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3.少女は村を救うため行動して有力者の興味を引いた

少女は種イモの援助を訴えてお貴族様に近づきます。

 話し合いを終えた視察団が王都への帰路に出立しようと騎乗したとき、一行を案内した少女が農業専門文官ボタニナスに迫り、必死な様子ながらも冷静な声で懇願した。


 「お役人様。自助努力のため、せめてジャガイモの種イモを援助してもらえませんでしょうか?ジャガイモは夏に作付けして冬までに収穫できます。作付け候補地にはこれからご案内します。」


 エドアルドは、こいつ、協議を聞いていたなと思いながらも、村側の要請する援助物資にジャガイモの種イモが入っていないことを思い出した。エドアルドは馬を少女の傍に寄せて、抜剣しようと剣に手を掛けていた忠実な護衛騎士たちを制しつつ、自分の馬上にユリアを引き上げて言った。


 「お前、名は何という。」


 「ユリアといいます。話を聞いてくださりありがとうございます。」


 「俺はエドアルドだ。エドアルド様と呼べ。ユリア、お前の言う作付け候補地に案内してもらおうか。」


 「はい、エドアルド様。承知いたしました。このままあちらのほうへ進んでください。」


 エドアルドは、騎乗したまま従者たちの先頭にたち、ユリアに案内を任せて進んだ。

 エドアルドは、馬上で同乗するユリアと話しつつゆっくりと進んでいく。


 「お前、歳はいくつだ?」


 「6歳です。」


 「なるほど歳は見かけ通りだな。お前は貴族が怖くないのか?」


 「とーっても怖いです。騎士様が何度も剣に手を掛けるのが見えて、その度にお漏らししそうになりました。」


 「うぇー、お前、俺の鞍を濡らしていないだろうな。」


 「あっ、大丈夫です。たぶん。」


 「本当かぁ、まあいい。それはそうと、お前の行動もだが、お前のそのものの言いようは幼児の見かけと全くかけ離れているな。」


 「えぇー、そうですかぁ?それならきっと礼拝日の子供教室でスピノザ神父様が教えてくださるおかげだと思います。」


 「ほう、例えば、どんな教えだ?」


 「えーと、神様の教えや読み書き計算、家や村の手伝いに役立つことのほか、ひとの生き方もあります。特に前向きに生きることをお勧めされます。」


 「なるほど、そうか。随分と熱心な神父だな。日頃の教えが良く浸透しているようだ。それにしても、貴族に対しても物おじしない態度や積極的な行動は、そのような神父の教えでだけで身につくものなのか?」


 「うーん、神父様が仰るには、私は物覚えが良くて人当たりもよくてお利口さんだそうです。」


 「ふん、言ってろ。」


 「えへへ。あっ、お気に障りましたら申し訳ございません。まだ子供ゆえお貴族様に対する礼儀作法は習っていないのです。これを機に少し教えてくださるかもしれませんが。」


 「おう、ぜひそうしてもらえ。今回は状況に鑑みて無作法を許してやるが、貴族に対していつもこんな調子だと、そのうち切り殺されそうだからな。ところで俺の疑問に対する答えは、うまくはぐらかされたような気がするが、まあ許してやる。」


 「あっ、たいへん寛容なご対応とありがたいご助言をいただき、感謝申し上げます。」


 「うーむ、やっぱり気になる。後でスピノザ神父にお前のことを聞いてみよう。」


 「えぇー、どうか、お手柔らかにお願いいたします。」


((あれぇー、この人しつこいかも。))


 「お前にこれ以上聞くわけではないから安心しろ。」


 「うぇー、神父さまぁ、面倒そうな人につかまりました。ごめんなさい。」


 「ごらぁ。」


((えへへ、領主家の子息様とお友達になりました。))


 ユリアが馬上でエドアルドにいう。「着きました。作付け候補地はこのあたり一帯です。」


 農業専門文官ボタニナスは、一行に着いてきた村長に聞く。


 「ここは緩い傾斜地で水はけがよさそうだ。環境や土壌は秋作ジャガイモの育成に適しているようだが、これまでこの村でジャガイモを植えたことはないのか?」


 村長は答える。


 「不勉強で面目ございません。ジャガイモの夏植えができることは存じませんでした。春植えなら個別に家で食べる分だけ栽培していましたが、どの家も残った小麦の収穫を待てず、種イモもすでに食べつくしてしまいました。」


 エドアルドは従者たちと暫し協議したあと、大きな声で悠然と言った。


 「領主家で保有する種イモにも限りがある。今回は、この村のひどい状況に鑑みて特別にいくらか貸与する。ただし、その方らの工夫により収穫量を増大させて貸与した分を収穫後に返還せよ。そして、子供ながら知識に裏付けられた機転で勇気ある行動をとったユリアに感謝せよ。なお、税の全面免除は今年限りと心得よ。」


 村長は、深く頭を下げて言った。


 「ははぁー、ご領主家の慈悲深い御裁定をいただき、サンガルス村の村民一同を代表して感謝申し上げます。」


少女はお貴族様とうまくお話できましたね。知識や行動力で好印象を持ってもらえたでしょうか。次回は、お貴族様が少女の謎を神父様から聞き出そうとしますが、神父様もなかなかしぶといですよ。お楽しみに。それではまたお会いしましょう。


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