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25.少女は狩人の男の弓矢一発必中技の謎を解明する

少女は狩人の男の最終課題をふたつに分けて、簡単な方から先に解決を図るようです。

ーーー 場面は前回の続き、森の小屋の前、時はまだ昼前


 ユリアは、デイビードが弓矢の一発必中を狙うときに掛かる追跡魔法らしきものの正体と、無意識で掛かる原因の解明に取りかかった。ユリアは、先のお手本の5連射の観察で外見的知見は得たので、デイビードの内面の意識や無意識について確認するように問うていく。


  「お父さん。課題をふたつに分けるね。始めに、とにかく移動する的に矢を当てることね。後で追跡魔法らしきものの正体解明をするわ。これから、いくつか質問するから答えてね。先ず、弓矢を使うとき、いつも腕や体幹には身体強化魔法を掛けるよね?」


  「もちろんだ。」


  「じゃあ、そのとき、目にも掛けているのかしら?」


  「おう。確かに目にも掛けている。」


  「騎士団のほかの人たちもそうなの?」


  「いや、そうではないと思う。目に身体強化魔法を掛けるのは難しいから斥候員以外で掛けている騎士は少ないと思う。」


  「目に身体強化魔法を掛けると、目はどんな好都合な状態になるの?」


  「お前も昨日実感したと思うが、視力が増して遠くのものがはっきりくっきり見える状態になる。それと、動体視力も増して動くものでも目で追いやすい。」


  「じゃあ、反対に、目に不都合な影響は何かない?」


  「不都合?そうだな。どうも対象物を捉えると視野が狭くなる気がする。それと、対象物の動きは動体視力で追えるが、その周囲が見づらく視点を移すのが難しくなる気がする。」


  「なるほど。その不都合は、動く的に矢が掠り(かすり)もしない原因のひとつかもしれないね。だって、矢が到達するときの的の移動予想位置に視点を移して、そこに仮想の的を想像して射る必要があるもんね。」


  「うーむ。それは俺も考えたことがある。確かに、矢の到達時点の的の位置を予想しても、目に身体強化魔法を掛けた状態ではその予想位置に視点を移しづらいし、仮想の的の位置に明確な物体がないと狙いも定まらないからな。おぼろげにそれが原因だと分かっても、なにも打開策を見いだせなかった。」


((お父さん。分かってるなら目の身体強化魔法を外して試してみればいいのに。頑固すぎじゃない?))


  「そうなんだ。なら、目に身体強化魔法を掛けないで待ち受け行射(ぎょうしゃ)をしたこともないのね?」


  「ない。目に身体強化魔法を掛けた上で、先に静止した的での訓練をやって百発百中だったから、その後では目の身体強化なしで射ることなど考えもしなかった。」


  「なるほど。でも、待ち受け行射なら、的の移動方向の先に仮想の静止的を設定して狙いをつけて待ち、的が視野の所定位置に来たら射るだけよね。的を注視して追い続けるわけではないから、目に身体強化魔法を掛ける必要がないわ。」


  「確かに。それは、やってみる価値があるかもしれない。」


((あら。案外素直ね。まな板の鯉になり切ったかしら?))


  「そうよ。それに、予め(あらかじめ)狙いをつけておけば、お父さんなら意識しない追跡魔法らしきものが仮想の静止的まで矢を誘導してくれるでしょ。いまこれから試してみようか。これがうまくいけば、あと残るのは、追跡魔法らしきものの正体を暴いて意識的にコントロールすることだけよ。」


  「よーし。そうなると、動く的の設えが必要だな。」


  「滑車とロープを使うのはどうかしら?」


  「滑車か。獲物を吊り上げるのに使うのが小屋に置いてあるな。細いロープはお前が持っていたな。」


  「うん。例えば、二つの滑車を同じ高さで離れた位置に配置して細いロープの輪を掛け渡すの。それから、下側のロープに木の移動的をぶら下げて、一方の滑車をハンドルで回して的を移動させるというのはどうかしら?」


  「なるほど。それは良さそうだな。それなら、あとは2本の支柱と滑車の軸と動く的を準備するだけか。仮想の的はいまの黒丸でいいな。すぐに始めるぞー。」


  「おぉー。」


 すぐに、移動的の待ち受け行射の簡易設備が整った。 デイビードは射手の位置で黒丸に狙いを定めている。ユリアが15m先から合図した。


  「お父さん、はじめは低速移動だからねー。準備はいーい?」


  「おうー。いつでもいいぞー。」


 ユリアは、滑車をゆっくりした一定速度で回し始めた。デイビードは目見当で速度を測り、黒丸を注視した視野の所定の位置を定めた。移動的がその所定の位置に来た瞬間、デイビードは矢を放った。矢は移動的の中心に刺さった。


  「すごーい。命中よー。今度は中くらいの移動速度だからねー。」


  「おうー。 」


 今度も、デイビードは中心に当てて見せた。


  「またまた命中よー。最後は高速の移動速度だからねー。」


  「おうー。どんとこーい。」


 デイビードはこれも中心に命中させた。


  「お父さん。すごーい。移動的が黒丸にぴったり重なって張り付けになってるわよ。訓練の最初から全部ど真ん中に当てるなんて、的の移動速度と矢の速度と時間の見積りも正確過ぎて、お父さん、やっぱり凄腕だわ。」


  「おう、そうだろう。矢が黒丸に当たるのは誘導魔法らしきもののせいで当たり前としても、速度や時間の見積りが正確でないと動く的には当たらないからな。どうだ。少しは見直したか?」


  「お見逸れいたしました。完璧でございます。というわけで、今度は私が弓を引く番よ。お父さんの弓を貸してくれる?ちょっと前に出て10mくらいの位置から射って見るわね。」


  「おう。やってみろ。」


  「あー。一応、板に当たったけど黒丸を中心にばらついてるわ。静止した的でこれでは先が思いやられるわね。うーん。お父さんの追跡魔法らしきものを早急に解明する必要がありそうだわ。」


  「よーし。昼前はここまでにしよう。昼食を食べてから、続きを再開するぞ。」


  「はーい。」



((もう少し真ん中に集まると思ってたのに、思い上がってたのかな。真剣に取り組まないとお父さんに置いていかれそう。厳しい教育だもんね。))




少女は狩人の男の最終課題のひとつを解決しましたね。あと残るは最後の難関です。自分の厳しい教育訓練の必要も自覚しましたね。どうなることでしょう。心配です。それではまたお会いしましょう。

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