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68.少女は魔獣討伐の経験を積む

少女はまたあの魔物の森で魔物討伐に挑みます。どんな魔物でしょう。あの荒技もでますか。

ーーー 場面はアリースソン伯爵領主館


 ユリアは自室で自ら目覚めた。昨日すべての重荷を手放したので心身共に軽くなってぐっすりと眠れたようだ。


 ナリアが入ってきて挨拶しながら言う。


  「おはようございます。ユリア様。今朝は気持ち良くお目覚めでございますね。昨日の教育が順調に進んだお陰でしょうか?お顔もすっきり晴ればれとしていらっしゃいます。」


 ユリアが言う。


  「おはようございます。ナリアさん。よくわかりますね。そんなに顔に出ているかしら?」


 ナリアが答える。


  「ええ。それはもうお顔いっぱいに満面の笑みが溢れ(あふれ)ていますよ。」


 ユリアが説明調で言う。


  「そう言われればそうかも知れませんね。実は昨日の教育でポーション調合の秘術習得を指導したのです。事前の予想では、習得には2日かかるだろうと覚悟していました。でも、実践訓練生はお二人とも優秀な方達で、わたくしは手を貸すこともなく口だけ出せば直ぐに理解して下さいましたの。実践結果は大成功でお二人とも1日で習得されましたわ。」


 ナリアが言う。


  「それはようございました。これでわたくし達だけでなく、国中の民に良いお薬が行き渡るようになるでしょう。


 そうそう。良いお薬といえば、最初の日にユリア様からいただいた塗り薬はメイド達の間で大評判でございますよ。特にランドリーメイドのルクレシアとサラーはいつも手荒れが酷かったのが、あのお薬を使うようになってからパーラーメイド達にも負けないきれいな手肌になったと大喜びなのです。


 メイド達は、今ではユリア様のことを、縁談予想戦のときキッチンメイドのメラニーが予想した通りの聖女様に間違いないとあがめ奉っています。」


 ユリアはびっくりした様子で言う。


  「そうなのですか。まあ、皆さんがわざとオーバーに言っておられるのは分かります。でも聖女様に間違いないというのは言い過ぎでしょう。わたくしは聖女様になった覚えはありませんし、聖女様が実際何をなさる方なのかは存じません。


 仮に聖女様が治癒魔法を施される方だとすると、たしかに崇める(あがめる)対象たり得ますね。一方、わたくしはポーションや塗り薬を提供しただけの普通の人間ですから、聖女様とは違い崇める対象にはなりません。わたくしのことを例える対象としても間違っています。


 それに、皆さん、わたくしの本性をご存知ないようですね。皆さんをがっかりさせるようで申し訳ないですけど、業務上で被った身体的異常を癒やすためのお薬は、今後医薬部門に請求なさってくださいませ。わたくしは、薬師ではございませんので。」


 ナリアが言う。


  「ユリア様のご主張とアドバイス、承知致しました。しかとメイド達に申し伝えます。ところで、本日のご予定はお決まりでしょうか?」


 ユリアが言う。


  「今日から5日の予定で初めての魔物討伐に行きます。これまで習得したいろいろな技を試してみたいのです。それに、新しい技を考えるきっかけもほしいし。同伴者はハンターギルドで募ります。」


 ナリアが言う。


  「魔物は普通の獣とは段違いに危険性が高いと言われています。騎士団から気心が知れて連携の取りやすい同伴者を頼まれることをお勧めいたします。いつものようにわたくしが依頼してきましょう。イーアンでよろしゅうございますね?」


 ユリアが答える。


  「いつもお世話になります。5日間もお借りして大丈夫ならお願いします。無理なら結構ですから。」



 ユリアは朝食を食べに食堂に行き、朝食を終えたデイビードをつかまえて魔物討伐の許可をもらった。


 ユリアが朝食を食べ終えて待っていると、ソルジエンとイーアンがハンター装束で装備を持って現れた。ソルジエンとイーアンが言う。


  「ユリア殿。おはようございます。」「ユリア師匠。おはようーす。」


 ユリアが、挨拶を返し、驚いたように言う。


  「おはようございます。今日は、お二人ですか?お仕事の方はよろしいのですか?」


 ソルジエンが言う。


  「もちろんです。要人の護衛は我々騎士団の重要な仕事なのです。」


 ユリアが言う。


  「でも、わたくしは護衛されるほどの要人ではありませんわ。それに、子供のわがままな行動にお付き合いいただくのも心苦しいです。」


 ソルジエンが反論するように言う。


  「とんでもございません。アリースソン伯爵家の客人として、ユリア殿は最重要人物です。それに、あの荒業なるものもまだ拝見しておりませんしね。騎士団代表で見聞するのも仕事です。」


 ユリアは得心したように言う。


  「そうだったのですね。分かりました。今日から5日間よろしくお願いします。あっ。それから、わたくしのハンター登録名は、ユリアではなくクロエなので、ハンター業務を遂行中はクロエと呼んでくださいませ。」


 ソルジエンが不思議そうに言う。


  「ハンター登録は本名でなくてもOKですが、何か事情がお有りだったのですか?私達は騎士団の所属も明示する必要から、全員本名で登録しています。」


 ユリアが言う。


  「デイビードお父さんに言われた通りにしただけなので、本当の事情は知りません。ただ、わたくしが、ある村から出奔して逃げている身であることを考慮してくれたのだと思っています。」


 イーアンがびっくりして言う。


  「ユリア師匠、いや、クロエはなぜ村から逃げ出す必要があったんだ?」


 ユリアが言う。


  「もちろん。言わずと知れた蝗害による飢饉で家族の口減らし対象にされたためよ。家族としては対象が自らいなくなって目的を達したけど、村長や神父様は捜索したり届け出をするでしょう。デイビードお父さんがわたくしの登録名をクロエにしたのは、そんな捜索網に引っ掛からない用心のためだと思ってるの。」


 イーアンがしみじみと言う。


  「師匠も苦労してるんだ。まだたったの6年余りだけど、俺よりも人生経験多そうだな。」


 ユリアが言う。


  「それじゃ、ハンターギルドに寄ってあと一人メンバー募って行きます。出来ればカビラがいいですね。」



 ユリアは、ハンターギルドに急ぎながら言う。


  「ハンター資格2級2人と3級2人では、どんな魔物を討伐できるかな?えーと。バジリスクとサラマンダーはOKね。ほかには、」


 そこでイーアンが口を出した。


  「その陣容なら、ラプトルの20頭までの群れまでOKだな。1級がいなくても大概の魔物に対応可能だ。」


 ユリアが嬉しそうに言う。


  「それは楽しみだわ。カビラさん、まだい居るといいな。」



 ユリア達はハンターギルドのホールに入った。ホール内には、15人程のハンターがいたが、お目当てのカビラは見当たらない。


 ユリアはいつもの受付窓口に取り付いて受付職員に尋ねた。ソルジエンとイーアンは、ユリアの両側に立って脇を固めている。


  「受付のお姉さま。ハンター資格2級の同伴者を募集したいので申し込み用紙を下さい。」


 ユリアが受付職員から用紙をもらって書き込んでいると、聞いたことのあるだみ声の男がソルジエンの傍に立っていた。副ギルド長のシルツビーだ。


  「おっ。ユリア、失礼。クロエ3級ハンターじゃないか。さっそく魔物討伐かい?2人も引き連れているのにまだ一人ほしいのか?」


 ユリアが言う。


  「あ。おはようございます。シルツビー様。たいていの魔物が出て来ても、逃げずに討伐したいので2級ハンターがもう一人必要なのです。」


 シルツビーが言う。


  「ほう、これは勇ましことで。そういう話なら、この俺は最適人選だぞ。なにしろ、ハンター資格1級だからな。」


 ユリアは言う。


  「ごめんなさい。せっかくのご推薦ですが、依頼料を討伐した魔物の均等配分で賄うつもりなのです。1級だと格段に依頼料が上がって討伐した魔物の分配だけでは払いきれません。」


 シルツビーは言う。


  「いや。俺は均等配分でいい。俺も腕が鈍らないように、時々討伐しなきゃならん。それに、業務として森の魔物達の様子を把握する必要があるからな。」


 ユリアは、ほかの二人の顔を見て頷き、納得顔で言う。


  「分かりました。シルツビー様。それでは、今の同伴契約内容を申し込み用紙に書きましたので、問題なければサインをお願いします。」


 シルツビーはサインして言う。


  「よーし。これで俺も、クロエがどんな魔物達とどんな戦い方をするのか、直に見れるってもんだ。クロエの戦いぶりを2回見たカビラが言うには、クロエの戦法は何らかの魔法を使っているのは確かだが、どんな魔法かは皆目見当が付かんそうだから、俺が曝いてやるんだ。覚悟しとけよ。」


 ユリアが言う。


  「3人の目で見られると見破られるかも知れませんね。でも、質問されても秘術の部分はお答えできませんので、あしからず。それでは、シルツビー様も既に準備万端のようですから、さっそく参りましょう。」



 4人は、ハンターギルドを後にして街の城門から街道に出ると、約100kmの道のりを昼食休憩と1回の小休止を入れて約8時間10分で走り抜けた。4人はすぐに宿を取って、1階の食堂で少し早めの夕飯を食べた。


 前回と同様、食事しながら情報収集した。今回は、副ギルド長のシルツビーが宿の女将さんに話しかけた。


  「女将。ここ2~3日の魔物の討伐状況は分かるかい?高レベルの大物とかレア物など出てるかな?」


 宿の女将は答える。


  「あ、シルツビー様じゃないですか。今日はお揃いで早くもあれの調査か何かかい?えっ。にしては、一人お子様が混じっているような、変なパーティーだね。」


 シルツビーは言う。


  「今日の俺はこのクロエの契約パートナーだ。もちろん調査もするがクロエの初陣の補助が主任務なんだ。どうだ、最強クラスの出物の情報あるかい?」


 宿の女将は答える。


  「あっ、それよそれぇ。昨日から、めったに出ない火を吹くワイバーンが5体の群れで他の魔物を襲って食いまくっているらしいよ。」


 シルツビーが言う。


  「そいつは聞き捨てならねえな。場所や被害状況は分かるかい?」


 宿の女将が答える。


  「場所はダンジョン入口の周辺だと遭遇したパーティーが言ってた。怪我人も出たと言う話だ。こっちに来たら恐ろしいどころの騒ぎじゃないね。くわばらくわばら。」


 シルツビーが言う。


  「どっかから来たか沸いて出たか、とにかく村や街に被害が出る前に討伐しなきゃならんぞ。ソルジエンよ。騎士団の出動の要件は満たすか?」


 ソルジエンが答える。


  「騎士団の出動には村や街の責任者からの要請が必要だ。ほかには、警戒任務部隊員または騎士団部隊長以上が状況を把握して必要と判断すれば出動出来る。ここで該当するのは私だが、実際に見ていないから状況を把握しているとは言えない。」


 シルツビーが言う。


  「女将。ここの集落の責任者はたしか女将の旦那さんだったな。今どうしている?」


 宿の女将が答える。


  「家の旦那は、村に買い出しに行っているよ。ハンター達が討伐してくれると高括って(たかくくって)るよ。」


 シルツビーが言う。


  「そうなると、明日、我々が現場を見てソルジエンが必要と判断すれば、イーアンが知らせに走って帰るというのが最速最善か?」


 ソルジエンが言う。


  「もどかしいが、それしかないか。一応、現状をハンター達がどう考えているか聞いてみるか。シルツビー殿一緒に聞こう。」


 ソルジエンは、いすから立ち上がり現状把握のため近くにいたハンター達に話しかける。


  「君たち。私はソルジエンという者だ。こちらはシルツビー副ギルド長だ。ちょっと話を聞きたいのだが。いいかな。」


 話しかけられたハンター4人組は、少しびっくりしたようだが、すぐに頷いて話をする体勢になった。


 ソルジエンが言う。


  「ワイバーンが5体出て暴れまわっているらしいが、君たちはなにか情報を持ってないかな?」


 ハンター資格2級だというリーダーのヘンドリックが言う。


  「俺達は近くで見ていない。ただ、うなり声を聞いて木に登って見ると、確かに5体が飛び回って時々火を吐きながら急降下していたのが見えた。」


 シルツビーが言う。


  「ワイバーンと接触したハンター達の話は聞いてないかな?」


 4人組リーダーのヘンドリックが言う。


  「すまない。俺達は、その後すぐに森から引き上げたから聞いてない。」


 シルツビーが言う。


  「そうか。俺達が討伐すると言ったら、君たちは参加してくれるか?」


 4人組リーダーのヘンドリックが言う。


  「いや。俺達は明日ここを引き上げる積もりだ。命あっての物種(ものだね)だからな。」


 シルツビーが言う。


  「そうだな。すまなかった。ここにいるほかのパーティーも討伐に参加はしないのだな。」


 結局、討伐に名乗を上げるパーティーはなかった。


 ここでユリアが自信ありげに胸を張って言う。


  「ワイバーン5体なら、私達のパーティーにハンター資格2級以上があと一人加われば最低限の会戦必要条件を満たすわ。どなたか、我こそはという人はいないかしら?闘う必要はないのよ。私が5体全部撃ち落とすから。」


 イーアンが言う。


  「でたぁ。師匠。ついにあの荒業が見られる時がきたのか?」


 4人組リーダーのヘンドリックが言う。


  「そんな子供がなんの師匠だって言うのだ?あんまり笑わせないでくれよ。君は1級だとでも言うのか?」


 ユリアが答える。


  「いいえ。私は3級よ。でも、私は弓矢と槍の飛び道具を使うの。どちらでもワイバーンを撃ち落とせるわよ。


 ただ、私単独ではもちろんこの4人パーティーでも会戦条件を満たせないのです。貴方は2級でしょ。参加してくれるなら木の陰か私の後ろに隠れているだけでいいですよ。どうしますか?」


 シルツビーが言う。


  「おいおい。クロエちゃんよ。そんな啖呵(たんか)切って大丈夫なのか?そりゃあ、俺もあの荒業とやらを見たいのは山々だが、あまりにも命知らず過ぎないか?」


 ユリアが言う。


  「いいえ。ワイバーンが火を吐きながら急降下してくるという言葉を聞いて、私の勝ちを確信しました。一撃で撃ち落とします。」


 シルツビーが言う。


  「クロエ。ワイバーンの攻撃時の習性が、お前のその自信と確信にどうつながるか、俺にはさっぱりわからん。だが、弓矢の一発必中かつ百発百中の腕前なら、さもありなんとは思うぜ。」


 ソルジエンが言う。


  「クロエ殿のあの槍使いも不思議だった。ジャイアントビーが飛んできて襲い掛かろうとする瞬間いきなり羽根の動きが止まって、槍よりもまだ2mくらい上から墜落してきたのには驚いたよ。何がどうなったのかさっぱりだった。クロエ殿のその先にあるというあの荒技は、その形容からして恐らく目に見えるものなのだろう。実際に見てみたいものだ。」


 イーアンが言う。


  「師匠の本領は、離れ業というか、遠距離攻撃にあるのだ。槍は止めを刺すとき以外に獲物に触れることさえないぜ。」


 すると、4人組リーダーのヘンドリックは、観念したように、討伐に参加する旨を言う。


  「わかった、分かりましたよ。参加すればいいんだろ。物陰に隠れていればいいんだったら参加するよ。それ以上のことは何もしないからな。」


 シルツビーが言う。


  「おお。これでワイバーン5体の討伐に必要な会戦必要条件が満たされたぜ。ありがとうよ。ヘンドリック。ちょうど5人だ。獲物は均等配分で一人1体だ。いいな。」


 ヘンドリックがパーティーのほかの3人に言う。


  「お前たち。すまねえ。明日の朝、3人で帰ってくれ。俺は、ここのジビエ買取所でワイバーンを換金してから帰る。帰ったら約束通り山分けするからな。まってろ。」




 翌日早朝、ワイバーン討伐5人パーティーは、特別に作ってもらった早朝飯を食べて、すぐに走って出発した。森の少し開けたところで全員で探知魔法を使い、魔物や目的のワイバーンの所在を探った。


 ユリアは言う。


  「私が、師匠としてイーアンに指示します。イーアンの探知結果を皆に周知してください。ほかのメンバーの方は、もし間違っていても黙っていてください。」


 イーアンが言う。


  「えーと。ここから9時方向8kmに複数のハンターたちが大型のアースドラゴンを囲んで討伐戦展開中。ここから11時方向12km先で多数のハンターたちが多数のリザードマンと入り乱れて乱戦中。ここから1時方向7km先でジャイアントビーが熊型魔獣を囲んで攻撃中。いたぞっ。ここから1時半方向14km先に空中に5頭のワイバーン飛翔中、地上には4人のハンターたちがこちら方面に逃走中。ハンターたちはワイバーン討伐に失敗したか、偶然遭遇したか、いずれにしても危ない状況です。」


 ユリアが、そこで話を切った。


  「はい。イーアンよくできました。皆で4人のハンターたちを助けます。私たちが彼らを背後に庇うようにワイバーンの目の前に出て行く手を遮ります。さあ。瞬発移動で走りますよ。」


 ユリアは走りながら言った。


  「シルツビー様はこちらに気づかせるために火魔法の火焔弾を投擲してください。ワイバーンがこちらに気づいたら全員物陰に隠れるか地面に伏せてください。私が1対1で戦います。よろしいですね。」


 ユリアたち5人は、わずかの時間で逃走中の4人の背後に到達し、上空を追ってくるワイバーンと対峙した。ワイバーンたちが気付いたのを見て、ユリア以外の4人はユリアの後方に下がり伏せたり木の陰に隠れた。


 ユリアは、収納魔法から弓矢を取り出してワイバーンに向けると、ワイバーンが口から火を噴き出そうとする直前に矢を放った。矢は、正確にワイバーンの片目に深く突き刺さり脳まで達してワイバーンを絶命させた。ワイバーンは固まった姿勢のまま落下した。


 1体を撃ち落とすと、ユリアは別のワイバーンに攻撃ヘイトを取り、収納魔法から槍を取り出し弓矢を収納した。


 ユリアは皆に聞こえるように言う。


  「さあ。これが実戦最初の荒技よ。目を凝らして観察してね。」


 ワイバーンが攻撃態勢で急降下に入った直後、ユリアは槍をワイバーンに向けて荒技を放つ準備をした。生活魔法の火の魔力を右手に、同じく照明の魔力を左手に通して槍で合流させて接近戦の金縛り魔法を放射した。間髪を置かず、右手の火の魔力の一部を実体化して金縛り魔法に纏わせた。


 ワイバーンが斜め上空約30mに迫った時、ちょうど金縛り魔法がワイバーンの視線を捉えた。それと同時に黄色く細いコイル状に高速で延びる火焔ビームが眼球を直撃して脳の一部まで焼き焦がした。この攻撃でも、ワイバーンは火焔ビームが当たる直前に体が固まって、火焔ビームを避ける動作さえできずに落下するしかなかった。



 ユリアは、弓矢と槍を交互に使い、結局、弓で3体、槍で2体の各ワイバーンを、すべて空中で絶命させて落下させた。落下した後に止めを刺す必要もなかった。


 ユリアの対ワイバーン戦闘を見ていたほかのメンバー4人は、唖然とするしかなかった。ユリアが、弓矢でも、槍でもワイバーンを撃ち落とすと豪語していた通りの展開となったので無理もない。


 ワイバーンは、血液も内臓も商品価値があるので、血抜きもせずに全員で冷却処理して十分に冷やした後、ユリアの収納魔法に5体すべてを収納した。


 ワイバーン討伐隊の5人は、ユリアが収納魔法から出した昼食を食べた後、宿のあるダンジョンの森前集落に戻った。集落では、ユリアたちが助けた4人組も含めて大勢が出迎えお祭り騒ぎとなっていた。宿の女将もシルツビーを始め全員に礼をいい夕食をおごると言ってくれた。


 ワイバーン討伐隊のシルツビーとソルジエンとイーアンは、念願のユリアの荒技をつぶさに見られて興奮気味にユリアに言った。


  「あれがあの荒技か。想像していたよりも荒っぽくなかったが、色鮮やかでむしろスマートだったな。何よりも、あの眼球から脳を焼き焦がす炎熱の威力が素晴らしい。でも、目以外のところに当てても火傷を負わせるのがせいぜいだろうな。それだけに、狙いの腕前も一つ物を言いそうだ。いいものを見せてもらったよ。礼を言う。」


 ユリアは言う。


  「いいえ。私の方こそ皆さんにお礼を言います。我がままに付き合っていただき、最高の状況でめったに出ない魔物を討伐することができました。今後も精進したいと思います。なお、荒技で撃ち落とした分は目と脳が焦げましたので、売値が少し下がるかと思います。私がそのうちの1体を引き取ります。もう1体は済みませんがシルツビー様にお願いします。」


 臨時で誘われて参加した4人組リーダーのヘンドリックは、ほくほく顔でワイバーン1体をギルドのジビエ買取所で換金した。そして、5人のワイバーン討伐臨時パーティーは現地解散した。



 元々のユリアたち4人パーティーは、1泊した後で夕刻前にアルーゾンに帰投した。ユリアたちは、アルーゾンのハンターギルドで、ワイバーン出現と討伐の報告をした後で解散した。


 例によって、大人たち3人は夕食を取りながら飲んで話してから帰った。ユリアは、夕食を伯爵領主館の食堂で取ったあと、デイビードやナリアに面白い経験をしたと報告した。




((ハンター資格3級になって初めての魔物討伐が、なんとワイバーンだなんて、幸運だったとしか言いようがないです。臨時参加の人のご協力がなければ討伐できなかったしね。あの荒技の威力も確認できたし、良い討伐行だったわ。))


少女は初めての本格的魔物討伐を成功させました。あの魔物の習性をうまく利用しました。あの荒技も初めて使って使い勝手を確認しました。次は何をするのでしょう。それではまたお会いしましょう。


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