人に変わる。」


 ユリアが頷いて言う。


  「初めまして。ユリアと申します。この度、オスムール帝国皇帝陛下から東部乾燥地帯の全域を譲り受けて、わたくしの領地と致しました。このオスムール帝国とは対等の関係にある半独立国家です。」


 ここまで聞いて、びっくりするとともに少し疑念を持った店長ブライアスが言う。


  「大変失礼ですが、身分を証明するものをお持ちなら見せていただけませんか?」


 ユリア達がそれぞれハンター資格証明入りの会員証を見せる。ユリアが見せたのは登録名がクロエであり、少し入念に調べてから納得して店長ブライアスが言う。


  「大変失礼致しました。確かに東部乾燥地帯の譲渡の件は、内政担当次官のイスタラム様からお伺いしておりました。宝石類の用途には大体の予想はつきますが、少し具体的なお話しをお聞かせ願えないでしょうか?」


 ユリアが答えて言う。


  「分かりました。今のわたくしの状況は、領地はありますが国の実体がまだありません。そこで国づくりの資金源にするため、領地内にある金鉱脈や宝石の埋蔵地を探査して掘り当てます。


 そのような探査にはサンプルが必要です。サンプル宝石の原石を買い取らせていただくか、見せてもいいものをここでじっくりと見せていただけないでしょうか?」


 店長が納得して言う。


  「なるほど。分かりました。わたくし共としましては、お見せするだけのご要望なら応じられます。原石もありますが原石のままではお売りできません。カットして価値を高めてから売るためのものでございますので。」


 ユリアが覚悟を決めて言う。


  「分かりました。見せていただくだけでは、そちら様の商売のお邪魔でしょうから、100万ビルク以内の安い商品を一つ買い取らせてください。」


 店長ブライアスが安心した顔で言う。


  「承知致しました。それでは、あちらのテーブルでお待ちくださいませ。サンプル用と買い取り用のいくつかをお持ちいたします。」


 ユリアが言う。


  「よろしくお願いいたします。さて、カビラとハルショーネ。複数方向に突き出るものに気づいたかしら?」


 カビラが言う。


  「ああ。ここまで時間があれば確かに他と分離出来る。」


 ハルショーネが言う。


  「うん。1方向と2方向と3方向が確認出来た。」


 そこに店長ブライアスが女性店員と共に、売り物用とサンプル用の2つのルーストレイを持ってきた。店長ブライアスが言う。


  「こちらがサンプル用です。右端から順に、ダイヤモンド、サファイア、ルビー、エメラルド、ジルコニア、アメジスト、ガーネット、金です。そちらは、売り物用の小粒のもので同じ並びとなっています。じっくりとご覧くださいませ。」


 ユリアが言う。


  「ありがとうございます。なるほど。こうして並べて見ると違いがよく分かりますね。でも、店長様。こちらのサンプル用は、間違えて紛いもの(まがいもの)がまじっているようですよ。さて、どれでしょうか?」


 店長ブライアスがユリアに指摘されて、急いで拡大鏡を使って確認していく。店長が大声を上げる。


  「ああっ。こ、これはダイヤモンドじゃない。ジルコニアの変種だぁ。なんでこんなことになっている。失礼致します。すぐに犯人を見つけないと。」


 店長は奥に引っ込んで行った。ユリアは、待っている間に考えて、サファイアとルビーとエメラルドのうち3つの平均的な感覚を与えるサファイアの小粒と金を購入することにした。


 これらは探索魔法の魔力が漂う中で、中心体から3方向に光り輝く鋭い突き出しがある。突き出し長さはエメラルドが最も長く、ルビーが最も短い。ちなみに、ダイアモンドは中心体から4方向に鋭い突き出しがあり、ジルコニアは中心体から1方向にしか鋭い突き出しがない。なお、あの丸っこい光を帯びたものの正体は金であった。


 しばらくして、店長が、昨日から今日にかけてこのサンプル用ルーストレイを扱った3人を連れて戻ってきた。店長はこの中に犯人がいると睨んでいるらしい。店長は3人にそれぞれ扱った時の様子を証言させた。


 容疑者Aの証言: わたくしは、昨日の朝、開店直前に金庫棚から取り出してショーケースに収めたのです。その時にはちゃんと本物のダイヤモンドが入っていました。本日の朝も同様にいたしました。その時にも同様に本物のダイヤモンドであることを確認いたしました。


 容疑者Bの証言: 僕は昨日の午前の接客中にショーケースから出してお客様にお見せしました。その時は、わたくしもお客様もまがい物とは気づきませんでした。もちろん、お客様も宝石に触れてはいません。


 容疑者Cの証言: わたくしは昨日の午後の接客でショーケースから取り出してお客様にご覧いただきました。お客様はおもにサファイヤから左側の3つを手袋をした手に取ってご覧になっていました。ダイヤモンドが本物かどうかは気にもしませんでした。


 店長はこの3人の誰かが嘘をついていると思っているが、証言内容から嘘を見抜くことができないでいる。


 ユリアは助け舟を出すことにしたようだ。


  「店長様。余計なお世話かも知れませんが、犯人捜しのお手伝いしたいのですが。いかがでしょう?」


 店長が言う。


  「貴女様が?あっ。いや、国主様。うーん。わたくしでは埒(らち)があきそうにないです。ご迷惑でなければお願いいたします。」


 ユリアが言う。


  「まず、容疑者A様にお聞きします。このお店ではこのルーストレイのダイヤモンドの鑑定はどのような手段で、どのような時刻やタイミングまたは頻度で行うのですか。」


 容疑者Aが答える。


  「通常はこのルーストレイのダイヤモンドの鑑定は致しません。これはまだ指輪やブローチや錫などにはめ込まれていない状態ですので売り物ではないからです。わたくしは、毎朝、自分の訓練のために鑑定します。鑑定方法は拡大鏡目視と屈折率の測定です。」


((あれ。そこまで言っていいんですか?墓穴を掘りましたね。))


 ユリアが揺さぶる。


  「朝の開店前ではこの店内はシャッターが下りていて暗いですね。鑑定方法はどちらも光を十分に必要とする方法ですが、暗い中で鑑定するのが貴方の訓練なのですか?」


 容疑者Aが一瞬答えに詰まる。


  「そ、それはもちろん明るい窓辺で行います。」


 ユリアがさらに追い打ちをかける。


  「窓辺には屈折率計を載せる台がありませんね。どうやるんですか?」


 容疑者Aがいよいよ答えに窮する


  「ああ。記憶違いでした。昨日と本日は拡大鏡の目視鑑定だけでした。」


 ユリアがついに引導を渡す。


  「どうして、昨日と本日に限って拡大鏡の目視鑑定だけなのですか?条件は他の日でも同じはずですよね。目視鑑定だけで本物と判別して品位まで分かるものなのですか?ところで、貴方のキャップの微妙なふくらみは何ですか?」


 容疑者Aがついに膝から崩れ落ちてわめいている。


  「申し訳ございません。店長。ただの出来心なんです。許してください。」


 店長が容疑者Aのキャップの裏を探ってダイヤモンドを取り出した。もはや言い逃れはできないが、既に、自白済みであったので追及はやめたようだ。店長は容疑者Aを窃盗の罪で警邏(けいら)兵士に突き出すようだ。


 店長が言う。


  「ユリア様。犯人を見つけてくださってありがとうございました。あれは、この店の看板を背負っている品物なのです。何かお礼を、あ、その小粒の商品のどれか一つをサービスでお付けいたします。」


 ユリアが言う。


  「店長様。犯人は貴方がここに連れてきた時には、もう捕まったも同然の状態だったのです。何しろ、キャップに現物が入っていたのですから。持ち物検査でもすれば一発でしたね。


 わたくしが余計なことを言って、却って(かえって)現物の押収が遅れてしまいました。こちらこそ申し訳ございません。ということで、サービス品は遠慮いたしますので。こちらの小粒のサファイアと金を購入いたします。」


 店長は恐縮頻り(しきり)で小粒のサファイヤと金をそれぞれ2割引きで売ってくれた。そして、商人らしい取引を持ち掛けた。


  「お買い上げありがとうございました。ユリア様。もし、国づくりの資金が必要な場合には、わたくしにお申し付け下さい。低金利でご融資いたします。


 もちろん、宝石を掘り当てられた際には、わたくしが高価で買い取らせていただきます。どうぞ今度ともおつき合いよろしくお願いいたします。」



 ユリアがダイモン宝石店を出てから言う。


  「低金利ってどんな程度なのかな。あんまり借金はしたくないね。


 さて、午後はこのサンプルのサファイヤと金を使って資源探査魔法の埋蔵場所特定訓練だよ。ところで、そろそろ昼食だね。せっかく街に出ているからどこか食事処で食べようか。いいお店知ってます?」



 昼食後、ユリア達は宮城内に戻り、埋蔵場所特定訓練の準備をした。サファイアと金をそれぞれ別の木箱に入れて封をし、内容物名を書いて探査対象サンプルとした。


 先ず初めは初歩的訓練で、地面に置いた探査対象を、目隠しした探査者が遠くから方角と距離を言い当てる訓練内容だ。探査者は、野営基地の約50m四方の中心に探索魔法を掛けずに待機し、他の二人がそれぞれ別の探索対象を任意の位置に置く。


 初めの探査者はカビラだ。カビラは、ユリアの合図を聞いて探索魔法を掛けた。そして、自分の前方を12時方向として方角と距離を言う。


  「探査開始するぞ。えーと。3本棘の物体が、10時方向、距離22mの地点にある。丸っこい光の物体が4時方向、距離28mの地点にある。」


 ユリアが言う。


  「カビラ。大体あってるわ。さすがね。目隠しを外して、自分で正確な方向と距離を測ってみて。」


 カビラが言う。


  「うーむ。3本棘は、9時50分方向、距離21.5mだ。丸っこい光が、3時50分方向、距離27.5mだ。大体はあってるが少し矯正が必要だな。


 それにしても、距離がこの程度で障害物もない状態なら十分な感度があるが、実際の現場では私には難しそうだ。訓練でどこまで感度を上げられるかだな。」


 続いてハルショーネとユリアがカビラと同じように初歩的訓練を実施した。ハルショーネはカビラよりも僅かに精度が高い。ユリアはもっと高精度であった。



 次の中級段階の訓練は、宮城外で平坦地を使って遠距離検出を行う。平坦地面上の人が探査対象を持って遠ざかり、検出感度の限界距離を確認するものだ。これは、相当長い距離となるので、探査対象を持つ人が25kmまでほぼ等速で遠ざかり、探査者が検出限界となるまでの時間を自己計測する方法をとった。


 その結果、カビラが検出限界21km、ハルショーネが24km、ユリアが25km超であった。


 ユリアはここで秘技に関わる技術の一つを伝授することにした。ユリアが言う。


  「カビラ、ハル。二人は探索魔法では、どんな魔力を使っているの。」


 カビラが言う。


  「私は、一番得意な水だ。氷も出来るが得意ではない。ギルドの教習で得意な魔力を使うように指導された。」


 ハルショーネが言う。


  「あたいは火だよ。あたいも教習でそう習った。」


 ユリアが言う。


  「分かりました。じゃあ、今度は、教習破りでいきますよ。カビラは、水に氷を半分ずつ混ぜて。魔力制御でそれぞれ半分まで絞るのよ。ハルは、火と光で同じようにやるのよ。二人共、いまここでやってみて。魔力制御に気をつけてね。これまでとどう違うかしら?」


 カビラとハルショーネの二人は、ユリアが言った通りやろうと四苦八苦している。


 先にハルショーネが叫んだ。


  「ああっ。なによこれ。なんなの。これまでとは全然違う。圧倒的な明るさと大きさで尖ったものが迫ってくる感じだ。」


 続いてカビラも同様の感嘆の声を上げた。


 ユリアが言う。


  「じゃあ、私が探査対象を持って遠ざかるからね。さっきの2倍の速度で50kmまで走るよ。」


 この計測結果は、二人とも50km超であった。


 これから先の訓練内容は、地下に埋蔵された探査対象を検出することに集中する。これには、先端部の直径がわずかにらっぱ状に拡大する特殊な探査棒を2種類用いる。つまり、魔力を広げる範囲を頂角が極小の2種類の円錐形内部に限定する。


 探査棒の一つはコース探査用で、先端部を地中に差し込んだ状態で魔力を放射し、1km先で直径10mの円形断面となる円錐形の範囲を魔力で満たす。もう一つの探査棒は、ファイン探査用で、1km先で1mの円形断面となる円錐形の範囲を魔力で満たす。


 探査者は、ここから専任のハルショーネのみとなる。探査対象は、地下に埋める代わりに小高い山の一方の斜面に置く。これをその山の他方の斜面にいる探査者が探査棒を使って検出する。


 訓練では、小高い山の頂上近くで地中の距離が短い範囲から、徐々に下って地中距離を長くしていく。


 ハルショーネは、地中距離5km先にある二つの探査対象をコース探査棒で検出し、ファイン探査棒でほぼ二つの位置を特定出来た。以下、斜面を徐々に下っていき、最終的に地中距離25kmまで検出および位置特定が出来た。


 ユリア達は、資源探査魔法の埋蔵場所特定訓練は成功したと判断し、宮城内の野営基地に戻った。


 ユリアは夕食を食べながら、カビラとハルショーネに今日の訓練の総括を話した。


  「二人共良く聞いてね。今日の訓練後半の技術内容は、今朝、コンストレイ様の所で読んだ古典語本に書いてあった内容なのよ。古代文明後期の人達は、それを使って実際に地下資源を採掘していたらしいわ。


 でも、あの技術内容は、今では受け継がれていない失われた技術になっているの。ただ一部地域を除いてね。どこか分かるかな?そう。シングラーツ王国ヴィルダー辺境伯家よ。あそこだけは、少し形を変えてこの技術が残っているの。わたくしは、そこで魔法の厳しい訓練を受けたのよ。


 今日は、わたくしのお二人に対する厳しい魔法訓練の初日でした。どうでしたか?今日のところは、まだあまり厳しさは感じなかったでしょう。」


 カビラが言う。


  「ああ。そうだな。分かりやすい説明で、苦労せずに高感度探索魔法が使えるようになったからな。」


 ハルショーネが言う。


  「そうだね。でも今日のところは、あたいの魔力制御がまだ十分じゃあなかった気がする。いまなら、なぜ厳しい訓練が必要なのか分かる。」


 カビラが同調して言う。


  「それをいうなら、当然私も感じている。魔力制御を自在に操り(あやつり)検出感度を適切に調節した上で、判断も速くする厳しい訓練が必要だとな。」


 ユリアが言う。


  「二人共、その覚悟ができたなら、我が国の未来は明るいよ。実は、あのコンストレイ様に読ませてもらった5冊には、もっとすごいことが書いてあったの。わたくしが持っている大学講義の参考書の資源分布予測図は見せたよね。あの図と同じ内容を示す文言が書いてあったのよ。あの図の出典は古典語本であったのね。


 つまり、古代文明人は、あの予測図に示された場所で実際に資源を発掘していたということよ。もう、掘りつくしているかは書いてなかったけど、少しくらいは掘り残しがあると期待しているの。ハルの資源探査魔法に磨きをかける埋蔵場所特定訓練も工夫しなくちゃね。」




((ついに、大学講義の参考書の資源分布予測図の出典が見つかったわね。リテラルス様が山積みにした中にはそんな記載はなかった。なぜ?ああ、わかったわ。コンストレイ様は後期古典語が読めたけど、前宰相レルムンド・ド・ヨグメリアは読めないから、分配時にカスをつかまされたに違いないわ。恐ろしやコンストレイ様。))


少女はあの大学講義の参考書籍に付属していた資源分布予測図の出典を探し当てましたね。その出典文献には探査法は載っていました。採掘方法はどうするのでしょう。それではまたお会いしましょう。

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