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6.少女は順調に森を逃避行する

少女は、いよいよ森の奥深くに分け入ります。

――― 場面と日時は物語冒頭の村近くの森の道に戻る


 ユリアは、このまま森の道沿いに進むと追っ手に見つかる可能性が高いと判断した。そこで、背負子に入れていた脚絆(きゃはん)と腕カバーを装着して森の道なき内部に分け入った。ユリアは、家族が意図した口減らしという目的は図らずも達成されているので、家族関係者の追っ手が来る可能性は低いと考えた。


 しかし、ユリアは、神父様や友好的関係の村人たちによる捜索隊にも見つかりたくない心境だった。出奔する原因となった家族内での自分の置かれた状況を、たとえ周囲の者たちにとって既に知られた事実であったとしても、他人にあからさまに知られることは恥ずかしい。ましてや憐憫(れんびん)の目で見られることには最低限の自尊心からとても耐えられそうにない。


((同情するならほっといてくれなのだぁ。))


 そして、家族を敢えて犯罪者として糾弾するまでの必要性も感じられず、自分さえいなければ放置していても村に害はないだろうと考えた。


 これから入る森の深いところには、危険な獣や毒蛇や毒虫などが生息しており、ユリアは、足元や周囲の状況を生活魔法の照明で注意深く照らしながらゆっくりと進んでいった。


 ただ闇雲(やみくも)に進むのではなく、ユリアには目的地といえる場所があった。以前、村に狩人が獲物の肉を売りに来た時に、森の狩り場のことを話しているのを聞いたことがあり、森の中に拠点といえる小屋があることまで知っていた。


 ユリアはその時の話から小屋の位置を推定していたので、小屋があるとあたりを付けた方向へ迷いなく進んでいった。狩人が村に来たのは2年ほど前の一度きりだったので、ユリアは、件の小屋はもう放棄されて空き家になっていると推測した。そして、ちゃっかりとその小屋に身を隠して生き延びるところまでの計画を立てていた。


 森を進む途中で、地面にとぐろを巻いた蛇の頭の前を通り過ぎようとしたのを、ユリアは危ないところで気が付いた。ユリアは、はっとしたように後ろに飛びのいてすぐに体制を整え、背負子から蛇捕獲用の野締め(のじめ)を出した。慎重に狙いを定めて素早く先端の輪っかを蛇の首付近にひっ掛けて締め付け、小刀で柔らかそうな喉のあたりを切りつけた。そのあと、蛇を尾の方から逆さに吊るして血抜きをした。


 蛇が絶命したことを確認して小刀で解体した。肉は(ふき)に似た葉っぱの上で生活魔法で出した氷で冷凍したあと葉っぱで包んで背負子に入れた。背負子には腐りにくい携行食を少々準備し、収納魔法にも幾ばくか保管していた。しかし、可能な限り食糧は現地調達するつもりでいたから、まさに計画通りの行動であった。


 その後、幸い危険な獣などには遭遇せずに順調に森を進んでいった。毒虫やかぶれ性の植物などに気を付けながら、食べられる植物や茸および薬草などを採取しつつ歩を進めた。薄暗くなってからも、生活魔法の照明で周囲や足元を照らして進み、いよいよ暗くなると、収納魔法からテントや敷物と毛布などを出して眠り、その後4夜の野宿を乗り切った。


 そして、ついに、推定していたとおりのエリアに小屋を発見した。ユリアは、この逃避行が成功したことを確信した。スピノザ神父が、子供教室で通常の教材のほかに様々な教材本や書物を提供してくれ、疑問や質問に一緒になって考えてくれたことが今の自分の血肉になっていると実感し、スピノザ神父に心から感謝した。


((神父様。何も言わず出奔してごめんなさい。))


少女が森の小屋を見つけましたね。この小屋に住んで一人で生きていけるのでしょうか。心配ですね。それではまたお会いしましょう。


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