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24.少女の魔法習得訓練はいよいよ佳境に入る

少女は狩人の男から弓矢の一発必中の技を教育訓練してもらいます。男がお手本を見せて少女はその技を盗むという厳しい訓練が始まります。

ーーー 場面は森の小屋、日時は身体強化魔法を習得した日の翌朝


 ユリアは、翌朝、デイビードより少し遅れて起き出した。前日の身体強化魔法の厳しい訓練で体が少し疲れていたようだ。


  「あっ。お父さんおはよう。寝過ごしちゃったわ。今すぐ朝食の支度をするね。」


 ユリアは、急いで朝食の支度をして小屋のテーブルに簡単な黒パンとスープの皿を並べ、デイビードの向かいに座った。デイビードは食事をとりながら、ユリアに今日の教育計画を話す。


  「ユリア。今日は、昨日決めた通り、弓矢の一発必中の技を厳しく訓練するぞ。いいな。この小屋の前の草地に訓練場所を設える(しつらえる)。小屋の近くに射手の立ち位置を作り、その先15mほどの位置に的と後壁を配置する。的は木製で、大きさは直径20cmの板地の中心の直径5cmの黒い点だ。直径5cmは獲物の首の範囲を模している。わかったら、さっさと食事を済ませて取り掛かるぞ。」


  「わかったわ。お父さん。厳しそうだけどわくわくするね。」


 二人は、食事を済ませてすぐに手分けして訓練場所を設えた。


 デイビードはユリアに訓練のやり方を説明する。


  「初めに俺が手本を見せるから、お前はそれを見て技を盗め。矢の飛翔時間は、0.5秒前後だ。俺が5本の矢を2秒間隔くらいで連続で射る。瞬き(まばたき)する暇はないからな、あらかじめ言っておくぞ。」


  「ありがとう。いつでも始めていいよ。」


  「始めるぞ。これを見て腰を抜かすなよ。」


 デイビードは、文字通り矢継ぎ早に5射を打ち切った。ユリアは、デイビードが、頭と目を動かさず両手だけ機械のように動かして、矢を射っては矢筒から取り出してつがえて軽く引き絞りすぐさま放つ、一連の動作をつぶさに観察した。


  「お父さん。すごーい。ほんとに腰を抜かしそうになったわ。5本とも黒い的の中心に集まっている。これだけ見れば、既に圧倒的な戦闘力を持っていると言えるわね。」


  「これだけ見れば、そうだな。一応、お手本にはなったか。これを見てお前は何を盗めたのか、披露してもらおうか。」


((お父さん。自嘲(じちょう)はいらないよ。すごい実力なのは自慢していた通りだったわ。))


  「はーい。」


 ユリアは、間のびした返事をした。デイビードは、相変わらず全く動揺した様子もなく腰も抜かさず間の抜けた返事をするユリアが、今度はどんなことを言い出すか真剣に聞き取ろうと身構えた。


  「まず、観察した体の外見的な様子から話すわね。体躯(たいく)全体としてはほぼ固定。頭もほとんど不動。目と視線は的に固定して不動。弓をもつ左腕もほぼ固定。右腕だけがわずかに動く右肩を中心にして忙しく動いていた。」


  「うん、うん。そうだったか。それなら、基礎訓練で培った(つちかった)基本を忠実に守っていると言える。お前が見て何かおかしいところがあったか?」


  「そうね。ひとつあった。」


  「ええーっ。そんなはずはないだろう。きっちり基本通りやったぞ。」


  「いいえ。確かにひとつだけあったわ。左腕はほぼ固定だったけど不動ではなかったの。つまり、毎射毎射の狙いが必ずしも一点に集まっていたわけではなかった。お手本だからかもしれないけど、速射の時間に追われるように、狙いが定まる前に矢を放っていた感じだったわ。それでも、全部の矢がちゃんと的の一点に集まったというのは不思議だと思わない?」


 デイビードは、ユリアのその指摘を聞いて愕然とした。デイビードは、騎士団の騎士見習い基礎訓練で称賛を受けたことはあっても、一度たりともそのような指摘を受けたことがなかったのだ。それは、先輩や見習い仲間が、忖度(そんたく)したのではなく、見抜くだけの目を持っていなかったからだろう。


  「なんと、それは本当か?今までそんな細かいことを言われたことなんて、ただの一度もないぞ。でも、そう言われて冷静になってよく思い出してみると、狙いが甘いかなと感じたまま矢を放った時でも、ちゃんと的の中心に当たっていて安堵(あんど)したことがある。さっきの5連射中にもそういう感覚が何度かあった。これが、無意識に追跡魔法らしきものを掛けていた証拠だということか。」


  「その通りだと思うわ。ここから先に進むには、まず、その追跡魔法らしきものの正体を暴く必要があるわね。」


  「とほほ。ユリアは俺の師匠にでもなったみたいに言うな。俺はもう、まな板の鯉になった気分だよ。よし。俺は反論や自己分析は止めた。お前の言う通りにする。質問でも試技の指図でも何でもやってくれ。」


((あれれーっ。師匠と弟子の立場が入れ替わっちゃったよ。まあ、いいわ。そこはお父さんのいい所として前向きに受け入れて訓練を続けるわ。))


  「うん。そうさせてもらうわね。お父さんは物分かりが良くて助かるわー。なーんてね。冗談だから落ち込まないでね。」


  「ああ。もう覚悟を決めたんだ。何を言われても受け入れるよ。早速、追跡魔法らしきものの正体解明と、なぜ無意識で掛かるのか原因究明を始めてくれ。」


  「わかった。これは、私にとっての厳しい教育訓練でもあるわ。だって、その魔法の正体を解明して意識して掛けることができれば、私も一発必中の技を習得したことになるからね。それじゃあ容赦なくいくわよー。」


  「お手柔らかにお願いします。師匠。とほほ。」



((うーん。いくつか正体や原因の目星はつけているけど、それがはずれだったら厳しいな。当たっていますように。))



狩人の男の弓矢の一発必中は何らかの魔法が掛かっていた結果だったようですね。少女は男のお手本5連射でのわずかな動きを見逃さずにそれを指摘しました。次回は少女がその魔法の正体と無意識に掛かる原因を解明します。なにか目星があるようですがうまくいくか心配ですね。それではまたお会いしましょう。


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