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93.少女は焼き肉パーティーで盛り上がる

少女は焼き肉パーティーの前座で皇子や皇女たちとハーブティーの聞き茶をします。本番では焼き肉をおいしく食べる皇帝たちと議論します。

ーーー 場面はオスムール帝国皇帝宮城内


 ユリアは、作業を終えて戻って来たボランティア作業隊を迎えて労をねぎらった。


 そして、ユリアは、ユリアの隣に立っているカビラとハルショーネの二人を自分の家臣であると作業隊の全員に紹介した。二人は、すぐに歓声を上げたり挨拶したりする作業員たちに囲まれた。二人は、いろいろ聞かれながら街の飲食店のほうへ拉致されていった。


 ユリアは、作業員達が飲食店に繰り出す前にイーアンとヘラルドとキルステンを呼び止めた。


 ユリアが言う。


  「4人とも良く聞いて。今日、あのアースドラゴンが帝国から用済みで戻されたのよ。持っていてもしょうがないからギルドで買い取ってもらったの。あれはわたくし達4人で討伐したから、売り上げ金1500万ビルクを4等分するわね。一人あたり375万ビルクになるわ。受け取って。」


 イーアンはじめ3人が腰を抜かすほど驚いた。イーアンが言う。


  「ユリア師匠。何を言い出すかと思えば、そんな大金を受け取れる訳ないじゃないすか。その金額は私らの給金の2年分すよ。そもそも、あれは師匠が一人で倒したものっす。師匠に全額を取る権利があるっすよ。なあ、みんな。」


 ヘラルドとキルステンが頷いて言う。


  「その通りだぜ。俺らは、ただついて行って周りでうろうろしただけだったからな。」

  「そうだな。契約で同伴したわけじゃないし、ただ部下としてついて行っただけだな。それに、その分の日当はちゃんと貰っているわけだから、それを貰うと二重取りになっちまうぞ。」


 イーアンがまとめて言う。


  「というわけで、そのお金は師匠が全額収めて下さいっす。領地を貰って何かと金が入り用なんすよね。全額をそのために使っても誰も文句なんか言いませんて。」


 ユリアが涙目になって言う。


  「みんな、ありがとう。そうさせて頂くわね。あ、あれ。みんなの優しさが嬉しくて涙がこぼれちゃったわ。」


 イーアンが言う。


  「さあ。師匠も気を引き締めて。明日は朝から焼き肉パーティー用の野牛の解体をやりますよ。焼き肉用焚き火台と木皿と串も工房で作ってもらっていっぱい有りますからね。調味料もたっぷりとあります。師匠は解体作業台の上に野牛を出してくれるだけでいいすからね。」


 ユリアが言う。


  「イーアン。いつのまにそんな準備が出来ていたの。」


 イーアンが言う。


  「責任者のユリア師匠が下命された事を、部下の私らが実行することはあたりまえの事っすよ。ほかに、簡易のテーブルと椅子も十分有りますから、師匠は招待客たちと楽しくお話し下さいね。友好のためのパーティーすから。


 おっと、こうしちゃいられねぇ。ヘラルド、キルステン、早く晩飯食いにいくぞ。」


 ユリアが言う。


  「みんな、ありがとう。楽しんできて。」



 ユリアが野営基地で一人残され、わびしく携帯食糧を食べながら独り言を言う。


  「さて、焼き肉パーティーでは3国友好の場を設ける積もりだったわね。でも、それは交渉打ち上げの晩餐会でもう既に達成済みということでいいか。


 明日は作業隊のみんなの休養と気晴らしになればいいのかな。宮城内の普通の職員にも楽しんで貰えたらいいね。この国の音楽や歌を演奏したら盛り上がるかな。それはもう明日の様子を見て決めることにしよう。


 それよりも今の時間を利用して、近い将来の収入源の一つとなる予定の地下資源の所在をおさらいしておくかな。まず、大学の講義の参考書の資源分布予測図と、建設土木部門の地図の突合せ調査だね。


 予測図によると、オスムール帝国の東部乾燥地帯の範囲内には、いくつかの地下資源が眠っているんだね。まず金があるし、ルビーやサファイヤなどの宝石もあるし、高品位石炭の瀝青炭までもあるのか。


 さて、金の鉱脈は、あのボスべニア火山がある西側山系と繋がっている北側山系の西端付近の地下か。あとは、北側山系の北側斜面を流れる河川の上流域から中流域の砂金だね。


 宝石類も西端の火山に近い側にあるのか。ここは我が国領地内だよね。領地境界線をはっきり決めておかないと後でもめるからね。瀝青炭は乾燥地帯平原の中央辺りね。浅いところにあればいいな。


 ところで、この書籍はフランソワール帝国で刊行されているけど、なぜ他国の地下資源事情が分かるのかな。これまで、どこかの国が試掘とかやったことがあるのかな。単に理論上の予測かな。でも、大学の講義の参考書のどの書籍にもそんな記載はなかった。


 そうすると、他の文献からの転載とか引用とかかな。まさか、古典語本かな?でも、これまで見た古典語本にはそんな記載はなかったわね。もうあとは、建設土木部門長のコンストレイ様の所有する古典語本に期待するしかないか。


 何はともあれ、そんな地下資源を探知できるような探索魔法の資源探索特化バージョンを開発する必要があるね。それも特定の資源に対して特に高感度で高分解能の、名付けて資源探査魔法なるものを開発するよ。3人一緒に訓練するのが効率的だけど、たぶん、ハルが一番適任だろうね。なにしろ属性魔法を5つも持っているからね。


 訓練のためには、サンプルが必要か。どこかの宝石商で金と各種宝石の安い粒を買いますか。うん、そうしよう。せっかくイーアンたちがアースドラゴンの売上金受け取りを遠慮してくれたんだし。有効に使わないとね。これは、内政担当次官イスタラム様への相談事項だね。


 そろそろ眠くなって来たわ。もう子供は寝る時間だ。」




 翌朝、ユリアは、何やら慌ただしい(あわただしい)気配で目が覚めた。既に、作業隊の全員がイーアンの指示のもとで焼き肉パーティーの準備を始めていたようだ。


 ユリアは、急いで身仕度を整えると、みんなに挨拶してから解体作業台の上に野牛を3体置いた。作業隊のみんなは、置かれた野牛の巨大さにびっくりすると、次の瞬間には口々に歓声を上げて喜んだ。


  「うおーっ。これはでかいぞ。普通の野牛の2倍近くの重さがあるぞ。肉もたっぷりだぁ。」

  「あれーえ。どこにも傷ひとつないぞ。どうやって狩ったのかさっぱりわからんぞ。」

  「おーい。みんな。この目を見て見ろ。矢が刺さった跡が有るぞ。それも3体すべてだ。」

  「なんだそれぇー。さすがユリア殿だ。試技で的に当てるだけじゃなく、実戦でも全く問題なく実力どおりだ。」


 イーアンが言う。


  「みんな。驚くのはその辺にして早く解体にかかるんだ。ユリア師匠は会議机でお茶でも飲んでいて下さいっす。後は、全部私らがやるっすよ。ただし、カビラとハルはこっちの手伝いだぞ。俺らがはぎ取った肉塊を一口サイズに切りそろえて串に刺していくんだ。やれるよな。」


 カビラとハルが言う。


  「おう。それはいつもやっている。任せてくれ。」

  「あたいもそんなことは子供の頃からやっている。既にベテランだよ、あたいは。」


((あれ。ハルはまだ子供じゃないの?それなら、わたくしだって獣の解体や肉捌きは子供の頃からやってますけど。))


 イーアンが言う。


  「それは二人とも頼もしい限りだ。即戦力としてよろしく頼む。ユリア師匠。家臣達をお借りします。」


 ユリアが言う。


  「もちろん、いいわよ。上手に使って。」



 ユリアが暇になって言う。


  「さあて。イーアンのお勧め通りお茶でも煎れていただきますか。といっても、ハーブティーしかないけどね。うーん。ハーブティーってこんなに味わい深かったっけ。


 そうだ。給水器をあと二つ出して給茶器がわりにして、お客様もみんなもいつでも飲めるようにましょう。コップはそれぞれ20個を都度洗って使い回しだね。


 おーい、皆さーん。ハーブティーを煎れましたー。喉が渇いた人はこの給茶器からコップに注いで飲んでねー。ちょうどいい熱さに温めてありますよー。飲み終わったコップはこの容器に戻し入れて下さいねー。」


 ユリアの声に作業隊のみんなが歓声を上げて返事した。


 その声を聞きつけた別の一団がユリアに歩み寄って来た。タルベトス皇子、エスミリア皇女、ブレナリン皇女、及び護衛達だ。


 タルベトス皇子がユリアに声をかけた。


  「おはよう。ユリア。焼き肉パーティーの準備は進んでいるのかい?何だか一人だけ、のんびりした雰囲気の人がいるようだが。」


 ユリアが恥ずかしそうに挨拶する。


  「あ。おはようございます。タルベトス皇子、エスミリア皇女、ブレナリン皇女。よくおいで下さいました。簡素な椅子で恐縮ですがお座りになって下さいませ。


 準備の方はボランティア作業隊のみなさんが全てやってくれるので、わたくしは一人寂しくお茶を飲んでいたところだったのです。ハーブティーでございますが、皆様にもお煎れしますのでご感想などいただければと存じます。」

 

 ユリアは、さっそく給茶器からコップにお茶を注いで3人と護衛達に振る舞った。みんな、少しの甘酸っぱさと目の醒めるような清涼感が絶妙に組み合わされた風味と後味にしばし浸っていた。


 エスミリアが言う。


  「ユリア。貴女がこれを煎れたとおっしゃるの?わたくし、ハーブティーというものを初めていただきましたわ。これにもいろいろな種類がありそうですわね。この銘柄の場合は、少し甘いけれど紅茶に負けない深く爽やかな味わいと独特のすうーっとする強い主張があります。」


 ユリアがエスミリアを讃えて言う。


  「エスミリア様。さすがでございます。まさに的を射た感想の表現力に感服いたしました。」


 ブレナリンが言う。


  「ユリア。ハーブティーにはどんな銘柄があるの?確かにお姉様のおっしゃるように、わたくしも2種類の銘柄が混じった味わいを感じましたわ。」


 ユリアが答えて言う。


  「はい。わたくしが存じ上げるものでは、ロイゼッパ、リーモグレス、ルーアバス、ぺぺルミン、カマンミアの各銘柄があります。銘柄ごとに味わいや風味には特徴があります。」


 すかさずタルベトスが言う。


  「いまのを聞いて分かったよ。今飲んだ銘柄は、ロイゼッパとぺぺルミンの混合だな。」


 ブレナリンも負けずに言う。


  「お兄様。早出しは少し狡く(ずるく)ありませんこと?それなら、わたくしは、リーモグレスとカマンミアの混合に1票入れますわ。」


 最後に落ち着いてエスミリアが言う。


  「わたくしが最後ですわね。それでは、カマンミアとぺぺルミンの混合に1票入れさせて貰いますわ。わたくし達、どの銘柄もいただいたことがございませんから、勘と運の勝負ですわね。ユリア、当たっている人がいるのかしら?」


 ユリアが答えて言う。


  「はい。それでは発表いたします。大当たりの方がいらっしゃいます。その方はエスミリア様です。おめでとうございます。エスミリア様には、焼き肉パーティーの特設ステージでバイオリンを演奏する栄誉が与えられますが、いかがなさいますか?ご辞退なされた場合は次点のお二人に権利が移ります。」


 エスミリアが済まし顔で嬉しそうに言う。


  「それは栄誉などと呼ばれるものなのかしら。でも、勝負の勝者の責任から逃げるわけには参りませんわ。バイオリン演奏くらい、いくらでもして差し上げますわよ。」


 タルベトスが喰い気味に言う。


  「僕も次点の責任を全うする意味で、横笛の演奏をさせて頂こう。みんなで歌える曲がいいな。」


 最後に残ったブレナリンが半べそをかいて言う。


  「えーっ。お兄様、またまた狡いですわよ。わたくしも次点なのにこの場所で演奏できる楽器がありませんわ。このままでは次点の責任を全うできません。ユリア、何とかしてくださいませんこと?」


 ユリアが指名されて言う。


  「もちろんでございます。ブレナリン様にも次点の責任を全うして頂きます。既に皇后陛下と家庭教師様には許可をいただいております。もうすぐ、鍵盤楽器が特設ステージに運ばれて来ます。楽しく歌える曲や踊れる曲を演奏して次点の責任を果たして下さいませ。」


 ブレナリンが満面の笑みを浮かべて言う。


  「ありがとう。ユリア。これでわたくしも次点の責任を果たして面目を保てますわ。ユリアが先日休憩室で歌って演奏したこの国の曲も、すべて演奏して差し上げますわよ。」


 ユリアが喜んで言う。


  「うわあー。楽しみですわ。ありがとう存じます。大人の方々も子供の頃に良く歌った歌ということで、皆様も一緒に歌って下さると思います。」


((何だか勝っても負けても罰ゲームみたいな感じになっちゃったけど、お三方ともそれを分かってて演奏して下さるのだわ。なんて、お優しい方々なのかしら。))




 お昼休み近くになって、串焼きにされた肉が焼き上がって、3つのテーブル上に保温状態で山のように何段にも積まれている。まだまだ追加でどんどん焼かれている。野牛3体の肉の量は半端ではない。



 ちょうどお昼休みの時間になった。既に会場の本殿前広場には、宮城職員や騎士達や使用人などが1000人ほど集まっている。


 ユリアが特設ステージ上でオスムール帝国の楽曲をバイオリン演奏し始めた。1コーラス分だけ演奏した後、ユリアは、良く通る声で焼き肉パーティーの開始を宣言した。


 ユリアが言う。


  「皆様。ただいまから、お待ちかねの焼き肉パーティーを開催いたします。食べながらで結構ですのでお聞き下さい。本会の趣旨は親睦を深めることです。職員の皆さまも本日午後の業務は免除ということでございます。


 立食パーティー形式ですので串焼きを手に、自由に移動してどなたとでも語らい下さいませ。なお、串焼きのお肉は野牛肉です。味付けは、塩味、ソース味、野菜薬味の3種類です。お好みでお選び下さい。


 特設ステージでは、皇子様皇女様による皆様ご存知の歌曲の楽器演奏が伴奏につく歌自慢披露会もあります。我こそはという歌自慢の向きは、ステージに上がって歌いませんか?伴奏の方々の疲労を考慮して先着12名様までといたします。


 始めに、わたくしがボーダーラインを示す意味でこのままステージで子供向けの歌曲を歌います。・・・


 はい。ありがとうございました。では、わたくしよりも上手だと自信のある方のみに限定いたします。次の方、どうぞ。」


 ステージ脇には既に20名程の歌自慢が、手に串焼きを持って並んで待っている。みんなユリアよりも上手に歌える歌自慢ばかりなのだろう。もっとも、皇族のお子様方の伴奏がつくなどという、この先もう一生ない唯一無二のチャンスを逃さない向きもいるに違いない。


 ユリアは、一応、串焼き配りも、ステージ演奏も軌道に乗ったとみて、給茶器の様子を見に行った。2器ある給茶器の一方は給茶スタンド上にあり、20人ほどが並んでいた。


 2器ある給茶器の他方は会議机上にある。そちらには皇帝皇后両陛下と皇太子殿下とイリアーヌギルド長の要人4名が着席して、既にハーブティーを飲んで寛いで(くつろいで)いた。


 ユリアが言う。


  「お待たせして申し訳ございません。ただいま串焼きをお持ちいたします。味付けはお好みがございますか?」


 皇帝が言う。


  「特に好みはない。適宜で良い。」


 ユリアは傍に控える侍女達3人を連れて行き、6本ずつ盛った皿を6皿運ばせて机上に置いた。皇帝はソース味、皇后は野菜薬味、皇太子はソース味、イリアーヌは塩味を選んで皿から串を取った。ユリアも野菜薬味を取った。


 皇帝が言う。


  「うーむ。これは城の料理長が作るステーキ肉よりも何倍も美味いぞ。ソースの違いか、焼き方の違いか、肉そのものの違いか、スベラトスはどう思う?」


 皇太子が指名されて答える。


  「父上。これは肉の違いもさることながら、焼き方の違いと酸味系のソースの違いの両方の合わせ技のようです。ソース味以外のものもいただいて確認されたらいかがですか?」


 皇帝が塩味を取って味見している。その前にイリアーヌが言う。


  「確かに、ただの塩味のステーキとは趣が違っている。どこがと言われると自信がないが、第一に油に嫌味がない。全体の食味はさっぱりしているが表面の薄焦げが油と馴染んで香ばしいうまみを出している。」


 皇后も負けじと言う。


  「わたくしのものは野菜薬味ですが、ネギ塩たれや根菜のおろし果汁酢や酸味系柑橘汁など、どれもさっぱりさせる薬味が一口サイズごとに変わって、とても得した気分にさせてくれます。これまで、城の料理長が出してくれたものとは全く趣が異なりますね。」


 皇帝が言う。


  「うーむ。塩味一つとっても、薄すぎず濃すぎず絶妙の味つけ具合で肉の重苦しさを微塵も感じさせない。これほどの味付けはユリアが指示したものなのか?」


 ユリアが答える。


  「はい。さようでございます。わたくしが森で狩人生活をしている時に、毎日3食とも焼き肉がほとんどという食生活に、少しでも食べる楽しみを持たせようと考えた味付けでございます。」


 皇太子が問う。


  「ユリアは今まだ6歳であろう。そんな幼児が森で狩人生活などできるのか?」


 ユリアが答える。


  「実際は、森で出会った狩人のパートナーになり、特に弓矢を使った狩りの仕方や魔法の特訓など厳しい教育を受けて独り立ちできるまでになりました。なお、ハンターギルド会員証は、独り立ちしてから特にフランソワール帝国アリースソン伯爵家の騎士団から同伴者を得て魔物の討伐実績を積んで取得しました。」


 イリアーヌが問う。


  「ユリアは既に、クロエの登録名でハンター資格1級の保有者であるが、2回も飛び級をしているな。それは異例中の異例なことだが、どういう絡繰りなのだ。」


 ユリアは正直に答える。


  「はい。端的に言いますと、森でパートナーとなった狩人が厳しく教育訓練してくれたおかげです。筆記試験も実技試験も、受験する級の合格基準を遥かに超えた成績を取れた結果ということです。詳しいお話は長くなりますが、お聞きになりますか?」


 イリアーヌが周りを見回して同意を得たものとして言う。


  「少しくらい長くなっても聞く価値があると思っている。話してくれるか?」


 ユリアが答える。


  「分かりました。最初は5級を受験したつもりでしたが、ギルド長権限で4級を授与されました。わたくしの弓矢の試技を見たギルド長がまず弓矢の腕前を認め、実技試験免除で受験しました。そして筆記試験で全科目満点をとったので、実技試験免除と合わせいきなり4級を授与されました。こちらは幸運のなせる技です。


 3級は通常通りで受験しました。この時は経験対象魔物ジャイアントビー5体を一度に持ち込み、即日受験で筆記試験全科目満点、実技試験は2級レベルと判定されて3級を授与されました。


 3級のとき、もっと昇級したくて1級1名と2級1名の同伴指導者2名及び3級の通常同伴者1名と組んで、魔物の森に経験討伐に行きました。そのとき、ワイバーン5体が森の魔物やハンターたちを襲っている情報が入りました。これを討伐したくて食事処にいた2級ハンターを同伴者に加えて合計5名のパーティーで討伐に向かいました。


 わたくしの経験討伐として同伴者たちには隠れていてもらい、ひとりでワイバーン5体を撃ち落としました。使った武器は弓矢と槍です。この討伐経験は1級受験の要件を満たしていたので、飛び級受験を申し込み受理されました。受験はしたのですが、筆記試験も実技試験も両方免除で1級を授与されました。


 その理由は、聞いたところでは、3級受験の際の筆記試験満点は1級受験の合格基準を満足し、同じく3級受験の際の実技試験結果も2級レベルではなく1級レベルを超えていたとのことでした。わたくしが増長しないように低めに教えたようです。


 こうして、2度の飛び級を経て現在1級です。先日ギルドで換金したアースドラゴンは、ハンター資格1級になってから討伐したものです。以上です。これでよろしいでしょうか?」


 イリアーヌが言う。


  「うーむ。ユリアのその幼児の外見と、今の話とが全く整合していなくて、何だか頭痛がしてきた気がする。要するに、ハンターギルドに登録する前から、既に1級レベルの実力を備えていたということか。それはもう名だたるギルド長たちが認めたことで、信じるしかない。わかった。


 それなら、もう一つ教えてもらいたい。パートナーの狩人の厳しい教育訓練とはどんなものだ。その訓練を受ければ誰でもユリアのようになれるのか?」


 ユリアが頭をひねりながら答える。


  「それは分かりません。たぶん、ひとによって最適の教育方法は異なると思います。わたくしの場合は、そのパートナーが選んだ教育方法が、たまたまわたくしの最も得意とするやり方だったのです。


 具体的には、パートナーはわたくしに弓矢での狩りのやり方を実際の狩りで余すところなく見せてくれます。一方、わたくしはそれをつぶさに見て技を盗みます。盗んだ後、それがどのような原理でそうなるのかを自分なりに試行錯誤して見出し、再現できるように訓練します。いかがですか?最高に厳しい教育方法でしょう。」


 イリアーヌが諦めたように言う。


  「確かに最高に厳しい。普通の人ならその教育方法では全く伸びないだろう。もはや、ユリアが普通の人ではないということで納得するしかない。もう諦めた。詮索して済まなかった。」


 皇帝が言う。


  「ユリアは、既に、東部乾燥地帯全域を支配下におさめる国家元首である。内政干渉する気はないが、困ったときは遠慮せずに我々の助力を乞うのだぞ。現在は、我々の方は火山被災から復興中であるが、ユリアの場合はゼロからのスタートになる。資金面はどうするつもりだ。小麦を作っても売れるまでは長くかかるぞ。当面の資金作りが大変であろう。どうだユリア。」


 ユリアが答える。


  「皇帝陛下の暖かいお心遣い、大変痛み入ります。アースドラゴンの引き取り命令を出していただいたおかけ様で、現在の家臣2名のお給金支払いや必要な備品類購入などの当面の資金の目処が立ちました。」


 皇帝が言う。


  「うーむ。今は言えない何かの秘策があるのだろうな。だが、見渡す限りの小麦畑の夢を実現して大量の小麦などを生産しても、こちらも生産が回復していれば値崩れを起こすだけで儲からないぞ。夢を壊すようですまないが事前に忠告しておく。」


 ユリアが礼を言う。


  「ご忠告ありがとうございます。小麦など食料品については、こちらで売りさばくにしても輸送費などの点でこちらの農産物との競争に負ける恐れがあります。したがって、食料品は自家消費に少し余す程度の生産量に留まるでしょう。近い将来のわたくしの国が豊かになる手段は食糧品以外の商品です。他の国があまり生産しない商品を生産して、買ってもらえるぎりぎりの高値で売るしかありません。そんな商品が何であるかはこれから探します。」


 皇太子が言う。


  「あの東部乾燥地帯は、今の我が国にとって広いばかりで何も生産しない利用価値のない領地であった。それをユリアが、食糧はもちろん、何か特産品の一大生産地に仕立てて豊かな国土へと変貌させるというのだな。私たちとの競合を避けてくれるというのはありがたい話だ。いずれにしても、何事も話し合いで解決していく外交関係を築きたいものだ。」


 ユリアが言う。


  「全く、おっしゃる通りでございます。今後ともよろしくお願いいたします。」





 ユリアは、皇帝たちが焼き肉パーティーから引き上げた後、他の職員の姿を探した。そして、建設土木部門長のコンストレイが別の机で焼き肉を食べている姿を見つけた。ユリアは同じ机の椅子に許可を得て座った。


 ユリアが言う。


  「コンストレイ様。よくおいで下さいました。焼き肉はおいしいですか?」


 コンストレイが言う。


  「おお。ユリア殿。こんな美味い焼き肉を食ったのは生まれて初めてじゃ。長生きはするもんじゃのう。これまで、この宮城本殿の前庭でこんなパーティーをするなんざ考えもせんじゃったわい。それも、皇帝一家の解放者であって、国家転覆首謀者を取り押さえたという偉業をなしたユリア殿ならでは実現できんかったじゃろうて。」


 ユリアが言う。


  「ははは。わたくし自身は、この焼き肉パーティーを友好親善のために開催したいと言って、肉になる獣を狩っただけなんです。そしたら、有能な部下たちが全部お膳立てしてくれたから開催できたんですよ。ボランティア復興作業隊の皆さんに感謝ですね。」


 コンストレイが言う。


  「ユリア殿。上に立つ者というのはいつもそんなものですぞよ。ところで、古典語本の件ですがな、考えがまとまりましたわい。儂はユリア殿を信じて古典語本を託しますぞ。儂が所有する5冊は明日にでもお渡ししますじゃ。他に4冊を前宰相レルムンド・ド・ヨグメリアが持っていたんじゃ。じゃが、奴の所有物は押収されて今はリテラルスの手元にあるじゃろうて。読みたければリテラルスに頼み込むことじゃな。」


 ユリアは飛び上がらんばかりに喜んで言う。


  「コンストレイ様。ありがとうございます。明日、建設土木部門長のお部屋に参ります。読み終えたらすぐにお返しいたしますね。


 ところで、リテラルス様の手元にあるという古典語本は、押収してすぐに大学や研究所に持ち込まれたのでしょうかね。それでしたら先日ざっと見せていただきましたが、目的のものは見当たりませんでした。もしその中に含まれていない場合は、自助努力すべしなどと言ってしまった手前、いまさら読ませてくださいとは言えないです。そちらの方は諦めます。」





((これで、大きなイベントの焼き肉パーティーは終わりました。後は、古典語本を読んで何が書いてあるか確認することと、医薬統括部のメルカリス様の件だね。市井の薬師様へのポーション製造技術講習は終わったかな))


少女は家臣に支払うお給金の当面の資金を確保しました。今後の国の発展の基礎を地下資源に求めますが、うまくいくんでしょうかね。それではまたお会いしましょう。

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